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SCENE099 探索者育成空間

ー/ー



「あら、下僕。やっと来ましたのね」

「お待たせしました、セイレーンさん」

 俺は、今日もセイレーンさんに呼び出されて横浜ダンジョンのボス部屋にやってきていた。

「今日はどうして俺を呼んだんですか?」

 改めてセイレーンさんに用件を尋ねてみる。
 そしたら、セイレーンさんはむすっとした表情を見せてきた。何か変なこと言ったかな?

「下僕を呼ぶのに理由なんていりますの?」

 うへっ、そういうこと?!
 まったく、俺の事情も少しは考慮してほしいな。ここまでやってくるのも結構大変なんだから。

「まあ、用というのはありますわね。シードラゴン、念のためにボス部屋に入れないようにしておいて下さいますかしら」

「承知致しました、セイレーン様」

 シードラゴンさんは、セイレーンさんに言われて、ボス部屋のある第十階層の入口に対して何か魔法を使い始めた。

「はあっ!」

 その声と同時に、なにやら光り輝く壁が出てきたみたいだ。
 あれは、結界なのかな?

「これで、邪魔者は来ますまい。セイレーン様、どうぞお話を始めて下さい」

「ええ、始めましょうか」

 セイレーンさんはそう言うと、自分の部屋である神殿のような建物へと入っていく。
 呪文を唱えると、その目の前には宝珠の乗った石柱が出現していた。

「ダンジョンコアですね」

「ええ、そうよ。これがないと、ダンジョンの改装も生活もできませんわ」

 セイレーンさんはそう言いながら、目の前のよく分からない画面を操作している。

「下僕、これを見て下さるかしら」

「は、はい」

 俺は、セイレーンさんの隣に移動する。
 目の前の画面には、ダンジョンの全容が表示されているみたいだ。

「一階層の一部を、探索者育成用に改装しましたの。人間のあなたから、感想を聞きたいのですわ」

「なるほど、それで僕を呼んだんですか」

「そうですわよ。さすがにあたしたちモンスターでは、あなた方と感覚が違い過ぎますからね。少しでもその感覚の違いをすり合わせるために、下僕を呼びましたのよ」

「そうですか。でも、僕みたいな低級探索者じゃ、あんまり参考にはならないと思いますけれど」

 俺は、セイレーンさんの言葉にそんな風に返してしまう。

「何を仰いますの。ダンジョン初心者向けなのですから、低級の方が参考になりますのよ。それはそうと下僕、この画面の文字は読めますかしら」

「文字?」

 俺は、表示されている画面を改めて覗き込む。
 うん、まったく読めないよ。なんだろう、この文字は……。

「どこの文字なんですか、これ」

「異界の文字ですわよ」

「セイレーンさんの故郷の文字ですか?」

「その通りですわ」

 なるほど……。俺にまったく読めないわけだ。

「セイレーン様、どうやら、追ってきていた者は帰ったようですぞ」

「そう。シードラゴン、ご苦労ですわ」

「追ってきていた者?」

 俺はシードラゴンさんの言葉を聞いて首を捻っている。
 そしたら、セイレーンさんはすごく呆れた顔をしていた。

「下僕、あなた、途中まで誰かにつけられていましたのよ」

「えっ?」

 俺は尾行されていた話を聞いて、驚いていた。

「まったく、他人に気付かれないといいながら、他人にも気づかなかったのですわね。それにしても、下僕の隠密を突破するとは、油断ならない相手ですわ」

「左様ですね。モンスターたちをけしかけて邪魔しなければ、ここまで追いかけられていた可能性がありますからね」

「うう、気をつけます」

 俺は自分の未熟さを思い知らされる。
 でも、俺の隠密を看破してきたのって誰なんだろう。気になってしまうな。

「下僕がそこまで気にすることではありませんわよ。このダンジョン内であれば、あたしたちが手を回して排除することも可能ですもの。それよりも、話し合いをしませんとね。ダンジョン管理局とかいう連中とも相談しなければなりませんから、頼みますわよ、下僕」

