表示設定
表示設定
目次 目次




【完結まで5話】第42話【セレネ編】イナンナ・クラッシュ!継承される意志と致命的な弱点

ー/ー



第42話【セレネ編】イナンナ・クラッシュ!継承される意志と致命的な弱点


「いい?二人とも。ここは魔法の波形が完全に管理されてる」

​中央都市の地下深く、そこは〝廃棄区画〟と呼ばれる光なき牢獄。
最新鋭の魔導監視カメラが回る中、三つの影が音もなく侵入していた。

「ボクの〝ハッキング〟でカメラを一時的にループさせるけど、保っても30秒だ。行くよ!」

​メルクリアが小型デバイスを壁の端子に突き刺すと、モニターの中の警備兵は〝異常なし〟の映像を見続け、現実の三人はその下を駆け抜ける。



メルクリア、セレネ、そしてイナンナの三人は、そこから清掃用の換気ダクトを伝い、内部へと潜入していく。

「ここから先は〝感応式センサー〟の地雷原だよ。ボクがハッキングで安全地帯を床に投影する」

​端末を叩くメルクリアの指先が、床に青い光のラインを描き出した。

「一歩でも外れたら、お陀仏だ。……セレネ、イナンナ、ボクの歩幅に合わせろ!」

​綱渡りのように進む三人。だが、その途中で不運にも、通路の向こうから警備用ロボットが巡回に現れた。

「……っ!メルクリア様、隠れる場所がありません!」

​焦燥に駆られるセレネの声に、メルクリアが険しい表情で応じる。

「計算外だ、感知されるまであと五秒!……戦うしかない!」

「では――下がっていてください」

​その時、一歩前に出たのはイナンナだった。
イナンナが背負った布包みを解くと、そこには巨大な魔導解体ハンマーが姿を現した。

「あの日から一日だって休まず鍛えてきたんです。テラさんに誓ったんです。次は必ず、守る側になるって!」

​かつてテラに助けられたあと、彼女は酒場の仕事の傍ら、旧市街の荒くれ者たちに混じって物理的な戦いの技術を叩き込んできたのだ。

「イナンナさん、来ます!」

​セレネの警告と同時に、イナンナは地を蹴った。

「はあああッ!!イナンナ・クラァァァッシュ!!」

​――ドゴォォォォォォンッ!!

​火花が散り、ロボットの首が物理的な衝撃でひしゃげる。
イナンナの動きは洗練された技ではないが、生きるために身につけた、執念の重みがあった。
かつての弱々しさは微塵もなく、その動きにはテラの荒々しさが乗り移っているようだった。

「やるね!……よし、この先のロックは〝政府関係者の生体認証〟が必要だ。……セレネ、例のブツを!」

「はい!脱出艇アルカに残っていた、政府高官の指紋データです!」

​メルクリアが事前に抽出していた擬似シリコンの指紋を読み取らせると、重厚な隔壁がゆっくりと解錠された。



その奥、悪臭と鉄錆の匂いが混じる最深部の檻に、その男はいた。
ボロを纏った熟練の鍛冶師、ゴブニュである。
彼はすでに用済みとされ、手枷すらも錆びついたまま放り出されていた。

