eo151 戦争

ー/ー



「魔剣使い」
 アイが確認してくる。
「あたしが今からすぐにシヒロを連れてくる。だがここは最前線になる。それでもいいのか?」

 そのとおりだ。だが俺にはむしろシヒロの魔法は大きな戦力になると思った。
 またそれだけじゃない。

「シヒロは俺のそばに置いておきたい」

「わかった」

 アイは風のようにシュッとその場から消えるように去った。

「さて、いよいよだな」

 そうこうしているうちに、敵の大群はヘッドフィールドを地上と空中から完全に包囲していた。数は先ほどよりもさらに増えている。
 くわえて俺もジェイズも完全な消耗状態。
 
「いや〜キミたちが何やら相談している間にこっちは完全に準備が整っちゃったよ〜」
「ギャッハッハァ! ジェイズ! オレをナメたこと後悔させてやるぜぇ! 魔剣使い! テメーもだ! ついでにカレンちゃんもなぁ! ギャッハッハァ!」
 
 不敵に飄々とするマーリス。いやらしくいきり立つキラース。おびただしく群がる魔物と奴らの部下ども。
 これは絶対絶命といえる状況か…と思った時。

「特殊技能〔戦闘人形軍(マスター・オブ・パペッツ)〕」

 ジェイズが錬金魔術を発動した。
 すると、そこら辺の地面がもりもりと盛り上がり始めた。
 まもなく盛り上がりは土や砂や石でできたゴーレムに変貌を遂げる。

「特殊技能〔メタルマスター〕」

 ジェイズはさらに魔術を重ねると、ゴーレムたちがカキーンと鋼鉄にコーティングされた。

「これは!?」と驚く俺にカレンが言う。
「なぜジェイズキングという一個人の動向が戦争の行方すら左右すると言われたのか? その理由は〔狂戦士〕であるということだけではない。これだ」

 気がつけば、ヘッドフィールドの街中に鋼鉄のゴーレム軍団が編成されていた。

「ものすごい数だ! こんなこともできたのか!?」

 思わず俺はジェイズに向かって訊いた。

「好きじゃねえがな。今は状況が状況だ」

 そう答えるジェイズの身体からはタトゥーのような筋が消えていた。

「なんで俺との闘いには使わなかったか、てツラしてんな。この魔術は魔力の消費がとんでもねえんだよ。あらゆる魔法を斬り裂くテメー相手にゃ相性がわりい、というのもあるが、テメーとは小細工ナシにシバキ合いたかっただけだ」

 ニヤリと笑うジェイズに対して、つい先ほどまでイキがっていたキラースがわなわなと震えだす。

「……おいおいおいおいフザケンじゃねえぞ!! なんでまだそんなバカげた魔術が使えんだよ!? 魔剣使いと削り合って消耗しきってたんじゃねえのかよ!? このバケモンがぁ!!」

「まあまあ落ち着きなって」
 相変わらず飄々としたままのマーリスがキラースをなだめる。
「いいかい? これは戦争なんだよ。戦争っていうのは殺って殺られてがあってこそさ。あっちこっちに死体があふれてこそ楽しい戦争なのさ」

 その言葉に火がついたのか、カレンが激昂したように激しく抜剣した。

「先の大戦でどれだけの尊い命が失われたと思ってるんだ! 本来であればキサマらは国際平和維持軍で捕らえた上で裁かなければならない。だが、今この場での私は一介の魔法剣士だ。一魔法剣士として、キサマらの首を刎ねてやる!」

 カレンがここまで明確に殺意を表したのを俺は初めて見た。
 
「俺も、覚悟を決めないとな」

 もうできないと判断していたが、なんとかできるだろうか。できたとして、どんな反動があるのかわからない。
 肝心の〔謎の声〕はあれからずっと引っ込んだきり。だから確認のしようもない。
 でも、今この状況を打開するには、必ず俺の力が重要になってくる。シヒロたちも守らなければならない。
 であるなら……やるしかない!

「!!」

 一同が一斉に俺に注目した。
 なぜか?
 俺がいきなり自分の胸にずっぷりと剣を突き刺したからだ。
 エレサたちは思わず俺の名を叫んだ。
 ジェイズは逆に面白そうな笑みを浮かべる。

「そうだ。それでこそ魔剣使いだ」

 俺は懸命に足腰を踏んばった。
 苦しい。かなり苦しい。めちゃくちゃ苦しい。無理をしているのがよくわかる。やはり自傷による回復と強化はすでに限界を超えているみたいだ。
 けど……

「ああああ!!」

 壮絶に叫び上げて……やがて俺はずぷっと剣を抜いた。
 なんとか、うまくいったみたいだ。だがこれ以上はもう無理だ。おそらく身体がもたない。でもこれでまた全力で戦える。
 傍で心配そうに顔を曇らせるエレサの肩に手を置いて、俺は言った。

「大丈夫だ」

 彼女の表情は晴れなかったが、すぐに敵のほうへ向き直る。

「わたしも全力で戦う。ダークエルフの本領を見せる」

 俺はジェイズとカレンに視線を送って頷いて見せ、剣を構えた。

「……おっ始めるか。戦争をな!!」

 ジェイズのかけ声とともに鋼鉄のゴーレム軍団がゴゴゴゴッと唸る。
 ヘッドフィールドのギャングどもが「うおおお!!」と雄々しく沸き立つ。
 それに応えるようにマーリスがニヤリと笑って号令をかける。

