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レストラン再生計画

ー/ー



 魔界のとあるレストラン。



 そのレストランは原材料高騰による赤字が続いており、コストカットするために食材のランクを落とし、味が悪くなり、さらに客足が遠のくといった悪循環が発生していた。



 赤字続きの店舗を再生させるため、エリシアと助手のミノタウロスが店の扉を押し開けた。



 中に足を踏み入れると、どんよりとした空気が漂っている。客席のほとんどは空席で、壁の装飾はどこかくすんでいた。奥ではスタッフがやる気のない様子でカウンターを拭いている。



「これは……ひどいですわね」



 エリシアが周囲を見渡しながら呟くと、ミノタウロスも眉をひそめた。



「確かに、ここは手を付けないとまずいですな」



 二人が席に着くと、店員が気だるそうにメニューを持ってきた。エリシアは無言でメニューを受け取り、内容をじっくり眺めた。

 エリシアはメニューをパタンと閉じ、いくつかの料理を注文した。ほどなくして料理が運ばれてきたが、そのどれもが見た目からして貧相だった。



 彼女がフォークで刺したのは、べちゃっとしたドラゴン肉のステーキ。切り分けるときから筋が硬く、食べてみるとさらに酷い味だった。



「……これは……まずい。まずすぎますわね」



 ミノタウロスも恐る恐るスープに手をつけたが、すぐさま顔をしかめた。



「このスープ、ただの塩湯では?」



 エリシアは椅子に深く座り直し、大きく溜息をついた。



「はぁ……これはコストカットどころか、店全体が終わりに向かってますわね。ま、仕方ありませんわ。この私が再建してあげますわよ」



 その言葉に、店員たちがざわつき始めた。



「まずは……厨房に案内なさい!」



 エリシアの声に店員が慌てて従い、二人を厨房へと案内する。そこに広がっていたのは……想像以上に荒れた現場だった。



 「……これは、もはや戦場ですわね」



 目の前には、山のように積まれたゴミ箱。生ゴミの悪臭が漂い、黒いハエが群がっている。

 水槽に目をやると、中のロブスターの何匹かはすでに息絶え、水面に浮かんでいた。腐敗した死骸が水を濁らせ、わずかに生き残ったロブスターが弱々しく動いている。



「こりゃひでぇ……」



 ミノタウロスも眉間に深いシワを寄せた。

 エリシアは溜息をつき、店員たちを振り返った。



「これでは、お客様に料理を提供するなどもってのほかですわ。速やかに店を閉店しなさい。これ以上営業を続ければ……営業停止どころか、保健所に強制的に閉められるのがオチですわよ!」



 店員たちは動揺した様子で顔を見合わせたが、誰一人として反論できなかった。



「食べ残しがそのまま放置されて腐ってますし、水槽の管理も最悪。死骸が水を汚染しているようでは、新鮮な食材など望めませんわね」



 エリシアは冷たく言い放つと、厨房の中央に立ち、手を打ち鳴らした。



「これから立て直しますわよ。この店が再び客で賑わう店になるよう、私が指導して差し上げますわ!」



 彼女の鋭い眼光に、店員たちは黙って頷いた。



「まずは……掃除ですわ!全員で、隅々までこの店を磨き上げなさい!」



 キッチンでは腐った生ゴミが山積みになり、悪臭を放っている。カウンターは油でギトギト。床には足を踏み入れるたびにペタペタと音が鳴るほど汚れがこびりついていた。



「こんなのねぇ!飯を作る以前の問題ですわ!」



 エリシアがピシャリと言い放つと、店員たちは揃って肩を竦めた。誰も反論できない。



「まず、徹底的に掃除しなさい!清潔な環境が整わない限り、まともな料理など出せるはずがありませんわ!」



 彼女の声が鋭く響き渡る。



「掃除と言ってもねぇ、テーブルやカウンターだけ拭けばいいってもんじゃありませんのよ!天井、換気扇、棚の隙間、床のタイル……隅々までピカピカにするんですわ!今日中に終わらせなさい!」



