表示設定
表示設定
目次 目次




0話

ー/ー



 薄暗く、安っぽい煙草の煙が重苦しく充満している。
 騒ぎ立て、騙し騙されと喧嘩が起き、時には音もなく殺人も起きる場所。
 バニーハウスと名乗るそのカジノでは男達が金を賭けてギャンブルに勤しんでいた。名目上はカジノと名が通ってはいるけど、裏では違法カジノとして経営をしている。
 私は客の一人として、隅の席からその光景を眺めていた。
 いえ、正確には様子見といったところかしら。

 その夜の空気は奇妙に静まり返っていた。

 なにせ小さくも可愛らしい女の子が、下劣な笑みを浮かべた男と勝負をしていたのだから、皆が皆その勝負に釘付けになるのも当然。
 現在、少女は人生を賭けるギャンブルをしていた。
 円形の木製のテーブル上には、20枚のカードがランダムに並べられていた。裏は共通して無地、表にはそれぞれ中央に1から20数字が1つずつ入ったカードが20枚。
 内容は男と少女、互いに数字の取り合いをし、5枚捲り合計で高いほうが勝利の単純なギャンブル。
 彼女は裏返しになっているカードに手を取る。

「本当に、本当にあたしが勝てばこの人達は解放してくれるんだよね?」

 彼女はそう男に確認するように言った。
 ローブを(まと)った少女、少し膨らんでいるのは内側に鞄をかけている……。つまりはこの王都に来たばかりで宿もまだとってないであろうただの旅人。
 腰まで長い三つ編み、顔はまだあどけなさが残る幼い顔立ち。とてもじゃないけどこんな所に来るはずのないお客。
 騙されて連れてこられたのだろうと、おおよその見当はつく。
 圧倒的アウェーの中なのに緊張に震えている様子が伺えた。
 けれど、少女の瞳には強い闘志が宿り、決して折れない負けん気の強さを感じさせた。

 私は横目でカジノの名前の通りの姿をしたバニー姿の女性達を見た。
 皆、うつむきこの世の絶望みたいな表情をしていた。
 この女性達もみながみな、彼女と同じように騙され連れてこられた。そして勝負に負けて奴隷落ち、そう容易に判断できた。

「ああ、約束するぜ。ただし」

 男は悪意に満ちた顔で彼女に向けて手を伸ばす。

「お前が負けた場合はどうなるかわかっているな」
「……わかってる。あたしが負けたら奴隷となることも。だけどあたしは負けない、勝って彼女たちを解放して。そしてあたしはマヤ姉に会いに行くんだからっ!」

 彼女はテーブルの上のカードを捲った。



スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 1話ギャンブラーの片鱗


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 薄暗く、安っぽい煙草の煙が重苦しく充満している。
 騒ぎ立て、騙し騙されと喧嘩が起き、時には音もなく殺人も起きる場所。
 バニーハウスと名乗るそのカジノでは男達が金を賭けてギャンブルに勤しんでいた。名目上はカジノと名が通ってはいるけど、裏では違法カジノとして経営をしている。
 私は客の一人として、隅の席からその光景を眺めていた。
 いえ、正確には様子見といったところかしら。
 その夜の空気は奇妙に静まり返っていた。
 なにせ小さくも可愛らしい女の子が、下劣な笑みを浮かべた男と勝負をしていたのだから、皆が皆その勝負に釘付けになるのも当然。
 現在、少女は人生を賭けるギャンブルをしていた。
 円形の木製のテーブル上には、20枚のカードがランダムに並べられていた。裏は共通して無地、表にはそれぞれ中央に1から20数字が1つずつ入ったカードが20枚。
 内容は男と少女、互いに数字の取り合いをし、5枚捲り合計で高いほうが勝利の単純なギャンブル。
 彼女は裏返しになっているカードに手を取る。
「本当に、本当にあたしが勝てばこの人達は解放してくれるんだよね?」
 彼女はそう男に確認するように言った。
 ローブを|纏《まと》った少女、少し膨らんでいるのは内側に鞄をかけている……。つまりはこの王都に来たばかりで宿もまだとってないであろうただの旅人。
 腰まで長い三つ編み、顔はまだあどけなさが残る幼い顔立ち。とてもじゃないけどこんな所に来るはずのないお客。
 騙されて連れてこられたのだろうと、おおよその見当はつく。
 圧倒的アウェーの中なのに緊張に震えている様子が伺えた。
 けれど、少女の瞳には強い闘志が宿り、決して折れない負けん気の強さを感じさせた。
 私は横目でカジノの名前の通りの姿をしたバニー姿の女性達を見た。
 皆、うつむきこの世の絶望みたいな表情をしていた。
 この女性達もみながみな、彼女と同じように騙され連れてこられた。そして勝負に負けて奴隷落ち、そう容易に判断できた。
「ああ、約束するぜ。ただし」
 男は悪意に満ちた顔で彼女に向けて手を伸ばす。
「お前が負けた場合はどうなるかわかっているな」
「……わかってる。あたしが負けたら奴隷となることも。だけどあたしは負けない、勝って彼女たちを解放して。そしてあたしはマヤ姉に会いに行くんだからっ!」
 彼女はテーブルの上のカードを捲った。