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15-.⑦それは真か真実か

ー/ー



 ひらひら……優雅に舞っていた黒い血の羽根は動きを止め、硬化して刃となりゼンを狙って振り注ぐ。

「まだ話は終わってねぇってのに」
「あなたが知りたい答えはもうお教えしたではありませんか!」
「ま、いいけどな」

 刃はゼンに当たっているように見えるが、ダメージにはなっていない。

「ただひたすらに……自分を害するものすべての力を『破壊』……まったく、厄介なんてもんじゃありませんね」
「そんな単純な思考でしか俺を見ていない、だからお前は、ファインの隣にいることを許されなかったんだもんなぁ?」
「ゼン……ッ!!」

 一歩ずつ、空中にあるはずのない階段を上り、サリエルのいる場所に近づいていく。

「その執着心と、なんでもかんでもベラベラと喋る性格の、おかげだもんなぁ」
「黙りなさいィィィイ!!」
「はっ!そんなふうにヒステリー起こすのは弱い証拠だぞ?」

 がむしゃらに、ありとあらゆる攻撃をし続けるサリエル。もちろん通じることはなく、顔面に血管を浮かせ、怒りに満ちている。

「なぁ?退路を確保してるんだろ?わざわざ俺からの嫌味を聞き続けるこたねぇだろ、なぜ逃げない?対話は終わった、俺もお前も、お互い用済みだ」
「用済み……ですか……なら少しくらい怯んでいただきたいものですよ!」
「本来勇者様とするはずだった戦闘行為はさっきゼクスでやったからいいだろ」

 間近に迫る、もう、サリエルは後ろの穴から外へ出るしか動くことはできない。

「せっかく神様に新しい名前まで貰って生かされてんだろ?いいじゃあないか。俺としてもな?お前にはまだこの世界を生きる価値があると思ってんだ、だから、さっさと、消えておけ」
「…………ッチ!!覚えておきなさい!神はあなたを許さないでしょう!!」

 その言葉の意味、サリエルには分からない。
 捨て台詞を鼻で笑い、飛び去っていくサリエルをため息で見送った。

「さて」

 ストンッと地に足をつけ、ティオとセリハの元に移動してしゃがんだゼン。

「いつまでグズってんだティオ」
「……ぜ、ゼクス」
「その名は――まぁいい、セリハを元に戻すんだろ?」

 ティオの首根っこを掴み、無理やり立ち上がらせる。顔は、本当に、ぐしゃぐしゃだった。

「ふぅん?味わった苦痛の割に平気そうだな」
「僕は……最低なんだ……ゼクス、どうしよう……セリハが頭から離れないんだ……それで……その」
「あぁ、ね」

 体型がくっきりと出ない神官服で良かっただろう。
 ティオの股間を見てケタケタとゼンは笑っていた。

「はっ!そんだけ元気なら大丈夫だな。お前、ビビリのクセにあんな精神攻撃もらっといて壊れてねぇなんて大したもんだ」
「そんなことはないよ……ゼクスが教えてくれたから……セリハが戻ってくるという希望をくれたから……それが無かったらここで自害していただろうね、はははは」
「神官が笑って言うことじゃねぇぞ」

 いつのまにかすやすやと寝息を立てているセリハ。起こさないように抱き上げたティオは、その顔にヴェールをかけた。

「あの魔族が言っていたように、セリハは自分の髪色を気にしていたんだ。悪魔の子、魔族の子……そんな存在が王都を守っているだなんて、簡単に受け入れてもらえることじゃない……自分のせいで聖堂が虐げられる事態にしてはならないって……頑なに姿を隠していたんだ……本当に優しい子」
「そんなセリハをお前は愛したってことか」
「そ、そ、そ……うん、大好きなんだ」

 ヴェール越しに眠るセリハの寝顔を優しく見つめるティオ。

「俺の目的も、サリエルと同じくこの女だ」
「え」
「だが、さすがにあいつのお下がりをもらってく気にゃならねぇ。それに、お前には、楽しませてもらったからな」

 セリハをまた奪われるかと一瞬表情を強張らせたが、その心配がなくない事を告げられすぐにホッとした……が、お下がりという言葉の意味を理解して顔を真っ赤にした。

「さっきはあんなに元気にしてたくせに急に初になるなよ」
「君は!そういう事をどうして恥ずかしげもなく言えるのかな?!まったく……それで、どうしたらいいのか教えてくれるかい?」
「勇者のところに行けばいい」

