多忙
ー/ー
対魔王専門組織「ユニオン」の派遣部門トップ、エリシアの部屋に来客が訪れた。
奪われた砦の奪還について話があるのだが、しばらく待たされることに。
やっとのことで、エリシアが忙しそうな様子で部屋に入ってきた。
「お待たせしましたわ。さて、どのようなお話で?」
来客が口を開こうとしたその時——
——プルルルルル!
電話が鳴り響いた。
エリシアはため息をつきながら受話器を取り、対応する。
「あぁ、ちょっと失礼しますわね……。もしもしぃ!?え?今どこですの?」
少しイライラした様子で電話相手と話し始めたエリシア。
来客は呆然としながらも、エリシアが部門長として忙しい立場にあることを理解し、じっと待つしかなかった。
電話の声はエリシアのいつもの上品さがありつつも、どこか切羽詰まっているような響きがあった。
エリシアの電話は一向に終わる気配がなかった。
「え?今どこですって?だったらそこのファミマの交差点を左に……って、どっち向きですの!?じゃあ右ですわね!早くしてちょうだい!」
忙しそうに指示を飛ばしていると、また別の電話が鳴り響いた。
「あぁもう!」
エリシアはため息をつきながら二つの電話を両手に取り、同時に応答し始める。
「もしもし?え!?倍率は?……おぉ!いや、待て——」
「あぁ、それ人気ない馬ですわね……、じゃあメタリックハーレー!メタリックハーレーに賭け——」
「え?交差点曲がった!?じゃあもう目の前ですわよ!え?ビルが見えないって!?それ、あんた一本違う道のファミマじゃありませんの!?」
電話の相手に的確に指示を出しつつ、馬券の話もこなすエリシア。
来客はその様子を呆然と見つめながら思った。
(こんなに忙しくて、しかも二つの電話を同時に捌けるなんて……やっぱりこの人、有能なんだろうなぁ……。)
電話は終わりが見えないほど鳴り響き、三つ目の電話が鳴り出した。
エリシアは両手にそれぞれ二つの受話器を持ち、顔を挟まれるようにして応答する。
「もしも〜し!え!?ヴァイ!? 魔物退治の外注って……あなたのマグナムでなんとかならないんですの!?あのねぇ、私、今ユニオンの立ち上げで超忙しいんですの!」
その瞬間、四つ目の電話が鳴り出す。
「……もう手が足りませんわね!」
エリシアは受話器を器用に顔と肩で挟み込みながら対応を続ける。
「もしも〜し!え?在庫がある!? マジですの!?K18のペーパーチェーンが!?……はい、確保ですわね!すぐ注文しますわ!」
「え!?ファミマ曲がった!?じゃあそのビルですわよ!ほら、右手側に見えるはずですの!」
「ええ!?チャーハンなんか頼んでませんわよ!天津飯ですわ!天津飯!……ちょっと、やり直しなさい!」
「はいはい!もしもし!もうシルバーハーレーで決まりですわ! 5万G賭けてくださいまし!」
その光景を目撃している来客は、もはや感心すら通り越して恐怖を覚え始めていた。
(どうやったらここまで同時進行できるんだ……いや、こんなにいろんなこと抱えてて大丈夫なのか?)
(こいつ、絶対仕事してないよな……)
来客はエリシアの電話を待ちながら、怪しげな目で彼女を観察していた。
「えええぇ!?サイズが40cmだけですって!?……50cmが欲しかったのに……いりませんわ!」
「もしもし!?なにぃ?負けた!?くっそおおおおお!……いや、でも今度は……なんとかインパクトが……ああもう!」
「え?ヴァイ!?倒したですって!?それならよかった——、……はぁ!?そんな汚いもの送ってこなくていいから!」
来客は完全に呆れつつも、恐る恐る声をかけた。
「あの……砦の件なんですが……。」
エリシアはようやく顔を上げ、悪びれる様子もなく微笑みを浮かべる。
「あら、すっかりお待たせしましたわね!さて、どのようなご用件で?」
(絶対今の全部、関係ない電話だろ……。)
来客は心の中でため息をつきつつ、話を切り出すのだった。
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やっとのことで、エリシアが忙しそうな様子で部屋に入ってきた。
「お待たせしましたわ。さて、どのようなお話で?」
来客が口を開こうとしたその時——
——プルルルルル!
