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4 ミチル→イケメン=チルクサンダー

ー/ー



 ミチルの魂は、ウィンクルムを五つも生成したために、とても薄くなっているらしい。
 とりあえずその気力を補おうと、悪魔イケメンのチルクサンダーから濃厚キッスをぶちかまされた。
 さすがに、こんな♡♡♡が疼くようなキッスをされて、いつものように「ありがとうございます!」とかは思える訳がない。


 
「ふむ。顔色も少し良くなったようだ」

 チルクサンダーは再びミチルの顎をその手で引いて、顔をまじまじと見つめる。
 真紅の薔薇のような瞳に見られると、ミチルは茨の蔓が絡まったように体が動かない。

「にゃ、にゃあ……」

 捕食される寸前のウサギのようなミチルに、チルクサンダーは笑いながらまた迫った。

「ふふふ……オマエが望むなら、もう少し注入してやるぞ。我の熱い力を、な」

 おおい! 何下ネタぶっこんでやがる、おまーは毒舌師範か!
 ミチルは急いでその手を振り払った。

「結構、結構、モーケッコー! 元気になったからぁ! もう大丈夫だからぁ!」

「ふん、大丈夫ではないだろうが……まあ、今はいいだろう」

 ミチルが火事場の馬鹿力で距離を取ると、少しつまらなそうに呟くチルクサンダーであった。
 それから指をパチンと鳴らす。すると真っ黒異空間の何処からか、小さな固形物がザラザラと音を立てて流れ出て小山になった。

「何それ?」

「気力の次は体力の回復だ。好きなだけ食せ」

 急に出て来たものが食べ物だと言うのか。ミチルは不審に思いながらも、なぜか嫌な感じはしなかったので小山の中からその固形物をひとつ摘んでみる。
 キャンディのように包まれた、固くて丸いもの。この暗闇では想像するしかないが、包み紙?は様々な色がついているような気がした。ちょうどミチルのいた地球にもあるような、カラフルなお菓子に見える。

 くるっと捻って包み紙?を開く。やはり暗闇なのでその物体は黒かった。だが、よく知っている匂いがする。

「チョコレートじゃね!?」

 スノードロップの所でアップルパイ(風)、ジンの所でおまんじゅう(風)……という異世界スイーツも嗜んできたミチルだったが、この衝撃はすごかった。まさか異世界の、異次元空間でチョコレートに出会えるなんて。

「チョコレート? これは我が召喚するダークマターだが」

 無造作にひとつ摘んでポイと口に入れながら、チルクサンダーがそんな事を言う。ミチルはもちろん大反論。

暗黒物質(ダークマター)が食べ物な訳ないだろぉが! ぱくっ、あむあむ……うん、完全にチョコレートだよ、これは!」

 やだあ、ビターだけど結構甘い♡
 ミルクチョコ専門だったミチルだが、ブラックチョコも悪くない気分だった。ちょうどお腹が空いていたせいかもしれない。


 
「オマエはおかしなヤツだ」

 つっこみながらも躊躇わずにチョコレートを食べ切ってみせたミチルを、チルクサンダーは目を丸くして見ていた。

「どこから取り寄せたかわからないものを、深く考えずに食すなど。迂闊過ぎるな」

「えええ……!? おまーが食べろって言ったのにぃ?」

 ミチルは理不尽さを感じていた。
 じゃあ、どーせいっちゅーんだ、ワレェ! とメンチを切りたい気持ちを堪える。

 落ち着け。こいつはカミサマの眷属を名乗ってる。
 オレが持ってる常識が通じないかもしれない。下手に噛みついたらあっという間に食われる……ぱっくんちょと!

