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24.ときめきに、心躍らせ闇を砕く

ー/ー



【太陽の湖畔】はひと晩の宿としてだけ……それも、以前の旅と同じだ。
 夜の出来事は、ほんの戯れ程度と――……目的地へ向かう。

「山道というものはないに等しい、足場が悪い中で魔物に襲われることもあるだろう……気を抜かないようにな」
「大丈夫……ミウ、こうする」
「アデル王子が見たら、羨ましがるでしょうね」

 ぴょんとアダルヘルムの首にまたがり、先を指さすミウ。

「ははは……お?重くなったな、ミっ!こ、こら!叩くな!危ないだろう!」
「今のはアダルくんが悪いよ〜?おチビも、立派なレディなんだからサ?」
「あくま……褒めて使わす」
「なんで偉そうなの……」

 騒がしく、賑やかな声を背中に受けながらゼンは先頭を歩いていた。
 少しの段差も軽々と越え、登ったり降りたり……険しい道であるはずなのに、息が上がることもなく平然と歩いていく。

「拒んだ手前こんな事を言うのはお門違いもいいところなのだろうが……羨ましくなる」
「今からでも、お願いしてみては?」
「いや……これ以上人離れしてしまえば己を失うだろう、忘れてくれ」
「あにぃ、がんばれ……ミウ、応援する」
「ははは……心強いなぁ……」

 カラカラに乾いた風が強く吹き付け、足取りを重くする。
 ゼンに遅れて数十分……頂の休憩所にたどり着く。
 過去には小さな小槍のような山があったその場所は、綺麗に切取られ、円形状の広場になっていた。
 崖の際と言っていいほど切り立った山肌のギリギリの場所で、ゼンは立っていた。

「やっときたか」
「さすがに山登りは慣れていないのものでな」

 腰を下ろし足を休めるアダルヘルム。
 肩から降りたミウは、ゼンの後ろに張り付き、ゼンと同じ景色を見始めた。

「あそこ、なんで……色が、違う?」
「あそこがミスリル坑道のある場所ですよ、ミウ。以前はミスリルの輝きがここからでも見えていましたが……取り尽くされてしまった今はこうもみすぼらしく、禍々しいだけの魔物の巣窟」

 緑生い茂り美しく爽めく森の中に、まるで焼かれた後、黒い炭の色をした山がこんもりと突起し、異様な空気を放っていた。

「ボクの眷属じゃない、混ざってる変な生き物だ……と、当たりでよかったネ!ゼン!」

 ゼンに飛びついたファインを見て、アダルヘルムは慌てて駆け出した。

「こら!そんな不安定なところに大人数で集まるな!!」

 心配は現実に……アダルヘルムが走り寄った振動がとどめを刺したのだ。
 板チョコが割れるように、パキッと軽い音を立てて地面が割れた。

「あらあら……」
「責任取れよ、アダルヘルム」
「落ちたら……痛いよ?あにぃ……」
「ボクは飛べるけど……皆はどうする〜?」
「……すまない」

 割れた地面と共に落ちているにも関わらず、冷静に文句を言うゼン達。

「責任は……取る!」

 背中の大斧掴み、すぐさま大きく振り被る。
 山の斜面に打ち付けた反動は、下に落ちる重力よりも強かった。
 横に飛び出しながら、全員を回収して少し離れた木に向かって飛んでいった。
 落下しながらバラバラになった割れた地面は、凄まじい音とともに土煙を上げ落下した。

「力技すぎじゃないアダルくん」
「私にはこの力しかないからな……無傷とは言えないだろうが、みんな無事か?」

 木の枝をクッション代わりに森の中に落ちた。
 責任を取るに、二言はなく、自らを下敷きにして地面に背中をつけていた。

「原始的だが、まぁ、ショートカットにはなったな、悪くない」
「刺激的……あにぃ、もっかい」
「ミウ……この後もっと刺激的なことが起こるはずですから、早くアダルの上からおりてあげなさい?」
「そうしてもらえると、助かる……」
「(ふぅん……?)」

 ちょうど淫紋の上で弾んでいたミウは、アダルヘルムの苦労は分かっていない様子だった。 
 毎度のことながら、ゼンのおかげで大きな怪我をすることはない……すぐに立ち上がり、回り道の必要がなくなったミスリル坑道までの残りの道を、進んでいく。

