第137話 令嬢と貴族娘の女子会

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「うわぁ~、うちのお屋敷よりずっと広~い」
「フィーさんって本当にあのフィーさんだったのね」
「お招きいただき、ありがとうございますわ」

 我の屋敷の中にぞろぞろとクラスメイトの女子たちが入ってくる。出迎えてくるのは壁になるほど並んだ執事とメイドたちだ。
 彼女らは一応パエデロスに移住してきた貴族の娘たちだったが、それでもこれほどの待遇は経験したことがないようで、感動している様子だ。

 そりゃあもちろん、我はこのパエデロスでもトップクラスの富豪だしな。
 我の所有するジャガイモ農園の収益もグングン伸びてるし、例のミモザチップスの売り上げもそのまま我の人気や信頼に直結して資産も潤沢よ。

「それではお嬢様方、屋敷をご案内いたします」

 そういってペコリと頭を下げて前に躍り出たのはオキザリスだ。いつも通り、普段通りなのだが、屋敷に戻ってくると何とも格が上がったように思える。
 クラスメイトの面々も、なかなか興奮気味のようだ。

 さて。

 学校で色々と会話も弾んだ我は、交流の意味も込めて放課後に話を持ちかけ、クラスメイトの女子たちを屋敷に招くことにしたわけだが、これも悪くないものだ。

 ミモザ以外にこの屋敷に誰かを招くこともあまりなかったし、来客があったとしてもロータスとその仲間の面々ばかりで辟易していたところだ。
 瀟洒な貴族の娘たちがエントランスに集まる光景のこの華やかさよ。これからダンスパーティでも始まるんじゃないかというくらい賑やかでいい。

 気が向いたらそういう社交界も検討してもよいのかもしれん。

「こちらがミモザ様のために造られた作業部屋でございます」
「へぇー」
「こちらがミモザ様のために造られた休憩部屋でございます」
「……?」
「こちらがミモザ様のために造られた応接室でございます」
「……え」
「こちらがミモザ様のために造られた図書室でございます」
「……」
「こちらがミモザ様のために造られた私室でございます」
「全部ミモザちゃんの部屋じゃないですか!?」
「ちがいまふよーーーっ」

 なんかわちゃわちゃと騒いでおるが、楽しそうで何よりだ。

「フィーさんとミモザさん、いつも一緒にいると思ってましたけど、そこまで仲がよかったのですね」
「フィーしゃんとわたしは親友でふから」
「うむ!」

 力強く肯定できることに優越感すら覚えるぞ。

「そういえば、ご入浴も一緒とうかがっておりましたが、それも本当ですか?」
「ああ、勿論だ。この屋敷には大浴場もあるからな」
「丁度この奥に御座います。見ていかれますか?」

 と、オキザリスがテキパキと案内をしていく。
 クラスメイト女子一同、興味津々という面持ちでオキザリスの後をついていき、すぐにそこへとたどり着いた。大理石をあしらえた、まさに大浴場。

「こちらで御座います」
「へぇ、浴場もまた広いんですねぇ」
「今までミモザと、あとダリアくらいしか入れたことはないが、この人数でも全員入れるくらいの余裕はあるだろうな」
「えっ、ダリア先生も入ったことあるんですか!?」

 そこはあまり食いつくとこでもないと思うのだが……。

「みんなと入るときっと気持ちいいれふよ~」
「確かにこれだけ大きいと心地よさも格別な感じがしますわね」
「なら、どうだ。折角ならば入っていくか? 我は構わぬぞ」
「えっ? いいんですか?」

 一様に皆が驚いたような顔を見せる。
 まあ、招待したときから思っていたのだが、割と遠慮がちに構えているところはあった。ここは少し、皆の緊張をほぐすためにも一肌脱ごうではないか。
 まさに言葉通りなのだが。

