プロローグ
ー/ー□□□□□□□□□□□□
昔々。このグラディウス大陸中の国々がまだ戦争をくりかえしていた頃。ある小さな町の天使教会に、魔物退治を任されたふたりの女の子がいました。
ひとりは剣士
ひとりは魔法使い
ふたりはいつも一緒で、どんな時も助け合って町のまわりに出てくる魔物を倒していました。その強さは、魔物から守られている町中の人達が知っています。やがてその評判は、国中の人々の噂になりました。
ふたりは緑の屋根が連なる町を守っていたことから、「緑の退魔師」と呼ばれていました。
噂は王様の耳に届き、緑の退魔師は王都に招かれました。腕試しに戦ったお城の兵士20人も相手になりません。そこで王様は、隣の国との戦争に緑の退魔師を送り出しました。
勝ったり負けたりをくりかえしていた戦場は、緑の退魔師が到着すると、毎回大勝利をおさめるようになりました。
そこで王様はもっと多くの戦いで勝つために、ふたりを別々の戦場に送り出しました。
ところが、今まで助け合って戦ってきていたふたりは、ひとりずつになるとうまく戦えませんでした。
剣士が戦場で倒れ、魔法使いは姿を消しました。
戦場はまた勝ったり負けたりをくりかえすようになり、王様はふたりを別々にしたことを後悔しました。
隣の国との戦争も、いよいよ大きな決戦の時を迎えた日。
広大なディールの丘に、ふたつの国の戦陣がひろがっていました。
開戦の合図とともに、雷鳴が轟き、空を覆うほど大きな魔物が現れました。
鹿の角に大きな目、ほりの深い虎のような顔立ち、細長い硬質の髭。蛇に似た硬質の鱗をもつ身体に、鋭い爪を持つ前脚。
そしてその背中には、緑の退魔師の魔法使いがいました。
魔物は戦争の陣を薙ぎ払い、滝のような雨が降り続き、広野は一晩で洪水に沈みました。
戦争をしていたふたつの国は、決戦の戦場にいた王様を失いました。王都にも洪水が押し寄せて、ふたつの国は水に沈んでしまいました。
それからというもの
戦いの場所には、必ず魔物が現れます。
大きな戦いの場所には、洪水が起こるようになりました。
まわりの国々も同じ事に悩まされ、やがて魔物と洪水の被害を避けるように、色々な場所でくりかえしていた戦争は、だんだんとなくなっていきました。
水に沈んだふたつの国の洪水のあとは、水が渇くことはなく、広大な湖沼地帯になりました。
そこは、魔物がいつでも発生する危険な場所。
そこにはいまでも、最初の洪水があった時に魔物と一緒にいた、緑の退魔師の魔法使いがいます。
戦いの場には魔物を遣わせ、大きな戦いの場には洪水をおこす、災厄の魔法使い。
やがて、人々は彼女をこう呼ぶようになりました。
『世界を支配する魔女』―――と。
□□□
「師匠、人は死んだらどこに行くの?」
「んー、お星様になるんだよっていうのが、昔々からの定番かしらね」
「この空いっぱいの、星?」
「そう。だからいつでも一緒ってこと」
「でも、遠いよ。そんなの嫌」
「そうねぇ……でも、100年……300年先に流れ星は落ちてくるから、また会えるわよ」
「師匠は、また会えたことがあるの?」
「ええ。だから、元気だして。私の可愛い魔法使いさん」
「……師匠がそう言うなら……。私も、流れ星を待つよ」
「瞬く時の先に、あなたの望む未来がある。星降る空の先に、あなたの望む命がある。…………迷わず行きなさい。あなたの存在をかたどるものは、あなたの魂、そのままなのだから」
「……ありがとう。師匠」
□□□
星を見上げ続けた魔女は長い時間に飽きて、別の人間として世界に紛れることにしました。
記憶を封じ、性別も変え、普通の人間として生きる時間。
でもその間に、待ち望んだ流れ星はすぐ近くに落ちてきていました。遠くない未来、魔女を倒すことになる、少年の姿をして。
偽りと気紛れの人生をおくる魔女。
試練を乗り越え強くなる聖女。
巡り落ちた流れ星の勇者。
ここから先は、新しい物語がはじまります。
昔々。このグラディウス大陸中の国々がまだ戦争をくりかえしていた頃。ある小さな町の天使教会に、魔物退治を任されたふたりの女の子がいました。
