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第七話 女盗賊現る

ー/ー



 オスワルド大市場はその名の通り、エーゴン•オスワルドが領内に築いた巨大市場だ。

 エーゴンの政策により税金を安く抑える事で人を呼び込み、その人を目当てに商人がやってくる。
 そうしてオスワルド大市場は連合一の市場となったのだ。

 ルークとアリア、そしてレオの三人は各国より集まった珍品を目当てに買い物に来ていた。

 ゴブリンロード討伐の褒美として好きな物を何でも買うといいとエーゴンに言われた3人は金に糸目をつける事なく色々な品を物色する

 「ルーク様ご覧ください! 
 あそこにクラウドシープの羊毛が売っております! 
 まぁ、こちらはサラマンダーの皮!?
 あちらにはハニービーフのステーキがあります! 行ってみましょう!」

 アリアは終始落ち着かない様子で辺りを見渡し、ルークの手を引っ張って連れ回す。

 レオは二人に付いていくとゆっくり買い物も出来ないと悟り、別行動をする事を伝え別れる事となった。

 (さて、これだけの市場なのだから質の高い武具もあるはずだが)

 レオの目当ては武具にあった。
 敵を斬るだけなら困る事は無いが、いずれ上に立つ者として安物では格好がつかない。

 市場を散策しているとメイン通りから外れ、裏通りに辿り着く。メイン通りのように大衆向けの商品はなく、癖の強い品が揃っている。

 「おい、そこの兄ちゃん。何やら得物を欲しがってる様子だね。ちょっとこっちに来て見てみなよ」

 辺りを探し回っていたレオに一人の男が声をかける。
 豊かな髭を蓄えた小男だった。

 「ドワーフか。人との交流を嫌うドワーフがこのような場所で商売をするとは珍しいな」

 ドワーフは世間話をする気は無いようで、良い品があるとだけ言い、その後は黙ってしまった。

 (フッ愛想の無い主人だ。だが、ドワーフの腕は確かだ。口先だけの商人に乗せられるより自分でじっくり見極められる分、こっちの方が都合が良い)

 レオは露天の前で商品を見て熟考する。
 どの武器も高品質の鉄を使い、丁寧に鍛造されている。その中でレオが気になったのは店先に並ばず、店の奥に置かれている一振りの剣だった。

 「親父、お前の後ろにある剣を見せてくれ」

 ドワーフはギョッとした顔でレオを見つめる。

 「これは......売り物じゃねぇ、そこに並んでる物だけ買いな......」

 だがレオも引き下がらない。
 鈍色の武器の中で、一振りだけ青みを帯びたその剣に興味津々だったのだ。

 「売り物でもない物が何故ここにある?
 金の心配ならするな。どれだけ高価でも必ず支払う」

 ドワーフは途端に歯切れが悪くなる。問答が苦手なドワーフにとってレオは相性が悪い。
 見せるだけだ。そう呟いて剣をレオに見せる。
 その剣は細身で青い光沢が美しく輝き、フラーには文字が刻まれていた。

