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第1幕 その5

ー/ー



 魂だけとなった幽体の俺は徐々に加速しながら山の向こうの煙の見えた方向を目指していくがなぜ急に反転するといつの間にか景色が変わって山岳地帯のようになっているその岩色の道なき道を行き始めた。
 ≪疾走中≫は上手く制御できたためしがない考えている間にも俺の幽体は音もなくふわふわ前進していくがやはり≪疾走中≫なんだろう幽体の浮遊速度が上っていくのがわかる――と思った瞬間ばびゅ~んと効果音でも付ければいいのかとにかく投げられたように幽体が空へ空へと落ちていく。
 さすがに目を開けそうになったがどうにか留めて俺は閉眼幻覚に飲まれていく。
 宙に浮いている。高度数十メートル。幽体の俺は下に広がる街を見ている。浜松市。シンボルのアクトタワーも見える。幻覚にしても凄い処理能力だ。現行ゲーム機の二世代は上を行っていそうだ。
 ――と。パシャッと目の前が瞬いた。終われば眼下の浜松駅周辺にぽっかり穴が開いてなぜか中心には古めかしいタバコ屋ができている。
 パシャパシャッ――明滅するような幻覚、≪ストロボ≫と呼ばれる現象だ。目まぐるしく風景の一部ががテンポよく変化していく。眼下の街並みは今やスイカと大根に支配されている。ハイなのかそんな景色さえ楽しく心地よい。
 しばしそんなストロボを楽しんでいるとどうにも耳鳴りがしてきた。十中八九ODによる幻聴だ。ごぉ~という風のような低い音が右耳へと流れ込んでくるようなイメージだ。
 少し安心しすぎた突如始まる落下対処のしようがない閉眼幻覚のなすままになる。



 ごぉ~。ごぉ~。

 既に先ほどまでの改変された浜松市ではなかった。どこか場所はわからないがコンクリート壁と薄明かりに照らされた電話ボックスだった。
 これがゲームなら電波ボックスを調べたいところだが、あいにく肉体のない幽体ときてるからすーっとすり抜けちゃうんだよな経験上だけど。
 そうこうしていると右の耳鳴りがひどくなってくる。ごぉ~ごぉ~。どっどっどっど。男の低い声のような音も交じり出す。右から何から流れてくる――それは血管を顕微鏡で見たような蠢く管でとぐろを巻きながら俺を取り込んでいく。

 ごぉ~。どっどっど。

 意識が液体になる。そして胎動する管になった俺の脳内を直撃する轟音。幻聴。頭骨にこだまする。

 管になっている。ある奔流になっている。轟音の幻聴とともに流れていく。

 リミッターが外れた感覚。

 

 S

 E

 KAIが

 

 散

 拡大

(張)

 するの

  を

 るzI感

 

 俺俺→俺俺俺→俺俺俺俺俺≒俺俺俺俺

     俺       俺

 どっどっ俺どっどっどどど俺俺

 俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺≒俺俺俺俺

 ↓↓↓↓↑↑↑↑↑↑           ↑↑↑

 俺俺俺俺俺俺俺どどど俺俺俺俺→←俺――←(泣≒声)――→→→

                      ↓↓↓

 ん? 泣き声? 振り返るが何もない。

 奔流はスピードを速め上昇を始める。キーンと耳鳴りが響きそれに呼応するように体のあちこちがピクピクと痙攣した。
 幻聴がもはや雷鳴のように響き渡る中、宙へと昇っていく俺。あるいは落ちていく俺。

 視界を黒い宙が支配し始める。そろそろ大気圏か。

 ってところで哀れにも俺はSEKAIの膜に阻まれて昔のディズニーアニメみたいに無様に気を失ったのだった。

 七月八日。月曜日。

 珍しく朝早く起きてスマホを手に取る。

 昨日は都知事選だった。勝ったのは小池百合子。今日もXは各候補のディスりからアゲまで賑わっていた。

 祭りだなと思う。いや政か?

