ep149 急展開②

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「やあやあ狂戦士殿。先日の会議ぶりだねぇ」

 マーリスは視線不明な眼を向けて軽妙に挨拶した。

「いったいテメーがなんの用だ。なぜキラースのクソヤロウと一緒に来やがった」

「オイオイそんな敵意を向けないでくれないか? ぼくたち仲間じゃないかぁ」

「それはテメー次第だな。さっさと用件を言いやがれ」

「じゃあズバリ言おう。ヘッドフィールドはぼくたちの配下に加わってもらう。どうかな?」

「意味がわかんねえな。オレはすでに〔フリーダム〕の幹部だが」

「違う違う違うよ〜。アナタの部下とこの街が、ぼくたちの配下になるってことサ」

「いい度胸じゃねえか。オレからヘッドフィールドを引っぺがそうってか? ブッ殺されたくなけりゃ、今なら謝るだけで勘弁してやる」

「じゃあ聞くよ? 本当に狂戦士殿はこれからも彼らを食わしていけるのカナ?」

「テメェ……」

「隠してもムダだよ。状況はよくわかっている。これは命令でも脅しでもないよ? 唯一であり最善の提案だよ」

「ちょっと待て!」とアイが口を挟む。
「主語を言え。〔フリーダム〕ではないのか?」

「やあアイ殿。相変わらずクールビューティーだねぇ」

「フザケてないで答えろ!」

「もう一度言うよ? これは提案だ。キミたちやほくたちにとってウィンウィンのね。ぼくの提案を飲めば、ぼくたちはフリーダム以上の援助をヘッドフィールドへ約束しよう。つまり、主語は〔フリーダム〕ではない。いいかい? ぼくたちで新たな『真の自由』を実現する世界を作るのサ!!」

 マーリスが高笑いを上げた。どこまで気持ちがあってどこまで感情があるのか、まるで測定できない。奇怪なピエロを相手にしているのかと錯覚してくる。
 結局このドレッド男はなにを言っている?
 要するに、マーリスはキラースと組んだ造反にジェイズを巻き込んで勢力を拡大させようとしているのか?
 いずれにしても、ろくなもんじゃないのは間違いない。

「と・こ・ろ・で! キミが魔剣使いか」
 ついにマーリスが俺に絡んできた。
「いつから銀髪になったんだい?」

「やっぱりお前はあの時の男なんだな」

「いや〜まさか狂戦士殿と渡り合えるまでになっているとは、ぼくもビックリだねぇ。でも、おかげで確信したよ」

「なんの話だ?」

「キミ、やっぱり魔導書を持ってるでしょ?」

「!」

「じゃないとキミの特異な力と強さについて説明がつかない」

 マーリスの言葉にはたとした。
 正直、魔導書について忘れかけていたから。しかしコイツの言うとおり今の俺の力と強さを支えているのものの一つは魔導書だ。
 今の俺の力と強さは、おそらく〔魔導剣〕と〔魔導書〕と〔謎の声〕の三つが揃わなければ最大限発揮されない。

「あっ、いいこと思いついたよ!」
 唐突にマーリスが何かをひらめいてポンと手を打った。
「キミがぼくに魔導書をくれたら、ぼくはこの場から退いていいよ」

「ちょっ、マーリスさん!?」

 真っ先にキラースが驚いた。
 
「おいクロー。いったい何の話なんだ。まさかお前が魔導書を持っているのか?」
 カレンが思わず詰め寄ってきたが、
「カレン待って。きっとクローにも何か事情があるんだよ」
 それをエレサが制した。
 一同はなんとなく微妙な空気になる。
 だが、俺がマーリスに魔導書を渡す選択肢はない。もしそれをやったら、何かとてつもない不幸が起きそうな気がする。

「さあ、どうする? 早くしないと〜」

 マーリスが選択を迫ってきた。
 と同時に、遠くからも何かがドドドドッと迫ってくる音が聞こえた。

「ボス! なにかの大群がヘッドフィールドに近づいて来ています!」

 部下のギャングが遠くを見て叫んだ。

「あれは……サンドウルフの群れです!」

 気がつけば、狼のような魔物の大群がヘッドフィールドの街を縁取るようにわらわらと群がっていた。

「サンドウルフの群れだと!? なぜ一箇所にこんな大量の魔物が集まっている! 魔王軍はもういないのだぞ!?」

 カレンが血相を変えた。

「マーリス、テメェ……」
 ジェイズがにじり寄った。
「オレが魔剣使いと削り合うのを見越してたな」

「んん? いったいなんのハナシだい?」

「ヘッドフィールドがテメーやキラースの配下につくなんてオレが許すわけねえ。つまりテメーは、ハナっからヘッドフィールドを潰す気だったってわけか」

「だってさぁ? 狂戦士殿はとってもキケンな存在じゃん? 勇者軍ですら手を出さないんだから。それが魔剣使いと闘り合うっていうんだからさ、こーんなチャンスめったにないじゃん?」

 マーリスはけたけたと笑った。その横でキラースは実に愉快そうだ。
 コイツらの争いと俺は、直接的には関係ない。
 けど……実に気に入らないな。それなら俺のとるべき行動は。


