表示設定
表示設定
目次 目次




プロローグ

ー/ー



 春休み。
 この10日余りの短い期間で、平凡だった俺の生活は――いや、世界は一変した。

* * *

「――見たまえ! この空を!」

 空はもう、色を忘れていた。
 雲は形を捨てて、空を蝕んでいる。

プロローグ_01

「……まるで、終末のようだ」

 男にそう返した。


 男はもう、そこにはいなかった。

* * *

 白いエプロンと、舗装されたテニスコートに赤が滲む。

「……クソが」

 直撃は受けていない。
 致命傷ではない。まだ動ける。

「……いい気になんなよ」

プロローグ_02

 睨みつけながら、唇を噛む。
 痛みで少しだけ、意識がはっきりする。


 まだ、動ける。

* * *

「――わたしのこと、また、見つけてくれる?」

 混濁する意識の淵で、少女が笑った。
 陽だまりのような温かさ。
 そのすべてが、砂時計の砂のように指の隙間からこぼれ落ちていく。

 笑顔だったはずの彼女の顔が、モザイクのように崩れていく。


 誰だったか、もう、思い出せない。

* * *

 絶望の中、誰かが叫んでいる。
 顔を歪め、それでも相手に向かって中指を立てようとしているバカがいる。


 ――ああ、そうか。


 叫んでいたのは、俺だった。



スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 第1話:伝承のはじまり


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 春休み。
 この10日余りの短い期間で、平凡だった俺の生活は――いや、世界は一変した。
* * *
「――見たまえ! この空を!」
 空はもう、色を忘れていた。
 雲は形を捨てて、空を蝕んでいる。
「……まるで、終末のようだ」
 男にそう返した。
 男はもう、そこにはいなかった。
* * *
 白いエプロンと、舗装されたテニスコートに赤が滲む。
「……クソが」
 直撃は受けていない。
 致命傷ではない。まだ動ける。
「……いい気になんなよ」
 睨みつけながら、唇を噛む。
 痛みで少しだけ、意識がはっきりする。
 まだ、動ける。
* * *
「――わたしのこと、また、見つけてくれる?」
 混濁する意識の淵で、少女が笑った。
 陽だまりのような温かさ。
 そのすべてが、砂時計の砂のように指の隙間からこぼれ落ちていく。
 笑顔だったはずの彼女の顔が、モザイクのように崩れていく。
 誰だったか、もう、思い出せない。
* * *
 絶望の中、誰かが叫んでいる。
 顔を歪め、それでも相手に向かって中指を立てようとしているバカがいる。
 ――ああ、そうか。
 叫んでいたのは、俺だった。