「あらやだ、ごめんなさいね。ボタンが飛んじゃって。怪我はなかった?」
母さんは胸元を隠そうともせず、あろうことかカウンターから出て、オークのリーダーの額を優しく撫でた。
その瞬間、オークのリーダーはその場にへなへなと膝をついた。
「ま……ママ……?」
鋭かった目がつぶらな瞳に変わりウルウルと潤んでいる。
「まあ、大きな赤ちゃんねぇ」
母さんは慈愛に満ちた微笑みで、呆然とするオークリーダーの手に、揚げたてのフライドチキン(L○キ的なもの)を握らせた。
「はい、これはお詫びのサービスよ。熱いから気をつけて食べてね」
「はうっママぁ……ありがてえ……」
オークリーダーは涙を流しながらチキンにかぶりついた。
サクッという音と共に、ジューシーな肉汁とスパイスの香りが広がる。異世界には存在しない、化学調味料と脂質の暴力的な旨味。
「はい、みんなも食べてごらん」
母さんがオーク達全員にお詫びとして、フライドチキンをプレゼントする。
「う、美味すぎる……! なんだこの『黄金の肉』は!」
「こっちの黒い水(コーラ)もすげえぞ! 口の中で爆発しやがる!」
オークたちはあまりのうまさに戦慄した。
店内は一瞬にして、略奪の場から大試食会へと変貌した。
母さんが渡したチキンだけじゃこの巨体は満足しない。
「おいっこのコロッケとかいうのもくれっ!!」
「ホットドッグも喰わせろっ!!」
俺は呆然としながらも、店長代理としての本能を取り戻し、レジへと戻り商品を渡していく。
「うぅ……代金は……」
俺は泣きながら催促するが乱痴気騒ぎで声が届かない。