シスターとして名高いエリシアは今日も忙しい。
魔物の跋扈するこの地では、命がいとも簡単に奪われる。だが、それを取り戻すこともまた、エリシアの日常であった。
冒険者たちの死に様はさまざまで中には惨たらしく殺されている者もおり、その死体も見るに耐えないが彼女にとっては他愛もないこと。
「では、45万Gの寄付をお願いしますわ」
支払い端末を差し出すエリシア。
——ペイペイ♪
支払いが済むと、彼女は待っていたように棺桶の蓋を開けた。
——パカッ
その瞬間、エリシアの表情が固まった。
「……なんでうつ伏せやねん」
棺桶の中には、うつ伏せで横たわる冒険者。頭を抱えるエリシア。
「いやいやいや、普通仰向けにしますわよね!?なんでうつ伏せなんですの!?」
近くにいた仲間の冒険者に尋ねる。
「えっと……まぁ……特に理由は……」
「特に理由がない!?じゃあ普通はね、仰向けにするんですのよ!これ、わざわざうつ伏せにするって、どういう了見なんですの!?おほほ!——じゃなかった、真面目に答えなさい!」
詰め寄られた仲間たちは困惑するばかりだ。
エリシアの説教は続いていた。
「大体ね、うつ伏せにしたら!鼻とかぺちゃんこになりますわよ!?そんなこと、ちょっと考えればわかりますでしょう!?そりゃあね、元に戻せるからって——ふっ……ふふっ——いや!違いますわ!そんな問題じゃないですの!」
言葉を重ねるたび、エリシアの声には若干の笑いが混じり始めている。
それを見た冒険者たちは、口元に手を当て、そっぽを向いている。なぜか肩が震えているのだが、エリシアにはその理由が分からない。
「ねえ、聞いてますの!?そこのあなたたち!ふっ……ふふふ……じゃなくて!じゃあね、お葬式とかでうつ伏せに棺桶に入れられてる人、見たことありますの!?ないでしょ!?ふふっ……おっほっほっほっほ……いや!だから!」
エリシアは勢いよく手を振って笑いを打ち消そうとしたが、無駄だった。話の途中で口元が緩み、次の言葉を出すたびに声が笑いにかき消される。
「なんでわざわざ死体をね!うつ伏せにするのか!ぶふぉっ!ふふっ……ふっふふふ……」
とうとうエリシアの笑いが堰を切ったように漏れ始める。冒険者たちもたまらず耐えきれなくなり、ぷっと吹き出す。
「すみません!でも!うつ伏せって……なんか……!」
「か、考えたら……それ、想像したら……ふはっ!」
酒場のような笑い声が蘇生の現場を包む。エリシアは涙を拭いながら、とうとう吹き出してしまった自分を悔やんでいた。