表示設定
表示設定
目次 目次




SCENE172 襲い来る衝撃たち

ー/ー



 横浜ダンジョンのダンジョンマスターであるセイレーンさんとの配信を翌日に控えたところで、僕のところに谷地さんが再びやってきた。どうしたんだろう。

「ああ、ウィンクさん。一つ言い忘れていたことがありました」

「なんですか?」

 谷地さんはハンカチを取り出して汗をぬぐいながら話しかけてくる。よっぽど慌てて来たみたいだ。

「未成年者、十八歳未満の方は、夜十時以降のダンジョンへの立ち入りと配信が禁止されているんですよ。すっかり忘れていました」

「ああっと、そういう法律あったっけか……」

 あまりに唐突なことに、僕はちょっとびっくりしている。
 一応、夜中の配信はしたことはなかったけれど、そんな法律があることは知らなかったよ。

「ですが、それはあくまでも探索者基準のお話ですので、現在ダンジョンマスターであるウィンクさんには適応されませんので、ご安心下さい」

「あっ、そうなんですね。よかった」

 谷地さんの話を聞いて、僕はほっとひと安心している。
 なんでも谷地さんがわざわざこのことを伝えに来たのは、視聴者さんたちからの指摘や通報に対して取り乱さないための対策なんだとか。
 確かに、知らずにいろいろやられては、僕は慌ててパニックになっていただろうからね。一応、僕はまだ十五歳だからなぁ。本当なら、今は高校受験を前に大忙しのはずなんだけど、ダンジョンマスターになった関係で、全部免除だよ。おかげで気が楽でいいや。

「しかし、本当は十五歳の少年というのは信じられませんよね。深夜に空ダンジョンに忍び込んで配信をしようとしてたなんて、本来なら罰金をたらふく食らうとこでしたよ?」

「あはっ、あははははは……」

 今さらながらに谷地さんに指摘されて、僕はただ笑うことしかできなかった。うん、本当に危なかった。
 まあ、そもそも高校生未満がダンジョンに入り込んだ時点でダンジョン管理法違反なんだけどね。あの時、僕を突き飛ばしていった同級生たちは、今頃借金地獄なんだろうなぁ……。

「ああ、ウィンクさんを突き飛ばした同級生たちなら、ご家族が罰金を払ってすでに罰則は終わっていますよ。ご家族にこってり怒られて、今はダンジョン関連の高校に入るために必死に頑張っているそうです」

「えっと、そうなんだ。やっぱり、それだけ家計に大ダメージが入ったってことなんですね」

「そういうことですね」

 ダンジョンマスターになったから笑えるところだけど、僕も中学生のままだったら、お父さんとお母さんと瞳にとんでもない迷惑をかけていたんだなって思う。うん、ダンジョンマスターになれてよかったよ……。
 そう思った僕は、ちらりとバトラーへと視線を向けた。
 僕の視線に気が付いたバトラーは、ちょっと得意げに笑みを浮かべていたよ。どうやら僕たちの会話が聞こえていたみたいだ。

「ああ、そうです。もうひとつお伝えしておきませんとね」

「なんですか?」

「横浜ダンジョンの方ですけど、あちらの配信機材の持ち主が十七歳だということが分かりましてね」

「ああ、そうだった。高志さんはまだ十七歳だった。それで、どうなったんですかね」

「配信をするメインがダンジョンマスターだからと、こちらも特例で許可が下りていますね。なので、明日は気兼ねなく、年越し配信を行っていただけます」

 谷地さんからの話を聞いて、僕はもう一度ほっと胸を撫で下ろしていた。
 ダンジョンにおける規制って、結構知らないことが多いんだなぁ。
 ついでに、十六歳未満の配信も法律違反なんだとか。そっか、今まで僕の配信がお咎めなしだったのは、ダンジョンマスターになったからなんだな。

「ウィンクさんの配信はずっとグレーゾーンでしたが、今回のことで正式に認められましたのでね、堂々と配信していただいて結構ですよ」

「はい、頑張りますね」

「なにせ、世界中が注目する配信ですからね」

「えっ、ええっ?!」

 なんか、谷地さんの口からとんでもない言葉が出て来たよ?
 いやなに、世界中が注目する配信って。僕、そんなの知らないけど?

「シュン、知らなかったのね」

「スピアさん?!」

 僕が言葉を失って驚いていると、スピアさんが声をかけてきた。

「マイボーイフレンドから連絡が来たわ。明日の配信のことを伝えたら、自分も視聴するって言っているわ。ボーイフレンドのいる場所は、三十一日の朝だから、モーニングコーヒーを飲みながら見るって」

「ぼ、ボーイフレンド?」

「おぅ、日本語でいうのなら彼氏っていうところね。こう見えても、私は結婚を控えているのよ」

「えっ、えええっ?!」

 僕は空いた口がふさがらなくなっていた。
 明日は大みそかだっていうのに、なんて爆弾発言をしてくれたんだろう。

「フィアンセがいてこんなバカな真似をしたのですか。迷惑が掛かるとか思わなかったのですかね」

「ぐっ……。そこを突かれると痛いわね。ソーリー、謝るわ」

 さすがはバトラー。戦いだけじゃなくて口論でも強い。僕も見習わなくちゃ。
 谷地さんはこのやり取りを見て、なんともいえない顔をしている。ってことは、スピアさんが何を言っているのか分かってるんだ。管理局の人は英語もできるんだな、すごい。

 横浜ダンジョンのセイレーンさんとの合同配信を前に、僕はとにかく衝撃を受けまくりだった。
 こんな精神状態で、明日大丈夫なのかぁ……。ちょっと不安になってしまうよ。
 谷地さんを見送った僕は、ちょっとだけ休ませてもらうことにした。