 ティオは思い出す……目の前の彼が、要注意人物であることを。でも、なぜか怖いとも恐ろしいとも思えない自分がいた。

「未だに君の光は見えないけれど……勇者よりも、君は強い何かを持っているんだろ?君の力ではどうにかできないのかい?」
「やれないことはない。でもな、それじゃお前らが納得する形に、元通りにすることは出来ない」
「……そんなことはないと、勝手に思ってしまうよゼクス」
「勝手が過ぎる」

 懐から出した移送方陣の書かれた紙をひろげ、人差し指を噛んだゼンは、自分の血で行き先を書きティオに渡す。

「王城までこれで行ける」
「ゼクス、君は?」
「俺はその魔法が嫌いなんでな、お前が使って処分してくれ」
「一緒に来てほしいってわがままかな?」
「お前に返す恩はこれで終わりだ。それ以上は、ない。この先は、お前らと勇者で進め」

 発動を渋るティオから紙を奪い、強制的に発動させ、

「あ、ありがとうゼクス!!また――」

 光りに包まれ、慌てて言った別れの言葉の途中で、ティオは消えた。

「もし、次会うことがあるなら、俺はゼンだ、ティオ。それを理解した時、お前はそのままでいれるか?それとも、その力で見た真実で、今度こそ絶望するか?」

 フッと笑い、廃墟の聖堂から脱出し、帰路につく。

 *
 *
 *
 *
 *
 *

「疲れているならベッドで寝たらどうだ?ゼン・セクズ」
「臭くて寝れん」
「ぐっ……換気をしておく……」

 ギルド本部に戻り、いつもの席で背中を大胆に反ってイスに座り、天井を見上げる。

「収穫はありましたか?ゼン」
「まぁな」

 酒と肴を持ってきたクロエも同席し、土産話を始めた。

「昔ウベルって奴いただろ?今は御大層にサリエルとか名乗ってるみてぇなんだが、あいつが孤児院の時から……もしかしたらその前からだな、神墜ちして俺らに関わっている」
「あら、あのファイン大好きなお坊ちゃんが」
「俺にファインを取られたっての、まーだ根に持ってるみてぇだぜ?」

 クスクス笑い合うふたりを見て、難しい顔をするアダルヘルム。

「直接会った覚えが私にはないが……厄介なのか?」
「アンデット、死の眷属の将としてそれなりの実力だったような……ファインに気持ち悪がられていたという記憶の方がハッキリと、覚えがありますね」
「……哀れな」
「元々はその程度だが、名とともに、なんらかの力を持たせてもらってるとは思う。今回、そいつは見せてくれなかったな、さすがに」

 今回の酒は度数が高い、ぐっと……喉の焼ける心地よさを感じながら続ける。

「そうだ、目的の女は勇者に預けてきた」
「なっ!良かったのか?!そんなに醜かったのか?!」
「アダルお前、俺をなんだと思ってんだよ?お前ほど見境なくはねぇわ」
「あと……お会いしたことがないとは言え、醜いという判断は女性に対して失礼ではないかしら?それとも、私以外はそう言うものだと口説いているのかしら?」
「……続けてくれ」

 非難集中、目を閉じ、腕を組み、耳だけを傾けることにしたアダルヘルム。

「あいつお得意の術でネクロ化してた上、寝取られた女だ、あいつと兄弟にるなんざ気色わりぃ」
「私でも、そんな状況でしたなら、そうしますね」
「(よく私に言えたものだ……)」

 頬をついて、あまり見せない顔で口角を上げるゼン。

「興味深い能力持ちもいた。覚醒したらもっと俺を楽しませてくれそうだぞ」
「あら、それはよかったわねゼン」
「泣き虫でビビリで、お前みたいな面白いやつだったぜ?アダル」
「私はそんなにお子様ではない!!」
「ははっ!なんにせよ、だ。また面白いもんが増えたわけだ」

