【7】⑤
ー/ー「俺は『この家のホントの子』じゃないけど、この家の子だと思ってる。だから瑛璃ちゃんにもそんな、よそなんて言って欲しくなかった。勝手だよな」
「あのときはよくわからなかったわ。でも、──勝手なんてそんなことない」
瑛璃が告げるのに、彼はぎこちない笑みを浮かべて頭を左右に振った。仕切り直すかのように。
「で、その斡旋だかの仕組みは俺もよく知らないんだけど、つまり『悩んでる女の人を助けるため』が一番なのかな。だから俺を産んだのがどういう人かは教えてもらえなかったって」
「そう、なの?」
朧気に、出産した女性が新しい両親になる夫婦に「この子をよろしくお願いします」と渡すドラマ的なシーンが浮かんだが、現実には違うのか。
あるいは航のケース以外にも様々な状況が考えられるのかもしれない。
「『一人で赤ちゃんできて困ってる若い人だった』ってだけ。完全にここんちの子になってるから、戸籍見てもホントの親のことはわからないしな」
子どもなんて絶対一人でできねえじゃん? 俺のホントの父親もどうしようもねえ奴だったんだよ、きっと、と俯く航。
声は明瞭であっても、心の中では涙を流している気がした。
「伯父さんや伯母さんは、その……。なんて言ったらいいのか、あの」
言葉にするのは困難な瑛璃の胸の内が、航に通じればいいのに。
彼らも、当然承知の上だった筈の母も、匂わせることさえしなかった。
伯父と会っているときに、「瑛璃より一つ年上の従兄がいる」と話に出ていたがそれ以上の言及は何もなかった。
瑛璃に知らせたくない以前に、普段はそれこそ「養子」だと認識することなく自然に親子として過ごしているからではないか。
ひた隠しにしていたわけなどではなく。
希望的観測かもしれないものの、それは外れていないと感じた。
「大丈夫! 俺は今幸せだし、瑛璃ちゃんもこれからは叔母さんと二人で、今までの分も幸せになればいいんだよ!」
「うん。ありがと」
このために今、話してくれたのだろうか。いつ打ち明けようかとタイミングを見計らっていたのかもしれない。
そこまで訊いていいのかわからない、という瑛璃の当惑が表情に出ていたのか。
「父さんと母さんには、瑛璃ちゃんに話すかどうかは自分で決めればいい、って言われてたんだ」
航が黙っていたくない、教えたいわけでなければ、わざわざ説明することでもないという考えなのだろう。
「あ、なあ! 今度街行かないか? なんか食べようよ。こっちにも美味しい店あるよ! 慣れたとこがよければモールにチェーンいっぱい入ってるし」
いきなり声のトーンを変えた航に、瑛璃もどうにか頭を切り替える。
「行きたい。航くんのおすすめのお店がいいな。私、好き嫌いないし」
答えながら自然に笑みが浮かんだのがわかる瑛璃に、彼も安心したように笑顔で頷いた。
「じゃあ明日にでも行く?」
「航くんがいいんなら。私は他に予定なんかないし合わせるよ」
明日は航の部活もないということで昼食に行こうと合意して、瑛璃は自室に戻った。
「あのときはよくわからなかったわ。でも、──勝手なんてそんなことない」
瑛璃が告げるのに、彼はぎこちない笑みを浮かべて頭を左右に振った。仕切り直すかのように。
「で、その斡旋だかの仕組みは俺もよく知らないんだけど、つまり『悩んでる女の人を助けるため』が一番なのかな。だから俺を産んだのがどういう人かは教えてもらえなかったって」
「そう、なの?」
朧気に、出産した女性が新しい両親になる夫婦に「この子をよろしくお願いします」と渡すドラマ的なシーンが浮かんだが、現実には違うのか。
あるいは航のケース以外にも様々な状況が考えられるのかもしれない。
「『一人で赤ちゃんできて困ってる若い人だった』ってだけ。完全にここんちの子になってるから、戸籍見てもホントの親のことはわからないしな」
子どもなんて絶対一人でできねえじゃん? 俺のホントの父親もどうしようもねえ奴だったんだよ、きっと、と俯く航。
