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第8話:情報戦?いいえ、ただの探検ニャ。-1

ー/ー



 嘆きの荒野での激戦は、魔王シエルの備蓄品が破壊されたことで、一旦の終結を迎えた。

 王国軍は歓喜に沸き返り、賢者リリアーナの「神業」を称賛する声が、荒野のあちこちで響き渡っていた。兵士たちは互いの肩を叩き合い、勝利の喜びを分かち合っている。

 アリア・グランツは、リリアーナの隣で、その顔を輝かせ、まるで奇跡を目撃したかのような感動に打ち震えていた。

「リリアーナ様!貴方様のお力は、やはりこの世界を救うためにあるのですね!魔王の力の源を的確に破壊されるとは、我々には到底及ばぬ戦略でございます!この勝利は、ひとえに賢者様のおかげです!」

 アリアは、リリアーナの行動を全て、魔王を打倒するための計算され尽くした、深遠なる戦略だと信じて疑わない。

 彼女の頭の中では、リリアーナの気まぐれな猫パンチが、魔王の弱点を看破した「神の一撃」へと変換されていた。兵士たちもまた、リリアーナを見る目に、畏敬と熱狂を宿していた。彼らにとって、リリアーナはもはや、人知を超えた存在だった。

 一方、魔王軍は混乱の極みにあった。魔王シエルの絶望は深く、彼は破壊された結晶の残骸を呆然と見つめている。

 彼の「大いなる冬」への備蓄計画は、根幹から揺るがされたのだ。
 彼にとって、あの女の行動は、理解不能な、しかし恐るべき破壊だった。リスが冬のために集めた木の実を、何者かに荒らされたかのような、根源的な恐怖と怒りがシエルを支配していた。

「キィィィィィィィッ…!私の…私の備蓄が…!」

 シエルの傍らで、魔族の参謀ゼノスは、顔面蒼白になっていた。魔王がこれほどまでに打ちひしがれる姿は、彼にとっても滅多に見るものではなかった。

「魔王様…!まさか、あの女が、魔王様の備蓄を…!?何という恐るべき力…!我々の計画が…!」

 ゼノスもまた、リリアーナの行動を「戦略」と解釈するしかなかった。彼の脳裏には、リリアーナが魔王の思考を読み、その弱点をピンポイントで突いた、悪魔的なまでの知略が描かれていた。戦場は、人間側の歓喜と、魔族側の絶望が入り混じり、奇妙な対比を見せていた。

 リリアーナは、そんな両軍の様子を気にも留めていなかった。
 彼女の頭の中は、ただ「邪魔なものが消えて、静かになった」という、猫らしいシンプルな思考でいっぱいだった。荒野の風が、ようやく心地よく感じられる。これで、ゆっくり日向ぼっこでもできるだろうか。

 しかし、戦いは終わったわけではなかった。この世界の命運をかけた戦いは、まだ序章に過ぎなかったのだ。

 数日後、王国軍の会議室で、新たな情報がもたらされた。斥候部隊からの報告によると、魔王軍が、王国の北部に位置する「輝きの鉱山」へと進軍を開始したというのだ。

「輝きの鉱山は、この王国で最も魔力結晶が豊富に採れる場所です。その魔力結晶は、質も量も他の追随を許しません。魔王は、失われた備蓄を補うため、そこを狙っているに違いありません!」

 アリアが、巨大な地図を広げながら、熱弁を振るう。

 地図には、輝きの鉱山の位置が、赤い印で示されている。国王や高官たちの顔には、再び緊張が走った。彼らは、魔王の次の行動を予測し、その阻止に全力を尽くそうとしていた。

「リリアーナ様、どうか我々と共に、輝きの鉱山へ!魔王の新たな企みを阻止せねばなりません!このままでは、魔王は再び強大な力を手に入れ、世界は滅びてしまいます!」

 アリアは、リリアーナに同行を求める。その眼差しは、真剣そのものだ。
 リリアーナは、アリアの真剣な眼差しに、少しだけ退屈そうな表情を浮かべた。長い話は苦手だ。特に、自分には関係のない、難しそうな話は。人間の話は、どうしてこうも回りくどいのだろうか。