 誰もが自分を信じて疑わない。そんなツイートを胡乱な頭で見ていたらちょっとだけ祭りに参加したくなった。基本的に俺はノンポリでこういったことにはかかずらわない。

 だがふと思う。ツイートしたらどんな気持ちになるだろう。このビッグウエーブに乗るしかない。

 どうしたもんかと考えながら朝の返信をしていると、フレンドからのLINEに蓮舫の画像が送られてきていた。何やらRのシールが話題となっているのは知っていたが詳しくは知らない。

 ちょっと閃いた。

 TikToKに上げているぬいぐるみ動画に使えそうだ。

 「狼少年の母親の狼婆さんは思想とシャツが左に偏っているね! お兄ちゃん! LeftなのにRなんだね!」

 自分で書きながら笑ってしまう。これは良いディスり、いや風刺と呼べるレベルじゃないのか?

 ニヤニヤしながら俺はXとTikToKに上げることにする。たまにはこういうのも良いだろう。なんだか自分が偉くなったような気分だ。過激なツイートを垂れ流すやつの気持ちが少しわかった気がした。

 すぐさまいいねが付き俺はご満悦で朝の支度を済ませたのだった。

 昼間近、メメ子との約束の場所へ向かう。しかしXもリアルの温度も暑いなと思いながら、指定された新浜松駅に併設されているH&Mの店裏に歩を進めた。

 路地裏というかちょうど建物の陰になっていて涼しい。日陰者が日陰にいるのかと自虐的な考えが浮かぶ。

 メメ子はまだ来ていないようだ――と思ったら、

「堂島さーん!」

 後ろから声を掛けられた。二人とも良いタイミングだったな。

「おはよー」と手を振りながら近づいてくるメメ子にコンビニで買ってきたガリガリ君ソーダ味を渡す。

「ガリガリ君だー」

 餌を目の前にした子犬みたいにメメ子は目を見開いてガリガリ君を素早く受け取ると、すぐにかぶりついた。

「んまー」

「百円で買える幸せや」そう言いながら俺も自分の分を食べることにする。

 ついでに手を差し出して包装の袋をよこせとジェスチャーする。

「あんがとねー」

「おけおけ」

 俺もガリガリ君を頬張りながら、そういえばメメ子の木のバーはどうしようと考える。舐めたのを触れるのはなんだか躊躇われた。ティッシュで巻いてもらえばいっか。

 一息ついてメメ子に目を合わせる。縄の痕はなかった。ただリスカ痕に気づく。そういうことなのだろう。俺もメメ子も両手が不幸と孤独と傷で一杯なのだ。そしてその傷の何倍も心は傷付いている。

