第1話 ハローワールド
ー/ー「起動、おはようございます。マスター」
「しゃ…喋ったぁぁぁ!!!?」
ハローグッドワールド。
ゴーレム魔法だけを扱い続けて10年。なんかゴーレムに心が芽生えた様です。
▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎
世界は魔法に満ちている。
光魔法は暗闇を照らし、料理には火や水の魔法が使われる。風魔法は洗濯物を乾かすのに使われているし、農家には土魔法が重宝されている。
世界は未知に満ちている。
濃い魔力から発生した魔物が各地を跋扈し、ダンジョンが出現する事で度々地図も変わる。
永久に未知の絶えない世界、【ワールド】
その未知を探索し、解き明かすのが冒険者と云う職業だ。
「ダメです。人間じゃない者の登録は出来かねます」
「なんでさ…」
冒険者は簡単な試験さえクリア出来れば誰でも登録する事が出来る。例えそれがどんな身分であっても。
登録を司る機関は冒険者ギルドと呼ばれる。
誰でも、と謳うだけあり試験は本当に誰でも受けられる。だが、俺ことアンフェルはその冒険者ギルドの受付で門前払いを受けていた。
…いや、正確には俺ではなく——
「マスター、登録出来ないならば仕方ありません。私は家事スキルが高くありませんが、やはり身の回りのサポートを」
「それじゃあ君が自由じゃ無いだろうトーカ。俺は楽しく生きて欲しいんだ」
この一見美人な女性、トーカがだ。
トーカは見た目だけなら宝石の様に綺麗な黒長髪と凛とした顔立ちを持つ美しい女性だが、実態は元々俺が使役していたゴーレムなのだ。
ある日いつもの様にゴーレム——高価な魔石を使って造った——を魔法で動かしていると、突然この見た目へと変化した。
正直何を言っているか分からないと思うが、俺も何を言っているか分からない。
本人はゴーレム時代の事は覚えているらしく、俺をマスターとして慕ってくれている。
ここまででもかなり問題なのだが、ここからが更に問題なのだ。俺の心情として、ゴーレムを操るのは大丈夫だが、彼女の様なほぼ人間を操るのは忌避感がある。
もし指示すれば聞いてくれる人が居たとして、その人を死地に向かわせようとはならないだろ?
だから彼女には冒険者として自立して貰う事にしたのだ。それで冒険者ギルドを訪れたのだが…試験の申込用紙にトーカの情報を書いた時点で先程のセリフに戻る。つまり門前払いを喰らった。
あの時のトーカは…どこか哀しそうだった。
「納得が行きません、理由を聞かせて貰っても?」
「はあ…クランは功績を挙げると支援金を貰えるのは知っていますか」
「それは知ってますけど」
「昔とあるゴーレム使いが精巧に人間へ寄せたゴーレムを作り、人間と偽って冒険者に登録、一つのクランを結成したんです。やがて彼は功績を挙げましたが、本来クラン内で分割される支援金は彼が独占した。クランメンバーはたった一人だけだったんです」
「………」
「それがバレて上層部で問題となりました。装備の修繕や新調に使う支援金を一人に渡すのはどうなのかと。確かに彼は功績を挙げましたが、ゴーレムを人間と偽って支援金を騙し取ったのも事実。だから取り決めで『人間以外は登録を認めない』と可決されたのです」
つまり、不正を防ぐために人以外は認めないと言うことか。
そのゴーレム使いは確かに狡猾な人間だったのだろう。ギルドから不正にお金を騙し取ったんだから。それでゴーレムを認めないとなるのも分かる。
だけど——
「それでは、人間の定義とは何ですか?」
それでも、トーカが人間じゃないと確認もせずに突き離されるのは納得が行かない。
受付嬢は押し黙る。彼女が意地悪でトーカを認めていない事は分かっているが、このまま引き下がるのは出来ない。
だから続ける。
「例えばエルフはどうですか?種族は違いますが、確かに人間として扱われている。獣人は?ほぼ獣の者も居るが認められている。トーカと彼等の違いは何でしょう?」
「それは…彼女はゴーレムなのでしょう?仮に心があったとして、元々はただの魔石で——」
「それを言うならエルフやドワーフは精霊でしょう。元は人間じゃない。その曖昧な線引きでトーカを認めないと言うのなら、申し訳ないが上層部と直接話す必要がある」
「……私では結論が出せません。この件は一度上層部に掛け合ってみます。本日はお引き取り下さい」
この場はそれで終わり、後日話し合いの結果を共有して貰えるらしい。上手く躱された気がしないでもないが、一旦考えを伝える事は出来た。
後はギルドの上層部がどう動いてくれるか。
人間の定義さえ決めてくれればトーカを冒険者として登録する事が出来る。そうなれば最高だ。
「今日は帰るか、トーカ」
「承知しましたマスター。本日の夕食はどうなされますか?」
「俺が作るよ。一度市場に寄ろうか」
ギルドの扉を出る。
市場に寄るなら右の裏道が近いな。
家の隙間を通る俺の後ろをトーカが続く。裏道を抜けてトーカの顔を見ると、何やらニコニコとしていた。
「料理でしたら私が——」
「君の気持ちは嬉しいが遠慮しておくよなに別にトーカの料理が嫌と言う訳ではなくアレを食べ続けたら命の危険が危なげふんげふんさーて何を作ろうかなー!」
「何か聞き捨てならない言葉が聞こえた気が…どうやらマスターは私の手料理をお求めの様ですね」
ひっ。
今何か背中に薄ら寒い物が…。
き、気のせいか。
その後何とかトーカの手を妨害しながら帰宅した。何とか爆弾料理は回避出来そうだ。
—————
ここまで見ていただきありがとうございます!
