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第29話:世界を救ったのは、ただの猫だった件。-2

ー/ー



 一方、魔王軍の兵士たちは、魔王の力の衰えと、リリアーナの予測不能な行動に混乱し、その動きが鈍った。彼らの士気は、急速に低下していく。魔王の絶望的な叫びが、彼らの心に響き、戦意を失わせていく。

 ゼノスは、魔王の絶望を目の当たりにし、顔面蒼白になった
 。彼の信じていた魔王の計画が、目の前で、あまりにもあっけなく崩れ去っていく。

 彼の脳裏には、魔王が語った「大いなる冬」の予言と、それを乗り越えるための壮大な計画が、走馬灯のように蘇っていた。それら全てが、目の前の少女の無邪気な行動によって、塵と化していく。

「魔王様…!あの女は、魔王様の力の源を…!何という恐るべき力…!これは、我々を内部から崩壊させるための、巧妙な戦略に違いありません!魔王様の全てが…!我々の『大いなる冬』への備えが…!全てが…!」

 ゼノスは、リリアーナの行動が、魔王の計画を完全に破壊していることを理解した。しかし、リリアーナは、ただ「遊び」に夢中なだけだ。彼の絶望的な叫びは、リリアーナの耳には届かない。

 リリアーナは、最高の「おもちゃ」を見つけたことに夢中だった。
 彼女は、さらに勢いをつけて「魔力の核」を転がし続けた。核から飛び散る光の粒子は、貯蔵装置の空間全体を光で満たし、やがて、その光は収束し、魔力の核は、まるで役目を終えたかのように、輝きを失い、小さな、ただの石へと戻っていった。

 その石は、何の変哲もない、ただの丸い石だった。

「ニャー…(あれ?もう終わりニャ?)」

 リリアーナは、光を失った核を、少しだけ不満そうに見つめた。
 最高の「キラキラ」が、急につまらなくなってしまった。

 まるで、電池が切れたおもちゃのように。彼女は、その石をポイと放り投げた。その石は、地面に転がり、誰にも気づかれることなく、隅に転がった。

 その瞬間、魔王シエルは、完全に力が抜けたかのように、その場に崩れ落ちた。
 彼の全身から、魔力が完全に失われ、小柄な体は、さらに小さく、弱々しく見えた。

 彼の瞳からは、光が失われ、ただ虚空を見つめている。

「ああ…私の備蓄が…!全てが…!私の…私の世界が…!なぜ…なぜこんなことが…!私は…私は一体…何を…」

 シエルは、絶望の淵に沈んでいた。
 彼のリスとしての本能が、冬の備蓄を全て失ったことを告げていた。

 それは、彼の存在意義そのものが失われたことを意味していた。
 彼は、もはや戦う力も、立ち上がる気力も残っていなかった。ただ、虚無感だけが彼を包んでいた。

 魔王軍の兵士たちは、魔王の絶望的な姿を見て、戦意を完全に喪失した。
 彼らは、武器を捨て、その場にひざまずいた。
 抵抗する者も、逃げ出す者もいない。
 ただ、呆然と、目の前の光景を受け入れている。

「魔王様…!」

 ゼノスは、魔王の傍らに駆け寄り、その姿を見て、涙を流した。
 彼の信じていた「世界を救う計画」は、目の前で、あまりにもあっけなく終わりを告げたのだ。
 彼の心は、絶望と、そして魔王への深い同情で満たされていた。

「魔王様…!申し訳ございません…!我々の力が及ばず…!このゼノス、魔王様をお守りできませんでした…!しかし、魔王様の崇高な御心は、決して無駄にはなりません…!」

 その頃、魔王城の外部では、王国軍が城内へと突入し、魔王軍の残党を制圧していた。
 勝利の雄叫びが城中に響き渡る。

 アリアは、魔王城の最深部へと急いでいた。
 彼女の心には、賢者リリアーナへの感謝と、世界を救ったという達成感が満ちていた。

「リリアーナ様!ご無事ですか!?魔王は…魔王は討ち滅ぼされましたか!?」

 アリアが、貯蔵装置の空間に飛び込んできた。彼女の目に映ったのは、光を失った魔力の核を前に呆然と立ち尽くすリリアーナと、その傍らで絶望に打ちひしがれる魔王シエル、そしてその側近ゼノスの姿だった。

「リリアーナ様…!貴方様が、魔王を…!やはり、貴方様は、この世界の救世主でございます!この世界は、貴方様によって救われました!」

 アリアは、リリアーナに駆け寄り、深々と頭を下げた。兵士たちも、それに倣ってひざまずく。彼らの顔には、畏敬と、そして希望の光が満ちていた。彼らは、リリアーナの「神業」が、世界を救ったのだと信じて疑わない。