「……ちっ。また政府の使いか。殺すなら早くしな」

​その投げやりな言葉に、セレネが必死に訴えかける。

「ゴブニュ様!私はテラ様の従者、セレネです。デウスエクスマキナの弱点を知るために来ました!」

​ゴブニュは〝テラ〟の名を聞くと、濁った瞳に僅かな光を宿した。

「……ああ、テラの従者か。久しぶりだな。アイツ、ついにあの〝欠陥品〟と出くわしたのか……」

ゆっくりと、その錆びついた首を動かして顔を上げた。手枷の鎖がコンクリートの床を擦り、不快な金属音を立てる。

「いいだろう、あのクソったれな神の玩具を壊す方法を教えてやる」

​身を起こしたゴブニュが、深いため息と共に重い口を開く。

「いいか。俺はあの神剣を打たされた時、わざと一つだけ〝致命的な弱点〟を仕込んでおいた」

「〝致命的な……弱点〟!?」

「……政府に襲われた時、ガイアセイバーの鞘につけた、俺の妹……クレーネの飾りがあったろう?」

その問いに、セレネの脳裏に鮮烈な記憶が蘇った。
あの火山の麓の工房で、クレーネが少し照れながら「〝おまじない〟です」と笑って嵌め込んだ、瑠璃色の小さな六角形。

「その飾りが、デウスエクスマキナの柄にある〝目〟に直接触れた瞬間、自己破壊プログラムが作動するよう設計してある」

「そんな……あの時の、クレーネ様の鞘の飾りが、鍵だったんですか!?」

​衝撃の事実に、セレネは息を呑んだ。
あの日、テラのデタラメな腕力を支えるために付けられた〝おまじない〟が、時を経て世界を救う唯一の楔(くさび)に変わったのだ。

「俺の妹、クレーネは……俺の命を人質に取られ、今もセンターの心臓部でデウスエクスマキナのメンテナンスを強制させられている」

ゴブニュの表情に、先程まで見せていた偏屈な頑固さが消え、ただ一人の兄としての痛々しいまでの歪みが走った。

「……あの剣は、妹の魔力を吸い上げて動いているんだ」

​ゴブニュは錆びた檻を強く掴み、血を吐くような思いでセレネを見つめた。

「頼む……!剣を壊し、妹を……クレーネを助けてやってくれ!あんな地獄から、連れ出してやってくれ!!」

​その悲痛な叫びに、セレネは深く頷いた。

「……約束します。テラ様とアレス様、そしてクレーネ様も。全員を救い出し、この偽りの世界を終わらせます!」

「決まりだね。……さあ、脱出するよ!」

メルクリアが不敵に笑い、出口を指差す。

「公開処刑の日、ボクたちの〝バグ〟を、最高の舞台でぶちかましてやる!」






スタンプを贈って作者を応援しよう!



みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



第42話【セレネ編】イナンナ・クラッシュ!継承される意志と致命的な弱点
「いい?二人とも。ここは魔法の波形が完全に管理されてる」
​中央都市の地下深く、そこは〝廃棄区画〟と呼ばれる光なき牢獄。
最新鋭の魔導監視カメラが回る中、三つの影が音もなく侵入していた。
「ボクの〝ハッキング〟でカメラを一時的にループさせるけど、保っても30秒だ。行くよ!」
​メルクリアが小型デバイスを壁の端子に突き刺すと、モニターの中の警備兵は〝異常なし〟の映像を見続け、現実の三人はその下を駆け抜ける。
メルクリア、セレネ、そしてイナンナの三人は、そこから清掃用の換気ダクトを伝い、内部へと潜入していく。
「ここから先は〝感応式センサー〟の地雷原だよ。ボクがハッキングで安全地帯を床に投影する」
​端末を叩くメルクリアの指先が、床に青い光のラインを描き出した。
「一歩でも外れたら、お陀仏だ。……セレネ、イナンナ、ボクの歩幅に合わせろ!」
​綱渡りのように進む三人。だが、その途中で不運にも、通路の向こうから警備用ロボットが巡回に現れた。
「……っ!メルクリア様、隠れる場所がありません!」
​焦燥に駆られるセレネの声に、メルクリアが険しい表情で応じる。
「計算外だ、感知されるまであと五秒!……戦うしかない!」
「では――下がっていてください」
​その時、一歩前に出たのはイナンナだった。
イナンナが背負った布包みを解くと、そこには巨大な魔導解体ハンマーが姿を現した。
「あの日から一日だって休まず鍛えてきたんです。テラさんに誓ったんです。次は必ず、守る側になるって!」
​かつてテラに助けられたあと、彼女は酒場の仕事の傍ら、旧市街の荒くれ者たちに混じって物理的な戦いの技術を叩き込んできたのだ。
「イナンナさん、来ます!」
​セレネの警告と同時に、イナンナは地を蹴った。
「はあああッ!!イナンナ・クラァァァッシュ!!」
​――ドゴォォォォォォンッ!!
​火花が散り、ロボットの首が物理的な衝撃でひしゃげる。
イナンナの動きは洗練された技ではないが、生きるために身につけた、執念の重みがあった。
かつての弱々しさは微塵もなく、その動きにはテラの荒々しさが乗り移っているようだった。
「やるね!……よし、この先のロックは〝政府関係者の生体認証〟が必要だ。……セレネ、例のブツを!」
「はい!脱出艇アルカに残っていた、政府高官の指紋データです!」
​メルクリアが事前に抽出していた擬似シリコンの指紋を読み取らせると、重厚な隔壁がゆっくりと解錠された。
その奥、悪臭と鉄錆の匂いが混じる最深部の檻に、その男はいた。
ボロを纏った熟練の鍛冶師、ゴブニュである。
彼はすでに用済みとされ、手枷すらも錆びついたまま放り出されていた。
「……ちっ。また政府の使いか。殺すなら早くしな」
​その投げやりな言葉に、セレネが必死に訴えかける。
「ゴブニュ様!私はテラ様の従者、セレネです。デウスエクスマキナの弱点を知るために来ました!」
​ゴブニュは〝テラ〟の名を聞くと、濁った瞳に僅かな光を宿した。
「……ああ、テラの従者か。久しぶりだな。アイツ、ついにあの〝欠陥品〟と出くわしたのか……」
ゆっくりと、その錆びついた首を動かして顔を上げた。手枷の鎖がコンクリートの床を擦り、不快な金属音を立てる。
「いいだろう、あのクソったれな神の玩具を壊す方法を教えてやる」
​身を起こしたゴブニュが、深いため息と共に重い口を開く。
「いいか。俺はあの神剣を打たされた時、わざと一つだけ〝致命的な弱点〟を仕込んでおいた」
「〝致命的な……弱点〟!?」
「……政府に襲われた時、ガイアセイバーの鞘につけた、俺の妹……クレーネの飾りがあったろう?」
その問いに、セレネの脳裏に鮮烈な記憶が蘇った。
あの火山の麓の工房で、クレーネが少し照れながら「〝おまじない〟です」と笑って嵌め込んだ、瑠璃色の小さな六角形。
「その飾りが、デウスエクスマキナの柄にある〝目〟に直接触れた瞬間、自己破壊プログラムが作動するよう設計してある」
「そんな……あの時の、クレーネ様の鞘の飾りが、鍵だったんですか!?」
​衝撃の事実に、セレネは息を呑んだ。
あの日、テラのデタラメな腕力を支えるために付けられた〝おまじない〟が、時を経て世界を救う唯一の楔(くさび)に変わったのだ。
「俺の妹、クレーネは……俺の命を人質に取られ、今もセンターの心臓部でデウスエクスマキナのメンテナンスを強制させられている」
ゴブニュの表情に、先程まで見せていた偏屈な頑固さが消え、ただ一人の兄としての痛々しいまでの歪みが走った。
「……あの剣は、妹の魔力を吸い上げて動いているんだ」
​ゴブニュは錆びた檻を強く掴み、血を吐くような思いでセレネを見つめた。
「頼む……!剣を壊し、妹を……クレーネを助けてやってくれ!あんな地獄から、連れ出してやってくれ!!」
​その悲痛な叫びに、セレネは深く頷いた。
「……約束します。テラ様とアレス様、そしてクレーネ様も。全員を救い出し、この偽りの世界を終わらせます!」
「決まりだね。……さあ、脱出するよ!」

メルクリアが不敵に笑い、出口を指差す。
「公開処刑の日、ボクたちの〝バグ〟を、最高の舞台でぶちかましてやる!」