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SCENE145 迷路を実際に作ろう

ー/ー



 配信を終えた僕は、迷路作りを再開させる。
 ノートに描いた図面に沿って、ダンジョン内に空間を作っていく。

「今ここに姿を現せ!」

 僕はきちんと詠唱をしてダンジョンコアを呼び出す。省略できないかなぁと思いつつも、きちんと手順を踏むあたり、僕はやっぱり音は真面目みたいだ。

「おや、プリンセス。ダンジョン内の改築ですかな?」

「うん、バトラー。いよいよ計画していた迷路を実行に移すことにしたんだよ」

「なるほどですな。これは楽しみですな」

 僕がにこにことした笑顔で話すと、バトラーも笑顔を見せてくれた。さすがダンジョンマスターに仕えるために、ここで十年間も耐え忍んできたことだけはある。
 ダンジョンマスターとなった僕のために、ずっと従い続けているんだからね。僕みたいなダンジョンマスター、普通なら頼りないとは思うだけどな。

「ねえ、バトラー」

「なんでしょうか、プリンセス」

 ふと思ったので、僕はついバトラーに声をかけてしまう。

「僕って、ダンジョンマスターとしてどうなのかな?」

「プリンセス……」

 僕の質問に、バトラーはなんともいえない表情を見せている。やっぱり、こういう質問はすべきでなかっただろうかな。
 ところが、表情が曇ったかと思えば、バトラーはいつものように笑顔を見せていた。

「何を仰いますか。我は誰が主となっていようとも、その主のために精一杯尽くすことを生業とする執事なのです。プリンセスがいくら力不足と思われようと、それを支えるのが我の役目でございます。足らぬところがあると思われるのでしたら、ぜひとも、我を頼って下され」

「バトラー……」

 バトラーから素直な気持ちを言われてしまい、僕はなんだかちょっと恥ずかしくなってきちゃったよ。
 バトラーは仕事に一直線といったところなんだろうけど、その気持ちが真っすぐすぎる。僕にはなんだかもったいなくなってくる。

「何を仰いますか、ウィンク様。ウィンク様がどのように思われましょうとも、わたくしたちはウィンク様がダンジョンマスターであることを認めています」

「ら、ラティナさん……」

 話を聞いていたラティナさんにも思いっきり言われてしまう。ここまで言われてしまっては、これ以上悩んでいるならダンジョンマスター失格だよね。

「よしっ!」

 僕は自分の頬を両手で打つと、気合いを入れ直した。

「それじゃ、これから迷路を作っていくよ」

「はい、その意気ですよ、ウィンク様」

「その通りでございますとも、プリンセス」

 二人からの励ましもあって、僕はダンジョンコアを操作しながら迷路をどんどんと作っていく。
 迷路から二階層に出られるようにする扉は、迷路から側しか開けられないようにする。そうしない、ダンジョンから迷路に入れてしまうからね。

「プリンセス」

「なあに、バトラー」

「片手の法則というものをご存じですかな?」

「うーん、何か聞いたことがあるような?」

 バトラーからの質問に、僕は指を顎に当てながら考え込んでしまう。

「わたくしも、何か聞いたことがあるような気がします」

 ラティナさんは思い当たるところがあるみたいだけど、やっぱり思い出せないようだった。

「右手、もしくは左手の方向に進み続ければ、いずれはダンジョンから脱出できるという法則です」

「ああ、それかぁ」

 バトラーから説明をされて、僕ははっきりと思い出した。

「ダンジョンポイントを稼ぐためには、探索者には罠にかかっていただく必要がございます。なので、それを逆手にとって罠を配置する方がよいと思うのです」

「なるほど。さすがバトラー、考えてるなぁ」

「お褒めにいただき光栄でございます」

 僕が素直に褒めると、バトラーはなんとも照れているような感じだった。

「そうなるとマッピング対策として、罠や通路を一定時間ごとに組み替えていくっていうのもいいかな」

「そうですな。固定式ではいずれ楽に踏破されるようになってしまいます。一部の通路を時々組み替えることにより、毎度新しい迷路に挑戦いただけるとようにするのがよいでしょう」