電話が鳴り響いた。
エリシアはため息をつきながら受話器を取り、対応する。
「あぁ、ちょっと失礼しますわね……。もしもしぃ!?え?今どこですの?」
少しイライラした様子で電話相手と話し始めたエリシア。
来客は呆然としながらも、エリシアが部門長として忙しい立場にあることを理解し、じっと待つしかなかった。
電話の声はエリシアのいつもの上品さがありつつも、どこか切羽詰まっているような響きがあった。
エリシアの電話は一向に終わる気配がなかった。
「え?今どこですって?だったらそこのファミマの交差点を左に……って、どっち向きですの!?じゃあ右ですわね!早くしてちょうだい!」
忙しそうに指示を飛ばしていると、また別の電話が鳴り響いた。
「あぁもう!」
エリシアはため息をつきながら二つの電話を両手に取り、同時に応答し始める。
「もしもし?え!?倍率は?……おぉ!いや、待て——」
「あぁ、それ人気ない馬ですわね……、じゃあメタリックハーレー!メタリックハーレーに賭け——」
「え?交差点曲がった!?じゃあもう目の前ですわよ!え?ビルが見えないって!?それ、あんた一本違う道のファミマじゃありませんの!?」
電話の相手に的確に指示を出しつつ、馬券の話もこなすエリシア。
来客はその様子を呆然と見つめながら思った。
(こんなに忙しくて、しかも二つの電話を同時に捌けるなんて……やっぱりこの人、有能なんだろうなぁ……。)
電話は終わりが見えないほど鳴り響き、三つ目の電話が鳴り出した。
エリシアは両手にそれぞれ二つの受話器を持ち、顔を挟まれるようにして応答する。
「もしも〜し!え!?ヴァイ!? 魔物退治の外注って……あなたのマグナムでなんとかならないんですの!?あのねぇ、私、今ユニオンの立ち上げで超忙しいんですの!」
その瞬間、四つ目の電話が鳴り出す。
「……もう手が足りませんわね!」
エリシアは受話器を器用に顔と肩で挟み込みながら対応を続ける。
「もしも〜し!え?在庫がある!? マジですの!?K18のペーパーチェーンが!?……はい、確保ですわね!すぐ注文しますわ!」
「え!?ファミマ曲がった!?じゃあそのビルですわよ!ほら、右手側に見えるはずですの!」
「ええ!?チャーハンなんか頼んでませんわよ!天津飯ですわ!天津飯!……ちょっと、やり直しなさい!」
「はいはい!もしもし!もうシルバーハーレーで決まりですわ! 5万G賭けてくださいまし!」
その光景を目撃している来客は、もはや感心すら通り越して恐怖を覚え始めていた。
(どうやったらここまで同時進行できるんだ……いや、こんなにいろんなこと抱えてて大丈夫なのか?)
(こいつ、絶対仕事してないよな……)
来客はエリシアの電話を待ちながら、怪しげな目で彼女を観察していた。
「えええぇ!?サイズが40cmだけですって!?……50cmが欲しかったのに……いりませんわ!」
「もしもし!?なにぃ?負けた!?くっそおおおおお!……いや、でも今度は……なんとかインパクトが……ああもう!」
「え?ヴァイ!?倒したですって!?それならよかった——、……はぁ!?そんな汚いもの送ってこなくていいから!」
来客は完全に呆れつつも、恐る恐る声をかけた。
「あの……砦の件なんですが……。」
エリシアはようやく顔を上げ、悪びれる様子もなく微笑みを浮かべる。
「あら、すっかりお待たせしましたわね!さて、どのようなご用件で?」
(絶対今の全部、関係ない電話だろ……。)
来客は心の中でため息をつきつつ、話を切り出すのだった。