表示設定
表示設定
目次 目次




好きの種類

ー/ー



 恋をしたことがないのはおかしいなんて、一体誰が決めたんだろう。

『ええっ!? 朝陽(あさひ)、片想いもしたことないの!?』

 仕事へ向かうため、まだ雪の残る広大な平原を駆けながら、昨日大学で友達に言われたことをふと思い出した。

 「好き(エラマス)」は知ってる。
 家族が好き。友達が好き。クジラが好き。

 だけど、「付き合ってください」が伴う「好き(イヨシッコテ)」を、あたしは知らない。みんなが愛とか恋とかいうやつ。

 それは、あたしが知ってる「好き」より、もっといいものなんだろうか。
 クジラを解剖する時の興奮より、もっと熱いものなんだろうか。

 そんなことを考えながら地面を一蹴りするたびに、あたしの身体はぐんと大きく跳ねて前進した。
 風に乗って走るような感覚が心地よい。考えても分からないことを考えるのが、なんだか馬鹿らしくなった。

 もう、鼻歌でも歌っちゃえ。
 あと、お腹空いたな。

 やがて、遠くの酪農地帯にぽつんと佇むサイロが見えてきた。
 その上に、二つの人影が立つ。兄の疾風(はやて)と、幼馴染の虎太郎(こたろう)

 あの二人も、まあどっちかというと「好き」の部類に入る。
 なんか癪だから、本人たちには言わないけど。


 ……でも、二人とも同じ「好き」かと言ったら、ちょっとよく分からない。


 まあいいや。

 よし、熊狩り(しごと)の時間だ―――!


スタンプを贈って作者を応援しよう!



みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 恋をしたことがないのはおかしいなんて、一体誰が決めたんだろう。
『ええっ!? |朝陽《あさひ》、片想いもしたことないの!?』
 仕事へ向かうため、まだ雪の残る広大な平原を駆けながら、昨日大学で友達に言われたことをふと思い出した。
 「|好き《エラマス》」は知ってる。
 家族が好き。友達が好き。クジラが好き。
 だけど、「付き合ってください」が伴う「|好き《イヨシッコテ》」を、あたしは知らない。みんなが愛とか恋とかいうやつ。
 それは、あたしが知ってる「好き」より、もっといいものなんだろうか。
 クジラを解剖する時の興奮より、もっと熱いものなんだろうか。
 そんなことを考えながら地面を一蹴りするたびに、あたしの身体はぐんと大きく跳ねて前進した。
 風に乗って走るような感覚が心地よい。考えても分からないことを考えるのが、なんだか馬鹿らしくなった。
 もう、鼻歌でも歌っちゃえ。
 あと、お腹空いたな。
 やがて、遠くの酪農地帯にぽつんと佇むサイロが見えてきた。
 その上に、二つの人影が立つ。兄の|疾風《はやて》と、幼馴染の|虎太郎《こたろう》。
 あの二人も、まあどっちかというと「好き」の部類に入る。
 なんか癪だから、本人たちには言わないけど。
 ……でも、二人とも同じ「好き」かと言ったら、ちょっとよく分からない。
 まあいいや。
 よし、|熊狩り《しごと》の時間だ―――!