表示設定
表示設定
目次 目次




第12話 エージェント回収

ー/ー



 トーマスと分かれた後、クルクスは愛車のバイクに跨り現場を後にしていた。

 プルルルルルッ──プルルルルルッ──

 バイクを走らせていると、彼女のストレートボディ型携帯電話に着信が入った。
 道の端にバイクを一時停車させるクルクス。

「……よいっしょ。はい……あたしです」

 外付けアンテナを伸ばし、クルクスはヘルメットを脱いで通話に出た。
『──クルクスか。任務は済んだのか……?』
「……はい。……暴れないよう、あの子は眠らせました。……遺体もほとんど、あの子が……。それと……トーマスおじさんと……エンカウントしました」
 クルクスは背中にふと違和感を覚え、ニナニナを固定するロープに目をやる。
 ロープは大きく弛緩し、ニナニナが今にも地面に落ちそうな状態だった。
『トーマスがそこに居たのか?』
「……はい」
『──からかったろ?』
「……よくお分かりで」
 会話と並行して、クルクスはロープを固く結び直す。
『──いたずらは継続せよ』
「……サーイエッサーッ」
『それはそうと……つかぬことを聞くんだが、クルクス。お前、あの子に相当手を焼いているだろう?』
 少しの沈黙の後、クルクスは話し出す。
「……やはり……分かるんですね」
『お前とは長い付き合いだから、なんとなく、な……。涼しい顔でいつも報告するお前が、あの子の世話を焼いているところを、少しばかり見てみたいものだ。忙しくて見れないのが残念でならない。きっと面白いものが見れるだろうな』
「……あの子には、翻弄されてばかりで……別に面白くは、ないと思います」
『そんな事はない。観察側に回ってみれば、お前も分かる。案外楽しいものだぞ?」
「⋯⋯そうでしょうか?」
「それにお前の苦労は、こちらも重々承知している。しかし、お前以外に代替(だいたい)が利かないからな。組織としても耳が痛い限りだ。スペアの人員が増やせれば、お前の負担も多少軽くなるんだが……』
「……仕方ありません。あの子が……あたし以外の担当を、拒絶して……全員殺しちゃいましたから……」
『それもそうだな、苦労を掛ける。──残りの報告は後ほど伺うとしよう。迎えを送る』
「……承知しました。では……これより帰投します」

『主(しゅ)に愛されし我らに、祝福あれ──』
「……(しゅ)に愛されし我らに、祝福あれ──」

 これにて相手との通信を終える。
 外付けアンテナを縮めて、クルクスはバイクの収納スペースに携帯電話を戻した。

「……観察側、ねぇ……」

 クルクスは再度ヘルメットを被り、バイクのエンジンを何度か吹かす。
「……毎日騒々しくて、少し疲れる。でも──」
 ため息の中、クルクスは組織に向けてバイクを発進させる。
「……任務のついで、だったけど。⋯⋯全員歯応え……なかったなー。……あたしの不意打ち、対応して欲しかった……」
 
──────────────────

 バイクを走りらせ、はや数時間──

 ハンドル近くの赤ランプが点滅を始めた。
 クルクスは燃料メーターを確認する。
 メーターのメモリは、“E”を示しており、今にもガソリンが尽きかけようとしていた。

 ブーーーブーーーッ!!

 バイクで移動するクルクスは、背後から突然クラクションを鳴らされた──大型車両だ。
 後ろから現れた暗色系の大型車両はスピードを上げ、クルクスの隣へと並んだ。
 大型車両はバイクと衝突することなく、クルクスを無事追い抜き前に出る。
 すると──大型車両の後部ハッチが開かれ、同時に傾斜路が降ろされた。
 薄暗い車内には、厚手の作業服ベストにガスマスクを装着しスタンバイするクルー。
 その(かたわ)らには、漆黒の戦闘服にカラスマスクをつけた兵士がおり、それぞれ数十名が静かに待機していた。

「……ジャスト、タイミングね」

 アクセルレバーとブレーキレバーで、クルクスはバイクのスピードを慎重に調整し、大型車両からの合図を待った。
「……今ねっ」
 大型車両から出されたハンドサインで、クルクスはアクセルレバーを少しひねり、バイクを加速させる。
 バイクは加速したまま、傾斜路を乗り上げて荷台へと移り、後部ハッチはゆっくりと閉じられる。
 クルーの指示に従い、荷台の最奥部でバイクを停車させて、クルクスはエンジンを切った。

「⋯⋯この子を、急いでカプセルに──」

 素早くロープを解いて、ニナニナをカラスマスクの兵士へと渡した。
 カラスマスクの兵士は、ニナニナを抱きかかえて、用意された巨大な縦長の箱型カプセルに、細心の注意を払いニナニナを収納する。
 収納が終わると、四隅(よすみ)のネジが順番に閉まり、カプセルがロックされた。
「──後は我らにお任せ下さい。ミス・ヴァレンタインが、奥でお待ちしております」
 兵士の言葉にクルクスは頷いた。
「──ミス・クルクス。お務めご苦労さまです」
 新人らしきクルーの1人が初々しく敬礼し、彼女に労いの言葉を掛ける。
「……えぇ、あなたもね」
 抑揚のない単調な返事と敬礼で、クルクスは返した。
「うわー⋯⋯かっこいいなーっ!!」
 冷淡で無愛想なクルクスの敬礼に、新人クルーは目を輝かせていた。
「残りの者はカプセルに目を光らせておけ。いいか、絶対にマスクは取るんじゃないぞッ」
 カラスマスクの兵士たちは、「イエッサーッ!!」と息の合った声で返答する。
「さあ、どうぞこちらへ──」
 先導するカラスマスクの兵士に、少し遅れてクルクスも続いた。



スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 第13話 極秘組織NSTF機関


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 トーマスと分かれた後、クルクスは愛車のバイクに跨り現場を後にしていた。
 プルルルルルッ──プルルルルルッ──
 バイクを走らせていると、彼女のストレートボディ型携帯電話に着信が入った。
 道の端にバイクを一時停車させるクルクス。
「……よいっしょ。はい……あたしです」
 外付けアンテナを伸ばし、クルクスはヘルメットを脱いで通話に出た。
『──クルクスか。任務は済んだのか……?』
「……はい。……暴れないよう、あの子は眠らせました。……遺体もほとんど、あの子が……。それと……トーマスおじさんと……エンカウントしました」
 クルクスは背中にふと違和感を覚え、ニナニナを固定するロープに目をやる。
 ロープは大きく弛緩し、ニナニナが今にも地面に落ちそうな状態だった。
『トーマスがそこに居たのか?』
「……はい」
『──からかったろ?』
「……よくお分かりで」
 会話と並行して、クルクスはロープを固く結び直す。
『──いたずらは継続せよ』
「……サーイエッサーッ」
『それはそうと……つかぬことを聞くんだが、クルクス。お前、あの子に相当手を焼いているだろう?』
 少しの沈黙の後、クルクスは話し出す。
「……やはり……分かるんですね」
『お前とは長い付き合いだから、なんとなく、な……。涼しい顔でいつも報告するお前が、あの子の世話を焼いているところを、少しばかり見てみたいものだ。忙しくて見れないのが残念でならない。きっと面白いものが見れるだろうな』
「……あの子には、翻弄されてばかりで……別に面白くは、ないと思います」
『そんな事はない。観察側に回ってみれば、お前も分かる。案外楽しいものだぞ?」
「⋯⋯そうでしょうか?」
「それにお前の苦労は、こちらも重々承知している。しかし、お前以外に代替《だいたい》が利かないからな。組織としても耳が痛い限りだ。スペアの人員が増やせれば、お前の負担も多少軽くなるんだが……』
「……仕方ありません。あの子が……あたし以外の担当を、拒絶して……全員殺しちゃいましたから……」
『それもそうだな、苦労を掛ける。──残りの報告は後ほど伺うとしよう。迎えを送る』
「……承知しました。では……これより帰投します」
『主《しゅ》に愛されし我らに、祝福あれ──』
「……主《しゅ》に愛されし我らに、祝福あれ──」
 これにて相手との通信を終える。
 外付けアンテナを縮めて、クルクスはバイクの収納スペースに携帯電話を戻した。
「……観察側、ねぇ……」
 クルクスは再度ヘルメットを被り、バイクのエンジンを何度か吹かす。
「……毎日騒々しくて、少し疲れる。でも──」
 ため息の中、クルクスは組織に向けてバイクを発進させる。
「……任務のついで、だったけど。⋯⋯全員歯応え……なかったなー。……あたしの不意打ち、対応して欲しかった……」
──────────────────
 バイクを走りらせ、はや数時間──
 ハンドル近くの赤ランプが点滅を始めた。
 クルクスは燃料メーターを確認する。
 メーターのメモリは、“E”を示しており、今にもガソリンが尽きかけようとしていた。
 ブーーーブーーーッ!!
 バイクで移動するクルクスは、背後から突然クラクションを鳴らされた──大型車両だ。
 後ろから現れた暗色系の大型車両はスピードを上げ、クルクスの隣へと並んだ。
 大型車両はバイクと衝突することなく、クルクスを無事追い抜き前に出る。
 すると──大型車両の後部ハッチが開かれ、同時に傾斜路が降ろされた。
 薄暗い車内には、厚手の作業服ベストにガスマスクを装着しスタンバイするクルー。
 その傍《かたわ》らには、漆黒の戦闘服にカラスマスクをつけた兵士がおり、それぞれ数十名が静かに待機していた。
「……ジャスト、タイミングね」
 アクセルレバーとブレーキレバーで、クルクスはバイクのスピードを慎重に調整し、大型車両からの合図を待った。
「……今ねっ」
 大型車両から出されたハンドサインで、クルクスはアクセルレバーを少しひねり、バイクを加速させる。
 バイクは加速したまま、傾斜路を乗り上げて荷台へと移り、後部ハッチはゆっくりと閉じられる。
 クルーの指示に従い、荷台の最奥部でバイクを停車させて、クルクスはエンジンを切った。
「⋯⋯この子を、急いでカプセルに──」
 素早くロープを解いて、ニナニナをカラスマスクの兵士へと渡した。
 カラスマスクの兵士は、ニナニナを抱きかかえて、用意された巨大な縦長の箱型カプセルに、細心の注意を払いニナニナを収納する。
 収納が終わると、四隅《よすみ》のネジが順番に閉まり、カプセルがロックされた。
「──後は我らにお任せ下さい。ミス・ヴァレンタインが、奥でお待ちしております」
 兵士の言葉にクルクスは頷いた。
「──ミス・クルクス。お務めご苦労さまです」
 新人らしきクルーの1人が初々しく敬礼し、彼女に労いの言葉を掛ける。
「……えぇ、あなたもね」
 抑揚のない単調な返事と敬礼で、クルクスは返した。
「うわー⋯⋯かっこいいなーっ!!」
 冷淡で無愛想なクルクスの敬礼に、新人クルーは目を輝かせていた。
「残りの者はカプセルに目を光らせておけ。いいか、絶対にマスクは取るんじゃないぞッ」
 カラスマスクの兵士たちは、「イエッサーッ!!」と息の合った声で返答する。
「さあ、どうぞこちらへ──」
 先導するカラスマスクの兵士に、少し遅れてクルクスも続いた。