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Episode 1

ー/ー





 キィィ キィィ 

「いらっしゃいませ、お客様。お探しのものは何でしょうか」



 ーー地方都市の片隅、住宅街の一角。

キーボードを叩く音だけが、夜の静寂の中に響く。



健太は運営するオカルトサイト「冥界リポート」の更新作業中だった。

怪談は、真実の追究よりも楽しむもの。
それが彼の日常だった。



モニターに浮かぶ、依頼メッセージを見つめる。送信者の名前は、リミナル・モール。



「⋯⋯廃墟で一晩、か。王道すぎるかなー」



動画配信のネタ探しに煮詰まった健太にとっては、悪くない企画だった。


ターゲットは、街の郊外にある巨大ショッピングセンター――メビウス・ゲート。



かつてはランドマークと称されたが、今はただの廃墟になっている。


壁にはひびが入り、ガラス窓は煤け、テナントはほとんど撤退していた。



残っているのは、建物外にあるコンビニくらい。都市伝説として語られる「呪われた商業施設」という噂も、この街では有名だ。



足元で「ニャア」と高い声。

チロだ。

長いしっぽを揺らし、健太の足に頭を擦りつける。



「行ってくるよ。すぐ戻るからな」



チロは喉を鳴らし、体を預ける。
その柔らかさが、これから踏み込む異界の恐怖をわずかに遠ざけてくれた。



 リュックを背負い歩く健太の背後で、車のヘッドライトが夜を切り裂く。


メビウス・ゲートの巨大な影が闇に沈む。

深夜零時、警備員の気配はない。健太は裏手の搬入口から身を低くして滑り込んだ。






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 キィィ キィィ 
「いらっしゃいませ、お客様。お探しのものは何でしょうか」
 ーー地方都市の片隅、住宅街の一角。
キーボードを叩く音だけが、夜の静寂の中に響く。
健太は運営するオカルトサイト「冥界リポート」の更新作業中だった。
怪談は、真実の追究よりも楽しむもの。
それが彼の日常だった。
モニターに浮かぶ、依頼メッセージを見つめる。送信者の名前は、リミナル・モール。
「⋯⋯廃墟で一晩、か。王道すぎるかなー」
動画配信のネタ探しに煮詰まった健太にとっては、悪くない企画だった。
ターゲットは、街の郊外にある巨大ショッピングセンター――メビウス・ゲート。
かつてはランドマークと称されたが、今はただの廃墟になっている。
壁にはひびが入り、ガラス窓は煤け、テナントはほとんど撤退していた。
残っているのは、建物外にあるコンビニくらい。都市伝説として語られる「呪われた商業施設」という噂も、この街では有名だ。
足元で「ニャア」と高い声。
チロだ。
長いしっぽを揺らし、健太の足に頭を擦りつける。
「行ってくるよ。すぐ戻るからな」
チロは喉を鳴らし、体を預ける。
その柔らかさが、これから踏み込む異界の恐怖をわずかに遠ざけてくれた。
 リュックを背負い歩く健太の背後で、車のヘッドライトが夜を切り裂く。
メビウス・ゲートの巨大な影が闇に沈む。
深夜零時、警備員の気配はない。健太は裏手の搬入口から身を低くして滑り込んだ。