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「やあやあ狂戦士殿。先日の会議ぶりだねぇ」
 マーリスは視線不明な眼を向けて軽妙に挨拶した。
「いったいテメーがなんの用だ。なぜキラースのクソヤロウと一緒に来やがった」
「オイオイそんな敵意を向けないでくれないか? ぼくたち仲間じゃないかぁ」
「それはテメー次第だな。さっさと用件を言いやがれ」
「じゃあズバリ言おう。ヘッドフィールドはぼくたちの配下に加わってもらう。どうかな?」
「意味がわかんねえな。オレはすでに〔フリーダム〕の幹部だが」
「違う違う違うよ〜。アナタの部下とこの街が、ぼくたちの配下になるってことサ」
「いい度胸じゃねえか。オレからヘッドフィールドを引っぺがそうってか? ブッ殺されたくなけりゃ、今なら謝るだけで勘弁してやる」
「じゃあ聞くよ? 本当に狂戦士殿はこれからも彼らを食わしていけるのカナ?」
「テメェ……」
「隠してもムダだよ。状況はよくわかっている。これは命令でも脅しでもないよ? 唯一であり最善の提案だよ」
「ちょっと待て!」とアイが口を挟む。
「主語を言え。〔フリーダム〕ではないのか?」
「やあアイ殿。相変わらずクールビューティーだねぇ」
「フザケてないで答えろ!」
「もう一度言うよ? これは提案だ。キミたちやほくたちにとってウィンウィンのね。ぼくの提案を飲めば、ぼくたちはフリーダム以上の援助をヘッドフィールドへ約束しよう。つまり、主語は〔フリーダム〕ではない。いいかい? ぼくたちで新たな『真の自由』を実現する世界を作るのサ!!」
 マーリスが高笑いを上げた。どこまで気持ちがあってどこまで感情があるのか、まるで測定できない。奇怪なピエロを相手にしているのかと錯覚してくる。
 結局このドレッド男はなにを言っている?
 要するに、マーリスはキラースと組んだ造反にジェイズを巻き込んで勢力を拡大させようとしているのか?
 いずれにしても、ろくなもんじゃないのは間違いない。
「と・こ・ろ・で! キミが魔剣使いか」
 ついにマーリスが俺に絡んできた。
「いつから銀髪になったんだい?」
「やっぱりお前はあの時の男なんだな」
「いや〜まさか狂戦士殿と渡り合えるまでになっているとは、ぼくもビックリだねぇ。でも、おかげで確信したよ」
「なんの話だ?」
「キミ、やっぱり魔導書を持ってるでしょ?」
「!」
「じゃないとキミの特異な力と強さについて説明がつかない」
 マーリスの言葉にはたとした。
 正直、魔導書について忘れかけていたから。しかしコイツの言うとおり今の俺の力と強さを支えているのものの一つは魔導書だ。
 今の俺の力と強さは、おそらく〔魔導剣〕と〔魔導書〕と〔謎の声〕の三つが揃わなければ最大限発揮されない。
「あっ、いいこと思いついたよ!」
 唐突にマーリスが何かをひらめいてポンと手を打った。
「キミがぼくに魔導書をくれたら、ぼくはこの場から退いていいよ」
「ちょっ、マーリスさん!?」
 真っ先にキラースが驚いた。
「おいクロー。いったい何の話なんだ。まさかお前が魔導書を持っているのか?」
 カレンが思わず詰め寄ってきたが、
「カレン待って。きっとクローにも何か事情があるんだよ」
 それをエレサが制した。
 一同はなんとなく微妙な空気になる。
 だが、俺がマーリスに魔導書を渡す選択肢はない。もしそれをやったら、何かとてつもない不幸が起きそうな気がする。
「さあ、どうする? 早くしないと〜」
 マーリスが選択を迫ってきた。
 と同時に、遠くからも何かがドドドドッと迫ってくる音が聞こえた。
「ボス! なにかの大群がヘッドフィールドに近づいて来ています!」
 部下のギャングが遠くを見て叫んだ。
「あれは……サンドウルフの群れです!」
 気がつけば、狼のような魔物の大群がヘッドフィールドの街を縁取るようにわらわらと群がっていた。
「サンドウルフの群れだと!? なぜ一箇所にこんな大量の魔物が集まっている! 魔王軍はもういないのだぞ!?」
 カレンが血相を変えた。
「マーリス、テメェ……」
 ジェイズがにじり寄った。
「オレが魔剣使いと削り合うのを見越してたな」
「んん? いったいなんのハナシだい?」
「ヘッドフィールドがテメーやキラースの配下につくなんてオレが許すわけねえ。つまりテメーは、ハナっからヘッドフィールドを潰す気だったってわけか」
「だってさぁ? 狂戦士殿はとってもキケンな存在じゃん? 勇者軍ですら手を出さないんだから。それが魔剣使いと闘り合うっていうんだからさ、こーんなチャンスめったにないじゃん?」
 マーリスはけたけたと笑った。その横でキラースは実に愉快そうだ。
 コイツらの争いと俺は、直接的には関係ない。
 けど……実に気に入らないな。それなら俺のとるべき行動は。