「同胞」第二節
ー/ー 目的はすでにはっきりしていた。いつも「彼」が通っている道はチェック済みだった。ここで、待っていれば「彼」に必ず会える。
都は美波に頼まれている買い物帰りだった。誰かに見られていると気付いて、敏感になっていた。学校終わりの午後四時すぎ。
近所の人しか知らない細道だった。一人の女子中学生が都を待っている。見た目は、紺に近い紫の髪と、紅い瞳だとニュースでは言っていた。
山口鈴で間違いなかった。
「山口鈴――僕を殺しにきたのか?」
都は隠し持っていたナイフを取り出す。都は鈴の首筋に、ナイフを突きつけた。ふわり、と甘いシャンプーの香りが鼻をくすぐっていく。
突きつけられたナイフを、鈴は振り払おうとはしない。むしろ、都から見ても堂々と立っている。
テレビでの話から情報処理を、得意としているらしい。不思議なのは鈴から殺気を感じなかったことだ。
――この子も僕と同じ被害者だったのか。
都は鈴が話してくれて内容を知った。
ナイフを下げる。
どことなく、都の瞳は透明さを滲ませているみたいだった。透き通っている瞳をしている。死を覚悟している者の瞳でもあった。
覚悟を決めている者の瞳は強い。
例え、己の存在が世間から忘れ去られたとしても、全力で戦い抜く。都の揺るぎない決心があった。
ぶれることもない。
底知れぬ強さがあった。
態度を軟化させる。
「無理矢理に会わないと、話そうとはしないよね?逃げるよね?」
「教授に刃向かうなんて自分を、追い詰めるのか?」
「あら? 心配してくれているの? 私は私の意思で会いに来たのよ。あなたに時間がないのは分かっているわ。教授に会いにいくつもりなの? 今の家族は?」
「守るさ」
「十河孝への報復の計画を、考えていたらどうする?」
「君たちの計画もあるだろう。それに、口出しをするつもりはない」
「私にあなたの家族を守らせて。人が傷つくのを見たくないの。傷つく人を増やしたくないの。お願い」
二通の手紙を差し出していた。湊の名前と相田家の名前も、封筒には書いてある。
「手紙を書いた時に、予感がした」
都が語りかけてくるとは、思っていなかった。
「予感?」
「そう。手紙を書いた時に、渡す人が現れるとの予感」
「それが、私?」
「うん。それと、もう一つは、僕に会いに来た勇気を勝っただけだよ」
「あなたが出した答えに、後悔はないのね」
「親の不始末は子供の責任だと思うから」
「最後に私、あなたに謝らないといけないのよ」
「謝る?」
何を言っている? と、都は聞き返してきた。
「教授の様子を探るのに、あなたを利用したの。ごめんなさい」
「別に利用価値があると思うのなら、利用すればいい」
「利用されて悔しくないの?」
「利用価値があるのなら、使ってもらってもいい。 まだ、使ってもらえると思う方が幸せだ」
都の背中を送って鈴は歩き出す。二人がいた場所は、何事もなく静まり返っていた。
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