「はい、頑張らせていただきます」

 セイレーンさんから期待をかけられている。だったら、なんとしてもセイレーンさんの役に立たなくちゃ。
 俺は、改めて第一階層のダンジョンマップを見る。
 さすが横浜駅構内に広がる第一階層なので、地下の駅構内のような感じでダンジョンが広がっている。
 今回セイレーンさんが追加したのは、入口となる改札から入ってしばらく直進したところを右に曲がったところに広がっている。

「あれ? 階下に降りる階段がありますね」

「ええ。第二階層にもちょっと手を加えようと思いましてね。ただし、見ても分かる通り、他の第二階層とは隔離された空間ですわよ」

「なるほど、探索初心者用にちょっと難易度を上げた空間を用意するわけですね」

「そういうことですわ」

 ふむふむ。さすがセイレーンさん。ダンジョンマスターとだけあって、よく考えていると思う。

「でも、意見を出そうと思っても、実際にその場に踏み込んでみないことにはどうにもなりませんね。それこそ、誰か探索者を招き入れないといけないと思いますよ」

「なるほどですわね。でしたら、ウィンクさんに相談をしてみましょうか。元人間であるなら、そこそこ知り合いもいらっしゃるでしょうし」

「そうですね」

 セイレーンさん、さすが頭がよく回るなぁ。
 俺が感心していると、セイレーンさんは携帯電話を取り出してさっそく電話をかけ始めた。
 すっかりこっちの世界の道具も使いこなしているみたいだ。

「ええ、そういうことですから、お願い致しますわ」

 話をもう終わらせてしまい、セイレーンさんが俺を見てくる。

「下僕、明日にでもすぐにウィンクさんのダンジョンに向かって下さらないかしら」

「分かりました。では、準備もありますし、俺はこれで戻りますね」

「ええ、頼みましたわよ」

「はい」

 俺は元気よく返事をすると、ボス部屋を去っていく。
 探索者を育てるためにセイレーンさんが作った場所ってどんなところなんだろうな。
 その場所を見られる時を楽しみにしながら、自分の家へと帰っていった。