「ありがとう、バトラー。これでいいアトラクションになりそうだよ」

 バトラーからの提案もあり、一部の通路に大きな部屋をかぶせることで、その部屋の中の通路のつながりをあべこべにするというトラップを仕掛けることにした。もちろん一か所じゃないよ。
 ただ、これをすると、どの通路からも外に出られなくなってしまうタイミングが出てくる可能性がある。なので、閉じられてしまった時の脱出方法として、つながっている通路の中に転移モンスターと落とし穴の罠を必ず設置することにした。さすがに死人が出たら、僕が気持ちよく眠れなくなるもの。
 そんなこんなで、どうにか僕は迷路を完成させることができた。いやぁ、楽しくなっちゃって丸一日にかかるとは思ってもみなかったよ。

「ふわぁ、やっとできたぁ……」

「うにゅ、お疲れ、様ですぅ……」

 僕もラティナさんももう限界って感じだった。モンスターであっても徹夜はやっぱりきついみたいだ。
 なんというか、眠すぎてそろって舟をこいじゃってるよ。

「お疲れ様でございます、プリンセス、ラティナ様」

「うん、ありがとう。バトラー」

「寝床の準備はできておりますゆえ、しっかりとお休みになられてください」

「うん。それじゃラティナさん、眠りましょうか」

「はい……」

 僕たちはあくびを連発しながら、隠し部屋へと引っ込んでいく。
 もちろん、ダンジョンコアはしっかりと元に戻してからだよ。さすがに出しっぱなしはよくないもん。

 どうにか完成した迷路だけど、早く誰かに試してみたいなぁ。
 そのことを楽しみにしながら、僕たちはとにかくゆっくりと眠ることにしたよ。


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次のエピソードへ進む SCENE146 迷路完成のお知らせ