声は明瞭であっても、心の中では涙を流している気がした。
「伯父さんや伯母さんは、その……。なんて言ったらいいのか、あの」
言葉にするのは困難な瑛璃の胸の内が、航に通じればいいのに。
彼らも、当然承知の上だった筈の母も、匂わせることさえしなかった。
伯父と会っているときに、「瑛璃より一つ年上の従兄がいる」と話に出ていたがそれ以上の言及は何もなかった。
瑛璃に知らせたくない以前に、普段はそれこそ「養子」だと認識することなく自然に親子として過ごしているからではないか。
ひた隠しにしていたわけなどではなく。
希望的観測かもしれないものの、それは外れていないと感じた。
「大丈夫! 俺は今幸せだし、瑛璃ちゃんもこれからは叔母さんと二人で、今までの分も幸せになればいいんだよ!」
「うん。ありがと」
このために今、話してくれたのだろうか。いつ打ち明けようかとタイミングを見計らっていたのかもしれない。
そこまで訊いていいのかわからない、という瑛璃の当惑が表情に出ていたのか。
「父さんと母さんには、瑛璃ちゃんに話すかどうかは自分で決めればいい、って言われてたんだ」
航が黙っていたくない、教えたいわけでなければ、わざわざ説明することでもないという考えなのだろう。
「あ、なあ! 今度街行かないか? なんか食べようよ。こっちにも美味しい店あるよ! 慣れたとこがよければモールにチェーンいっぱい入ってるし」
いきなり声のトーンを変えた航に、瑛璃もどうにか頭を切り替える。
「行きたい。航くんのおすすめのお店がいいな。私、好き嫌いないし」
答えながら自然に笑みが浮かんだのがわかる瑛璃に、彼も安心したように笑顔で頷いた。
「じゃあ明日にでも行く?」
「航くんがいいんなら。私は他に予定なんかないし合わせるよ」
明日は航の部活もないということで昼食に行こうと合意して、瑛璃は自室に戻った。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
「俺は『この家のホントの子』じゃないけど、この家の子だと思ってる。だから瑛璃ちゃんにもそんな、よそなんて言って欲しくなかった。勝手だよな」
「あのときはよくわからなかったわ。でも、──勝手なんてそんなことない」
瑛璃が告げるのに、彼はぎこちない笑みを浮かべて頭を左右に振った。仕切り直すかのように。
「で、その斡旋だかの仕組みは俺もよく知らないんだけど、つまり『悩んでる女の人を助けるため』が一番なのかな。だから俺を産んだのがどういう人かは教えてもらえなかったって」
「そう、なの?」
朧気に、出産した女性が新しい両親になる夫婦に「この子をよろしくお願いします」と渡すドラマ的なシーンが浮かんだが、現実には違うのか。
あるいは航のケース以外にも様々な状況が考えられるのかもしれない。
「『一人で赤ちゃんできて困ってる若い人だった』ってだけ。完全にここんちの子になってるから、戸籍見てもホントの親のことはわからないしな」
子どもなんて絶対一人でできねえじゃん? 俺のホントの父親もどうしようもねえ奴だったんだよ、きっと、と俯く航。
声は明瞭であっても、心の中では涙を流している気がした。
「伯父さんや伯母さんは、その……。なんて言ったらいいのか、あの」
言葉にするのは困難な瑛璃の胸の内が、航に通じればいいのに。
彼らも、当然承知の上だった筈の母も、匂わせることさえしなかった。
伯父と会っているときに、「瑛璃より一つ年上の従兄がいる」と話に出ていたがそれ以上の言及は何もなかった。
瑛璃に知らせたくない以前に、普段はそれこそ「養子」だと認識することなく自然に親子として過ごしているからではないか。
ひた隠しにしていたわけなどではなく。
希望的観測かもしれないものの、それは外れていないと感じた。
「大丈夫! 俺は今幸せだし、瑛璃ちゃんもこれからは叔母さんと二人で、今までの分も幸せになればいいんだよ!」