モチベになりますので、良ければ作品フォロー等の評価よろしくお願いします!
「しゃ…喋ったぁぁぁ!!!?」
ハローグッドワールド。
ゴーレム魔法だけを扱い続けて10年。なんかゴーレムに心が芽生えた様です。
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世界は魔法に満ちている。
光魔法は暗闇を照らし、料理には火や水の魔法が使われる。風魔法は洗濯物を乾かすのに使われているし、農家には土魔法が重宝されている。
世界は未知に満ちている。
濃い魔力から発生した魔物が各地を跋扈し、ダンジョンが出現する事で度々地図も変わる。
永久に未知の絶えない世界、【ワールド】
その未知を探索し、解き明かすのが冒険者と云う職業だ。
「ダメです。人間じゃない者の登録は出来かねます」
「なんでさ…」
冒険者は簡単な試験さえクリア出来れば誰でも登録する事が出来る。例えそれがどんな身分であっても。
登録を司る機関は冒険者ギルドと呼ばれる。
誰でも、と謳うだけあり試験は本当に誰でも受けられる。だが、俺ことアンフェルはその冒険者ギルドの受付で門前払いを受けていた。
…いや、正確には俺ではなく——
「マスター、登録出来ないならば仕方ありません。私は家事スキルが高くありませんが、やはり身の回りのサポートを」
「それじゃあ君が自由じゃ無いだろうトーカ。俺は楽しく生きて欲しいんだ」
この一見美人な女性、トーカがだ。
トーカは見た目だけなら宝石の様に綺麗な黒長髪と凛とした顔立ちを持つ美しい女性だが、実態は元々俺が使役していたゴーレムなのだ。
ある日いつもの様にゴーレム——高価な魔石を使って造った——を魔法で動かしていると、突然この見た目へと変化した。
正直何を言っているか分からないと思うが、俺も何を言っているか分からない。
本人はゴーレム時代の事は覚えているらしく、俺をマスターとして慕ってくれている。
ここまででもかなり問題なのだが、ここからが更に問題なのだ。俺の心情として、ゴーレムを操るのは大丈夫だが、彼女の様なほぼ人間を操るのは忌避感がある。
もし指示すれば聞いてくれる人が居たとして、その人を死地に向かわせようとはならないだろ?
だから彼女には冒険者として自立して貰う事にしたのだ。それで冒険者ギルドを訪れたのだが…試験の申込用紙にトーカの情報を書いた時点で先程のセリフに戻る。つまり門前払いを喰らった。
あの時のトーカは…どこか哀しそうだった。
「納得が行きません、理由を聞かせて貰っても?」
「はあ…クランは功績を挙げると支援金を貰えるのは知っていますか」
「それは知ってますけど」
「昔とあるゴーレム使いが精巧に人間へ寄せたゴーレムを作り、人間と偽って冒険者に登録、一つのクランを結成したんです。やがて彼は功績を挙げましたが、本来クラン内で分割される支援金は彼が独占した。クランメンバーはたった一人だけだったんです」
「………」
「それがバレて上層部で問題となりました。装備の修繕や新調に使う支援金を一人に渡すのはどうなのかと。確かに彼は功績を挙げましたが、ゴーレムを人間と偽って支援金を騙し取ったのも事実。だから取り決めで『人間以外は登録を認めない』と可決されたのです」
つまり、不正を防ぐために人以外は認めないと言うことか。
そのゴーレム使いは確かに狡猾な人間だったのだろう。ギルドから不正にお金を騙し取ったんだから。それでゴーレムを認めないとなるのも分かる。
だけど——
「それでは、人間の定義とは何ですか?」
それでも、トーカが人間じゃないと確認もせずに突き離されるのは納得が行かない。
受付嬢は押し黙る。彼女が意地悪でトーカを認めていない事は分かっているが、このまま引き下がるのは出来ない。
だから続ける。
「例えばエルフはどうですか?種族は違いますが、確かに人間として扱われている。獣人は?ほぼ獣の者も居るが認められている。トーカと彼等の違いは何でしょう?」
「それは…彼女はゴーレムなのでしょう?仮に心があったとして、元々はただの魔石で——」
「それを言うならエルフやドワーフは精霊でしょう。元は人間じゃない。その曖昧な線引きでトーカを認めないと言うのなら、申し訳ないが上層部と直接話す必要がある」
「……私では結論が出せません。この件は一度上層部に掛け合ってみます。本日はお引き取り下さい」
この場はそれで終わり、後日話し合いの結果を共有して貰えるらしい。上手く躱された気がしないでもないが、一旦考えを伝える事は出来た。
後はギルドの上層部がどう動いてくれるか。
人間の定義さえ決めてくれればトーカを冒険者として登録する事が出来る。そうなれば最高だ。
「今日は帰るか、トーカ」
「承知しましたマスター。本日の夕食はどうなされますか?」
「俺が作るよ。一度市場に寄ろうか」
ギルドの扉を出る。
市場に寄るなら右の裏道が近いな。
家の隙間を通る俺の後ろをトーカが続く。裏道を抜けてトーカの顔を見ると、何やらニコニコとしていた。
「料理でしたら私が——」
「君の気持ちは嬉しいが遠慮しておくよなに別にトーカの料理が嫌と言う訳ではなくアレを食べ続けたら命の危険が危なげふんげふんさーて何を作ろうかなー!」
「何か聞き捨てならない言葉が聞こえた気が…どうやらマスターは私の手料理をお求めの様ですね」
ひっ。
今何か背中に薄ら寒い物が…。
き、気のせいか。
その後何とかトーカの手を妨害しながら帰宅した。何とか爆弾料理は回避出来そうだ。
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