ep97 魔法剣士vs爆破魔術師③(シヒロ視点)
ー/ー しばらくすると、カレンさんの身を挺した防衛の甲斐あってか、市民の避難はそれなりに進みました。ぼくたちの周囲にはほとんど人がいません。
「嬢ちゃんとブースト!」
トレブルさんがいても立ってもいられらないと言った具合に声を上げました。
「キラースの狙いはハッキリとはわからねえが、そろそろ女隊長さんも反撃を始めるころだろうぜ。今はフリーダムの連中も勇者軍の兵士にかかりっきりと思われる。ボチボチおれたちはズラかるぞ!」
まさにトレブルさんがそう言った矢先です。
上空からなにやら不穏な空気が漂います。
「そろそろやるか」
キラースがなにかを口にしたかと思うと、またもや魔物の口が大きくパックリ開きます。が、どういうわけかなにも起こりません。つづいてキラースが魔物の上ですっくと立ち上がると、何やら策謀に満ちた残虐な笑みを浮かべました。
「オイ勇者の妹さんよ! いつまでそんなこと続けるつもりだぁ?」
「卑怯者の外道が!(だが実際どうする? 市民の完全な避難など現状では無理だ。それをわかっててヤツは私をいたぶって遊んでいるのだろうが)」
近くの建物の屋根上からカレンさんがキラースに剣尖を突き立てるのが見えました。幾度となく魔力弾を受け止めているにもかかわらず、彼女の覇気と力強さと美しさの衰えはまったく見受けられません。
「そんじゃあこっちもとっておきをくれてやるぜ。」
キラースの眼が嬉しそうに光りました。
「特殊技能〔ウィザードリィ・クラスターボム〕」
サッと両腕を掲げるとキラースは膝をつき、魔物の背中へ両手を当てがいます。つぎに彼の両手からブウゥゥンと溶岩のような赤黒い魔力が生じて、それは魔物へ送り込まれるようにドロドロと不吉に流れていきます。すると魔物の口内にズズズズズゥッと新たな魔力弾が生成され始めます。
「なんだ? なにか今までと違う?」
不穏に訝しむカレンさん。ぼくも同様の印象を受けます。単純な魔力の色合の違いもありますが、そういう視覚的なこと以上に、キラ-スの底深い悪虐な何かを孕んでいるように感じるのです。
「オイ! 勇者の妹! さっきまでと違うと思ったろ?」
「それがなんだ!?」
「あらかじめ教えといてやる。〔クラスターボム〕はただの魔力弾と違って、これ一個の魔力弾の中に三百個の魔力の小爆弾を内蔵している。さらに小爆弾の中には六百個の爆波魔法の破片が詰まっている。まあ扱うにもなかなか危険なシロモノなんだなぁこれが。だからこうして魔物を利用しているってわけだが……さて、ここで問題だ」
「!?」
「コイツが爆発するとどうなるか。無数の爆弾の欠片が辺り一面に飛び散ることになる。もろに喰らったヤツは当然死ぬだろうが、じゃあ飛び散ったわずかな破片だけを喰らったヤツはどうなるだろうなぁ?」
「……」
「安心しな。殺傷力はそれほど高くねえ。だがよ? 破片は皮膚から細かく突き刺さって小爆破を起こし神経を破壊する。服や防具も関係ねえぞ。なんなら隙間から入り込んだりもする。しかも破片はよく飛びやがるからすこぶる範囲も広いぜ。で、どうなるか、だが……不具の奴が続出すんのさ! オモシレーだろぉ!? 歩けない奴、手が使えない奴、目が見えない奴、耳が聞こえない奴、半身不随、全身不随…」
「黙れ!! 救いようのない外道がぁ!!」
「そんじゃあ今からこれを上からぶっ放すんでヨロシク。まっ、コイツをひとりで受け止めたらさすがの勇者の妹でもよ…どうなるかは保証できねえなぁ~!!」
ブオォォォンッと、その残虐な爆弾が、非道に放たれました。
「オイオイふざけんじゃねえ! あれはここにいるおれたちだってヤベえぞ!」
「クソッ! もう伏せるしかねえ! 嬢ちゃんも伏せろ!」
トレブルさんとキラースさんが危機を叫びます。ほぼ同時に、カレンさんが爆弾めがけて鳥のようにバッと跳躍します。そう、まさしく危機そのものに向かってです。
「そんなことは絶対にさせない!(アレを受け止めればさすがの私も無事では済まないだろう。しかし技で弾こうとすれば確実に市民へ大きな被害が出る。それは命にかえてもできない。なぜなら私は、偉大な兄様の……勇者の妹なのだから!)」
しかし勇敢に飛び立つ魔法剣士さまに向かって必死に叫ぶぼくの口から飛び出した言葉は、カレンさんの名前ではありませんでした。
「クローさぁぁぁぁん!!」
まさにその瞬間でした。残虐な魔力弾とそれに立ち向かうカレンさんの間に、青天の霹靂の如く何者かが出現したのです。
「特殊技能〔ニュンパギャッシュ〕」
転瞬、その者は何かの技を発動させました。それは天に煌めく弓張月の如き唯一無二の一閃!
「なに!?」
「なんだ!?」
キラースのみならずカレンさんも非常な喫驚を隠せません。それもそのはずです。
ズバァァァッ!!
突如として目の前に現れたその者の鮮やかな剣閃は、悪虐非道な魔力弾を完璧に斬り裂き、見事に滅失させてしまったからです。
「く、クローさぁぁぁん!!」
ぼくは今いちど力いっぱいに大きく叫びました。叫びながらも、きっとこうなるだろうと心のどこかでは信じていたような気がします。だってぼくにとって、クローさんこそが一番の英雄だから!