「オキザリス、湯浴みの準備を」
「御意」

 ※ ※ ※

 湯けむりとその熱気が立ち上る大理石の浴場の中、ネルムフィラ魔導士学院に通う女学生たちが艶やかなる裸体を晒しながらも、戯れる。

 我の屋敷の使用人たちも動員され、存分にくつろげるようおもてなしも万全だ。
 まだ慣れない学園生活での精神的な疲れも肉体的な疲れも癒えることだろう。
 今日もまた、個性豊かなクセのある教師どもに振り回されんばかりだったし。

 いつもは使用人を除けばミモザと二人きりだったこともあり、これだけの大人数ともなると大浴場を反響する声の大きさも段違いだ。
 人が多いと、こんなにも賑やかになるものなのだな。

 もし、今の状況に少し不満を抱くとするのなら何だろうか。
 ネルムフィラ魔導士学院は人種も、年齢も、隔てない校訓がある。

 実のところ、この場にいるだけでも人間もエルフも獣人もいくらでもいるし、年齢差もかなり大きく開いている。そうなるとどうなるのかというと、率直に言って見た目、容姿において、体格差や発育の差が著しい。

 敢えては言いたくはないのだが、我もミモザも、正直人間でいうところの少女、小娘の枠組みから外れることはできない。その一方で、女生徒どもの中には、我の身長を下回る者の方が少なく、その、なんというか、やたら色気づいた女が多い。

 後悔という言葉は口にしない。ただ、目の前を行き交いする豊満なソレが、我に劣等感をこれでもかというくらいに与えてくれる。

「どうしたんですか、フィーさん? 胸をさすっちゃって……痛いんですか?」
「いや、特に意味はないぞ」

 胸が痛いという意味ではその通りなのだがな。

「今日は招いてくれて、それにこんなおもてなしまでしてくれて、本当にありがとうございます」
「何、気にすることはない。クラスメイトと親睦を深めたかったまでよ」
「えへへ……今度は私のお屋敷にご招待しますね。といっても、フィーさんの屋敷とは比べると本当、大したことないんですけど」
「ふふ、期待させてもらおうか」

 それにしてもコイツの胸も……いや、もう何も言うまい。
 とりあえず、湯船に身を沈めることにした。

「そういえば、フィーさんに聞きたいことがあったんですけど」
「我に聞きたいこと? 答えられる範囲なら答えよう」

 よもや我の正体に迫るものではあるまい。どうやってここまでの資産を得たとか、そのくらいの質問ならいくらでも答えられる。

「……フィーさんって、レッドアイズ王子とどういう関係なんですか? 先日も仲よさげに会話してましたし、それ以前にもこの街で出会っていたとか」

 あ、やばい。その質問は想定してない奴だ。
 別に我は仲良くなどしているつもりなど毛頭なかったが、向こうから気さくに話しかけられているところを見られればそう映るか。

「話すと長くなるのだが……、ミモザのな、ミモザの姉が冒険者をやっておるのだが。件の王子が一人でこっそり冒険者ごっこして、危うく死にかけたところを救ったらしい。それで、まあ、以来ミモザの姉にご執心で、ミモザや我に接触するようになったのだ」

 大体あってる。かなり省いているが。ものっそい重要な箇所を省いているが。

「それじゃあ、前にレッドアイズ王子がわざわざ兄弟で会いに来たというのは……」
「う、うむ、概ね。ミモザの姉に会いに来たのだ。あとは……まあ、我も資産家ではあるし、その点で感心もあったらしい。少なくとも向こうからの一方的な話だ」
「遠くの国から会いに来るなんてよっぽどですよ。なんだか羨ましいです」

