第6話 Insel Wurzel

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ー王都マーツェ

 マーツェの町はインゼルヴルツェル王国の王都であるが故、この辺りで最も栄えた都市だ。因みにドイツ語でインゼルは島、ヴルツェルは根を表す。俺の故郷、島根県が由来で島根の県庁所在地が松江。マーツェというわけだ。

「ノブオさん、ここまで来れば安全よ」

 町の中央広場でマナフレアが言う。高橋李依みたいな可愛い声だ。

「助けていただいた上に、町まで送って下さり、ありがとうございます。それに靴も……」

「靴はドロップアイテムをたまたま持っていただけだ。気にするな」

 と、ジークハルトは諏訪部順一みたいな声で。あとドロップアイテム言うな。

「そうだ。ノブオさん、これも受け取って下さい」

 福山潤みたいな声で、アルフレッドが小さな巾着状の布袋を俺に手渡す。中身は硬貨じゃないか。

「2000ゴーラムあります。それだけあれば何とかなるでしょう」

 この世界の通貨ゴーラム。ドラクエのゴールドとロマサガ3のオーラムを適当にパクっ た通貨単位だ。中学生の俺が付けるネーミングはイタいかパクリかのどっちかだな。

「ありがとうございます!勇者様!!」

 涙を流す俺。アルフレッド達の優しさに感動したのと、かつての俺の考えた設定の痛恥ずかしさ、両方に流す涙だった。

「無駄遣いするんじゃねえメカよ!」

 と、ペトルーシュカが俺の背中を叩く。そんなこんなで勇者一行とはお別れだ。



 そして俺は一人、街をうろつく事になった。しかし異世界転生したはいいが、チート能力どころかモンスターと戦う(すべ)すら持っておらず、あまつさえ昔の自分が考えた設定の恥ずかしさで死にそうになるなんて。俺は途方に暮れるしかなかった。

「これこれ、そこなお方。人生に行き詰まっておるようじゃな。どれ、わしが占ってしんぜよう」

 と、路地に簡素な店を構えた占い師が俺に声を掛けてきた。顔はフードで隠して見えないが、口調からして爺さんだろうか?

「悪いな爺さん。俺、金持ってねえんだ」

 アルフレッドからもらった金は貴重な全財産だ。こんな胡散臭いじじいに使うわけにはいかない。

「金なら先ほど勇者から2000ゴーラム貰ったじゃろう」

「!?」

 何でそれを知っているんだ!占い師だから?

「なんてな。冗談だよ、いいから来な。

 占い師は口調を変えた。この杉田智和みたいな声に聞き覚えがある。そして流暢な日本語の発音で俺のフルネームを呼ぶなんて、心当たりのある奴はただ一人だ。俺は占い師に近づく。

「やはりお前か……ヤンセ・ライマン!!」

 ピンク色の髪をした男、ヤンセはニヤリと笑った。


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ー王都マーツェ
 マーツェの町はインゼルヴルツェル王国の王都であるが故、この辺りで最も栄えた都市だ。因みにドイツ語でインゼルは島、ヴルツェルは根を表す。俺の故郷、島根県が由来で島根の県庁所在地が松江。マーツェというわけだ。
「ノブオさん、ここまで来れば安全よ」
 町の中央広場でマナフレアが言う。高橋李依みたいな可愛い声だ。
「助けていただいた上に、町まで送って下さり、ありがとうございます。それに靴も……」
「靴はドロップアイテムをたまたま持っていただけだ。気にするな」
 と、ジークハルトは諏訪部順一みたいな声で。あとドロップアイテム言うな。
「そうだ。ノブオさん、これも受け取って下さい」
 福山潤みたいな声で、アルフレッドが小さな巾着状の布袋を俺に手渡す。中身は硬貨じゃないか。
「2000ゴーラムあります。それだけあれば何とかなるでしょう」
 この世界の通貨ゴーラム。ドラクエのゴールドとロマサガ3のオーラムを適当にパクっ た通貨単位だ。中学生の俺が付けるネーミングはイタいかパクリかのどっちかだな。
「ありがとうございます!勇者様!!」
 涙を流す俺。アルフレッド達の優しさに感動したのと、かつての俺の考えた設定の痛恥ずかしさ、両方に流す涙だった。
「無駄遣いするんじゃねえメカよ!」
 と、ペトルーシュカが俺の背中を叩く。そんなこんなで勇者一行とはお別れだ。
 そして俺は一人、街をうろつく事になった。しかし異世界転生したはいいが、チート能力どころかモンスターと戦う術《すべ》すら持っておらず、あまつさえ昔の自分が考えた設定の恥ずかしさで死にそうになるなんて。俺は途方に暮れるしかなかった。
「これこれ、そこなお方。人生に行き詰まっておるようじゃな。どれ、わしが占ってしんぜよう」
 と、路地に簡素な店を構えた占い師が俺に声を掛けてきた。顔はフードで隠して見えないが、口調からして爺さんだろうか?
「悪いな爺さん。俺、金持ってねえんだ」
 アルフレッドからもらった金は貴重な全財産だ。こんな胡散臭いじじいに使うわけにはいかない。
「金なら先ほど勇者から2000ゴーラム貰ったじゃろう」
「!?」
 何でそれを知っているんだ!占い師だから?
「なんてな。冗談だよ、いいから来な。《《佐藤信雄》》」
 占い師は口調を変えた。この杉田智和みたいな声に聞き覚えがある。そして流暢な日本語の発音で俺のフルネームを呼ぶなんて、心当たりのある奴はただ一人だ。俺は占い師に近づく。
「やはりお前か……ヤンセ・ライマン!!」
 ピンク色の髪をした男、ヤンセはニヤリと笑った。