【1】
ー/ー
「えー! 何それ、サイコーじゃん!?」
仕事終わりのバックヤード。
反射的に振り向いてしまい、電話中だった女の子と目が合った。
アルバイト仲間の高校生は、俺の勢いに驚いた風でスマホを耳から外して身体の前に当てる。
「すみません、今野さん。うるさくしちゃって──」
「いやいや! もう仕事終わったんだし、大声でもないから大丈夫だよ。呼ばれたのかと勘違いしちゃったんだ、ごめん」
続けて、と手振りで促す俺に、彼女は軽く頭を下げた。こちらに背を向け、心持ち小声で通話を再開する。
「今野さん、金曜の夜に飲み会あるんだけど来ませんか? 前のバイト先で一緒だった女の子たちと集まるんすよ」
アルバイトの先輩にあたる俺より少し年下のフリーターが、背後から心持ち顰めた声で誘いを掛けて来た。
「えーと、ごめんね。僕、そういうのはあんまり……」
申し訳なさそうに聞こえるだろう俺の台詞に、彼は慌てたように言葉を被せる。
「いえ。今野さんは真面目だから、知らない女と酒の席でなんて浮ついたの興味ないですよね。すみません」
「そんなことないんだけど。ホントに悪いね」
最後まで笑みは絶やさず告げて、俺は職場を後にした。
俺は別に真面目なんかじゃない。
ここでは一番新入りの、しかもアルバイトの分際で、単に年上だからって偉そうにするほど世間を舐めちゃいないだけだ。何よりも、女はもうこりごりなんだよ。
ようやく見つけた、かもしれない安住の地。少しでも居心地を良くしておかないと。
移って来てもう半年になる。この分なら大丈夫なのか? ここが俺の落ち着ける土地になるんだろうか。
……そうなって欲しい。
──ねぇ、蓮……。
頭に響く、幻の声。
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「えー! 何それ、サイコーじゃん!?」
仕事終わりのバックヤード。
反射的に振り向いてしまい、電話中だった女の子と目が合った。
アルバイト仲間の高校生は、俺の勢いに驚いた風でスマホを耳から外して身体の前に当てる。
「すみません、|今野《こんの》さん。うるさくしちゃって──」
「いやいや! もう仕事終わったんだし、大声でもないから大丈夫だよ。呼ばれたのかと勘違いしちゃったんだ、ごめん」
続けて、と手振りで促す俺に、彼女は軽く頭を下げた。こちらに背を向け、心持ち小声で通話を再開する。
「今野さん、金曜の夜に飲み会あるんだけど来ませんか? 前のバイト先で一緒だった女の子たちと集まるんすよ」
アルバイトの先輩にあたる俺より少し年下のフリーターが、背後から心持ち|顰《ひそ》めた声で誘いを掛けて来た。
「えーと、ごめんね。僕、そういうのはあんまり……」
申し訳なさそうに聞こえるだろう俺の台詞に、彼は慌てたように言葉を被せる。
「いえ。今野さんは真面目だから、知らない女と酒の席でなんて浮ついたの興味ないですよね。すみません」
「そんなことないんだけど。ホントに悪いね」
最後まで笑みは絶やさず告げて、俺は職場を後にした。
俺は別に真面目なんかじゃない。
ここでは一番新入りの、しかもアルバイトの分際で、単に年上だからって偉そうにするほど世間を舐めちゃいないだけだ。何よりも、女はもうこりごりなんだよ。
ようやく見つけた、かもしれない安住の地。少しでも居心地を良くしておかないと。
移って来てもう半年になる。この分なら大丈夫なのか? ここが俺の落ち着ける土地になるんだろうか。
……そうなって欲しい。
──ねぇ、|蓮《れん》……。
頭に響く、幻の声。