 「これは......ルーン武器か......?」

 レオの呟きにドワーフは驚く。
 ルーン武器は古代に多く見られたものの、今ではドワーフが僅かにルーン武器を製造するだけになっていたので知る者も少ない。

 「あんた......どうしてルーン武器を知っている......!」

 レオはルーン武器の美しさに見惚れながら答える。

 「昔、本で読んだ事があってな......伝説上の武器か創作の存在と思っていたが、まさか実在していたとは......親父、この剣今すぐ売ってくれ」

 ドワーフは慌てて、その武器だけは売れないと断る。

 「本当にその武器は売り物じゃねぇんだ......丁度いい機会だから、あんたにルーン武器について教えてやる......」

 ドワーフは真剣な表情で語り出した。
 ルーン武器は切れ味が鋭いだけでなく、剣そのものが高純度の魔力を帯びており、作り手によって剣の性質が変化すると言う。

 「だがな、それは刻まれた文字がそうあれと指示しているだけだ......刻まれたルーン文字によってその武器の性能は大きく変わるんだ......」

 その言葉にレオはさらに興味を惹かれる。

 ルーン文字によって武器の性能が変化する。

 その上で売れないという事は、この武器には普通は刻まれない文字が刻まれていると予想した。

 「この武器には何と刻まれている?教えてくれ」

 ドワーフは苦悩の末、重い口を開き語りだす。

 「汝、血塗(ちぬ)れの王冠を求めよ。

 汝、栄華と災厄を求めよ。

 汝、世に君臨し業火に身を沈め給え」

 言い終わるとドワーフはこの武器の過去について語り出す。

 「そいつは兄貴の打った武器だ。10年前の王都陥落の時、兄貴は王室直属の鍛冶職人でな。王様からは厚く信頼されていた。

 だが、王都が滅ぶと、兄貴は恨みに満ちた顔で戻ってきた。
 いきなり工房に籠るなりこの剣を打ち、役目は終わったと言って命を絶ったんだ......」

 まさかここで王室と繋がりのある一振りと出逢うとは......レオはこの剣に運命を感じざるをえなかった。

 「その武器にどんな性質があるのかは不明だが、きっと持ち主に不幸をもたらす。
 持ち主だけじゃねぇ......多くの人間に不幸を呼んじまう。

 その剣は誰かに盗まれねぇように俺が預かってるだけで売り物じゃねぇんだ。
 他に良い武器は幾らでもある。
 だから、その剣だけはやめときな」

 事情を聞いたレオはますます欲しくなった。
 何としてもこの武器を手に入れたいと願ったレオはドワーフに頼み込む。

 「この剣はどうやら俺が持たねばならんらしい。
 実は俺は王家の遠縁でな、俺がここでこの一振りと出会うのも縁を感じる......。

 この剣何としても貰うぞ。栄華と災厄をもたらす剣か…面白いではないか」

 だが、ドワーフも譲らない。二人はルーン武器を巡って口論となる。

 その様子を物陰から一人の女が見ていた。

 「ルーン武器ねぇ......よく分かんないけど相当な代物かな?」

 女は素早く動き出す。音も立てず一瞬で二人の間に割って入る。

 「争いの種になるなら、王子様の変わりにアタイが貰ってあげるよ♪」

 女は消えていく。
 レオの手元に先ほどまであったルーン武器と共に。

 一瞬の出来事にレオは状況が飲み込めない。
 だがすぐに気を取り直し理解する。

 「あの女、一瞬で俺の間合いまで詰めて盗んだのか!? 親父、あのルーン武器を取り戻せたら俺の物だと認めろ! 良いな!」

 ドワーフは呆気に取られた声で了承した。
 レオは急いで女盗賊の後を追う。

 女の足取りは軽やかで、脚力に自信のあるレオも視界に捉えるので精一杯だった。

 レオは仕方なく強制的に動きを止める為、対象を女盗賊に絞りスキルを発動する。

 「個性(スキル)発動…...魔王(サタン)

 余が命ずる、平伏せよ!」

 レオが唱えた瞬間、黒いオーラが周囲から出現し女盗賊に向かって伸びていく。

 その様子を見ていた女盗賊は驚いた様子でレオを見ていた。

 (うげっ! スキル持ちかよ......!)

 このままでは黒いオーラに捕まってしまう。
 女盗賊は魔法を発動する。

 「反個性魔法(アンチスキルマジック)発動、拒絶の茨!」

 女盗賊と黒いオーラの間に茨が現れ、黒いオーラをそれ以上近づけなかった。

 女盗賊は自身のスキルを使用し、レオとの距離を離そうと画策する。

 「個性発動、盗賊神(アウトリュコス)!」

 盗賊神を発動した女盗賊はこれまで以上に速くなり、レオを一気に引き離す。

 だが、レオも負けじと再び個性(スキル)を発動する。

 「個性発動、模倣(コピー)