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「あら、下僕。やっと来ましたのね」
「お待たせしました、セイレーンさん」
 俺は、今日もセイレーンさんに呼び出されて横浜ダンジョンのボス部屋にやってきていた。
「今日はどうして俺を呼んだんですか?」
 改めてセイレーンさんに用件を尋ねてみる。
 そしたら、セイレーンさんはむすっとした表情を見せてきた。何か変なこと言ったかな?
「下僕を呼ぶのに理由なんていりますの?」
 うへっ、そういうこと?!
 まったく、俺の事情も少しは考慮してほしいな。ここまでやってくるのも結構大変なんだから。
「まあ、用というのはありますわね。シードラゴン、念のためにボス部屋に入れないようにしておいて下さいますかしら」
「承知致しました、セイレーン様」
 シードラゴンさんは、セイレーンさんに言われて、ボス部屋のある第十階層の入口に対して何か魔法を使い始めた。
「はあっ!」
 その声と同時に、なにやら光り輝く壁が出てきたみたいだ。
 あれは、結界なのかな?
「これで、邪魔者は来ますまい。セイレーン様、どうぞお話を始めて下さい」
「ええ、始めましょうか」
 セイレーンさんはそう言うと、自分の部屋である神殿のような建物へと入っていく。
 呪文を唱えると、その目の前には宝珠の乗った石柱が出現していた。
「ダンジョンコアですね」
「ええ、そうよ。これがないと、ダンジョンの改装も生活もできませんわ」
 セイレーンさんはそう言いながら、目の前のよく分からない画面を操作している。
「下僕、これを見て下さるかしら」
「は、はい」
 俺は、セイレーンさんの隣に移動する。
 目の前の画面には、ダンジョンの全容が表示されているみたいだ。
「一階層の一部を、探索者育成用に改装しましたの。人間のあなたから、感想を聞きたいのですわ」
「なるほど、それで僕を呼んだんですか」
「そうですわよ。さすがにあたしたちモンスターでは、あなた方と感覚が違い過ぎますからね。少しでもその感覚の違いをすり合わせるために、下僕を呼びましたのよ」
「そうですか。でも、僕みたいな低級探索者じゃ、あんまり参考にはならないと思いますけれど」
 俺は、セイレーンさんの言葉にそんな風に返してしまう。
「何を仰いますの。ダンジョン初心者向けなのですから、低級の方が参考になりますのよ。それはそうと下僕、この画面の文字は読めますかしら」
「文字?」
 俺は、表示されている画面を改めて覗き込む。
 うん、まったく読めないよ。なんだろう、この文字は……。
「どこの文字なんですか、これ」
「異界の文字ですわよ」
「セイレーンさんの故郷の文字ですか?」
「その通りですわ」
 なるほど……。俺にまったく読めないわけだ。
「セイレーン様、どうやら、追ってきていた者は帰ったようですぞ」
「そう。シードラゴン、ご苦労ですわ」
「追ってきていた者?」
 俺はシードラゴンさんの言葉を聞いて首を捻っている。
 そしたら、セイレーンさんはすごく呆れた顔をしていた。
「下僕、あなた、途中まで誰かにつけられていましたのよ」
「えっ?」
 俺は尾行されていた話を聞いて、驚いていた。
「まったく、他人に気付かれないといいながら、他人にも気づかなかったのですわね。それにしても、下僕の隠密を突破するとは、油断ならない相手ですわ」
「左様ですね。モンスターたちをけしかけて邪魔しなければ、ここまで追いかけられていた可能性がありますからね」
「うう、気をつけます」
 俺は自分の未熟さを思い知らされる。
 でも、俺の隠密を看破してきたのって誰なんだろう。気になってしまうな。
「下僕がそこまで気にすることではありませんわよ。このダンジョン内であれば、あたしたちが手を回して排除することも可能ですもの。それよりも、話し合いをしませんとね。ダンジョン管理局とかいう連中とも相談しなければなりませんから、頼みますわよ、下僕」
「はい、頑張らせていただきます」
 セイレーンさんから期待をかけられている。だったら、なんとしてもセイレーンさんの役に立たなくちゃ。
 俺は、改めて第一階層のダンジョンマップを見る。
 さすが横浜駅構内に広がる第一階層なので、地下の駅構内のような感じでダンジョンが広がっている。
 今回セイレーンさんが追加したのは、入口となる改札から入ってしばらく直進したところを右に曲がったところに広がっている。
「あれ? 階下に降りる階段がありますね」
「ええ。第二階層にもちょっと手を加えようと思いましてね。ただし、見ても分かる通り、他の第二階層とは隔離された空間ですわよ」
「なるほど、探索初心者用にちょっと難易度を上げた空間を用意するわけですね」
「そういうことですわ」
 ふむふむ。さすがセイレーンさん。ダンジョンマスターとだけあって、よく考えていると思う。
「でも、意見を出そうと思っても、実際にその場に踏み込んでみないことにはどうにもなりませんね。それこそ、誰か探索者を招き入れないといけないと思いますよ」
「なるほどですわね。でしたら、ウィンクさんに相談をしてみましょうか。元人間であるなら、そこそこ知り合いもいらっしゃるでしょうし」
「そうですね」
 セイレーンさん、さすが頭がよく回るなぁ。
 俺が感心していると、セイレーンさんは携帯電話を取り出してさっそく電話をかけ始めた。
 すっかりこっちの世界の道具も使いこなしているみたいだ。
「ええ、そういうことですから、お願い致しますわ」
 話をもう終わらせてしまい、セイレーンさんが俺を見てくる。
「下僕、明日にでもすぐにウィンクさんのダンジョンに向かって下さらないかしら」
「分かりました。では、準備もありますし、俺はこれで戻りますね」
「ええ、頼みましたわよ」
「はい」
 俺は元気よく返事をすると、ボス部屋を去っていく。
 探索者を育てるためにセイレーンさんが作った場所ってどんなところなんだろうな。
 その場所を見られる時を楽しみにしながら、自分の家へと帰っていった。