 店員たちは渋々ながらも道具を持ち始めた。



 ——そして。



 店内が隅々まで清掃され、ピカピカに輝いていた。油でギトギトだったカウンターは滑らかな光沢を放ち、悪臭漂うゴミ箱も清潔なステンレスの輝きを取り戻している。



「よろしい!これで『汚い』という悪評は払拭できますわね!」



 エリシアが満足げに頷いた。



 だが、これで終わりではない。次なる課題はコスト削減だ。



 エリシアは店員たちをキッチンに集めると、食材を指さして冷然と語った。



「さて、皆さん。次はこれですわよ——食材を最大限活用する術を教えます!」



 彼女が指差したのは、客の食べ残しが山積みになったトレイ。

 中には半分食べられたフライドチキンがいくつも並んでいた。



「たとえば、これ!」



 エリシアは一本のフライドチキンを掴むと、手早く衣を剥がした。



「こうして衣を丁寧に剥がし、もう一度揚げ直せば、なんということでしょう——新品同然ですわ!」



 店員たちは目を見開いて呆然とする。



「そ、そんなこと……お客様に出しても大丈夫なんですか?」



 一人の店員が恐る恐る尋ねる。



「大丈夫に決まってますわ!衣が新しいんですもの!中身なんて誰も気にしませんのよ!」



 エリシアは自信満々だ。

 だが、別の店員が口を挟んだ。



「えっと……でも、肉がぐちゃぐちゃになってるものもありますけど……揚げ直せないですよね?」



 その言葉にエリシアは軽くため息をついた。



「バカおっしゃい!そんな時は細切れにするのですわ!」



 そう言いながら、彼女は肉を細かく切り分けると、別の衣をつけて団子状に丸めた。



「そして、こうしてナゲットにしてしまえば、見た目も完璧!お客様は気づきませんわ!」

「す、すごい……」



 店員たちは感嘆しつつも、どこか不安げだ。



「これがリサイクルの力ですわよ!無駄を省き、利益を最大化するのです!」



 エリシアの情熱的な指導に、店員たちは頷かざるを得なかった。

 こうして、エリシア流の大胆すぎるコスト削減術が実行に移されていった。



 「さすがはSDGsですなぁ」



 ミノタウロスが感嘆する中、エリシアの指導は続く。



 「次はこれですわ!」



 エリシアが指差したのは、食べ残しの山に埋もれていたしなびたサラダだった。



「サラダなんてね、捨てるなんてあり得ませんわ!洗えば元通りですの!」



 そう言うや否や、エリシアは食べ残しのサラダを水道の下に持っていき、勢いよく水で洗い流す。



「ほら見てくださいまし!葉っぱのシャキシャキ感が蘇りましたわ!」



 彼女は得意げにサラダを皿に盛り付け直し、ドレッシングをたっぷりとかけた。



「これで立派な新作サラダの完成ですわ!」



 ミノタウロスが拍手する中、エリシアの手は次のターゲットへと向かう。



「そしてこれ、残ったライスですわね!」



 彼女は残飯コーナーから中途半端に残されたご飯を集めてきた。



「野菜くずや屑肉も忘れちゃいけませんわよ!」



 野菜や屑肉を細かく刻み、ご飯と一緒に大きなボウルに放り込む。そこにコチュジャンらしき赤いソースを大胆に投入し、全体を混ぜ合わせた。



「——ほら見なさい!これで何ていうんでしたっけ?あぁ、そう!ビビンバですわ!」



 豪快にかき混ぜたご飯を皿に盛り付けると、それらしく見える仕上がりに。



「おぉ……」



 ミノタウロスはその出来栄えに再び感嘆の声を上げた。



「これが私の料理改革ですわよ!これなら材料費を大幅に削減できますわ!」



 エリシアの胸を張った宣言に、店員たちも思わず拍手するしかなかった。



 ——そしてリニューアルオープン当日。



 あるディスプレイが店の入口で目立っていた。

 それは本物の牛が串刺しにされ、焚き火に炙られている。煙や香ばしい香りの演出が周囲に漂い、通りすがりの人々の視線を引きつけた。



【牛さんモーモーフェア〜わんぱくキッズの君たちに!〜】