「ミチルよ、オマエは我が食せと言ったから、疑いもなく食したというのだな?」

「そ、そうだけど……」

 何なの、何がしたいの?
 ミチルはチルクサンダーが何を考えているのかわからない。

「つまり、我を心から愛し、信じていると言うのだな?」

「話を飛躍させるなぁ! 愛し……とかはわかんないけど、オレはね、イケメンの言葉は百パー信じるんだよ!」

 とは言ったものの、ミチルだって全てのイケメンに対して従順な訳ではない。
 ミチルの言う「イケメン」とは今の所、ジェイ、アニー、エリオット、ジン、ルークの五人のみを指す。
 
 だが、目の前のチルクサンダーにも、それと似たような感情をすでに持ってしまっていた。渡されたチョコレートも、全く怪しいものには見えなかった。チルクサンダーが食べろと言ったから食べられたのである。
 そこに、明確な理由はない。なんとなく、大丈夫な気がしたのだ。

「……そうか。オマエは()いヤツだ」

 そう言ってふっと笑ったチルクサンダーの顔は、超絶素晴らしい美形だった。

「ふ、ふわ……っ」

 真っ暗闇が、急に明るくなった気がします!
 イケメンスマイルは、時空を超える。ミチルはチルクサンダーの笑顔に胸がドキドキ高鳴ってしまう。

「オマエは、我の事も信用に足ると思うているのだな? ()()のように……」

「う、ん……? チルクサンダーはオレのイケメン達のことを知ってんの?」

 ミチルは爆発しそうな心臓を抑えて尋ねた。
 するとチルクサンダーはミチルの頬に手を伸ばす。大きな手のひらが、とても温かかった。

「我に、オマエの事で知らないことなどない。ずっと夢に見ていたから」

「ゆ、め……?」

「そうだ。我がここに囚われてすぐに、オマエの夢を見た。少し前、オマエはまだ子どもだったな」

「へ……?」


 
 薔薇色の瞳が、柔らかく光ってミチルを見つめる。そこには慈愛のようなものを感じた。
 チルクサンダーの大きな手がミチルの頬を撫でながら、彼は語り出す。

 孤独な空間を、これまで耐えてこられた理由を。
 その心に常にあった、小さくて愛しい存在を……


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 ミチルの魂は、ウィンクルムを五つも生成したために、とても薄くなっているらしい。
 とりあえずその気力を補おうと、悪魔イケメンのチルクサンダーから濃厚キッスをぶちかまされた。
 さすがに、こんな♡♡♡が疼くようなキッスをされて、いつものように「ありがとうございます!」とかは思える訳がない。
「ふむ。顔色も少し良くなったようだ」
 チルクサンダーは再びミチルの顎をその手で引いて、顔をまじまじと見つめる。
 真紅の薔薇のような瞳に見られると、ミチルは茨の蔓が絡まったように体が動かない。
「にゃ、にゃあ……」
 捕食される寸前のウサギのようなミチルに、チルクサンダーは笑いながらまた迫った。
「ふふふ……オマエが望むなら、もう少し注入してやるぞ。我の熱い力を、な」
 おおい! 何下ネタぶっこんでやがる、おまーは毒舌師範か!
 ミチルは急いでその手を振り払った。
「結構、結構、モーケッコー! 元気になったからぁ! もう大丈夫だからぁ!」
「ふん、大丈夫ではないだろうが……まあ、今はいいだろう」
 ミチルが火事場の馬鹿力で距離を取ると、少しつまらなそうに呟くチルクサンダーであった。
 それから指をパチンと鳴らす。すると真っ黒異空間の何処からか、小さな固形物がザラザラと音を立てて流れ出て小山になった。
「何それ?」
「気力の次は体力の回復だ。好きなだけ食せ」
 急に出て来たものが食べ物だと言うのか。ミチルは不審に思いながらも、なぜか嫌な感じはしなかったので小山の中からその固形物をひとつ摘んでみる。