 リスカ痕から無言の悲鳴が聴こえてくるような気がした。心の奥のハートに巻いた包帯のその隙間から。 

「あー涼しくなったー」

「良き良き」

 適当に相槌をうちながら、さてどうしたもんかと残り半分のガリガリ君をガリガリ食べる。

「堂島さん聞かないよねー?」

「んーまあね」

 確かに俺は何も聞いていない。なぜ首吊りを試みたのか、そして失敗し大喜びだった理由を。

「そういうのいいと思うー」

 選択は正しかったらしい。俺は現場猫の真似をしながら「ヨシ!」と答えた。

「ホント好きだねぇー」

「画像フォルダほぼ現場猫だぜ」

「えー見して見してー」

 乞われたのでとりあえず有名なデーモンコアとのコラ画像を見せる。

「あははー草ー」

「どうして・・・・・・どうして・・・・・・」

 ちょっとふざけて返す。しかし表情がコロコロ変わる子だな。

「あーこれかわいいー」

「これはどう?」

「おおー」

 しばらくそんなやり取りをしていると、

「あ、そだーお礼」

「ん?」

「ご飯おごるよー」

「ま?」

「まー!」

 ガリガリ君持ってきたのはちょい失敗だったか。そこまで考えてなかった。馬鹿でありがとう俺。反省しろ俺。

「米がいいな」

「日本人だねー」

「確かとろろのお店なかった? 駅中のメイワンの上のほうに」

「あるねー谷島屋の下の階かなー」

 JR浜松駅には商業施設が隣接している。デパ地下もあるがその上層階には書店の谷島屋とその階下には飲食店が軒を連ねている。

「ちょい高いかもだけど」

「えー全然いいよーP活してきたし」

 資本主義社会で生きる女はとかく大変だ。オシャレにスイーツに何かと金がかかる。村上龍や岡崎京子の作品のように。未読だが。

「知り合いはパンツ売りガチ勢」再びヨシしながら告げる。

「えーすごー」

「なんかローションと塩混ぜて塗るらしいわ」

「はえーすっごいー」

 中々に凄い会話だがここは表通りから離れている。誰にも聞こえないだろう。

「ワイちゃんも売ろうかな?」

「相場っていくらぐらいなんかね」

「Temuかアリエクで安いの買って売ればワイちゃんワンチャン?」

「まあ気を付けてね」

「りょー」とヨシしながらメメ子が言う。悪くないと思った。

「あ、先に谷島屋行っていい?」思い出したようにメメ子が言った。

「ええで」

「ジョジョ買う!」そう言ってジョジョ立ちを決めるメメ子。これは何巻のやつだったかな。承太郎だっけか。

「七部までは読んでる」

「ワイちゃん今四部! 承太郎かっこいいよねー」

「それな」確か現場猫コラにもあったはずだ、オラオラではなくヨシヨシしてる画像が。

 素早くフォルダからそれを見つけるとメメ子に見せた。

「あははかわいいーそれ送ってー」

「じゃDMするわ」

 そんなこんなでJR浜松駅へと二人で向かう。日陰を出た瞬間から焼き付くような太陽光だ。太陽元気すぎだろ。寒冷期に向かってる説は何なんだ。

 汗一つかかないメメ子をしり目に一人呪う。女の子て謎よな。

 駅に着きエレベーターで七階へ行こうと思ったが、少し混んでいた。

「エスカレーターにする?」

「そだねー」

 先導し小さなエスカレーターに乗っていく。

「ジョジョどこまで読んだ?」

「えっと今鉄塔のやつ倒したとこー」

 あれか。水曜日のダウンタウンでやってたなあと思いながら好きなキャラを聞く。

「やっぱり承太郎様」

「強くて頭切れるのええよなあ」

「時間止めたときマジ震えたよー」

「俺はジョセフ推し」

「ジョセフも良いよね!」

「アニメ見た?」

「見た見たー」

 割と打ち解けたと言えるだろう。エスカレーターの上でジョジョ立ちを決めるメメ子を微笑ましく思いながら昇っていく。

 平日だというのに若い子を見かける。学校はどうしたのだろう。俺にはKANKEIないが。


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 ≪疾走中≫は上手く制御できたためしがない考えている間にも俺の幽体は音もなくふわふわ前進していくがやはり≪疾走中≫なんだろう幽体の浮遊速度が上っていくのがわかる――と思った瞬間ばびゅ~んと効果音でも付ければいいのかとにかく投げられたように幽体が空へ空へと落ちていく。
 さすがに目を開けそうになったがどうにか留めて俺は閉眼幻覚に飲まれていく。