 笑っている。

「次は付き合ってもらうぞアダル。お前も、今の世界を直接見たほうが良い」

 アダルヘルムは返事をしない……ただ頭を抱え、ゼンの旅を語る声を聞いていた。


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「まだ話は終わってねぇってのに」
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 刃はゼンに当たっているように見えるが、ダメージにはなっていない。
「ただひたすらに……自分を害するものすべての力を『破壊』……まったく、厄介なんてもんじゃありませんね」
「そんな単純な思考でしか俺を見ていない、だからお前は、ファインの隣にいることを許されなかったんだもんなぁ?」
「ゼン……ッ!!」
 一歩ずつ、空中にあるはずのない階段を上り、サリエルのいる場所に近づいていく。
「その執着心と、なんでもかんでもベラベラと喋る性格の、おかげだもんなぁ」
「黙りなさいィィィイ!!」
「はっ!そんなふうにヒステリー起こすのは弱い証拠だぞ?」
 がむしゃらに、ありとあらゆる攻撃をし続けるサリエル。もちろん通じることはなく、顔面に血管を浮かせ、怒りに満ちている。
「なぁ?退路を確保してるんだろ?わざわざ俺からの嫌味を聞き続けるこたねぇだろ、なぜ逃げない?対話は終わった、俺もお前も、お互い用済みだ」
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「本来勇者様とするはずだった戦闘行為はさっきゼクスでやったからいいだろ」
 間近に迫る、もう、サリエルは後ろの穴から外へ出るしか動くことはできない。
「せっかく神様に新しい名前まで貰って生かされてんだろ?いいじゃあないか。俺としてもな?お前にはまだこの世界を生きる価値があると思ってんだ、だから、さっさと、消えておけ」
「…………ッチ!!覚えておきなさい!神はあなたを許さないでしょう!!」
 その言葉の意味、サリエルには分からない。
 捨て台詞を鼻で笑い、飛び去っていくサリエルをため息で見送った。
「さて」
 ストンッと地に足をつけ、ティオとセリハの元に移動してしゃがんだゼン。
「いつまでグズってんだティオ」
「……ぜ、ゼクス」
「その名は――まぁいい、セリハを元に戻すんだろ?」
 ティオの首根っこを掴み、無理やり立ち上がらせる。顔は、本当に、ぐしゃぐしゃだった。
「ふぅん?味わった苦痛の割に平気そうだな」
「僕は……最低なんだ……ゼクス、どうしよう……セリハが頭から離れないんだ……それで……その」
「あぁ、ね」
 体型がくっきりと出ない神官服で良かっただろう。
 ティオの股間を見てケタケタとゼンは笑っていた。
「はっ!そんだけ元気なら大丈夫だな。お前、ビビリのクセにあんな精神攻撃もらっといて壊れてねぇなんて大したもんだ」
「そんなことはないよ……ゼクスが教えてくれたから……セリハが戻ってくるという希望をくれたから……それが無かったらここで自害していただろうね、はははは」
「神官が笑って言うことじゃねぇぞ」
 いつのまにかすやすやと寝息を立てているセリハ。起こさないように抱き上げたティオは、その顔にヴェールをかけた。
「あの魔族が言っていたように、セリハは自分の髪色を気にしていたんだ。悪魔の子、魔族の子……そんな存在が王都を守っているだなんて、簡単に受け入れてもらえることじゃない……自分のせいで聖堂が虐げられる事態にしてはならないって……頑なに姿を隠していたんだ……本当に優しい子」
「そんなセリハをお前は愛したってことか」
「そ、そ、そ……うん、大好きなんだ」
 ヴェール越しに眠るセリハの寝顔を優しく見つめるティオ。
「俺の目的も、サリエルと同じくこの女だ」
「え」
「だが、さすがにあいつのお下がりをもらってく気にゃならねぇ。それに、お前には、楽しませてもらったからな」
 セリハをまた奪われるかと一瞬表情を強張らせたが、その心配がなくない事を告げられすぐにホッとした……が、お下がりという言葉の意味を理解して顔を真っ赤にした。