 実はプロポーズまでされていたとまでは言うまい。あの噂は我もロータスも裏で手を回してきたが、今でもしつこい油汚れのようにこびりついたままだし。

「さてと、そろそろ上がらねばのぼせてしまうぞ」

 変なボロを出す前に、我は白々しくも、逃げることにした。
 あのはた迷惑な王子と関わると本当ろくでもないことばかりだ。


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「うわぁ~、うちのお屋敷よりずっと広~い」
「フィーさんって本当にあのフィーさんだったのね」
「お招きいただき、ありがとうございますわ」
 我の屋敷の中にぞろぞろとクラスメイトの女子たちが入ってくる。出迎えてくるのは壁になるほど並んだ執事とメイドたちだ。
 彼女らは一応パエデロスに移住してきた貴族の娘たちだったが、それでもこれほどの待遇は経験したことがないようで、感動している様子だ。
 そりゃあもちろん、我はこのパエデロスでもトップクラスの富豪だしな。
 我の所有するジャガイモ農園の収益もグングン伸びてるし、例のミモザチップスの売り上げもそのまま我の人気や信頼に直結して資産も潤沢よ。
「それではお嬢様方、屋敷をご案内いたします」
 そういってペコリと頭を下げて前に躍り出たのはオキザリスだ。いつも通り、普段通りなのだが、屋敷に戻ってくると何とも格が上がったように思える。
 クラスメイトの面々も、なかなか興奮気味のようだ。
 さて。
 学校で色々と会話も弾んだ我は、交流の意味も込めて放課後に話を持ちかけ、クラスメイトの女子たちを屋敷に招くことにしたわけだが、これも悪くないものだ。
 ミモザ以外にこの屋敷に誰かを招くこともあまりなかったし、来客があったとしてもロータスとその仲間の面々ばかりで辟易していたところだ。
 瀟洒な貴族の娘たちがエントランスに集まる光景のこの華やかさよ。これからダンスパーティでも始まるんじゃないかというくらい賑やかでいい。
 気が向いたらそういう社交界も検討してもよいのかもしれん。
「こちらがミモザ様のために造られた作業部屋でございます」
「へぇー」
「こちらがミモザ様のために造られた休憩部屋でございます」
「……?」
「こちらがミモザ様のために造られた応接室でございます」
「……え」
「こちらがミモザ様のために造られた図書室でございます」
「……」
「こちらがミモザ様のために造られた私室でございます」
「全部ミモザちゃんの部屋じゃないですか!?」
「ちがいまふよーーーっ」
 なんかわちゃわちゃと騒いでおるが、楽しそうで何よりだ。
「フィーさんとミモザさん、いつも一緒にいると思ってましたけど、そこまで仲がよかったのですね」
「フィーしゃんとわたしは親友でふから」
「うむ!」
 力強く肯定できることに優越感すら覚えるぞ。
「そういえば、ご入浴も一緒とうかがっておりましたが、それも本当ですか?」
「ああ、勿論だ。この屋敷には大浴場もあるからな」
「丁度この奥に御座います。見ていかれますか?」
 と、オキザリスがテキパキと案内をしていく。
 クラスメイト女子一同、興味津々という面持ちでオキザリスの後をついていき、すぐにそこへとたどり着いた。大理石をあしらえた、まさに大浴場。
「こちらで御座います」
「へぇ、浴場もまた広いんですねぇ」
「今までミモザと、あとダリアくらいしか入れたことはないが、この人数でも全員入れるくらいの余裕はあるだろうな」
「えっ、ダリア先生も入ったことあるんですか!?」
 そこはあまり食いつくとこでもないと思うのだが……。
「みんなと入るときっと気持ちいいれふよ~」
「確かにこれだけ大きいと心地よさも格別な感じがしますわね」
「なら、どうだ。折角ならば入っていくか? 我は構わぬぞ」
「えっ? いいんですか?」
 一様に皆が驚いたような顔を見せる。
 まあ、招待したときから思っていたのだが、割と遠慮がちに構えているところはあった。ここは少し、皆の緊張をほぐすためにも一肌脱ごうではないか。
