第80話 異気の者
ー/ー キョウラもお祓いを直接行うようになったことで、お祓いの速度は目に見えて向上した。
そうして、異形に取り憑かれた人々は次々にお祓いを受けて自由の身となっていき、1時間もしないうちに3人を残すのみとなった。
「キョウラ、ありがとう。あとは彼らだけね」
吏廻流は、突然お祓いを直接行う人員として戻ってきた娘に最初驚いていたが、すぐに受け入れて娘に感謝の言葉をかけていた。
そして、今もまたキョウラにありがとうと言っている。
やはり、吏廻流は本来は優しい司祭であるようだ。
「お母様…」
キョウラはそんな母の言葉を受けて感激したようだったが、今はそれよりやらねばならないことがあるとわかっているようで、
「あと少しです。このまま、彼らのお祓いも終えましょう」
と言って次の人を呼んだ。
「では、次の方。どうぞ」
ちょうど残りは3人なので、吏廻流と苺とキョウラで一人ずつ祓うようだ。
そうしてお祓いが始まった…のだが、吏廻流が相手している若い女が頭を抱えてうめき、異様に苦しんでいた。
「あれ…大丈夫か…?」
康介が不安がる。
確かに、今までお祓いの最中にあんなに苦しむ人はいなかった。
だが、俺は大丈夫だと思う。
何せ、吏廻流は優れた力を持つ異人なのだ…苺程ではないかもしれないが。
それに、まわりには苺とキョウラ、あとボランティアの神父たちもいる。だから、俺は言った。
「大丈夫だろ。吏廻流なら…」
女が苦しみ出すと、吏廻流は右手をかざして別の魔法を放った。
女はしばらく苦しんでいたが、やがて咆哮を上げるように上を向いて叫び声を上げ、力尽きたかのようにうつむいた。
「終わったのか…?」
俺も一瞬そう思ったが、すぐにそれは間違いだとわかった。
なぜなら次の瞬間、女は異様な気迫をまとって吏廻流に飛びかかったからだ。
吏廻流は電光石火の速さで結界を張り、女の攻撃を防いだ。
女は攻撃を防がれると、華麗なバク宙を決めて着地した。
その目は異様なほど大きく見開かれ、そして真っ赤に充血していた。
どうやら、取り憑いてる異形に操られているらしい。
吏廻流が魔弾を撃ち、キョウラが術を放ったが、女は驚異的なスピードと跳躍力でそれらを躱してキョウラに飛びかかった。
キョウラは間一髪結界を張ったが防ぎきれず、割られそうになった…ところに苺が攻撃を仕掛けたおかげで、女は結界を割らずに離れた。
「苺様…ありがとうございます」
キョウラは礼を述べつつ術を放ったが、やはり躱された。
「動きが速いわね…それなら!」
吏廻流は手を伸ばして魔法を唱える。
「[スティーズ]」
女の周りに白いドーナツ型のものが二つ現れたが、女はまたも空高くジャンプして回避した。
吏廻流は驚きの声を上げ、舌打ちをする。
今彼女が唱えたのは、たぶん俺の「バーニングリング」と同じように相手を拘束する魔法だろう。
動きが速い相手は、まずその動きを封じる事から始めるのが基本…というか定番であるし。
だが、それが効かないとなると少々厄介なのではないか。
それを見たキョウラが同じ魔法を唱えたが、こちらも躱された。
「なっ…!どうして…!?」
キョウラも驚いていたということは、あの魔法は基本躱せないものなのだろうか。
「吏廻流、キョウラさん。彼女に取り憑いているのは「拘束」に耐性を持つ異形です」
苺がそう言うと吏廻流ははっとしたが、キョウラはピンと来ていないようだった。
「拘束が効かない、というのは一体…?」
「動きを拘束する攻撃や異常が効かないって事よ。つまりあいつには、麻痺や睡眠が効かないわ。麻痺の白魔法を躱せたのも納得ね…」
さっき唱えてたのは、相手を麻痺させる白魔法であったようだ。
「…!となると、どうすれば…」
彼女らが話している間にダメ元で術を入れてみたが、案の定躱された。
というかよく考えてみると、むしろ躱されてよかった。何故なら、あの女の肉体は一般の異人。どうにかして中身の異形をあぶり出さないと、彼女に深刻なダメージを負わせてしまう。そう考えると、下手に火を浴びせるわけにはいかない。
そうこうしている間に、女は俺に向かってきた。
女の爪は異様なほど長く伸びていた。そして俺は女の攻撃を防げず、見事胸を刺された。
痛みに耐えながら斧を振り回すと、女はまたバク宙して離れて俺を睨んできた。
俺は苺に向かって叫んだ。
「苺!どうにかして、あいつの中の異形を出せないか!」
「…まずは動きを止めないと!こんなに動き回っていては、魔法を当てられません!」
確かにそれはそうだ。
だが、どうすればいいんだ。
「その通りだ!」
振り向くと、渕部が立っていた。
「司祭さんたちよ、あいつはおれが止める!だから、そこを畳み掛けてくれ!」
「…どうするつもりですか!?」
「そうよ、どうするつもり!?あいつには、拘束は効かないのよ!」
「おれの異能でやってみる!」
そして、渕部は両手を広げて叫んだ。
「奥義 鏡面封じの策!」
すると、女の周りの地面からひし形の鏡面体が複数浮かび上がって回転し始めた。
女は飛び上がろうとしたが、なぜか飛び上がれなかった。
そこにすかさず苺が魔法を決める。
女の体から青黒い異形が抜け出し、そして虚空へ消えていった。
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