「どうする?入るか?」
「おチビ次第じゃない?すぐ終わらせるつもりがないなら、徹夜になるデショ?」

 短縮になったとは言え、入り口に付いたのは日が落ちてからだいぶ経ってからだった。
 食事もとっていない状態、疲れもある。

「別に全員で中にはいるこたぁねぇ」

 近くにあった切り株に腰を下ろし、ゼンは言った。

「ファイン、アダルヘルム、ふたりで行けばいいだけだろ」
「いいわけないだろ!あなたが連れてきたんだからあなたが行くべきだゼン・セクズ!!」
「ボクもアダルくんとふたりきりだと元気でないカモ……寂しいカモ……!」

 クスクスとクロエに笑われながら、ファインとアダルヘルムはゼンに抗議する。

「あにぃ……がんばって」
「ミウもこう言ってるだろ?男ふたりで楽しくやってこい」
「アダルは力、ファインは知力……とてもバランスがよろしいかと」

 聞く耳持たず……仕方なく折れ、坑道へ向かうことにしたファインとアダルヘルム。
 トボトボと歩くふたりの背中を、ニマニマと笑いながら見つめ見送るゼン。

「なにか持たせたほうがよかったかしら」
「ククク!問題ねぇだろ、なんだかんだ相性良いからな」
「ふふ、そうですね……ふたりに任せて、休ませてもらいましょう」
「クロ……ごはん、まだ?」

 焚き火の準備をし……ふたりの帰りを、のんびりと、待つ。

 *

 *

 *

 淀む空気が満ちる暗い坑道を、暗い表情で奥へと歩みを進めるファインと、アダルヘルム。

「アーダールーくーん」
「なんでしょうか……」
「敬語に戻らなくてもいいのに……でも、そうなるってことはまだまだ打ち解けれてないんだよネ〜?カナシイナ」
「悲しいという感情があるのなら、わかると思いますが……魔王であること、それは変わらない、と」

 きつい言い方をするアダルヘルムに、拗ねた表情をするファイン。

「なら、サ?」

 フワリと宙に浮き、アダルヘルムの首に優しく腕を絡め、耳元で甘く囁く。

「やっぱり……裸の付き合いって、大事だと思わない?」
「戯れを……あなたが人でないこともですが、さすがに同性にたいしてそん……ん……んん??」
「ボクはさ、ゼンに抱いてもらえるんだヨ?なんでだろうって思わない?」

 背中に突如感じた、ふわふわともっちりとした柔らかい感触に動きを止めるアダルヘルム。

「こんな所でなにをす……いや、今はそれが問題ではな……いや、問題だ!ファイン殿……っ!!」
「………ふぅん?結構柔らかい唇してるんだネ、アダルくんって」

 果物にかぶりつくようにアダルヘルムの唇を奪ったファインは、滑るように体を密着させる。
 その姿は、絶世の美女と言って過言ではないほど見目麗しい……上目遣いでジッと見つめられ、不覚にも頬を染めてしまうくらいには。

「ファイン……殿」
「ゼンに色々教えてもらってるから、満足できると思うケド……?」
「だからそういうことでは……いたずらが過ぎます……欲求不満は、ゼンに解消してもらってください……ねっ!」
「ほぉぁ……」

 片手でファインの体を抱き、片手で大斧を振る。

「遊びがいがあるだけじゃない……普通の子なら、簡単に落ちるはずだよアダルくん」

 天井からボトボトと落ちて来た骨の魔物を一瞬で蹴散らしていた。

「はぁ……私に女性を口説くような文言も器量もない……淫紋のまやかしであろうよ」
「絶対そんなことないと思うんだケド……真面目なのか鈍いだけなのか……」
「ファイン殿?」
「んっふふ〜!ね、アダルくん?」

