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SCENE147 迷路の最初の挑戦者

ー/ー



 僕が迷路の完成を報告する配信をした翌日のことだった。
 ダンジョンの入口に誰かがやってきた気配がした。

「あれっ、今日は誰が来たんだろう」

「この気配は、管理局の方でも衣織殿でもございませんね」

 僕たちは動きを止めて、誰がやってきたのか分からずに、首を傾げて話をしている。

「お二人が分からないのであれば、わたくしには到底分かりませんね」

 ラティナさんは困った顔で話をしていた。
 そういえば、ラティナさんの一人称って、元々『私』だったような気がするなぁ。
 ラティナさんの反応を見ながら、僕はのんきにそんなことを思ってしまった。
 そんな間抜けたことを思っている間に、僕たちのいるボス部屋まで気配が迫っていた。

「ウィンクちゃん、お久しぶりです」

「あれっ、あなたたちは確か……」

 ボス部屋にやってきた人たちが声をかけてくる。くるりと振り返ってその姿を確認すると、そこにいたのは以前にやってきた元『パラダイス』の三人だった。

「本当に久しぶりね。鬼崎たちが捕まったおかげで、ようやくこうやって動けるようになったの」

「ああ、そうなんですね。衣織お姉さんから事情は聞いていますよ」

 この人たちは以前にもやって来た三人で、確か女性の人が島谷さんで、他の二人が粕谷さんと保谷さんだったかな。あの時に比べると、なんだか表情がすっきりしたように思う。ギルドの問題が解決したからかな。
 あっ、そういえば、この三人はギルドを作ったんだっけか。どんなギルドか聞いてみよう。

「そういえば、お三方はギルドを作ったんですよね。ギルドの名前は決まりましたか?」

 僕が質問をすると、三人はなんだか恥ずかしそうな態度を取っている。一体どういうことなんだろうかな。僕は疑問に思ってしまう。

「今のギルドの名前はこんな感じです」

 そういって島谷さんがギルド証を差し出してきた。
 差し出されたギルド証には、『島谷』という名前以外にギルドの名称も書いてあった。

『SMILE PARTY』

「また、すごい名前ですね。笑顔を入れているんですか」

 名前を見た僕は、思わず笑ってしまう。こういうところもSMILEらしいといえばらしいかな。

「本当は、『ウィンクちゃん親衛隊』にしようと思ったんですけど、衣織さんに猛反対されましてね」

「それで、パラダイスとは対極にあるような安心できる場所をということで、このような名前にしたんです」

「なるほど。それは衣織お姉さんは怒るよ」

 話を聞いていた僕は、ついつい苦笑いになってしまう。
 なんというか、衣織お姉さんは僕に対して異様なくらいに過保護だ。妹である瞳に対しても同じくらいだよ。
 いくらご近所さんの幼馴染みとはいっても、僕からしてみてもなんだか異常に思えるくらいだ。何がそこまで衣織お姉さんを駆り立てるのか。まったくもって分からない。
 まあ、それはそれでいいとして、僕は三人にダンジョンへやってきた理由を聞いてみることにする。

「今日は、どうしてここにやってきたんですかね」

「そりゃあ、もちろん」

「ウィンクちゃんが作った迷路に挑戦するためさ」

 あっ、やっぱりそうなんだねという感じだった。配信でもみんな来たがっていたからね。
 でも、さすがここに一度来たことのある三人は違っているなぁ。翌日には乗り込んでくるあたり、おそらくはしっかりと準備をしてきたんだろうね。