 陽気な音楽とともに掲げられた看板のキャッチコピー。



「なんだこの店?」
「前に来た時と全然違うな!」
「見ろよ、店内がピカピカだ!」



 次々と店内に吸い込まれていく人々。



 店内に入ると――



 驚くべきことに、フライドチキンがパリッと香ばしい衣に包まれ、サラダはしっとりみずみずしい。



「これ……さっき畑で収穫したんじゃないか?」



 お客が驚くほどの瑞々しさに、箸が進む。

 さらに注目を集めているのは、テーブルに並ぶ「ビビンバ」だった。



「なんだこれ?ビビンバ?どこか異国の料理か?」



 赤いコチュジャンが絡んだ野菜と米、そして細切れの肉。その見た目から漂う香りに客の興味を引きつけた。



 店の厨房では――



 エリシアが腕を組んで得意げに立っていた。



「ふふふ、これが私の改革の成果ですわ!食材の再利用、清掃、そして新しい魅力的な演出。この三つが揃えば客足なんてすぐに戻りますのよ!」



 ミノタウロスがその隣で、感嘆の溜息をついていた。



「さすがですなぁ、エリシア様……!」



 客の笑い声と、次々と注文が飛び交う活気で満ちる店内。その光景を眺めながら、エリシアの口元には満足げな微笑みが浮かんでいた。



 店内が活気づく中、子供たちの間でひときわ話題を呼んでいるのは、レジ横に掲示された特別告知だった。



【お会計後に牛さんに乗れるチャンス!】



「えっ、本当に乗れるの!?」
「やりたい!やりたい!」



 親にせがむ子供たちの声があちこちで響く。



 そしてレジ後の特設コーナーには――





 ミノタウロスが四つん這いになり、不満げな顔を浮かべてスタンバイしていた。





「……ぐおおおぉ、くっそおおおぉ……」



 明らかに屈辱的な表情だが、エリシアの冷徹な目配せに逆らう術もなく、仕方なく子供たちを背中に乗せている。



「うわー!見て見て!モーモーって言ってる!」

「お兄ちゃん、次は僕の番!」



 大喜びする子供たち。ミノタウロスの背中で、片手を上げて「牛乗りごっこ」を楽しんでいる様子だ。



「いいですわね〜!これが真のエンターテイメントですわ!」



 笑い声と歓声が絶えず響き渡る店内。その光景を見渡しながら、エリシアは呟いた。



「やっぱりねぇ……集客には工夫が必要ですわよね〜」



 ミノタウロスの嘆きの声を背景に、レストラン再生計画は大成功を収めたのだった。



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 魔界のとあるレストラン。
 そのレストランは原材料高騰による赤字が続いており、コストカットするために食材のランクを落とし、味が悪くなり、さらに客足が遠のくといった悪循環が発生していた。
 赤字続きの店舗を再生させるため、エリシアと助手のミノタウロスが店の扉を押し開けた。
 中に足を踏み入れると、どんよりとした空気が漂っている。客席のほとんどは空席で、壁の装飾はどこかくすんでいた。奥ではスタッフがやる気のない様子でカウンターを拭いている。
「これは……ひどいですわね」
 エリシアが周囲を見渡しながら呟くと、ミノタウロスも眉をひそめた。
「確かに、ここは手を付けないとまずいですな」
 二人が席に着くと、店員が気だるそうにメニューを持ってきた。エリシアは無言でメニューを受け取り、内容をじっくり眺めた。
 エリシアはメニューをパタンと閉じ、いくつかの料理を注文した。ほどなくして料理が運ばれてきたが、そのどれもが見た目からして貧相だった。
 彼女がフォークで刺したのは、べちゃっとしたドラゴン肉のステーキ。切り分けるときから筋が硬く、食べてみるとさらに酷い味だった。
「……これは……まずい。まずすぎますわね」
 ミノタウロスも恐る恐るスープに手をつけたが、すぐさま顔をしかめた。
「このスープ、ただの塩湯では?」
 エリシアは椅子に深く座り直し、大きく溜息をついた。
「はぁ……これはコストカットどころか、店全体が終わりに向かってますわね。ま、仕方ありませんわ。この私が再建してあげますわよ」