 キャンディのように包まれた、固くて丸いもの。この暗闇では想像するしかないが、包み紙?は様々な色がついているような気がした。ちょうどミチルのいた地球にもあるような、カラフルなお菓子に見える。
 くるっと捻って包み紙?を開く。やはり暗闇なのでその物体は黒かった。だが、よく知っている匂いがする。
「チョコレートじゃね!?」
 スノードロップの所でアップルパイ(風)、ジンの所でおまんじゅう(風)……という異世界スイーツも嗜んできたミチルだったが、この衝撃はすごかった。まさか異世界の、異次元空間でチョコレートに出会えるなんて。
「チョコレート? これは我が召喚するダークマターだが」
 無造作にひとつ摘んでポイと口に入れながら、チルクサンダーがそんな事を言う。ミチルはもちろん大反論。
「|暗黒物質《ダークマター》が食べ物な訳ないだろぉが! ぱくっ、あむあむ……うん、完全にチョコレートだよ、これは!」
 やだあ、ビターだけど結構甘い♡
 ミルクチョコ専門だったミチルだが、ブラックチョコも悪くない気分だった。ちょうどお腹が空いていたせいかもしれない。
「オマエはおかしなヤツだ」
 つっこみながらも躊躇わずにチョコレートを食べ切ってみせたミチルを、チルクサンダーは目を丸くして見ていた。
「どこから取り寄せたかわからないものを、深く考えずに食すなど。迂闊過ぎるな」
「えええ……!? おまーが食べろって言ったのにぃ?」
 ミチルは理不尽さを感じていた。
 じゃあ、どーせいっちゅーんだ、ワレェ! とメンチを切りたい気持ちを堪える。
 落ち着け。こいつはカミサマの眷属を名乗ってる。
 オレが持ってる常識が通じないかもしれない。下手に噛みついたらあっという間に食われる……ぱっくんちょと!
「ミチルよ、オマエは我が食せと言ったから、疑いもなく食したというのだな?」
「そ、そうだけど……」
 何なの、何がしたいの?
 ミチルはチルクサンダーが何を考えているのかわからない。
「つまり、我を心から愛し、信じていると言うのだな?」
「話を飛躍させるなぁ! 愛し……とかはわかんないけど、オレはね、イケメンの言葉は百パー信じるんだよ!」
 とは言ったものの、ミチルだって全てのイケメンに対して従順な訳ではない。
 ミチルの言う「イケメン」とは今の所、ジェイ、アニー、エリオット、ジン、ルークの五人のみを指す。
 だが、目の前のチルクサンダーにも、それと似たような感情をすでに持ってしまっていた。渡されたチョコレートも、全く怪しいものには見えなかった。チルクサンダーが食べろと言ったから食べられたのである。
 そこに、明確な理由はない。なんとなく、大丈夫な気がしたのだ。
「……そうか。オマエは|愛《う》いヤツだ」
 そう言ってふっと笑ったチルクサンダーの顔は、超絶素晴らしい美形だった。
「ふ、ふわ……っ」
 真っ暗闇が、急に明るくなった気がします!
 イケメンスマイルは、時空を超える。ミチルはチルクサンダーの笑顔に胸がドキドキ高鳴ってしまう。
「オマエは、我の事も信用に足ると思うているのだな? |彼《・》|ら《・》のように……」
「う、ん……? チルクサンダーはオレのイケメン達のことを知ってんの?」
 ミチルは爆発しそうな心臓を抑えて尋ねた。
 するとチルクサンダーはミチルの頬に手を伸ばす。大きな手のひらが、とても温かかった。
「我に、オマエの事で知らないことなどない。ずっと夢に見ていたから」
「ゆ、め……?」
「そうだ。我がここに囚われてすぐに、オマエの夢を見た。少し前、オマエはまだ子どもだったな」
「へ……?」
 薔薇色の瞳が、柔らかく光ってミチルを見つめる。そこには慈愛のようなものを感じた。
 チルクサンダーの大きな手がミチルの頬を撫でながら、彼は語り出す。
 孤独な空間を、これまで耐えてこられた理由を。
 その心に常にあった、小さくて愛しい存在を……