「ニャー…(早く終わらないかな。お昼寝したいニャ…)」

 リリアーナは、会議室の窓から差し込む日差しに、うとうとし始めていた。瞼が重くなり、意識が遠のきかける。しかし、その時、アリアの言葉の中に、ミーコの本能を刺激する、抗いがたい単語が混じっていた。

「…その鉱山には、通常の魔力結晶だけでなく、キラキラと輝く珍しい鉱石が豊富に眠っていると、古くから伝えられています。その輝きは、星の光を閉じ込めたかのようだと…」

「んニャ!?」

 リリアーナの瞳が、カッと見開かれた。眠気は一瞬で吹き飛んだ。

 キラキラ!その言葉に、リリアーナの全身の毛が逆立つかのような興奮が走った。

 ミーコは、光るものが大好きだった。
 光るおもちゃ、光る虫、光る水滴。
 全てがミーコにとって、最高の遊び道具だった。
 あの、魔王が埋めていた結晶も、キラキラしていたから面白かったのだ。

「ニャー!キラキラしてるニャ!面白そうニャ!」

 リリアーナは、前のめりになった。その瞳は、獲物を見つけた猫のように、鋭く輝いている。アリアは、リリアーナの反応を見て、確信した。

「さすが賢者様!魔王の狙いが、ただの魔力結晶だけでなく、その奥に眠る希少な輝きの鉱石にあることを見抜かれたのですね!その鉱石は、魔王の力をさらに増幅させる恐れがあります!賢者様は、その危険性を察知されたのだ!」