「そうですか。それでは、迷路の入口に案内しますよ」

「うん、よろしく頼むよ」

 話を終えた僕は、ラティナさんとバトラーを残して、一人でダンジョンの入口まで戻っていく。
 戻る最中、三人はいろいろと僕に話しかけてきていた。

「ねえ、迷路の中は配信しても大丈夫かしら」

「いいですよ。というか、ダンジョンの中は基本的にどこでも配信オーケーじゃないですか」

 島谷さんの質問に、僕はさらっと答えておく。

「いや、そうなんだけどね」

「ウィンクちゃん、ネタバレは嫌だみたいなことを言っていたから、確認をしてみたんだよ」

「ああ、そういうことですか。あれは、制作者である僕から全部話しちゃうのはどうなのかっていう意味ですから、配信をしてもらうのはまったく問題ありませんよ」

 僕がしっかりと答えると、三人ともほっとした表情を浮かべていた。反応を見る限り、相当気にしていたみたいだ。
 やっぱり、この三人はしっかりとした人たちみたいだ。
 そう話している間に、僕たちは一階層までやって来ていた。

「えっと、ウィンクちゃん」

「なんでしょうか」

「迷路の入口、どこ?」

 三人は辺りをきょろきょろと見回している。
 確かに、見回す限りの岩壁だらけだから、分からないのも無理はないと思う。

「ああ、今から目印を作りますよ。完成したから今から仕上げをしようとして思っていたところなんですから」

「そっか。俺たちが早く来すぎただけなのか」

「そういうことです。では、ちょっと下がってて下さいね」

 僕は、迷路の入口となる隠し扉に向けて魔法を放つ。

「シャドウペイント!」

 闇属性の攻撃魔法「シャドウエッジ」に水魔法「ウォーターバレット」を混ぜ込んだ塗料魔法だ。
 これを壁にぶつけると、扉になる部分だけがどんどんと漆黒に染まっていく。

「これが入口です。中は小さな部屋になっていまして、スタートまで連れて行ってくれるトラップゴーレムが座っています。心の準備ができたら触れてあげて下さい」

「分かった」

 しっかりと説明をした僕は、三人を見送っていく。
 部屋に入ってしばらくすると、三人の悲鳴が聞こえてきた。トラップゴーレムにまとめて抱きつかれたんだろうね。
 さて、三人は無事に迷路から脱出できるだろうかな。
 そんな楽しみを持ちながら、僕は管理局のための部屋からショートカットを使ってボス部屋まで戻っていった。


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次のエピソードへ進む SCENE148 運要素ってあるんだね