「うん。ありがと」
このために今、話してくれたのだろうか。いつ打ち明けようかとタイミングを見計らっていたのかもしれない。
そこまで訊いていいのかわからない、という瑛璃の当惑が表情に出ていたのか。
「父さんと母さんには、瑛璃ちゃんに話すかどうかは自分で決めればいい、って言われてたんだ」
航が黙っていたくない、教えたいわけでなければ、わざわざ説明することでもないという考えなのだろう。
「あ、なあ! 今度街行かないか? なんか食べようよ。こっちにも美味しい店あるよ! 慣れたとこがよければモールにチェーンいっぱい入ってるし」
いきなり声のトーンを変えた航に、瑛璃もどうにか頭を切り替える。
「行きたい。航くんのおすすめのお店がいいな。私、好き嫌いないし」
答えながら自然に笑みが浮かんだのがわかる瑛璃に、彼も安心したように笑顔で頷いた。
「じゃあ明日にでも行く?」
「航くんがいいんなら。私は他に予定なんかないし合わせるよ」
明日は航の部活もないということで|昼食《ランチ》に行こうと合意して、瑛璃は自室に戻った。
「あのときはよくわからなかったわ。でも、──勝手なんてそんなことない」
瑛璃が告げるのに、彼はぎこちない笑みを浮かべて頭を左右に振った。仕切り直すかのように。
「で、その斡旋だかの仕組みは俺もよく知らないんだけど、つまり『悩んでる女の人を助けるため』が一番なのかな。だから俺を産んだのがどういう人かは教えてもらえなかったって」
「そう、なの?」
朧気に、出産した女性が新しい両親になる夫婦に「この子をよろしくお願いします」と渡すドラマ的なシーンが浮かんだが、現実には違うのか。
あるいは航のケース以外にも様々な状況が考えられるのかもしれない。
「『一人で赤ちゃんできて困ってる若い人だった』ってだけ。完全にここんちの子になってるから、戸籍見てもホントの親のことはわからないしな」
子どもなんて絶対一人でできねえじゃん? 俺のホントの父親もどうしようもねえ奴だったんだよ、きっと、と俯く航。
声は明瞭であっても、心の中では涙を流している気がした。
「伯父さんや伯母さんは、その……。なんて言ったらいいのか、あの」
言葉にするのは困難な瑛璃の胸の内が、航に通じればいいのに。
彼らも、当然承知の上だった筈の母も、匂わせることさえしなかった。
伯父と会っているときに、「瑛璃より一つ年上の従兄がいる」と話に出ていたがそれ以上の言及は何もなかった。
瑛璃に知らせたくない以前に、普段はそれこそ「養子」だと認識することなく自然に親子として過ごしているからではないか。
ひた隠しにしていたわけなどではなく。
希望的観測かもしれないものの、それは外れていないと感じた。
「大丈夫! 俺は今幸せだし、瑛璃ちゃんもこれからは叔母さんと二人で、今までの分も幸せになればいいんだよ!」
「うん。ありがと」
このために今、話してくれたのだろうか。いつ打ち明けようかとタイミングを見計らっていたのかもしれない。
そこまで訊いていいのかわからない、という瑛璃の当惑が表情に出ていたのか。
「父さんと母さんには、瑛璃ちゃんに話すかどうかは自分で決めればいい、って言われてたんだ」
航が黙っていたくない、教えたいわけでなければ、わざわざ説明することでもないという考えなのだろう。
「あ、なあ! 今度街行かないか? なんか食べようよ。こっちにも美味しい店あるよ! 慣れたとこがよければモールにチェーンいっぱい入ってるし」
いきなり声のトーンを変えた航に、瑛璃もどうにか頭を切り替える。
「行きたい。航くんのおすすめのお店がいいな。私、好き嫌いないし」
答えながら自然に笑みが浮かんだのがわかる瑛璃に、彼も安心したように笑顔で頷いた。
「じゃあ明日にでも行く?」
「航くんがいいんなら。私は他に予定なんかないし合わせるよ」
明日は航の部活もないということで|昼食《ランチ》に行こうと合意して、瑛璃は自室に戻った。