 まさに言葉通りなのだが。
「オキザリス、湯浴みの準備を」
「御意」
 ※ ※ ※
 湯けむりとその熱気が立ち上る大理石の浴場の中、ネルムフィラ魔導士学院に通う女学生たちが艶やかなる裸体を晒しながらも、戯れる。
 我の屋敷の使用人たちも動員され、存分にくつろげるようおもてなしも万全だ。
 まだ慣れない学園生活での精神的な疲れも肉体的な疲れも癒えることだろう。
 今日もまた、個性豊かなクセのある教師どもに振り回されんばかりだったし。
 いつもは使用人を除けばミモザと二人きりだったこともあり、これだけの大人数ともなると大浴場を反響する声の大きさも段違いだ。
 人が多いと、こんなにも賑やかになるものなのだな。
 もし、今の状況に少し不満を抱くとするのなら何だろうか。
 ネルムフィラ魔導士学院は人種も、年齢も、隔てない校訓がある。
 実のところ、この場にいるだけでも人間もエルフも獣人もいくらでもいるし、年齢差もかなり大きく開いている。そうなるとどうなるのかというと、率直に言って見た目、容姿において、体格差や発育の差が著しい。
 敢えては言いたくはないのだが、我もミモザも、正直人間でいうところの少女、小娘の枠組みから外れることはできない。その一方で、女生徒どもの中には、我の身長を下回る者の方が少なく、その、なんというか、やたら色気づいた女が多い。
 後悔という言葉は口にしない。ただ、目の前を行き交いする豊満なソレが、我に劣等感をこれでもかというくらいに与えてくれる。
「どうしたんですか、フィーさん? 胸をさすっちゃって……痛いんですか?」
「いや、特に意味はないぞ」
 胸が痛いという意味ではその通りなのだがな。
「今日は招いてくれて、それにこんなおもてなしまでしてくれて、本当にありがとうございます」
「何、気にすることはない。クラスメイトと親睦を深めたかったまでよ」
「えへへ……今度は私のお屋敷にご招待しますね。といっても、フィーさんの屋敷とは比べると本当、大したことないんですけど」
「ふふ、期待させてもらおうか」
 それにしてもコイツの胸も……いや、もう何も言うまい。
 とりあえず、湯船に身を沈めることにした。
「そういえば、フィーさんに聞きたいことがあったんですけど」
「我に聞きたいこと? 答えられる範囲なら答えよう」
 よもや我の正体に迫るものではあるまい。どうやってここまでの資産を得たとか、そのくらいの質問ならいくらでも答えられる。
「……フィーさんって、レッドアイズ王子とどういう関係なんですか? 先日も仲よさげに会話してましたし、それ以前にもこの街で出会っていたとか」
 あ、やばい。その質問は想定してない奴だ。
 別に我は仲良くなどしているつもりなど毛頭なかったが、向こうから気さくに話しかけられているところを見られればそう映るか。
「話すと長くなるのだが……、ミモザのな、ミモザの姉が冒険者をやっておるのだが。件の王子が一人でこっそり冒険者ごっこして、危うく死にかけたところを救ったらしい。それで、まあ、以来ミモザの姉にご執心で、ミモザや我に接触するようになったのだ」
 大体あってる。かなり省いているが。ものっそい重要な箇所を省いているが。
「それじゃあ、前にレッドアイズ王子がわざわざ兄弟で会いに来たというのは……」
「う、うむ、概ね。ミモザの姉に会いに来たのだ。あとは……まあ、我も資産家ではあるし、その点で感心もあったらしい。少なくとも向こうからの一方的な話だ」
「遠くの国から会いに来るなんてよっぽどですよ。なんだか羨ましいです」
 実はプロポーズまでされていたとまでは言うまい。あの噂は我もロータスも裏で手を回してきたが、今でもしつこい油汚れのようにこびりついたままだし。
「さてと、そろそろ上がらねばのぼせてしまうぞ」
 変なボロを出す前に、我は白々しくも、逃げることにした。
 あのはた迷惑な王子と関わると本当ろくでもないことばかりだ。