 その言葉に、店員たちがざわつき始めた。
「まずは……厨房に案内なさい!」
 エリシアの声に店員が慌てて従い、二人を厨房へと案内する。そこに広がっていたのは……想像以上に荒れた現場だった。
 「……これは、もはや戦場ですわね」
 目の前には、山のように積まれたゴミ箱。生ゴミの悪臭が漂い、黒いハエが群がっている。
 水槽に目をやると、中のロブスターの何匹かはすでに息絶え、水面に浮かんでいた。腐敗した死骸が水を濁らせ、わずかに生き残ったロブスターが弱々しく動いている。
「こりゃひでぇ……」
 ミノタウロスも眉間に深いシワを寄せた。
 エリシアは溜息をつき、店員たちを振り返った。
「これでは、お客様に料理を提供するなどもってのほかですわ。速やかに店を閉店しなさい。これ以上営業を続ければ……営業停止どころか、保健所に強制的に閉められるのがオチですわよ!」
 店員たちは動揺した様子で顔を見合わせたが、誰一人として反論できなかった。
「食べ残しがそのまま放置されて腐ってますし、水槽の管理も最悪。死骸が水を汚染しているようでは、新鮮な食材など望めませんわね」
 エリシアは冷たく言い放つと、厨房の中央に立ち、手を打ち鳴らした。
「これから立て直しますわよ。この店が再び客で賑わう店になるよう、私が指導して差し上げますわ!」
 彼女の鋭い眼光に、店員たちは黙って頷いた。
「まずは……掃除ですわ!全員で、隅々までこの店を磨き上げなさい!」
 キッチンでは腐った生ゴミが山積みになり、悪臭を放っている。カウンターは油でギトギト。床には足を踏み入れるたびにペタペタと音が鳴るほど汚れがこびりついていた。
「こんなのねぇ!飯を作る以前の問題ですわ!」
 エリシアがピシャリと言い放つと、店員たちは揃って肩を竦めた。誰も反論できない。
「まず、徹底的に掃除しなさい!清潔な環境が整わない限り、まともな料理など出せるはずがありませんわ!」
 彼女の声が鋭く響き渡る。
「掃除と言ってもねぇ、テーブルやカウンターだけ拭けばいいってもんじゃありませんのよ!天井、換気扇、棚の隙間、床のタイル……隅々までピカピカにするんですわ!今日中に終わらせなさい!」
 店員たちは渋々ながらも道具を持ち始めた。
 ——そして。
 店内が隅々まで清掃され、ピカピカに輝いていた。油でギトギトだったカウンターは滑らかな光沢を放ち、悪臭漂うゴミ箱も清潔なステンレスの輝きを取り戻している。
「よろしい!これで『汚い』という悪評は払拭できますわね!」
 エリシアが満足げに頷いた。
 だが、これで終わりではない。次なる課題はコスト削減だ。
 エリシアは店員たちをキッチンに集めると、食材を指さして冷然と語った。
「さて、皆さん。次はこれですわよ——食材を最大限活用する術を教えます!」
 彼女が指差したのは、客の食べ残しが山積みになったトレイ。
 中には半分食べられたフライドチキンがいくつも並んでいた。
「たとえば、これ!」
 エリシアは一本のフライドチキンを掴むと、手早く衣を剥がした。
「こうして衣を丁寧に剥がし、もう一度揚げ直せば、なんということでしょう——新品同然ですわ!」
 店員たちは目を見開いて呆然とする。
「そ、そんなこと……お客様に出しても大丈夫なんですか?」
 一人の店員が恐る恐る尋ねる。
「大丈夫に決まってますわ!衣が新しいんですもの!中身なんて誰も気にしませんのよ!」
 エリシアは自信満々だ。
 だが、別の店員が口を挟んだ。
「えっと……でも、肉がぐちゃぐちゃになってるものもありますけど……揚げ直せないですよね?」
 その言葉にエリシアは軽くため息をついた。
「バカおっしゃい!そんな時は細切れにするのですわ!」
 そう言いながら、彼女は肉を細かく切り分けると、別の衣をつけて団子状に丸めた。
「そして、こうしてナゲットにしてしまえば、見た目も完璧!お客様は気づきませんわ!」
「す、すごい……」
 店員たちは感嘆しつつも、どこか不安げだ。
「これがリサイクルの力ですわよ!無駄を省き、利益を最大化するのです!」
 エリシアの情熱的な指導に、店員たちは頷かざるを得なかった。