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む SCENE173 年末配信、最終チェック


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 横浜ダンジョンのダンジョンマスターであるセイレーンさんとの配信を翌日に控えたところで、僕のところに谷地さんが再びやってきた。どうしたんだろう。
「ああ、ウィンクさん。一つ言い忘れていたことがありました」
「なんですか?」
 谷地さんはハンカチを取り出して汗をぬぐいながら話しかけてくる。よっぽど慌てて来たみたいだ。
「未成年者、十八歳未満の方は、夜十時以降のダンジョンへの立ち入りと配信が禁止されているんですよ。すっかり忘れていました」
「ああっと、そういう法律あったっけか……」
 あまりに唐突なことに、僕はちょっとびっくりしている。
 一応、夜中の配信はしたことはなかったけれど、そんな法律があることは知らなかったよ。
「ですが、それはあくまでも探索者基準のお話ですので、現在ダンジョンマスターであるウィンクさんには適応されませんので、ご安心下さい」
「あっ、そうなんですね。よかった」
 谷地さんの話を聞いて、僕はほっとひと安心している。
 なんでも谷地さんがわざわざこのことを伝えに来たのは、視聴者さんたちからの指摘や通報に対して取り乱さないための対策なんだとか。
 確かに、知らずにいろいろやられては、僕は慌ててパニックになっていただろうからね。一応、僕はまだ十五歳だからなぁ。本当なら、今は高校受験を前に大忙しのはずなんだけど、ダンジョンマスターになった関係で、全部免除だよ。おかげで気が楽でいいや。
「しかし、本当は十五歳の少年というのは信じられませんよね。深夜に空ダンジョンに忍び込んで配信をしようとしてたなんて、本来なら罰金をたらふく食らうとこでしたよ?」
「あはっ、あははははは……」
 今さらながらに谷地さんに指摘されて、僕はただ笑うことしかできなかった。うん、本当に危なかった。
 まあ、そもそも高校生未満がダンジョンに入り込んだ時点でダンジョン管理法違反なんだけどね。あの時、僕を突き飛ばしていった同級生たちは、今頃借金地獄なんだろうなぁ……。
「ああ、ウィンクさんを突き飛ばした同級生たちなら、ご家族が罰金を払ってすでに罰則は終わっていますよ。ご家族にこってり怒られて、今はダンジョン関連の高校に入るために必死に頑張っているそうです」
「えっと、そうなんだ。やっぱり、それだけ家計に大ダメージが入ったってことなんですね」
「そういうことですね」
 ダンジョンマスターになったから笑えるところだけど、僕も中学生のままだったら、お父さんとお母さんと瞳にとんでもない迷惑をかけていたんだなって思う。うん、ダンジョンマスターになれてよかったよ……。
 そう思った僕は、ちらりとバトラーへと視線を向けた。
 僕の視線に気が付いたバトラーは、ちょっと得意げに笑みを浮かべていたよ。どうやら僕たちの会話が聞こえていたみたいだ。
「ああ、そうです。もうひとつお伝えしておきませんとね」
「なんですか?」
「横浜ダンジョンの方ですけど、あちらの配信機材の持ち主が十七歳だということが分かりましてね」
「ああ、そうだった。高志さんはまだ十七歳だった。それで、どうなったんですかね」
「配信をするメインがダンジョンマスターだからと、こちらも特例で許可が下りていますね。なので、明日は気兼ねなく、年越し配信を行っていただけます」
 谷地さんからの話を聞いて、僕はもう一度ほっと胸を撫で下ろしていた。
 ダンジョンにおける規制って、結構知らないことが多いんだなぁ。
 ついでに、十六歳未満の配信も法律違反なんだとか。そっか、今まで僕の配信がお咎めなしだったのは、ダンジョンマスターになったからなんだな。
「ウィンクさんの配信はずっとグレーゾーンでしたが、今回のことで正式に認められましたのでね、堂々と配信していただいて結構ですよ」
「はい、頑張りますね」
「なにせ、世界中が注目する配信ですからね」
「えっ、ええっ?!」
 なんか、谷地さんの口からとんでもない言葉が出て来たよ?
 いやなに、世界中が注目する配信って。僕、そんなの知らないけど?
「シュン、知らなかったのね」
「スピアさん?!」
 僕が言葉を失って驚いていると、スピアさんが声をかけてきた。
「マイボーイフレンドから連絡が来たわ。明日の配信のことを伝えたら、自分も視聴するって言っているわ。ボーイフレンドのいる場所は、三十一日の朝だから、モーニングコーヒーを飲みながら見るって」
「ぼ、ボーイフレンド?」
「おぅ、日本語でいうのなら彼氏っていうところね。こう見えても、私は結婚を控えているのよ」
「えっ、えええっ?!」
 僕は空いた口がふさがらなくなっていた。
 明日は大みそかだっていうのに、なんて爆弾発言をしてくれたんだろう。
「フィアンセがいてこんなバカな真似をしたのですか。迷惑が掛かるとか思わなかったのですかね」
「ぐっ……。そこを突かれると痛いわね。ソーリー、謝るわ」
 さすがはバトラー。戦いだけじゃなくて口論でも強い。僕も見習わなくちゃ。
 谷地さんはこのやり取りを見て、なんともいえない顔をしている。ってことは、スピアさんが何を言っているのか分かってるんだ。管理局の人は英語もできるんだな、すごい。
 横浜ダンジョンのセイレーンさんとの合同配信を前に、僕はとにかく衝撃を受けまくりだった。
 こんな精神状態で、明日大丈夫なのかぁ……。ちょっと不安になってしまうよ。
 谷地さんを見送った僕は、ちょっとだけ休ませてもらうことにした。