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ガソスタ

ー/ー



 エリシアはレンタカーを運転しながら、快適な移動を楽しんでいた。



 ふと、横を追い越していくハーレーダビッドソンに目を留める。



(そういえば……ヘルズエンジェルズとかいうアウトローもあんな感じの乗ってましたわね……)



 そんなことを考えながら走り続けるエリシア。やがてガソリンが減ってきたので、近くのガソリンスタンドに立ち寄った。

 スタッフが窓越しに「いらっしゃいませ」と挨拶してきた瞬間、つい反射的に——



「ヘルズエンジェルズ!」



 口に出してしまった。



 スタッフは明らかに困惑している。



「え……?」



 エリシアは慌てて顔をそらし、咳払いしながら言い直す。



「あ、いや……えっと……れっぎゃー満タン!」



 微妙なイントネーションに、スタッフはますます怪訝そうな顔をしていたが、結局何も言わずに頷き、作業に取りかかった。



「あのう、給油口開けてくださいね。」



 スタッフの声に、エリシアはさらに焦りながらハンドル下のレバーを探り当て、勢いよく引っ張った。



 ——ガコン。



 突然、ハンドルが下に下がる。



「あ……これ……ステアリング調整……」



 ハンドルを見つめ、状況を理解したエリシアは、乾いた笑いを浮かべた。



「……おほほ!レンタカーですから慣れないもので!」



 スタッフは微妙な表情を浮かべつつ、営業スマイルを崩さない。



「そうですか……では、改めてお願いします。」



 慌てたエリシアは、隣のレバーを今度こそ正解だろうと引っ張った。



 ——バイン!



 遠くで聞き覚えのない音がして、視線を上げると、前方のボンネットが少しだけ開いている。



「あ……」



 エリシアは凍りついたが、店員はさりげなく微笑みながら言った。



「閉めときますねー。」



 そう言うと、店員は歩いていき、手際よくボンネットを閉めた。



「おほほ!失礼!こっちでしたわね!」



 エリシアは慌ててシート横のレバーを掴み、力いっぱい引っ張った。



 ——バコン!



 突然、シートが思い切りリクライニングして、エリシアはほぼ水平に倒れ込む形に。

 彼女の視界には、驚いた顔のスタッフが映る。



「……」
「……」



 リクライニングしたまま、エリシアとスタッフが目を合わせる時間が数秒続いた。

 エリシアは何事もなかったかのように、余裕の笑みを浮かべながら言った。



「リラックスですわね。おほほ……!」



 エリシアは平静を装いながらも内心は焦りに満ちていた。手探りで何とか元に戻そうと、シート下の細いパイプを掴み、力いっぱい引っ張った。



 ——ガラガラ!



 突然、シート全体が後ろに勢いよくスライドし、エリシアは寝そべったまま後部座席に激突。



「ぶっ!」



 それを見た店員が耐えきれず吹き出した。

 エリシアはその音に反応し、寝転んだ状態のまま叫んだ。



「キエエエェエエエエ!」



 車内には叫びと笑い声が混ざり合い、混沌とした空気が漂った。




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 エリシアはレンタカーを運転しながら、快適な移動を楽しんでいた。
 ふと、横を追い越していくハーレーダビッドソンに目を留める。
(そういえば……ヘルズエンジェルズとかいうアウトローもあんな感じの乗ってましたわね……)
 そんなことを考えながら走り続けるエリシア。やがてガソリンが減ってきたので、近くのガソリンスタンドに立ち寄った。
 スタッフが窓越しに「いらっしゃいませ」と挨拶してきた瞬間、つい反射的に——
「ヘルズエンジェルズ!」
 口に出してしまった。
 スタッフは明らかに困惑している。
「え……?」
 エリシアは慌てて顔をそらし、咳払いしながら言い直す。
「あ、いや……えっと……れっぎゃー満タン!」
 微妙なイントネーションに、スタッフはますます怪訝そうな顔をしていたが、結局何も言わずに頷き、作業に取りかかった。
「あのう、給油口開けてくださいね。」
 スタッフの声に、エリシアはさらに焦りながらハンドル下のレバーを探り当て、勢いよく引っ張った。
 ——ガコン。
 突然、ハンドルが下に下がる。
「あ……これ……ステアリング調整……」
 ハンドルを見つめ、状況を理解したエリシアは、乾いた笑いを浮かべた。
「……おほほ!レンタカーですから慣れないもので!」
 スタッフは微妙な表情を浮かべつつ、営業スマイルを崩さない。
「そうですか……では、改めてお願いします。」
 慌てたエリシアは、隣のレバーを今度こそ正解だろうと引っ張った。
 ——バイン!
 遠くで聞き覚えのない音がして、視線を上げると、前方のボンネットが少しだけ開いている。
「あ……」
 エリシアは凍りついたが、店員はさりげなく微笑みながら言った。
「閉めときますねー。」
 そう言うと、店員は歩いていき、手際よくボンネットを閉めた。
「おほほ!失礼!こっちでしたわね!」
 エリシアは慌ててシート横のレバーを掴み、力いっぱい引っ張った。
 ——バコン!
 突然、シートが思い切りリクライニングして、エリシアはほぼ水平に倒れ込む形に。
 彼女の視界には、驚いた顔のスタッフが映る。
「……」
「……」
 リクライニングしたまま、エリシアとスタッフが目を合わせる時間が数秒続いた。
 エリシアは何事もなかったかのように、余裕の笑みを浮かべながら言った。
「リラックスですわね。おほほ……!」
 エリシアは平静を装いながらも内心は焦りに満ちていた。手探りで何とか元に戻そうと、シート下の細いパイプを掴み、力いっぱい引っ張った。
 ——ガラガラ!
 突然、シート全体が後ろに勢いよくスライドし、エリシアは寝そべったまま後部座席に激突。
「ぶっ!」
 それを見た店員が耐えきれず吹き出した。
 エリシアはその音に反応し、寝転んだ状態のまま叫んだ。
「キエエエェエエエエ!」
 車内には叫びと笑い声が混ざり合い、混沌とした空気が漂った。