 宙に浮いている。高度数十メートル。幽体の俺は下に広がる街を見ている。浜松市。シンボルのアクトタワーも見える。幻覚にしても凄い処理能力だ。現行ゲーム機の二世代は上を行っていそうだ。
 ――と。パシャッと目の前が瞬いた。終われば眼下の浜松駅周辺にぽっかり穴が開いてなぜか中心には古めかしいタバコ屋ができている。
 パシャパシャッ――明滅するような幻覚、≪ストロボ≫と呼ばれる現象だ。目まぐるしく風景の一部ががテンポよく変化していく。眼下の街並みは今やスイカと大根に支配されている。ハイなのかそんな景色さえ楽しく心地よい。
 しばしそんなストロボを楽しんでいるとどうにも耳鳴りがしてきた。十中八九ODによる幻聴だ。ごぉ~という風のような低い音が右耳へと流れ込んでくるようなイメージだ。
 少し安心しすぎた突如始まる落下対処のしようがない閉眼幻覚のなすままになる。
 ごぉ~。ごぉ~。
 既に先ほどまでの改変された浜松市ではなかった。どこか場所はわからないがコンクリート壁と薄明かりに照らされた電話ボックスだった。
 これがゲームなら電波ボックスを調べたいところだが、あいにく肉体のない幽体ときてるからすーっとすり抜けちゃうんだよな経験上だけど。
 そうこうしていると右の耳鳴りがひどくなってくる。ごぉ~ごぉ~。どっどっどっど。男の低い声のような音も交じり出す。右から何から流れてくる――それは血管を顕微鏡で見たような蠢く管でとぐろを巻きながら俺を取り込んでいく。
 ごぉ~。どっどっど。
 意識が液体になる。そして胎動する管になった俺の脳内を直撃する轟音。幻聴。頭骨にこだまする。
 管になっている。ある奔流になっている。轟音の幻聴とともに流れていく。
 リミッターが外れた感覚。
 S
 E
 KAIが
 散
 拡大
(張)
 するの
  を
 るzI感
 俺俺→俺俺俺→俺俺俺俺俺≒俺俺俺俺
     俺       俺
 どっどっ俺どっどっどどど俺俺
 俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺≒俺俺俺俺
 ↓↓↓↓↑↑↑↑↑↑           ↑↑↑
 俺俺俺俺俺俺俺どどど俺俺俺俺→←俺――←(泣≒声)――→→→
                      ↓↓↓
 ん? 泣き声? 振り返るが何もない。
 奔流はスピードを速め上昇を始める。キーンと耳鳴りが響きそれに呼応するように体のあちこちがピクピクと痙攣した。
 幻聴がもはや雷鳴のように響き渡る中、宙へと昇っていく俺。あるいは落ちていく俺。
 視界を黒い宙が支配し始める。そろそろ大気圏か。
 ってところで哀れにも俺はSEKAIの膜に阻まれて昔のディズニーアニメみたいに無様に気を失ったのだった。
 七月八日。月曜日。
 珍しく朝早く起きてスマホを手に取る。
 昨日は都知事選だった。勝ったのは小池百合子。今日もXは各候補のディスりからアゲまで賑わっていた。
 祭りだなと思う。いや政か?
 誰もが自分を信じて疑わない。そんなツイートを胡乱な頭で見ていたらちょっとだけ祭りに参加したくなった。基本的に俺はノンポリでこういったことにはかかずらわない。
 だがふと思う。ツイートしたらどんな気持ちになるだろう。このビッグウエーブに乗るしかない。
 どうしたもんかと考えながら朝の返信をしていると、フレンドからのLINEに蓮舫の画像が送られてきていた。何やらRのシールが話題となっているのは知っていたが詳しくは知らない。
 ちょっと閃いた。
 TikToKに上げているぬいぐるみ動画に使えそうだ。
 「狼少年の母親の狼婆さんは思想とシャツが左に偏っているね! お兄ちゃん! LeftなのにRなんだね!」
 自分で書きながら笑ってしまう。これは良いディスり、いや風刺と呼べるレベルじゃないのか?
 ニヤニヤしながら俺はXとTikToKに上げることにする。たまにはこういうのも良いだろう。なんだか自分が偉くなったような気分だ。過激なツイートを垂れ流すやつの気持ちが少しわかった気がした。
 すぐさまいいねが付き俺はご満悦で朝の支度を済ませたのだった。
 昼間近、メメ子との約束の場所へ向かう。しかしXもリアルの温度も暑いなと思いながら、指定された新浜松駅に併設されているH&Mの店裏に歩を進めた。
 路地裏というかちょうど建物の陰になっていて涼しい。日陰者が日陰にいるのかと自虐的な考えが浮かぶ。
 メメ子はまだ来ていないようだ――と思ったら、
「堂島さーん!」
 後ろから声を掛けられた。二人とも良いタイミングだったな。
「おはよー」と手を振りながら近づいてくるメメ子にコンビニで買ってきたガリガリ君ソーダ味を渡す。