「さっきはあんなに元気にしてたくせに急に初になるなよ」
「君は!そういう事をどうして恥ずかしげもなく言えるのかな?!まったく……それで、どうしたらいいのか教えてくれるかい?」
「勇者のところに行けばいい」
 ティオは思い出す……目の前の彼が、要注意人物であることを。でも、なぜか怖いとも恐ろしいとも思えない自分がいた。
「未だに君の光は見えないけれど……勇者よりも、君は強い何かを持っているんだろ?君の力ではどうにかできないのかい?」
「やれないことはない。でもな、それじゃお前らが納得する形に、元通りにすることは出来ない」
「……そんなことはないと、勝手に思ってしまうよゼクス」
「勝手が過ぎる」
 懐から出した移送方陣の書かれた紙をひろげ、人差し指を噛んだゼンは、自分の血で行き先を書きティオに渡す。
「王城までこれで行ける」
「ゼクス、君は?」
「俺はその魔法が嫌いなんでな、お前が使って処分してくれ」
「一緒に来てほしいってわがままかな?」
「お前に返す恩はこれで終わりだ。それ以上は、ない。この先は、お前らと勇者で進め」
 発動を渋るティオから紙を奪い、強制的に発動させ、
「あ、ありがとうゼクス!!また――」
 光りに包まれ、慌てて言った別れの言葉の途中で、ティオは消えた。
「もし、次会うことがあるなら、俺はゼンだ、ティオ。それを理解した時、お前はそのままでいれるか?それとも、その力で見た真実で、今度こそ絶望するか?」
 フッと笑い、廃墟の聖堂から脱出し、帰路につく。
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「疲れているならベッドで寝たらどうだ?ゼン・セクズ」
「臭くて寝れん」
「ぐっ……換気をしておく……」
 ギルド本部に戻り、いつもの席で背中を大胆に反ってイスに座り、天井を見上げる。
「収穫はありましたか?ゼン」
「まぁな」
 酒と肴を持ってきたクロエも同席し、土産話を始めた。
「昔ウベルって奴いただろ?今は御大層にサリエルとか名乗ってるみてぇなんだが、あいつが孤児院の時から……もしかしたらその前からだな、神墜ちして俺らに関わっている」
「あら、あのファイン大好きなお坊ちゃんが」
「俺にファインを取られたっての、まーだ根に持ってるみてぇだぜ?」
 クスクス笑い合うふたりを見て、難しい顔をするアダルヘルム。
「直接会った覚えが私にはないが……厄介なのか?」
「アンデット、死の眷属の将としてそれなりの実力だったような……ファインに気持ち悪がられていたという記憶の方がハッキリと、覚えがありますね」
「……哀れな」
「元々はその程度だが、名とともに、なんらかの力を持たせてもらってるとは思う。今回、そいつは見せてくれなかったな、さすがに」
 今回の酒は度数が高い、ぐっと……喉の焼ける心地よさを感じながら続ける。
「そうだ、目的の女は勇者に預けてきた」
「なっ!良かったのか?!そんなに醜かったのか?!」
「アダルお前、俺をなんだと思ってんだよ?お前ほど見境なくはねぇわ」
「あと……お会いしたことがないとは言え、醜いという判断は女性に対して失礼ではないかしら?それとも、私以外はそう言うものだと口説いているのかしら?」
「……続けてくれ」
 非難集中、目を閉じ、腕を組み、耳だけを傾けることにしたアダルヘルム。
「あいつお得意の術でネクロ化してた上、寝取られた女だ、あいつと兄弟にるなんざ気色わりぃ」
「私でも、そんな状況でしたなら、そうしますね」
「(よく私に言えたものだ……)」
 頬をついて、あまり見せない顔で口角を上げるゼン。
「興味深い能力持ちもいた。覚醒したらもっと俺を楽しませてくれそうだぞ」
「あら、それはよかったわねゼン」
「泣き虫でビビリで、お前みたいな面白いやつだったぜ?アダル」
「私はそんなにお子様ではない!!」
「ははっ!なんにせよ、だ。また面白いもんが増えたわけだ」
 笑っている。
「次は付き合ってもらうぞアダル。お前も、今の世界を直接見たほうが良い」
 アダルヘルムは返事をしない……ただ頭を抱え、ゼンの旅を語る声を聞いていた。