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卒業式

ー/ー



「これから、卒業される諸君は__」


 窮屈なバイプ椅子に座って、退屈なハゲ(校長)の話を聞き流す……授業でない分気は楽だが、面倒な時間である事に何も変わらない。

 今日、卒業して行く連中にとっては、それなりに厳粛な日になるのかもしれないが、在校生にとっては午前中に帰れる少し楽な日くらいの認識なんじゃなかろうか……?

 部活でもしてりゃ、普段世話になった先輩を見送る日になるんだろうが、生憎帰宅部の俺にそんな間柄の上級生は居ない。


 だけど………

 改めて周りを見渡して思う。来年は、俺も前列に居る連中と同じ立場になるんだよな。


 たかが1年……されど、1年………

 1年後の俺は、どうなってるんだろうか?

 多分………生きていれば、雪之丞と事務所を続ける事にはなってるんだろうな。学校と言う枷が取れて、今よりも仕事に専念出来る環境にはなる。


 ただ……今と殆どかわらねぇよな………

 今だって、既に仕事中心の生活を送ってる。仕事をして、それをこなす(・・・)為の修業をする。学校は、その合間に通ってるに過ぎない。それに仕事なんて、そう毎日あるわけでもないから、寧ろ暇な時間の方が増えちまいそうだな。


「まぁ、いいか……」


 周りに聞こえないような声で呟く。

 1年後が、どうであろうと結局は、目の前の事を一つ一つこなして(・・・・)がなきゃならねぇんだ。今と変わらなそうな未来の事なんて考えても仕方ない。

 全く耳に入らないハゲの話が続く中、俺はそうに思い直した。




    ◇◇◇


「卒業……『青春』だわ………」
「(卒業した)後の事決まったのか?」


 何やら………まぁ、いつもの事だが隣で感傷的になってる愛子に聞いてみる。

 長ったらしい卒業式も終わり、体育館からいつもの教室へ戻って来た直後だ。後は、ホームルームをして帰るだけなんでクラスの雰囲気も明るい。


「色々候補(・・)はあるけど、もう少し考えてみたいわ。まだ、1年あるんだもん」
「そうか……」


 机の付喪神である愛子も、いつも俺達と授業を受けてるように来年になれば学校を卒業する。

 職員として学校に残るか、GS協会に入るか、または協会の斡旋した職場に就職するか………はたまた進学するって言う話もある。


 元を辿れば、学校の備品でしかなかったこいつにこれだけの選択肢があるのは、それだけ “人” と “人ならざる者” が近しい関係にあるって事なんだろう。

 こいつと会うまでは、その辺の事情を良く知らなかったが喜ばしい事なんだと思う。


「去年も話したけど……横島君は、やっぱり今の仕事を続けるの?」
「ああ、そうなるだろうな」


 そういや、去年の期末試験の時に聞かれたな。

 あれから、もう3ヶ月以上経ったのか……それなりに色々あったが、やっぱり答えは変わらんな。


「じゃあ、伊達さんとGSの頂点を目指すんだ」
「別に目指さねぇよ」

「目指さないの?あの人の性格的に “頂点(テッペン)取ってやるぜ!” とか言いそうだけど……」
「強くなりたいと思ってるだけで、成り上がりたいわけじゃないからな。ぶっちゃけ、GSなんてついで(・・・)………食うための手段でしかない」

「…………振り切ってるわね」
「振り切ってるよ……」


 あいつは、ブレない……自分の思った事に常に全力前進だ。それが、奴の強さ一部でもある。


「え……じゃあ、何?横島君もそれを目指してるの?」
「別に目指してない。誰が一番強いかなんてどうでもいい」

「目指してないの……?じゃあ、何で一緒に居るのよ?」
「あいつはデカい事は言うけど、向上心は本物だ。あいつと一緒に居るだけで、俺も強くなれる。強くならなきゃ置いてかれる」

「何それ……?じゃあ、横島君は伊達さんと一緒に居たいから強くなろうとしてるの?」
「…………そうじゃねぇよ。恋人追っかけてんじゃねぇんだから……」


 こいつ(愛子)の言い方だと、俺達の関係がとんでもない物に聞こえて来るぞ……

 何だっけ……?BL?やおい?

 いや、どっちでもいいし、どっちでもねぇわ………


「だって、矛盾してるじゃない。誰が一番強いか興味ないのに、強くなろうとしてるんでしょ?何で?」
「そりゃ、一番に興味はねぇけど、今より強くなりたいとは思ってるよ。強くなれば、デカい仕事も受けれるし、ヤバい敵が出ても対応出来る」