「ガリガリ君だー」
 餌を目の前にした子犬みたいにメメ子は目を見開いてガリガリ君を素早く受け取ると、すぐにかぶりついた。
「んまー」
「百円で買える幸せや」そう言いながら俺も自分の分を食べることにする。
 ついでに手を差し出して包装の袋をよこせとジェスチャーする。
「あんがとねー」
「おけおけ」
 俺もガリガリ君を頬張りながら、そういえばメメ子の木のバーはどうしようと考える。舐めたのを触れるのはなんだか躊躇われた。ティッシュで巻いてもらえばいっか。
 一息ついてメメ子に目を合わせる。縄の痕はなかった。ただリスカ痕に気づく。そういうことなのだろう。俺もメメ子も両手が不幸と孤独と傷で一杯なのだ。そしてその傷の何倍も心は傷付いている。
 リスカ痕から無言の悲鳴が聴こえてくるような気がした。心の奥のハートに巻いた包帯のその隙間から。 
「あー涼しくなったー」
「良き良き」
 適当に相槌をうちながら、さてどうしたもんかと残り半分のガリガリ君をガリガリ食べる。
「堂島さん聞かないよねー?」
「んーまあね」
 確かに俺は何も聞いていない。なぜ首吊りを試みたのか、そして失敗し大喜びだった理由を。
「そういうのいいと思うー」
 選択は正しかったらしい。俺は現場猫の真似をしながら「ヨシ!」と答えた。
「ホント好きだねぇー」
「画像フォルダほぼ現場猫だぜ」
「えー見して見してー」
 乞われたのでとりあえず有名なデーモンコアとのコラ画像を見せる。
「あははー草ー」
「どうして・・・・・・どうして・・・・・・」
 ちょっとふざけて返す。しかし表情がコロコロ変わる子だな。
「あーこれかわいいー」
「これはどう?」
「おおー」
 しばらくそんなやり取りをしていると、
「あ、そだーお礼」
「ん?」
「ご飯おごるよー」
「ま?」
「まー!」
 ガリガリ君持ってきたのはちょい失敗だったか。そこまで考えてなかった。馬鹿でありがとう俺。反省しろ俺。
「米がいいな」
「日本人だねー」
「確かとろろのお店なかった? 駅中のメイワンの上のほうに」
「あるねー谷島屋の下の階かなー」
 JR浜松駅には商業施設が隣接している。デパ地下もあるがその上層階には書店の谷島屋とその階下には飲食店が軒を連ねている。
「ちょい高いかもだけど」
「えー全然いいよーP活してきたし」
 資本主義社会で生きる女はとかく大変だ。オシャレにスイーツに何かと金がかかる。村上龍や岡崎京子の作品のように。未読だが。
「知り合いはパンツ売りガチ勢」再びヨシしながら告げる。
「えーすごー」
「なんかローションと塩混ぜて塗るらしいわ」
「はえーすっごいー」
 中々に凄い会話だがここは表通りから離れている。誰にも聞こえないだろう。
「ワイちゃんも売ろうかな?」
「相場っていくらぐらいなんかね」
「Temuかアリエクで安いの買って売ればワイちゃんワンチャン?」
「まあ気を付けてね」
「りょー」とヨシしながらメメ子が言う。悪くないと思った。
「あ、先に谷島屋行っていい?」思い出したようにメメ子が言った。
「ええで」
「ジョジョ買う!」そう言ってジョジョ立ちを決めるメメ子。これは何巻のやつだったかな。承太郎だっけか。
「七部までは読んでる」
「ワイちゃん今四部! 承太郎かっこいいよねー」
「それな」確か現場猫コラにもあったはずだ、オラオラではなくヨシヨシしてる画像が。
 素早くフォルダからそれを見つけるとメメ子に見せた。
「あははかわいいーそれ送ってー」
「じゃDMするわ」
 そんなこんなでJR浜松駅へと二人で向かう。日陰を出た瞬間から焼き付くような太陽光だ。太陽元気すぎだろ。寒冷期に向かってる説は何なんだ。
 汗一つかかないメメ子をしり目に一人呪う。女の子て謎よな。
 駅に着きエレベーターで七階へ行こうと思ったが、少し混んでいた。
「エスカレーターにする?」
「そだねー」
 先導し小さなエスカレーターに乗っていく。
「ジョジョどこまで読んだ?」
「えっと今鉄塔のやつ倒したとこー」
 あれか。水曜日のダウンタウンでやってたなあと思いながら好きなキャラを聞く。
「やっぱり承太郎様」
「強くて頭切れるのええよなあ」
「時間止めたときマジ震えたよー」
「俺はジョセフ推し」
「ジョセフも良いよね!」
「アニメ見た?」
「見た見たー」
 割と打ち解けたと言えるだろう。エスカレーターの上でジョジョ立ちを決めるメメ子を微笑ましく思いながら昇っていく。
 平日だというのに若い子を見かける。学校はどうしたのだろう。俺にはKANKEIないが。