 お前のその個性貰うぞ」

 個性は通常、一人一つしか存在しない。
 だが、極稀に複数の個性を持つ者が現れる。

 盗賊神を模倣したレオは女盗賊に追いつく。

 「うっそ〜!? 個性複数持ち!? そんなんズルじゃん!」

 女盗賊は驚愕した様子でレオを見つめながら逃げる。
 このままでは捕まる......そう考えた女盗賊はさらに速度を上げる。

 速度が上げられると知らなかったレオは咄嗟に手を伸ばしてフードを掴むが、女盗賊は止まらずフードを千切りそのまま姿を消した。

 「逃げられたか......!だが、このまま見逃しはしない。
 まずはルーク達と合流するか」

 レオはこのまま一人で負うのは得策ではないと考え、ルーク達と合流してから女盗賊を捕まえる事に決めた。


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次のエピソードへ進む 第八話 個性持ち同士の戦い


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 オスワルド大市場はその名の通り、エーゴン•オスワルドが領内に築いた巨大市場だ。
 エーゴンの政策により税金を安く抑える事で人を呼び込み、その人を目当てに商人がやってくる。
 そうしてオスワルド大市場は連合一の市場となったのだ。
 ルークとアリア、そしてレオの三人は各国より集まった珍品を目当てに買い物に来ていた。
 ゴブリンロード討伐の褒美として好きな物を何でも買うといいとエーゴンに言われた3人は金に糸目をつける事なく色々な品を物色する
 「ルーク様ご覧ください! 
 あそこにクラウドシープの羊毛が売っております! 
 まぁ、こちらはサラマンダーの皮!?
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 アリアは終始落ち着かない様子で辺りを見渡し、ルークの手を引っ張って連れ回す。
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 (さて、これだけの市場なのだから質の高い武具もあるはずだが)
 レオの目当ては武具にあった。
 敵を斬るだけなら困る事は無いが、いずれ上に立つ者として安物では格好がつかない。
 市場を散策しているとメイン通りから外れ、裏通りに辿り着く。メイン通りのように大衆向けの商品はなく、癖の強い品が揃っている。
 「おい、そこの兄ちゃん。何やら得物を欲しがってる様子だね。ちょっとこっちに来て見てみなよ」
 辺りを探し回っていたレオに一人の男が声をかける。
 豊かな髭を蓄えた小男だった。
 「ドワーフか。人との交流を嫌うドワーフがこのような場所で商売をするとは珍しいな」
 ドワーフは世間話をする気は無いようで、良い品があるとだけ言い、その後は黙ってしまった。
 (フッ愛想の無い主人だ。だが、ドワーフの腕は確かだ。口先だけの商人に乗せられるより自分でじっくり見極められる分、こっちの方が都合が良い)
 レオは露天の前で商品を見て熟考する。
 どの武器も高品質の鉄を使い、丁寧に鍛造されている。その中でレオが気になったのは店先に並ばず、店の奥に置かれている一振りの剣だった。
 「親父、お前の後ろにある剣を見せてくれ」
 ドワーフはギョッとした顔でレオを見つめる。
 「これは......売り物じゃねぇ、そこに並んでる物だけ買いな......」
 だがレオも引き下がらない。
 鈍色の武器の中で、一振りだけ青みを帯びたその剣に興味津々だったのだ。
 「売り物でもない物が何故ここにある?
 金の心配ならするな。どれだけ高価でも必ず支払う」
 ドワーフは途端に歯切れが悪くなる。問答が苦手なドワーフにとってレオは相性が悪い。
 見せるだけだ。そう呟いて剣をレオに見せる。
 その剣は細身で青い光沢が美しく輝き、フラーには文字が刻まれていた。
 「これは......ルーン武器か......?」
 レオの呟きにドワーフは驚く。
 ルーン武器は古代に多く見られたものの、今ではドワーフが僅かにルーン武器を製造するだけになっていたので知る者も少ない。
 「あんた......どうしてルーン武器を知っている......!」
 レオはルーン武器の美しさに見惚れながら答える。
 「昔、本で読んだ事があってな......伝説上の武器か創作の存在と思っていたが、まさか実在していたとは......親父、この剣今すぐ売ってくれ」
 ドワーフは慌てて、その武器だけは売れないと断る。
 「本当にその武器は売り物じゃねぇんだ......丁度いい機会だから、あんたにルーン武器について教えてやる......」