 リリアーナは、ひざまずく人間たちを前に、ただ困惑していた。

「ニャー…(なんでみんな、急にひざまずくニャ?)」

 彼女の頭の中は、ただ「最高のキラキラが、急につまらなくなっちゃったニャ…」という、猫らしいシンプルな思考でいっぱいだった。

 彼女は、自分が世界の救世主になったことなど、夢にも思っていなかった。
 ただ、邪魔な「うるさいネズミ」がいなくなり、快適になったことに満足していた。





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 一方、魔王軍の兵士たちは、魔王の力の衰えと、リリアーナの予測不能な行動に混乱し、その動きが鈍った。彼らの士気は、急速に低下していく。魔王の絶望的な叫びが、彼らの心に響き、戦意を失わせていく。
 ゼノスは、魔王の絶望を目の当たりにし、顔面蒼白になった
 。彼の信じていた魔王の計画が、目の前で、あまりにもあっけなく崩れ去っていく。
 彼の脳裏には、魔王が語った「大いなる冬」の予言と、それを乗り越えるための壮大な計画が、走馬灯のように蘇っていた。それら全てが、目の前の少女の無邪気な行動によって、塵と化していく。
「魔王様…!あの女は、魔王様の力の源を…!何という恐るべき力…!これは、我々を内部から崩壊させるための、巧妙な戦略に違いありません!魔王様の全てが…!我々の『大いなる冬』への備えが…!全てが…!」
 ゼノスは、リリアーナの行動が、魔王の計画を完全に破壊していることを理解した。しかし、リリアーナは、ただ「遊び」に夢中なだけだ。彼の絶望的な叫びは、リリアーナの耳には届かない。
 リリアーナは、最高の「おもちゃ」を見つけたことに夢中だった。
 彼女は、さらに勢いをつけて「魔力の核」を転がし続けた。核から飛び散る光の粒子は、貯蔵装置の空間全体を光で満たし、やがて、その光は収束し、魔力の核は、まるで役目を終えたかのように、輝きを失い、小さな、ただの石へと戻っていった。
 その石は、何の変哲もない、ただの丸い石だった。
「ニャー…(あれ?もう終わりニャ?)」
 リリアーナは、光を失った核を、少しだけ不満そうに見つめた。
 最高の「キラキラ」が、急につまらなくなってしまった。
 まるで、電池が切れたおもちゃのように。彼女は、その石をポイと放り投げた。その石は、地面に転がり、誰にも気づかれることなく、隅に転がった。
 その瞬間、魔王シエルは、完全に力が抜けたかのように、その場に崩れ落ちた。
 彼の全身から、魔力が完全に失われ、小柄な体は、さらに小さく、弱々しく見えた。
 彼の瞳からは、光が失われ、ただ虚空を見つめている。
「ああ…私の備蓄が…!全てが…!私の…私の世界が…!なぜ…なぜこんなことが…!私は…私は一体…何を…」
 シエルは、絶望の淵に沈んでいた。
 彼のリスとしての本能が、冬の備蓄を全て失ったことを告げていた。
 それは、彼の存在意義そのものが失われたことを意味していた。
 彼は、もはや戦う力も、立ち上がる気力も残っていなかった。ただ、虚無感だけが彼を包んでいた。
 魔王軍の兵士たちは、魔王の絶望的な姿を見て、戦意を完全に喪失した。
 彼らは、武器を捨て、その場にひざまずいた。
 抵抗する者も、逃げ出す者もいない。
 ただ、呆然と、目の前の光景を受け入れている。
「魔王様…!」
 ゼノスは、魔王の傍らに駆け寄り、その姿を見て、涙を流した。
 彼の信じていた「世界を救う計画」は、目の前で、あまりにもあっけなく終わりを告げたのだ。
 彼の心は、絶望と、そして魔王への深い同情で満たされていた。
「魔王様…!申し訳ございません…!我々の力が及ばず…!このゼノス、魔王様をお守りできませんでした…!しかし、魔王様の崇高な御心は、決して無駄にはなりません…!」
 その頃、魔王城の外部では、王国軍が城内へと突入し、魔王軍の残党を制圧していた。
 勝利の雄叫びが城中に響き渡る。
 アリアは、魔王城の最深部へと急いでいた。
 彼女の心には、賢者リリアーナへの感謝と、世界を救ったという達成感が満ちていた。
「リリアーナ様!ご無事ですか!?魔王は…魔王は討ち滅ぼされましたか!?」
 アリアが、貯蔵装置の空間に飛び込んできた。彼女の目に映ったのは、光を失った魔力の核を前に呆然と立ち尽くすリリアーナと、その傍らで絶望に打ちひしがれる魔王シエル、そしてその側近ゼノスの姿だった。
「リリアーナ様…!貴方様が、魔王を…!やはり、貴方様は、この世界の救世主でございます!この世界は、貴方様によって救われました!」
 アリアは、リリアーナに駆け寄り、深々と頭を下げた。兵士たちも、それに倣ってひざまずく。彼らの顔には、畏敬と、そして希望の光が満ちていた。彼らは、リリアーナの「神業」が、世界を救ったのだと信じて疑わない。
 リリアーナは、ひざまずく人間たちを前に、ただ困惑していた。
「ニャー…(なんでみんな、急にひざまずくニャ?)」
 彼女の頭の中は、ただ「最高のキラキラが、急につまらなくなっちゃったニャ…」という、猫らしいシンプルな思考でいっぱいだった。
 彼女は、自分が世界の救世主になったことなど、夢にも思っていなかった。
 ただ、邪魔な「うるさいネズミ」がいなくなり、快適になったことに満足していた。