 美女の姿のまま、ひらりくるりと華麗に回るファイン。

「やっぱりさ、いっかい、ボクの事抱いたほうが良いと思うんだけどナ?」
「抱きません!遊んでないで、行きますよ!」
「ケチ〜〜」

 先ほどと違い、暗い道を、明るく会話をしながら進んでいく。
 少しづつ邪魔がはいるようになり、深く潜るにつれ、徐々に魔物の強さが増していった。


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「山道というものはないに等しい、足場が悪い中で魔物に襲われることもあるだろう……気を抜かないようにな」
「大丈夫……ミウ、こうする」
「アデル王子が見たら、羨ましがるでしょうね」
 ぴょんとアダルヘルムの首にまたがり、先を指さすミウ。
「ははは……お?重くなったな、ミっ!こ、こら!叩くな!危ないだろう!」
「今のはアダルくんが悪いよ〜?おチビも、立派なレディなんだからサ?」
「あくま……褒めて使わす」
「なんで偉そうなの……」
 騒がしく、賑やかな声を背中に受けながらゼンは先頭を歩いていた。
 少しの段差も軽々と越え、登ったり降りたり……険しい道であるはずなのに、息が上がることもなく平然と歩いていく。
「拒んだ手前こんな事を言うのはお門違いもいいところなのだろうが……羨ましくなる」
「今からでも、お願いしてみては?」
「いや……これ以上人離れしてしまえば己を失うだろう、忘れてくれ」
「あにぃ、がんばれ……ミウ、応援する」
「ははは……心強いなぁ……」
 カラカラに乾いた風が強く吹き付け、足取りを重くする。
 ゼンに遅れて数十分……頂の休憩所にたどり着く。
 過去には小さな小槍のような山があったその場所は、綺麗に切取られ、円形状の広場になっていた。
 崖の際と言っていいほど切り立った山肌のギリギリの場所で、ゼンは立っていた。
「やっときたか」
「さすがに山登りは慣れていないのものでな」
 腰を下ろし足を休めるアダルヘルム。
 肩から降りたミウは、ゼンの後ろに張り付き、ゼンと同じ景色を見始めた。
「あそこ、なんで……色が、違う?」
「あそこがミスリル坑道のある場所ですよ、ミウ。以前はミスリルの輝きがここからでも見えていましたが……取り尽くされてしまった今はこうもみすぼらしく、禍々しいだけの魔物の巣窟」
 緑生い茂り美しく爽めく森の中に、まるで焼かれた後、黒い炭の色をした山がこんもりと突起し、異様な空気を放っていた。
「ボクの眷属じゃない、混ざってる変な生き物だ……と、当たりでよかったネ!ゼン!」
 ゼンに飛びついたファインを見て、アダルヘルムは慌てて駆け出した。
「こら!そんな不安定なところに大人数で集まるな!!」
 心配は現実に……アダルヘルムが走り寄った振動がとどめを刺したのだ。
 板チョコが割れるように、パキッと軽い音を立てて地面が割れた。
「あらあら……」
「責任取れよ、アダルヘルム」
「落ちたら……痛いよ?あにぃ……」
「ボクは飛べるけど……皆はどうする〜?」
「……すまない」
 割れた地面と共に落ちているにも関わらず、冷静に文句を言うゼン達。
「責任は……取る!」
 背中の大斧掴み、すぐさま大きく振り被る。
 山の斜面に打ち付けた反動は、下に落ちる重力よりも強かった。
 横に飛び出しながら、全員を回収して少し離れた木に向かって飛んでいった。
 落下しながらバラバラになった割れた地面は、凄まじい音とともに土煙を上げ落下した。
「力技すぎじゃないアダルくん」
「私にはこの力しかないからな……無傷とは言えないだろうが、みんな無事か?」
 木の枝をクッション代わりに森の中に落ちた。
 責任を取るに、二言はなく、自らを下敷きにして地面に背中をつけていた。
「原始的だが、まぁ、ショートカットにはなったな、悪くない」
「刺激的……あにぃ、もっかい」
「ミウ……この後もっと刺激的なことが起こるはずですから、早くアダルの上からおりてあげなさい?」
「そうしてもらえると、助かる……」
「(ふぅん……?)」
 ちょうど淫紋の上で弾んでいたミウは、アダルヘルムの苦労は分かっていない様子だった。 
