第8話 狂喜に酔いしれる無垢なる虐殺
ー/ー ※第8話には色彩豊かで唆られる深紅の蜜のシーン、第9話の一部には衝撃で景観を彩るシーンがございます。
ポップな夢の続きをご覧になりたい方は、ここでゆっくりと傘を広げ、振り返ることなく優雅に第10話から続きをお楽しみください。
悪夢に惹かれた方は、そのまま一歩前へ────はいっ、結構デス。
それではお進みください。
では…………ごゆっくり。
──────────────────
「ねぇねぇっ! 今の、なあに、なあに──っ?!」
「「──ッ!?」」
一触即発で緊迫した空気がイレギュラーによって打ち破られた。
彼らの経験上テーザーガンを当てられて、ピンピンしている者など、今までにいなかったのだから。
「んな、バカな……っ?!」
それを少しの間を置いた後、誰もが内心で思っていたことを、ジェイコブの咄嗟に零れ出た一言が代弁した。
この場にいる全員が目の当たりにした、目を疑う非現実的な光景。
「……お嬢ちゃん、ケガは……ないんだね?」
ジェイコブの胸ぐらを摑んでいたトーマスの腕から、安堵のあまり力が抜ける。
「すっごい、びっくりしちゃったっ! ニナニナにくれたビリビリ、ニナニナからは、倍でお返しするねっ! えい──っ!」
「うぁああああああああ──ッ!!!!」
その瞬間、トーマスの隣にいた警官が青白い電撃に襲われ、苦痛の悲鳴が上がった。
「……あーあっ、真っ黒焦げ……壊れちゃったっ。キャパシティオーバーってやつーっ?」
碧眼で金髪のジェイコブは全身が真っ黒に焼け焦げ、棒立ちのまま絶命する。
「全員、距離を取れ──ッ!!」
トーマスの叫びで警官全員我に返り、この場を離脱するためすぐさま駆け出した。
彼が一瞬だけ後ろを振り返ると、真っ黒の墨髪警官の遺体近くにニナニナが見える。
両手を出して、何やら甘える仕草をしているようだった。
「ん~~~──ラブリー……っ!! もっと、もっとっ! ニナニナに、試させてーっ!!」
巨大な武器を軽々と持ち上げた幼女からどデカい一発が放たれる。
「──来るぞーッ!」
トーマスは大声を発しながら間一髪で回避するも、近くにいた警官2人──ジェイコブとジューシィ──はそれに巻き込まれた。
ビシャ──ッ! グシャ──ッ!!
2つの果実は跡形もなく破裂し、空中に舞い上がり無情に散った。
鼻を突く生々しい鉄の薫りは、彼らを狂わせ、彼女を酔わせる。
シャーーーッ
「きゃははははははははっ! 弾け飛んじゃったっ! でも玩具は逃げたら、ダメなんだよーっ?!」
シャーーーッ
上機嫌なプリティーガールは、血しぶきのカーテンを頭から被りに闊歩する。
口元に浮かべる無邪気な笑みは、さながら地獄に住まう天使のよう。
残ったのは、トーマス、デイヴィッド、小太りの警官の3人を残すのみとなった。
「もっと、もーっと! 遊んで、たいしぃーっ! 次はちょっと、よわめちゃおうっと……えりゃあ──っ!!」
その声と同時に、パトカーのボディが大きく凹み大破する。
右側面の前後のタイヤは一度少し浮き、数秒後再び地に足を着いた。
「セン、パイ……ッ」
デイヴィッドは、ちらりと隣にいるトーマスを横目で見た。
すんでのところでパトカーは形を保っていたが、デイヴィッドの表情は普段とは掛け離れており、目が怯えきっていた。
「それそれ、それそれ、それそれぇ──っ!!」
ドカン──ッ! ドカン──ッ!
ドカン──ッ! ドカン──ッ!
ドカン──ッ! ドカン──ッ!
何度も何度も、繰り返し放たれる重々しい一撃。
高頻度で放たれる一発一発高威力の衝撃が、一定間隔でパトカー越しに3人を襲う。
狂い咲く少女の射線を遮蔽し、相手が出力を落としたとはいえ、トーマスたちをパトカーもろともスクラップにしてしまう勢いだった。
「し、死にたくなぁい──ッ!」
「あっ! 待てぇ──ッ!」
トーマスの制止を振り切り、小太り警官ファットはエンジンがまだ生きている、無傷のパトカーに走る。
「玩具が逃げた逃げたーっ! 逃さないよーっ!!」
幼い少女ニナニナは、視界に捉えた獲物は何人たりとも逃さない。
すかさず、彼女の銃口から高圧縮されたエネルギー弾が連続して発射される。
「──うわッ!」
しかし──運命の悪戯か。彼はアスファルトに広がった赤い液体で足を滑らせた。
運が良いのか悪いのか死を回避することに成功する。
攻撃は空振りに終わり、獲物に逃走時間を与えてしまったニナニナ。避けられたのが余程不服だったのか、彼1人をターゲットを絞り込む。
「ら、ラッキィッ。こんな所で死んでたまるかよっ」
恐怖のあまり彼の表情は笑っていた。
「ニコニコーっ! 逃さないよーっ!」
後を追う彼女もまた、絶えない笑顔を振り撒いている。
彼女の注意がトーマスとデイヴィッドから逸れた。
「デイヴィッド、全力で走るぞッ」
トーマスの言葉にデイヴィッドは短く頷く。
この隙にもう1台のパトカーで逃げようと、2人は走り出した。
幸いにも2人は彼女に勘付かれることはなかった。
「ははッ、はははッ! 逃げるんだ、逃げるんだッ! クソー、どうしてだッ! どうして動かないッ!」
ファットの乗り込んだパトカー車内の後部座席で────何かが蠢いた。
恐怖で狂う彼の頭は焦りと苛立ちに溢れ、小さな異変は視界から排除されていた。
「はぁはぁ……あっ?」
落ち着きを取り戻した彼は、ここでふとルームミラーを確認する。
すると…………どこか見覚えのある、赤い液体が映り込んだ。
そのサイズは、成人男性を飲み込めるくらいには────デカかった。
ゆっくりと振り返りながら、彼はこう言った。
「オー、マイ……ガッ──」
遺言の途中で車内は血の水槽と化し、赤い液体は残る肉塊の消化を始めた。
──────────────────
「──早く乗り込めッ」
ドアを閉めたトーマスはパトカーのエンジンを始動させる。
キュルキュル、キュルルル
「先輩ぃいい! 早く、早く出して下さいッ!」
「わあってるよッ!」
キュルキュル、キュルルル
トーマスの頭にイヤな予感が走る。
もう一度だけ、エンジンを始動させようとトーマスは試みる。
キュルキュル、キュルルル
「クソったれがッ! 使えねぇなッ、このオンボロエンジンがッ! このタイミングで、どうして壊れるんだッ、チクショウ──ッ!!!!」
焦りのあまり苛立ちを隠せず、ハンドルを思い切り叩くトーマス。
何度やっても結果は同じ……それつまり死を意味する。
「もっともっと、ちょうだいちょうだ~い!」
狩りを終えたのか、ニナニナが2人へ接近していた。
遂に標的は彼らとなり彼女は牙を剥いたのだ。
「降りろ、トランクの武器を使うぞッ──」
「は、はいッ!」
車のトランクから、トーマスはM4カービンを、デイヴィッドはモスバーグM500を、各々引っ張り出す。
「覚悟を決めろッ──行くぞ」
そう言って2人は決意を固め、応戦を開始するのだった。
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