表示設定
表示設定
目次 目次




#16

ー/ー



 確かに、二人だけでは難しい芝居かもしれない。舞が一緒にやってくれれば話は別なのだが。
 他にも、問題は続出した。青々とした麦畑が大地に変わってしまうシーンは、セットを替えなくてはならない。その際の人員も問題になってしまう。
「替えようにも、替えるセットすらないけどね」
 自分から案を出すのが苦手なるんだが、中々鋭く問題点を指摘する。
 そういった致命的な問題以前に、私は一つ気になるところがあった。
「この話って、ロマンティックなの?」
 ロマンティックな話がいいから、深見池の話にしようと言った割には、ロマンの欠片もない気がする。ただ、竜神様の脅威を訴えるだけの話にしか聞こえない。
「その辺は、私の腕で」
 脚本担当のカオルが、得意気に言う。
「もしかして、話しの中にありもしない話しを入れるの?」
「そういう言い方は良くないな。話をより面白くする為に、アレンジするの、脚色よ脚色」
 アレンジ、脚色。物はいいようである。それに、今回の場合、脚色はちょっと意味が違う気がする。
「深見池にまつわる話は、これ以外にもまだ沢山あるのよ。その沢山の話の中に、私の描く物と同じものがあるかもしれないじゃない」
 と、アレンジを加える正当性をアピールしながら、脚本作りに意気込んでいる。
 話のベースは深見池に決まり、私達は各々違う役割を担うことになった。
 カオルは役者と脚本係。
 るんはピアノ演奏だけではなく、その場面にあった音楽を選曲する係。
 残った私は、役者と演出をすることになってしまった。特別秀でた能力がない私は、どうしても残り物を任されてしまう。
 残り物には福があると言うけれど、今回はその言葉通りにはなっていない。演出を担当するとなると、先ほど上がった村人役や大地に変わるシーンの問題を考えなくてはならない。
 この二つの問題を演出だけで誤魔化せるのだろうかと、弱音が心を支配した。

 ◇

 放課後、私達は三人揃って職員室に訪れていた。
 今は、るんと私達の担任である花澤先生が交渉を続けている。
 カオルは勉強が出来るが、自由奔放な性格が仇となり、先生受けはあまり良くない。
るんは引っ込み思案の性格が影響し、先生達には典型的な優等生として見られている。
 先生受けの良いるんが交渉をすれば、話はスムーズに行くだろうと考えたのだが、交渉は難航していた。


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む #17


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 確かに、二人だけでは難しい芝居かもしれない。舞が一緒にやってくれれば話は別なのだが。
 他にも、問題は続出した。青々とした麦畑が大地に変わってしまうシーンは、セットを替えなくてはならない。その際の人員も問題になってしまう。
「替えようにも、替えるセットすらないけどね」
 自分から案を出すのが苦手なるんだが、中々鋭く問題点を指摘する。
 そういった致命的な問題以前に、私は一つ気になるところがあった。
「この話って、ロマンティックなの?」
 ロマンティックな話がいいから、深見池の話にしようと言った割には、ロマンの欠片もない気がする。ただ、竜神様の脅威を訴えるだけの話にしか聞こえない。
「その辺は、私の腕で」
 脚本担当のカオルが、得意気に言う。
「もしかして、話しの中にありもしない話しを入れるの?」
「そういう言い方は良くないな。話をより面白くする為に、アレンジするの、脚色よ脚色」
 アレンジ、脚色。物はいいようである。それに、今回の場合、脚色はちょっと意味が違う気がする。
「深見池にまつわる話は、これ以外にもまだ沢山あるのよ。その沢山の話の中に、私の描く物と同じものがあるかもしれないじゃない」
 と、アレンジを加える正当性をアピールしながら、脚本作りに意気込んでいる。
 話のベースは深見池に決まり、私達は各々違う役割を担うことになった。
 カオルは役者と脚本係。
 るんはピアノ演奏だけではなく、その場面にあった音楽を選曲する係。
 残った私は、役者と演出をすることになってしまった。特別秀でた能力がない私は、どうしても残り物を任されてしまう。
 残り物には福があると言うけれど、今回はその言葉通りにはなっていない。演出を担当するとなると、先ほど上がった村人役や大地に変わるシーンの問題を考えなくてはならない。
 この二つの問題を演出だけで誤魔化せるのだろうかと、弱音が心を支配した。
 ◇
 放課後、私達は三人揃って職員室に訪れていた。
 今は、るんと私達の担任である花澤先生が交渉を続けている。
 カオルは勉強が出来るが、自由奔放な性格が仇となり、先生受けはあまり良くない。
るんは引っ込み思案の性格が影響し、先生達には典型的な優等生として見られている。
 先生受けの良いるんが交渉をすれば、話はスムーズに行くだろうと考えたのだが、交渉は難航していた。