 アリアは、リリアーナの「キラキラ」への純粋な興味を、魔王の真の狙いを看破した「洞察力」と解釈した。
 国王も高官たちも、アリアの言葉に深く頷いた。

 彼らの間では、リリアーナの行動は全て、世界を救うための深遠な意味を持つものとして受け止められていた。





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 王国軍は歓喜に沸き返り、賢者リリアーナの「神業」を称賛する声が、荒野のあちこちで響き渡っていた。兵士たちは互いの肩を叩き合い、勝利の喜びを分かち合っている。
 アリア・グランツは、リリアーナの隣で、その顔を輝かせ、まるで奇跡を目撃したかのような感動に打ち震えていた。
「リリアーナ様!貴方様のお力は、やはりこの世界を救うためにあるのですね!魔王の力の源を的確に破壊されるとは、我々には到底及ばぬ戦略でございます!この勝利は、ひとえに賢者様のおかげです!」
 アリアは、リリアーナの行動を全て、魔王を打倒するための計算され尽くした、深遠なる戦略だと信じて疑わない。
 彼女の頭の中では、リリアーナの気まぐれな猫パンチが、魔王の弱点を看破した「神の一撃」へと変換されていた。兵士たちもまた、リリアーナを見る目に、畏敬と熱狂を宿していた。彼らにとって、リリアーナはもはや、人知を超えた存在だった。
 一方、魔王軍は混乱の極みにあった。魔王シエルの絶望は深く、彼は破壊された結晶の残骸を呆然と見つめている。
 彼の「大いなる冬」への備蓄計画は、根幹から揺るがされたのだ。
 彼にとって、あの女の行動は、理解不能な、しかし恐るべき破壊だった。リスが冬のために集めた木の実を、何者かに荒らされたかのような、根源的な恐怖と怒りがシエルを支配していた。
「キィィィィィィィッ…!私の…私の備蓄が…!」
 シエルの傍らで、魔族の参謀ゼノスは、顔面蒼白になっていた。魔王がこれほどまでに打ちひしがれる姿は、彼にとっても滅多に見るものではなかった。
「魔王様…!まさか、あの女が、魔王様の備蓄を…!?何という恐るべき力…!我々の計画が…!」
 ゼノスもまた、リリアーナの行動を「戦略」と解釈するしかなかった。彼の脳裏には、リリアーナが魔王の思考を読み、その弱点をピンポイントで突いた、悪魔的なまでの知略が描かれていた。戦場は、人間側の歓喜と、魔族側の絶望が入り混じり、奇妙な対比を見せていた。
 リリアーナは、そんな両軍の様子を気にも留めていなかった。
 彼女の頭の中は、ただ「邪魔なものが消えて、静かになった」という、猫らしいシンプルな思考でいっぱいだった。荒野の風が、ようやく心地よく感じられる。これで、ゆっくり日向ぼっこでもできるだろうか。
 しかし、戦いは終わったわけではなかった。この世界の命運をかけた戦いは、まだ序章に過ぎなかったのだ。
 数日後、王国軍の会議室で、新たな情報がもたらされた。斥候部隊からの報告によると、魔王軍が、王国の北部に位置する「輝きの鉱山」へと進軍を開始したというのだ。
「輝きの鉱山は、この王国で最も魔力結晶が豊富に採れる場所です。その魔力結晶は、質も量も他の追随を許しません。魔王は、失われた備蓄を補うため、そこを狙っているに違いありません!」
 アリアが、巨大な地図を広げながら、熱弁を振るう。
 地図には、輝きの鉱山の位置が、赤い印で示されている。国王や高官たちの顔には、再び緊張が走った。彼らは、魔王の次の行動を予測し、その阻止に全力を尽くそうとしていた。
「リリアーナ様、どうか我々と共に、輝きの鉱山へ!魔王の新たな企みを阻止せねばなりません!このままでは、魔王は再び強大な力を手に入れ、世界は滅びてしまいます!」
 アリアは、リリアーナに同行を求める。その眼差しは、真剣そのものだ。
 リリアーナは、アリアの真剣な眼差しに、少しだけ退屈そうな表情を浮かべた。長い話は苦手だ。特に、自分には関係のない、難しそうな話は。人間の話は、どうしてこうも回りくどいのだろうか。
「ニャー…(早く終わらないかな。お昼寝したいニャ…)」
 リリアーナは、会議室の窓から差し込む日差しに、うとうとし始めていた。瞼が重くなり、意識が遠のきかける。しかし、その時、アリアの言葉の中に、ミーコの本能を刺激する、抗いがたい単語が混じっていた。
「…その鉱山には、通常の魔力結晶だけでなく、キラキラと輝く珍しい鉱石が豊富に眠っていると、古くから伝えられています。その輝きは、星の光を閉じ込めたかのようだと…」
「んニャ!?」
 リリアーナの瞳が、カッと見開かれた。眠気は一瞬で吹き飛んだ。
 キラキラ!その言葉に、リリアーナの全身の毛が逆立つかのような興奮が走った。
 ミーコは、光るものが大好きだった。
 光るおもちゃ、光る虫、光る水滴。
 全てがミーコにとって、最高の遊び道具だった。
 あの、魔王が埋めていた結晶も、キラキラしていたから面白かったのだ。
「ニャー!キラキラしてるニャ!面白そうニャ!」
 リリアーナは、前のめりになった。その瞳は、獲物を見つけた猫のように、鋭く輝いている。アリアは、リリアーナの反応を見て、確信した。
「さすが賢者様!魔王の狙いが、ただの魔力結晶だけでなく、その奥に眠る希少な輝きの鉱石にあることを見抜かれたのですね!その鉱石は、魔王の力をさらに増幅させる恐れがあります!賢者様は、その危険性を察知されたのだ!」
 アリアは、リリアーナの「キラキラ」への純粋な興味を、魔王の真の狙いを看破した「洞察力」と解釈した。
 国王も高官たちも、アリアの言葉に深く頷いた。
 彼らの間では、リリアーナの行動は全て、世界を救うための深遠な意味を持つものとして受け止められていた。