「嬢ちゃんとブースト!」
トレブルさんがいても立ってもいられらないと言った具合に声を上げました。
「キラースの狙いはハッキリとはわからねえが、そろそろ女隊長さんも反撃を始めるころだろうぜ。今はフリーダムの連中も勇者軍の兵士にかかりっきりと思われる。ボチボチおれたちはズラかるぞ!」
まさにトレブルさんがそう言った矢先です。
上空からなにやら不穏な空気が漂います。
「そろそろやるか」
キラースがなにかを口にしたかと思うと、またもや魔物の口が大きくパックリ開きます。が、どういうわけかなにも起こりません。つづいてキラースが魔物の上ですっくと立ち上がると、何やら策謀に満ちた残虐な笑みを浮かべました。
「オイ勇者の妹さんよ! いつまでそんなこと続けるつもりだぁ?」
「卑怯者の外道が!(だが実際どうする? 市民の完全な避難など現状では無理だ。それをわかっててヤツは私をいたぶって遊んでいるのだろうが)」
近くの建物の屋根上からカレンさんがキラースに剣尖を突き立てるのが見えました。幾度となく魔力弾を受け止めているにもかかわらず、彼女の覇気と力強さと美しさの衰えはまったく見受けられません。
「そんじゃあこっちもとっておきをくれてやるぜ。」
キラースの眼が嬉しそうに光りました。
「特殊技能〔ウィザードリィ・クラスターボム〕」
サッと両腕を掲げるとキラースは膝をつき、魔物の背中へ両手を当てがいます。つぎに彼の両手からブウゥゥンと溶岩のような赤黒い魔力が生じて、それは魔物へ送り込まれるようにドロドロと不吉に流れていきます。すると魔物の口内にズズズズズゥッと新たな魔力弾が生成され始めます。
「なんだ? なにか今までと違う?」
不穏に訝しむカレンさん。ぼくも同様の印象を受けます。単純な魔力の色合の違いもありますが、そういう視覚的なこと以上に、キラ-スの底深い悪虐な何かを孕んでいるように感じるのです。
「オイ! 勇者の妹! さっきまでと違うと思ったろ?」
「それがなんだ!?」
「あらかじめ教えといてやる。〔クラスターボム〕はただの魔力弾と違って、これ一個の魔力弾の中に三百個の魔力の小爆弾を内蔵している。さらに小爆弾の中には六百個の爆波魔法の破片が詰まっている。まあ扱うにもなかなか危険なシロモノなんだなぁこれが。だからこうして魔物を利用しているってわけだが……さて、ここで問題だ」
「!?」
「コイツが爆発するとどうなるか。無数の爆弾の欠片が辺り一面に飛び散ることになる。もろに喰らったヤツは当然死ぬだろうが、じゃあ飛び散ったわずかな破片だけを喰らったヤツはどうなるだろうなぁ?」
「……」
「安心しな。殺傷力はそれほど高くねえ。だがよ? 破片は皮膚から細かく突き刺さって小爆破を起こし神経を破壊する。服や防具も関係ねえぞ。なんなら隙間から入り込んだりもする。しかも破片はよく飛びやがるからすこぶる範囲も広いぜ。で、どうなるか、だが……不具の奴が続出すんのさ! オモシレーだろぉ!? 歩けない奴、手が使えない奴、目が見えない奴、耳が聞こえない奴、半身不随、全身不随…」
「黙れ!! 救いようのない外道がぁ!!」
「そんじゃあ今からこれを上からぶっ放すんでヨロシク。まっ、コイツをひとりで受け止めたらさすがの勇者の妹でもよ…どうなるかは保証できねえなぁ~!!」
ブオォォォンッと、その残虐な爆弾が、非道に放たれました。
「オイオイふざけんじゃねえ! あれはここにいるおれたちだってヤベえぞ!」
「クソッ! もう伏せるしかねえ! 嬢ちゃんも伏せろ!」
トレブルさんとキラースさんが危機を叫びます。ほぼ同時に、カレンさんが爆弾めがけて鳥のようにバッと跳躍します。そう、まさしく危機そのものに向かってです。
「そんなことは絶対にさせない!(アレを受け止めればさすがの私も無事では済まないだろう。しかし技で弾こうとすれば確実に市民へ大きな被害が出る。それは命にかえてもできない。なぜなら私は、偉大な兄様の……勇者の妹なのだから!)」
しかし勇敢に飛び立つ魔法剣士さまに向かって必死に叫ぶぼくの口から飛び出した言葉は、カレンさんの名前ではありませんでした。
「クローさぁぁぁぁん!!」
まさにその瞬間でした。残虐な魔力弾とそれに立ち向かうカレンさんの間に、青天の霹靂の如く何者かが出現したのです。
「特殊技能〔ニュンパギャッシュ〕」
転瞬、その者は何かの技を発動させました。それは天に煌めく弓張月の如き唯一無二の一閃!
「なに!?」
「なんだ!?」
キラースのみならずカレンさんも非常な喫驚を隠せません。それもそのはずです。
ズバァァァッ!!
突如として目の前に現れたその者の鮮やかな剣閃は、悪虐非道な魔力弾を完璧に斬り裂き、見事に滅失させてしまったからです。
「く、クローさぁぁぁん!!」
ぼくは今いちど力いっぱいに大きく叫びました。叫びながらも、きっとこうなるだろうと心のどこかでは信じていたような気がします。だってぼくにとって、クローさんこそが一番の英雄だから!
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