 ………………それに、目の前の命を救う(・・)事だって出来る。

 月の一件以来、アシュタロス一派の話はこっちに入って来ない。だが、知らない所で着々と動いてるんだろう。

 だから、 “その時” がいつ来ても良いように牙は磨ける内に磨いておきたい。


 もう、 “あんな醜態” 晒すのは御免だからな……


「随分、求道的になっちゃったわね…… “綺麗な姉ちゃんと退廃的な生活がしたい” なんて言ってた人の言葉とは、思えないわ」
「そりゃ、どうも……」


 2年の初め頃は、んな事言ってたな………

 もう、何年も前の気がするが無知ってのは、本当に恐ろしい。



 …………と…まあ、何だかんだ言ったがその後はフック達クラスメイトとゲーセンに行って遊んだ。

 何でも無いありふれた1日……卒業式なんて、在校生からしたらやっぱりそんなもんだろ。




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「これから、卒業される諸君は__」
 窮屈なバイプ椅子に座って、退屈な|ハゲ《校長》の話を聞き流す……授業でない分気は楽だが、面倒な時間である事に何も変わらない。
 今日、卒業して行く連中にとっては、それなりに厳粛な日になるのかもしれないが、在校生にとっては午前中に帰れる少し楽な日くらいの認識なんじゃなかろうか……?
 部活でもしてりゃ、普段世話になった先輩を見送る日になるんだろうが、生憎帰宅部の俺にそんな間柄の上級生は居ない。
 だけど………
 改めて周りを見渡して思う。来年は、俺も前列に居る連中と同じ立場になるんだよな。
 たかが1年……されど、1年………
 1年後の俺は、どうなってるんだろうか?
 多分………生きていれば、雪之丞と事務所を続ける事にはなってるんだろうな。学校と言う枷が取れて、今よりも仕事に専念出来る環境にはなる。
 ただ……今と殆どかわらねぇよな………
 今だって、既に仕事中心の生活を送ってる。仕事をして、それを|こなす《・・・》為の修業をする。学校は、その合間に通ってるに過ぎない。それに仕事なんて、そう毎日あるわけでもないから、寧ろ暇な時間の方が増えちまいそうだな。
「まぁ、いいか……」
 周りに聞こえないような声で呟く。
 1年後が、どうであろうと結局は、目の前の事を一つ一つ|こなして《・・・・》がなきゃならねぇんだ。今と変わらなそうな未来の事なんて考えても仕方ない。
 全く耳に入らないハゲの話が続く中、俺はそうに思い直した。
    ◇◇◇
「卒業……『青春』だわ………」
「(卒業した)後の事決まったのか?」
 何やら………まぁ、いつもの事だが隣で感傷的になってる愛子に聞いてみる。
 長ったらしい卒業式も終わり、体育館からいつもの教室へ戻って来た直後だ。後は、ホームルームをして帰るだけなんでクラスの雰囲気も明るい。
「色々|候補《・・》はあるけど、もう少し考えてみたいわ。まだ、1年あるんだもん」
「そうか……」
 机の付喪神である愛子も、いつも俺達と授業を受けてるように来年になれば学校を卒業する。
 職員として学校に残るか、GS協会に入るか、または協会の斡旋した職場に就職するか………はたまた進学するって言う話もある。
 元を辿れば、学校の備品でしかなかったこいつにこれだけの選択肢があるのは、それだけ “人” と “人ならざる者” が近しい関係にあるって事なんだろう。
 こいつと会うまでは、その辺の事情を良く知らなかったが喜ばしい事なんだと思う。
「去年も話したけど……横島君は、やっぱり今の仕事を続けるの?」
「ああ、そうなるだろうな」
 そういや、去年の期末試験の時に聞かれたな。
 あれから、もう3ヶ月以上経ったのか……それなりに色々あったが、やっぱり答えは変わらんな。
「じゃあ、伊達さんとGSの頂点を目指すんだ」
「別に目指さねぇよ」
「目指さないの?あの人の性格的に “|頂点《テッペン》取ってやるぜ!” とか言いそうだけど……」
「強くなりたいと思ってるだけで、成り上がりたいわけじゃないからな。ぶっちゃけ、GSなんて|ついで《・・・》………食うための手段でしかない」
「…………振り切ってるわね」
「振り切ってるよ……」
 あいつは、ブレない……自分の思った事に常に全力前進だ。それが、奴の強さ一部でもある。
「え……じゃあ、何?横島君もそれを目指してるの?」
「別に目指してない。誰が一番強いかなんてどうでもいい」
「目指してないの……?じゃあ、何で一緒に居るのよ?」
「あいつはデカい事は言うけど、向上心は本物だ。あいつと一緒に居るだけで、俺も強くなれる。強くならなきゃ置いてかれる」
「何それ……?じゃあ、横島君は伊達さんと一緒に居たいから強くなろうとしてるの?」
「…………そうじゃねぇよ。恋人追っかけてんじゃねぇんだから……」
 |こいつ《愛子》の言い方だと、俺達の関係がとんでもない物に聞こえて来るぞ……
 何だっけ……?BL?やおい?
 いや、どっちでもいいし、どっちでもねぇわ………
「だって、矛盾してるじゃない。誰が一番強いか興味ないのに、強くなろうとしてるんでしょ?何で?」
「そりゃ、一番に興味はねぇけど、今より強くなりたいとは思ってるよ。強くなれば、デカい仕事も受けれるし、ヤバい敵が出ても対応出来る」
 ………………それに、目の前の命を|救う《・・》事だって出来る。
 月の一件以来、アシュタロス一派の話はこっちに入って来ない。だが、知らない所で着々と動いてるんだろう。
 だから、 “その時” がいつ来ても良いように牙は磨ける内に磨いておきたい。
 もう、 “あんな醜態” 晒すのは御免だからな……
「随分、求道的になっちゃったわね…… “綺麗な姉ちゃんと退廃的な生活がしたい” なんて言ってた人の言葉とは、思えないわ」
「そりゃ、どうも……」
 2年の初め頃は、んな事言ってたな………
 もう、何年も前の気がするが無知ってのは、本当に恐ろしい。
 …………と…まあ、何だかんだ言ったがその後はフック達クラスメイトとゲーセンに行って遊んだ。
 何でも無いありふれた1日……卒業式なんて、在校生からしたらやっぱりそんなもんだろ。