ひとりは剣士
ひとりは魔法使い
ふたりはいつも一緒で、どんな時も助け合って町のまわりに出てくる魔物を倒していました。その強さは、魔物から守られている町中の人達が知っています。やがてその評判は、国中の人々の噂になりました。
ふたりは緑の屋根が連なる町を守っていたことから、「緑の退魔師」と呼ばれていました。
噂は王様の耳に届き、緑の退魔師は王都に招かれました。腕試しに戦ったお城の兵士20人も相手になりません。そこで王様は、隣の国との戦争に緑の退魔師を送り出しました。
勝ったり負けたりをくりかえしていた戦場は、緑の退魔師が到着すると、毎回大勝利をおさめるようになりました。
そこで王様はもっと多くの戦いで勝つために、ふたりを別々の戦場に送り出しました。
ところが、今まで助け合って戦ってきていたふたりは、ひとりずつになるとうまく戦えませんでした。
剣士が戦場で倒れ、魔法使いは姿を消しました。
戦場はまた勝ったり負けたりをくりかえすようになり、王様はふたりを別々にしたことを後悔しました。
隣の国との戦争も、いよいよ大きな決戦の時を迎えた日。
広大なディールの丘に、ふたつの国の戦陣がひろがっていました。
開戦の合図とともに、雷鳴が轟き、空を覆うほど大きな魔物が現れました。
鹿の角に大きな目、ほりの深い虎のような顔立ち、細長い硬質の髭。蛇に似た硬質の鱗をもつ身体に、鋭い爪を持つ前脚。
そしてその背中には、緑の退魔師の魔法使いがいました。
魔物は戦争の陣を薙ぎ払い、滝のような雨が降り続き、広野は一晩で洪水に沈みました。
戦争をしていたふたつの国は、決戦の戦場にいた王様を失いました。王都にも洪水が押し寄せて、ふたつの国は水に沈んでしまいました。
それからというもの
戦いの場所には、必ず魔物が現れます。
大きな戦いの場所には、洪水が起こるようになりました。
まわりの国々も同じ事に悩まされ、やがて魔物と洪水の被害を避けるように、色々な場所でくりかえしていた戦争は、だんだんとなくなっていきました。
水に沈んだふたつの国の洪水のあとは、水が渇くことはなく、広大な湖沼地帯になりました。
そこは、魔物がいつでも発生する危険な場所。
そこにはいまでも、最初の洪水があった時に魔物と一緒にいた、緑の退魔師の魔法使いがいます。
戦いの場には魔物を遣わせ、大きな戦いの場には洪水をおこす、災厄の魔法使い。
やがて、人々は彼女をこう呼ぶようになりました。
『世界を支配する魔女』―――と。
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「師匠、人は死んだらどこに行くの?」
「んー、お星様になるんだよっていうのが、昔々からの定番かしらね」
「この空いっぱいの、星?」
「そう。だからいつでも一緒ってこと」
「でも、遠いよ。そんなの嫌」
「そうねぇ……でも、100年……300年先に流れ星は落ちてくるから、また会えるわよ」
「師匠は、また会えたことがあるの?」
「ええ。だから、元気だして。私の可愛い魔法使いさん」
「……師匠がそう言うなら……。私も、流れ星を待つよ」
「瞬く時の先に、あなたの望む未来がある。星降る空の先に、あなたの望む命がある。…………迷わず行きなさい。あなたの存在をかたどるものは、あなたの魂、そのままなのだから」
「……ありがとう。師匠」
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星を見上げ続けた魔女は長い時間に飽きて、別の人間として世界に紛れることにしました。
記憶を封じ、性別も変え、普通の人間として生きる時間。
でもその間に、待ち望んだ流れ星はすぐ近くに落ちてきていました。遠くない未来、魔女を倒すことになる、少年の姿をして。
偽りと気紛れの人生をおくる魔女。
試練を乗り越え強くなる聖女。
巡り落ちた流れ星の勇者。
ここから先は、新しい物語がはじまります。
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