 ドワーフは真剣な表情で語り出した。
 ルーン武器は切れ味が鋭いだけでなく、剣そのものが高純度の魔力を帯びており、作り手によって剣の性質が変化すると言う。
 「だがな、それは刻まれた文字がそうあれと指示しているだけだ......刻まれたルーン文字によってその武器の性能は大きく変わるんだ......」
 その言葉にレオはさらに興味を惹かれる。
 ルーン文字によって武器の性能が変化する。
 その上で売れないという事は、この武器には普通は刻まれない文字が刻まれていると予想した。
 「この武器には何と刻まれている?教えてくれ」
 ドワーフは苦悩の末、重い口を開き語りだす。
 「汝、|血塗《ちぬ》れの王冠を求めよ。
 汝、栄華と災厄を求めよ。
 汝、世に君臨し業火に身を沈め給え」
 言い終わるとドワーフはこの武器の過去について語り出す。
 「そいつは兄貴の打った武器だ。10年前の王都陥落の時、兄貴は王室直属の鍛冶職人でな。王様からは厚く信頼されていた。
 だが、王都が滅ぶと、兄貴は恨みに満ちた顔で戻ってきた。
 いきなり工房に籠るなりこの剣を打ち、役目は終わったと言って命を絶ったんだ......」
 まさかここで王室と繋がりのある一振りと出逢うとは......レオはこの剣に運命を感じざるをえなかった。
 「その武器にどんな性質があるのかは不明だが、きっと持ち主に不幸をもたらす。
 持ち主だけじゃねぇ......多くの人間に不幸を呼んじまう。
 その剣は誰かに盗まれねぇように俺が預かってるだけで売り物じゃねぇんだ。
 他に良い武器は幾らでもある。
 だから、その剣だけはやめときな」
 事情を聞いたレオはますます欲しくなった。
 何としてもこの武器を手に入れたいと願ったレオはドワーフに頼み込む。
 「この剣はどうやら俺が持たねばならんらしい。
 実は俺は王家の遠縁でな、俺がここでこの一振りと出会うのも縁を感じる......。
 この剣何としても貰うぞ。栄華と災厄をもたらす剣か…面白いではないか」
 だが、ドワーフも譲らない。二人はルーン武器を巡って口論となる。
 その様子を物陰から一人の女が見ていた。
 「ルーン武器ねぇ......よく分かんないけど相当な代物かな?」
 女は素早く動き出す。音も立てず一瞬で二人の間に割って入る。
 「争いの種になるなら、王子様の変わりにアタイが貰ってあげるよ♪」
 女は消えていく。
 レオの手元に先ほどまであったルーン武器と共に。
 一瞬の出来事にレオは状況が飲み込めない。
 だがすぐに気を取り直し理解する。
 「あの女、一瞬で俺の間合いまで詰めて盗んだのか!? 親父、あのルーン武器を取り戻せたら俺の物だと認めろ! 良いな!」
 ドワーフは呆気に取られた声で了承した。
 レオは急いで女盗賊の後を追う。
 女の足取りは軽やかで、脚力に自信のあるレオも視界に捉えるので精一杯だった。
 レオは仕方なく強制的に動きを止める為、対象を女盗賊に絞りスキルを発動する。
 「|個性《スキル》発動…...|魔王《サタン》。
 余が命ずる、平伏せよ!」
 レオが唱えた瞬間、黒いオーラが周囲から出現し女盗賊に向かって伸びていく。
 その様子を見ていた女盗賊は驚いた様子でレオを見ていた。
 (うげっ! スキル持ちかよ......!)
 このままでは黒いオーラに捕まってしまう。
 女盗賊は魔法を発動する。
 「|反個性魔法《アンチスキルマジック》発動、拒絶の茨!」
 女盗賊と黒いオーラの間に茨が現れ、黒いオーラをそれ以上近づけなかった。
 女盗賊は自身のスキルを使用し、レオとの距離を離そうと画策する。
 「個性発動、|盗賊神《アウトリュコス》!」
 盗賊神を発動した女盗賊はこれまで以上に速くなり、レオを一気に引き離す。
 だが、レオも負けじと再び個性(スキル)を発動する。
 「個性発動、|模倣《コピー》
 お前のその個性貰うぞ」
 個性は通常、一人一つしか存在しない。
 だが、極稀に複数の個性を持つ者が現れる。
 盗賊神を模倣したレオは女盗賊に追いつく。
 「うっそ〜!? 個性複数持ち!? そんなんズルじゃん!」
 女盗賊は驚愕した様子でレオを見つめながら逃げる。
 このままでは捕まる......そう考えた女盗賊はさらに速度を上げる。
 速度が上げられると知らなかったレオは咄嗟に手を伸ばしてフードを掴むが、女盗賊は止まらずフードを千切りそのまま姿を消した。
 「逃げられたか......!だが、このまま見逃しはしない。
 まずはルーク達と合流するか」
 レオはこのまま一人で負うのは得策ではないと考え、ルーク達と合流してから女盗賊を捕まえる事に決めた。