 こうして、エリシア流の大胆すぎるコスト削減術が実行に移されていった。
 「さすがはSDGsですなぁ」
 ミノタウロスが感嘆する中、エリシアの指導は続く。
 「次はこれですわ!」
 エリシアが指差したのは、食べ残しの山に埋もれていたしなびたサラダだった。
「サラダなんてね、捨てるなんてあり得ませんわ!洗えば元通りですの!」
 そう言うや否や、エリシアは食べ残しのサラダを水道の下に持っていき、勢いよく水で洗い流す。
「ほら見てくださいまし!葉っぱのシャキシャキ感が蘇りましたわ!」
 彼女は得意げにサラダを皿に盛り付け直し、ドレッシングをたっぷりとかけた。
「これで立派な新作サラダの完成ですわ!」
 ミノタウロスが拍手する中、エリシアの手は次のターゲットへと向かう。
「そしてこれ、残ったライスですわね!」
 彼女は残飯コーナーから中途半端に残されたご飯を集めてきた。
「野菜くずや屑肉も忘れちゃいけませんわよ!」
 野菜や屑肉を細かく刻み、ご飯と一緒に大きなボウルに放り込む。そこにコチュジャンらしき赤いソースを大胆に投入し、全体を混ぜ合わせた。
「——ほら見なさい!これで何ていうんでしたっけ?あぁ、そう!ビビンバですわ!」
 豪快にかき混ぜたご飯を皿に盛り付けると、それらしく見える仕上がりに。
「おぉ……」
 ミノタウロスはその出来栄えに再び感嘆の声を上げた。
「これが私の料理改革ですわよ!これなら材料費を大幅に削減できますわ!」
 エリシアの胸を張った宣言に、店員たちも思わず拍手するしかなかった。
 ——そしてリニューアルオープン当日。
 あるディスプレイが店の入口で目立っていた。
 それは本物の牛が串刺しにされ、焚き火に炙られている。煙や香ばしい香りの演出が周囲に漂い、通りすがりの人々の視線を引きつけた。
【牛さんモーモーフェア〜わんぱくキッズの君たちに!〜】
 陽気な音楽とともに掲げられた看板のキャッチコピー。
「なんだこの店?」
「前に来た時と全然違うな!」
「見ろよ、店内がピカピカだ!」
 次々と店内に吸い込まれていく人々。
 店内に入ると――
 驚くべきことに、フライドチキンがパリッと香ばしい衣に包まれ、サラダはしっとりみずみずしい。
「これ……さっき畑で収穫したんじゃないか?」
 お客が驚くほどの瑞々しさに、箸が進む。
 さらに注目を集めているのは、テーブルに並ぶ「ビビンバ」だった。
「なんだこれ?ビビンバ?どこか異国の料理か?」
 赤いコチュジャンが絡んだ野菜と米、そして細切れの肉。その見た目から漂う香りに客の興味を引きつけた。
 店の厨房では――
 エリシアが腕を組んで得意げに立っていた。
「ふふふ、これが私の改革の成果ですわ!食材の再利用、清掃、そして新しい魅力的な演出。この三つが揃えば客足なんてすぐに戻りますのよ!」
 ミノタウロスがその隣で、感嘆の溜息をついていた。
「さすがですなぁ、エリシア様……!」
 客の笑い声と、次々と注文が飛び交う活気で満ちる店内。その光景を眺めながら、エリシアの口元には満足げな微笑みが浮かんでいた。
 店内が活気づく中、子供たちの間でひときわ話題を呼んでいるのは、レジ横に掲示された特別告知だった。
【お会計後に牛さんに乗れるチャンス!】
「えっ、本当に乗れるの!?」
「やりたい!やりたい!」
 親にせがむ子供たちの声があちこちで響く。
 そしてレジ後の特設コーナーには――
 ミノタウロスが四つん這いになり、不満げな顔を浮かべてスタンバイしていた。
「……ぐおおおぉ、くっそおおおぉ……」
 明らかに屈辱的な表情だが、エリシアの冷徹な目配せに逆らう術もなく、仕方なく子供たちを背中に乗せている。
「うわー!見て見て!モーモーって言ってる!」
「お兄ちゃん、次は僕の番!」
 大喜びする子供たち。ミノタウロスの背中で、片手を上げて「牛乗りごっこ」を楽しんでいる様子だ。
「いいですわね〜!これが真のエンターテイメントですわ!」
 笑い声と歓声が絶えず響き渡る店内。その光景を見渡しながら、エリシアは呟いた。
「やっぱりねぇ……集客には工夫が必要ですわよね〜」
 ミノタウロスの嘆きの声を背景に、レストラン再生計画は大成功を収めたのだった。