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 僕が迷路の完成を報告する配信をした翌日のことだった。
 ダンジョンの入口に誰かがやってきた気配がした。
「あれっ、今日は誰が来たんだろう」
「この気配は、管理局の方でも衣織殿でもございませんね」
 僕たちは動きを止めて、誰がやってきたのか分からずに、首を傾げて話をしている。
「お二人が分からないのであれば、わたくしには到底分かりませんね」
 ラティナさんは困った顔で話をしていた。
 そういえば、ラティナさんの一人称って、元々『私』だったような気がするなぁ。
 ラティナさんの反応を見ながら、僕はのんきにそんなことを思ってしまった。
 そんな間抜けたことを思っている間に、僕たちのいるボス部屋まで気配が迫っていた。
「ウィンクちゃん、お久しぶりです」
「あれっ、あなたたちは確か……」
 ボス部屋にやってきた人たちが声をかけてくる。くるりと振り返ってその姿を確認すると、そこにいたのは以前にやってきた元『パラダイス』の三人だった。
「本当に久しぶりね。鬼崎たちが捕まったおかげで、ようやくこうやって動けるようになったの」
「ああ、そうなんですね。衣織お姉さんから事情は聞いていますよ」
 この人たちは以前にもやって来た三人で、確か女性の人が島谷さんで、他の二人が粕谷さんと保谷さんだったかな。あの時に比べると、なんだか表情がすっきりしたように思う。ギルドの問題が解決したからかな。
 あっ、そういえば、この三人はギルドを作ったんだっけか。どんなギルドか聞いてみよう。
「そういえば、お三方はギルドを作ったんですよね。ギルドの名前は決まりましたか?」
 僕が質問をすると、三人はなんだか恥ずかしそうな態度を取っている。一体どういうことなんだろうかな。僕は疑問に思ってしまう。
「今のギルドの名前はこんな感じです」
 そういって島谷さんがギルド証を差し出してきた。
 差し出されたギルド証には、『島谷』という名前以外にギルドの名称も書いてあった。
『SMILE PARTY』
「また、すごい名前ですね。笑顔を入れているんですか」
 名前を見た僕は、思わず笑ってしまう。こういうところもSMILEらしいといえばらしいかな。
「本当は、『ウィンクちゃん親衛隊』にしようと思ったんですけど、衣織さんに猛反対されましてね」
「それで、パラダイスとは対極にあるような安心できる場所をということで、このような名前にしたんです」
「なるほど。それは衣織お姉さんは怒るよ」
 話を聞いていた僕は、ついつい苦笑いになってしまう。
 なんというか、衣織お姉さんは僕に対して異様なくらいに過保護だ。妹である瞳に対しても同じくらいだよ。
 いくらご近所さんの幼馴染みとはいっても、僕からしてみてもなんだか異常に思えるくらいだ。何がそこまで衣織お姉さんを駆り立てるのか。まったくもって分からない。
 まあ、それはそれでいいとして、僕は三人にダンジョンへやってきた理由を聞いてみることにする。
「今日は、どうしてここにやってきたんですかね」
「そりゃあ、もちろん」
「ウィンクちゃんが作った迷路に挑戦するためさ」
 あっ、やっぱりそうなんだねという感じだった。配信でもみんな来たがっていたからね。
 でも、さすがここに一度来たことのある三人は違っているなぁ。翌日には乗り込んでくるあたり、おそらくはしっかりと準備をしてきたんだろうね。
「そうですか。それでは、迷路の入口に案内しますよ」
「うん、よろしく頼むよ」
 話を終えた僕は、ラティナさんとバトラーを残して、一人でダンジョンの入口まで戻っていく。
 戻る最中、三人はいろいろと僕に話しかけてきていた。
「ねえ、迷路の中は配信しても大丈夫かしら」
「いいですよ。というか、ダンジョンの中は基本的にどこでも配信オーケーじゃないですか」
 島谷さんの質問に、僕はさらっと答えておく。
「いや、そうなんだけどね」
「ウィンクちゃん、ネタバレは嫌だみたいなことを言っていたから、確認をしてみたんだよ」
「ああ、そういうことですか。あれは、制作者である僕から全部話しちゃうのはどうなのかっていう意味ですから、配信をしてもらうのはまったく問題ありませんよ」
 僕がしっかりと答えると、三人ともほっとした表情を浮かべていた。反応を見る限り、相当気にしていたみたいだ。
 やっぱり、この三人はしっかりとした人たちみたいだ。
 そう話している間に、僕たちは一階層までやって来ていた。
「えっと、ウィンクちゃん」
「なんでしょうか」
「迷路の入口、どこ?」
 三人は辺りをきょろきょろと見回している。
 確かに、見回す限りの岩壁だらけだから、分からないのも無理はないと思う。
「ああ、今から目印を作りますよ。完成したから今から仕上げをしようとして思っていたところなんですから」
「そっか。俺たちが早く来すぎただけなのか」
「そういうことです。では、ちょっと下がってて下さいね」
 僕は、迷路の入口となる隠し扉に向けて魔法を放つ。
「シャドウペイント!」
 闇属性の攻撃魔法「シャドウエッジ」に水魔法「ウォーターバレット」を混ぜ込んだ塗料魔法だ。
 これを壁にぶつけると、扉になる部分だけがどんどんと漆黒に染まっていく。
「これが入口です。中は小さな部屋になっていまして、スタートまで連れて行ってくれるトラップゴーレムが座っています。心の準備ができたら触れてあげて下さい」
「分かった」
 しっかりと説明をした僕は、三人を見送っていく。
 部屋に入ってしばらくすると、三人の悲鳴が聞こえてきた。トラップゴーレムにまとめて抱きつかれたんだろうね。
 さて、三人は無事に迷路から脱出できるだろうかな。
 そんな楽しみを持ちながら、僕は管理局のための部屋からショートカットを使ってボス部屋まで戻っていった。