冒険者ギルドの喧騒の中、一人の冒険者が慌てた様子で飛び込んできた。
「聞いてくれ!」
その声にギルド内の荒くれたちが一斉に注目する。
「なんだなんだ!」
「どうしたんだ!」
冒険者は息を切らせながら、興奮した口調で続けた。
「さっきエリシアと勇者がよぉ……!」
一気に場がざわつく。
「エリシアと勇者……?何があった?」
「どこだよ、それ!」
冒険者が息を整えながら語り始める。
「さっき、酒場でエリシアが一人で飲んでたんだよ……。」
「ほうほう……それで?」
「そこに勇者が入ってきたんだ!」
「おお!?」
「そしたらよぉ、エリシアが『お前、マジ生きて返さねえですわよ』みたいな目で勇者を睨みつけたんだ!」
「……。」
「そしたら今度は、勇者がすぐに剣を抜いてな!エリシアを真っ二つにする気満々で剣に魔力を込めてそうな感じの顔で睨み返してたんだ!」
ギルド内の冒険者たちは、話の展開に思わずゴクリと唾を飲む。
「それで……それでどうなったんだ!?」
「酒場がぶっ壊れたのか!?」
「勇者とエリシア、どっちが勝ったんだ!?」
興奮と好奇心がギルド内に渦巻く中、慌ててやってきた冒険者は、続きの話を語ろうと息を吸い込んだ。
「で、エリシアがバンッ!て立ち上がってよ!」
その言葉にギルド内の空気が一層ピリつく。
「いよいよヤバい感じじゃねえか……。」
「おいおい、どっちがやられるんだよ!?」
慌ててきた冒険者は興奮しながら話を続けた。
「そっからがすげぇんだよ!」
「エリシアはあっという間に勇者を消し炭にして地面の汚れすら足で踏みにじりたそうな雰囲気で近づいていったんだ!」
「それ、どっちがやばいんだよ……。」
周囲の荒くれたちがざわめきながら耳を傾ける。
「でよ、エリシアが勇者の間合いに入った瞬間だ……!」
「勇者の剣が光の速さで抜かれ、無防備なエリシアの胴体を一閃してもおかしくない……そんな緊張感がその場を支配してたぜ……」
ギルド内は静まり返り、全員が息を呑んだ。
「そ、それでどうなったんだ!?」
「エリシアが切られたのか!?それとも勇者が先にやられたのか!?」
続きを待つ冒険者たちの視線が男に集中する。
「そっから先はよぉ……二人とも酒場が崩壊するくらいメチャクチャに暴れ回りたそうな顔で睨み合ってたらしい。」
冒険者の語りは続く。
「痺れを切らしたエリシアがよ……勇者の顎にロシアンフックかまして、ぶっ倒れた勇者の腹を蹴り上げたそうな感じの顔して、そんで酒場を出てったらしいんだよ。」
「……要するに、睨み合って終わりか。」
ギルド内の誰かが呆れたように言った。
「ま、そういうことだな。」
静かに納得したような雰囲気が漂い始める。
「……はいはい、解散解散。」
誰かが手を振りながらそう言うと、周囲の冒険者たちは興味を失ったように再び自分の席へ戻っていった。