 毎度のことながら、ゼンのおかげで大きな怪我をすることはない……すぐに立ち上がり、回り道の必要がなくなったミスリル坑道までの残りの道を、進んでいく。
「どうする?入るか?」
「おチビ次第じゃない?すぐ終わらせるつもりがないなら、徹夜になるデショ?」
 短縮になったとは言え、入り口に付いたのは日が落ちてからだいぶ経ってからだった。
 食事もとっていない状態、疲れもある。
「別に全員で中にはいるこたぁねぇ」
 近くにあった切り株に腰を下ろし、ゼンは言った。
「ファイン、アダルヘルム、ふたりで行けばいいだけだろ」
「いいわけないだろ!あなたが連れてきたんだからあなたが行くべきだゼン・セクズ!!」
「ボクもアダルくんとふたりきりだと元気でないカモ……寂しいカモ……!」
 クスクスとクロエに笑われながら、ファインとアダルヘルムはゼンに抗議する。
「あにぃ……がんばって」
「ミウもこう言ってるだろ?男ふたりで楽しくやってこい」
「アダルは力、ファインは知力……とてもバランスがよろしいかと」
 聞く耳持たず……仕方なく折れ、坑道へ向かうことにしたファインとアダルヘルム。
 トボトボと歩くふたりの背中を、ニマニマと笑いながら見つめ見送るゼン。
「なにか持たせたほうがよかったかしら」
「ククク!問題ねぇだろ、なんだかんだ相性良いからな」
「ふふ、そうですね……ふたりに任せて、休ませてもらいましょう」
「クロ……ごはん、まだ?」
 焚き火の準備をし……ふたりの帰りを、のんびりと、待つ。
 *
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 淀む空気が満ちる暗い坑道を、暗い表情で奥へと歩みを進めるファインと、アダルヘルム。
「アーダールーくーん」
「なんでしょうか……」
「敬語に戻らなくてもいいのに……でも、そうなるってことはまだまだ打ち解けれてないんだよネ〜?カナシイナ」
「悲しいという感情があるのなら、わかると思いますが……魔王であること、それは変わらない、と」
 きつい言い方をするアダルヘルムに、拗ねた表情をするファイン。
「なら、サ?」
 フワリと宙に浮き、アダルヘルムの首に優しく腕を絡め、耳元で甘く囁く。
「やっぱり……裸の付き合いって、大事だと思わない?」
「戯れを……あなたが人でないこともですが、さすがに同性にたいしてそん……ん……んん??」
「ボクはさ、ゼンに抱いてもらえるんだヨ?なんでだろうって思わない?」
 背中に突如感じた、ふわふわともっちりとした柔らかい感触に動きを止めるアダルヘルム。
「こんな所でなにをす……いや、今はそれが問題ではな……いや、問題だ!ファイン殿……っ!!」
「………ふぅん?結構柔らかい唇してるんだネ、アダルくんって」
 果物にかぶりつくようにアダルヘルムの唇を奪ったファインは、滑るように体を密着させる。
 その姿は、絶世の美女と言って過言ではないほど見目麗しい……上目遣いでジッと見つめられ、不覚にも頬を染めてしまうくらいには。
「ファイン……殿」
「ゼンに色々教えてもらってるから、満足できると思うケド……?」
「だからそういうことでは……いたずらが過ぎます……欲求不満は、ゼンに解消してもらってください……ねっ!」
「ほぉぁ……」
 片手でファインの体を抱き、片手で大斧を振る。
「遊びがいがあるだけじゃない……普通の子なら、簡単に落ちるはずだよアダルくん」
 天井からボトボトと落ちて来た骨の魔物を一瞬で蹴散らしていた。
「はぁ……私に女性を口説くような文言も器量もない……淫紋のまやかしであろうよ」
「絶対そんなことないと思うんだケド……真面目なのか鈍いだけなのか……」
「ファイン殿?」
「んっふふ〜!ね、アダルくん?」
 美女の姿のまま、ひらりくるりと華麗に回るファイン。
「やっぱりさ、いっかい、ボクの事抱いたほうが良いと思うんだけどナ?」
「抱きません!遊んでないで、行きますよ!」
「ケチ〜〜」
 先ほどと違い、暗い道を、明るく会話をしながら進んでいく。
 少しづつ邪魔がはいるようになり、深く潜るにつれ、徐々に魔物の強さが増していった。