「イイネ〜イイネ〜! それじゃあ戦闘開始しよーカ!!」

 いよいよ魔物の大群が押し寄せてくる。
 カレンがぼそっとつぶやいた。

「ここまでの戦闘は…対魔王軍以来だ」


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「魔剣使い」
 アイが確認してくる。
「あたしが今からすぐにシヒロを連れてくる。だがここは最前線になる。それでもいいのか?」
 そのとおりだ。だが俺にはむしろシヒロの魔法は大きな戦力になると思った。
 またそれだけじゃない。
「シヒロは俺のそばに置いておきたい」
「わかった」
 アイは風のようにシュッとその場から消えるように去った。
「さて、いよいよだな」
 そうこうしているうちに、敵の大群はヘッドフィールドを地上と空中から完全に包囲していた。数は先ほどよりもさらに増えている。
 くわえて俺もジェイズも完全な消耗状態。
「いや〜キミたちが何やら相談している間にこっちは完全に準備が整っちゃったよ〜」
「ギャッハッハァ! ジェイズ! オレをナメたこと後悔させてやるぜぇ! 魔剣使い! テメーもだ! ついでにカレンちゃんもなぁ! ギャッハッハァ!」
 不敵に飄々とするマーリス。いやらしくいきり立つキラース。おびただしく群がる魔物と奴らの部下ども。
 これは絶対絶命といえる状況か…と思った時。
「特殊技能〔|戦闘人形軍《マスター・オブ・パペッツ》〕」
 ジェイズが錬金魔術を発動した。
 すると、そこら辺の地面がもりもりと盛り上がり始めた。
 まもなく盛り上がりは土や砂や石でできたゴーレムに変貌を遂げる。
「特殊技能〔メタルマスター〕」
 ジェイズはさらに魔術を重ねると、ゴーレムたちがカキーンと鋼鉄にコーティングされた。
「これは!?」と驚く俺にカレンが言う。
「なぜジェイズキングという一個人の動向が戦争の行方すら左右すると言われたのか? その理由は〔狂戦士〕であるということだけではない。これだ」
 気がつけば、ヘッドフィールドの街中に鋼鉄のゴーレム軍団が編成されていた。
「ものすごい数だ! こんなこともできたのか!?」
 思わず俺はジェイズに向かって訊いた。
「好きじゃねえがな。今は状況が状況だ」
 そう答えるジェイズの身体からはタトゥーのような筋が消えていた。
「なんで俺との闘いには使わなかったか、てツラしてんな。この魔術は魔力の消費がとんでもねえんだよ。あらゆる魔法を斬り裂くテメー相手にゃ相性がわりい、というのもあるが、テメーとは小細工ナシにシバキ合いたかっただけだ」
 ニヤリと笑うジェイズに対して、つい先ほどまでイキがっていたキラースがわなわなと震えだす。
「……おいおいおいおいフザケンじゃねえぞ!! なんでまだそんなバカげた魔術が使えんだよ!? 魔剣使いと削り合って消耗しきってたんじゃねえのかよ!? このバケモンがぁ!!」
「まあまあ落ち着きなって」
 相変わらず飄々としたままのマーリスがキラースをなだめる。
「いいかい? これは戦争なんだよ。戦争っていうのは殺って殺られてがあってこそさ。あっちこっちに死体があふれてこそ楽しい戦争なのさ」
 その言葉に火がついたのか、カレンが激昂したように激しく抜剣した。
「先の大戦でどれだけの尊い命が失われたと思ってるんだ! 本来であればキサマらは国際平和維持軍で捕らえた上で裁かなければならない。だが、今この場での私は一介の魔法剣士だ。一魔法剣士として、キサマらの首を刎ねてやる!」
 カレンがここまで明確に殺意を表したのを俺は初めて見た。
「俺も、覚悟を決めないとな」
 もうできないと判断していたが、なんとかできるだろうか。できたとして、どんな反動があるのかわからない。
 肝心の〔謎の声〕はあれからずっと引っ込んだきり。だから確認のしようもない。
 でも、今この状況を打開するには、必ず俺の力が重要になってくる。シヒロたちも守らなければならない。
 であるなら……やるしかない!
「!!」
 一同が一斉に俺に注目した。
 なぜか?
 俺がいきなり自分の胸にずっぷりと剣を突き刺したからだ。
 エレサたちは思わず俺の名を叫んだ。
 ジェイズは逆に面白そうな笑みを浮かべる。
「そうだ。それでこそ魔剣使いだ」
 俺は懸命に足腰を踏んばった。
 苦しい。かなり苦しい。めちゃくちゃ苦しい。無理をしているのがよくわかる。やはり自傷による回復と強化はすでに限界を超えているみたいだ。
 けど……
「ああああ!!」
 壮絶に叫び上げて……やがて俺はずぷっと剣を抜いた。
 なんとか、うまくいったみたいだ。だがこれ以上はもう無理だ。おそらく身体がもたない。でもこれでまた全力で戦える。
 傍で心配そうに顔を曇らせるエレサの肩に手を置いて、俺は言った。
「大丈夫だ」
 彼女の表情は晴れなかったが、すぐに敵のほうへ向き直る。
「わたしも全力で戦う。ダークエルフの本領を見せる」
 俺はジェイズとカレンに視線を送って頷いて見せ、剣を構えた。
「……おっ始めるか。戦争をな!!」
 ジェイズのかけ声とともに鋼鉄のゴーレム軍団がゴゴゴゴッと唸る。
 ヘッドフィールドのギャングどもが「うおおお!!」と雄々しく沸き立つ。
 それに応えるようにマーリスがニヤリと笑って号令をかける。
「イイネ〜イイネ〜! それじゃあ戦闘開始しよーカ!!」
 いよいよ魔物の大群が押し寄せてくる。
 カレンがぼそっとつぶやいた。
「ここまでの戦闘は…対魔王軍以来だ」