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 配信を終えた僕は、迷路作りを再開させる。
 ノートに描いた図面に沿って、ダンジョン内に空間を作っていく。
「今ここに姿を現せ!」
 僕はきちんと詠唱をしてダンジョンコアを呼び出す。省略できないかなぁと思いつつも、きちんと手順を踏むあたり、僕はやっぱり音は真面目みたいだ。
「おや、プリンセス。ダンジョン内の改築ですかな?」
「うん、バトラー。いよいよ計画していた迷路を実行に移すことにしたんだよ」
「なるほどですな。これは楽しみですな」
 僕がにこにことした笑顔で話すと、バトラーも笑顔を見せてくれた。さすがダンジョンマスターに仕えるために、ここで十年間も耐え忍んできたことだけはある。
 ダンジョンマスターとなった僕のために、ずっと従い続けているんだからね。僕みたいなダンジョンマスター、普通なら頼りないとは思うだけどな。
「ねえ、バトラー」
「なんでしょうか、プリンセス」
 ふと思ったので、僕はついバトラーに声をかけてしまう。
「僕って、ダンジョンマスターとしてどうなのかな?」
「プリンセス……」
 僕の質問に、バトラーはなんともいえない表情を見せている。やっぱり、こういう質問はすべきでなかっただろうかな。
 ところが、表情が曇ったかと思えば、バトラーはいつものように笑顔を見せていた。
「何を仰いますか。我は誰が主となっていようとも、その主のために精一杯尽くすことを生業とする執事なのです。プリンセスがいくら力不足と思われようと、それを支えるのが我の役目でございます。足らぬところがあると思われるのでしたら、ぜひとも、我を頼って下され」
「バトラー……」
 バトラーから素直な気持ちを言われてしまい、僕はなんだかちょっと恥ずかしくなってきちゃったよ。
 バトラーは仕事に一直線といったところなんだろうけど、その気持ちが真っすぐすぎる。僕にはなんだかもったいなくなってくる。
「何を仰いますか、ウィンク様。ウィンク様がどのように思われましょうとも、わたくしたちはウィンク様がダンジョンマスターであることを認めています」
「ら、ラティナさん……」
 話を聞いていたラティナさんにも思いっきり言われてしまう。ここまで言われてしまっては、これ以上悩んでいるならダンジョンマスター失格だよね。
「よしっ!」
 僕は自分の頬を両手で打つと、気合いを入れ直した。
「それじゃ、これから迷路を作っていくよ」
「はい、その意気ですよ、ウィンク様」
「その通りでございますとも、プリンセス」
 二人からの励ましもあって、僕はダンジョンコアを操作しながら迷路をどんどんと作っていく。
 迷路から二階層に出られるようにする扉は、迷路から側しか開けられないようにする。そうしない、ダンジョンから迷路に入れてしまうからね。
「プリンセス」
「なあに、バトラー」
「片手の法則というものをご存じですかな?」
「うーん、何か聞いたことがあるような?」
 バトラーからの質問に、僕は指を顎に当てながら考え込んでしまう。
「わたくしも、何か聞いたことがあるような気がします」
 ラティナさんは思い当たるところがあるみたいだけど、やっぱり思い出せないようだった。
「右手、もしくは左手の方向に進み続ければ、いずれはダンジョンから脱出できるという法則です」
「ああ、それかぁ」
 バトラーから説明をされて、僕ははっきりと思い出した。
「ダンジョンポイントを稼ぐためには、探索者には罠にかかっていただく必要がございます。なので、それを逆手にとって罠を配置する方がよいと思うのです」
「なるほど。さすがバトラー、考えてるなぁ」
「お褒めにいただき光栄でございます」
 僕が素直に褒めると、バトラーはなんとも照れているような感じだった。
「そうなるとマッピング対策として、罠や通路を一定時間ごとに組み替えていくっていうのもいいかな」
「そうですな。固定式ではいずれ楽に踏破されるようになってしまいます。一部の通路を時々組み替えることにより、毎度新しい迷路に挑戦いただけるとようにするのがよいでしょう」
「ありがとう、バトラー。これでいいアトラクションになりそうだよ」
 バトラーからの提案もあり、一部の通路に大きな部屋をかぶせることで、その部屋の中の通路のつながりをあべこべにするというトラップを仕掛けることにした。もちろん一か所じゃないよ。
 ただ、これをすると、どの通路からも外に出られなくなってしまうタイミングが出てくる可能性がある。なので、閉じられてしまった時の脱出方法として、つながっている通路の中に転移モンスターと落とし穴の罠を必ず設置することにした。さすがに死人が出たら、僕が気持ちよく眠れなくなるもの。
 そんなこんなで、どうにか僕は迷路を完成させることができた。いやぁ、楽しくなっちゃって丸一日にかかるとは思ってもみなかったよ。
「ふわぁ、やっとできたぁ……」
「うにゅ、お疲れ、様ですぅ……」
 僕もラティナさんももう限界って感じだった。モンスターであっても徹夜はやっぱりきついみたいだ。
 なんというか、眠すぎてそろって舟をこいじゃってるよ。
「お疲れ様でございます、プリンセス、ラティナ様」
「うん、ありがとう。バトラー」
「寝床の準備はできておりますゆえ、しっかりとお休みになられてください」
「うん。それじゃラティナさん、眠りましょうか」
「はい……」
 僕たちはあくびを連発しながら、隠し部屋へと引っ込んでいく。
 もちろん、ダンジョンコアはしっかりと元に戻してからだよ。さすがに出しっぱなしはよくないもん。
 どうにか完成した迷路だけど、早く誰かに試してみたいなぁ。
 そのことを楽しみにしながら、僕たちはとにかくゆっくりと眠ることにしたよ。