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第63話 相性

ー/ー



「問題って、何があったのでしょうか?」と恵子。

国生(くにうみ)之大神様がオレの体を貸せっていうんだ」と悠木。

「体を貸すとは?」と恵子。

「オレの体に乗り移るということだ」と悠木。

「そんなことができるのですか?」と恵子。

「神だからな」と悠木。

「相性が良ければだ。誰でもというわけではない」と桐子。

「だそうだ」と悠木。

「相性が良かったのですか?」とサキ。

「ああ、とてもよかったな」と桐子。

「何がよかっただよ」と悠木。

「乗り移って何をしたのですか?」と恵子。

「神界を無茶苦茶に破壊していたよ」と悠木。「オレのため込んだ魔力を使ってな」

「反対派を制圧したのだ」と桐子。

「おかげでオレは魔力を失ってただの人間に戻っちまった」と悠木。「しかも神界毀損の汚名を着せられた。龍穴回廊の一件以降、地之神やその信者たちから黒い悪魔と呼ばれるようになったよ」

「ちゃんとおまえを保護するつもりだった」と桐子。「本当にすまなかった」

「わかったよ」と悠木。

「そのあと、艦長は神界でどうなったのですか?」と恵子。

「混乱した神界を抜け出して冥界に戻ったよ」と悠木。「ただの人間に戻ってしまったので、魔物の仲間にかくまわれて過ごした。それからゲート戦争終結後に地上に逃れた」

「無事でよかったですね」とサキ。

「どうだかな。龍穴回廊事件のうわさを聞いた政府がオレを危険人物として監視していた。涙の魔術師の名は、神界を穢した悪魔として知られた。そして神々とその信者どもから嫌われて、行くあてもなくさまよった」と悠木。「あの頃のことは思い出したくないよ」

「大変申し訳ありませんでした!」
 宮主の立花裕香が叫び声をあげて地面にひれ伏した。

「大神様のご指示に従って涙の魔術師様をこの奥之宮でおもてなしすべきところを、あろうことか追い返してしまいました! どのような罰でもお受けいたします!」

 ほかの四人の巫女も同様に地面に伏した。

「もうよい。当時は涙の魔術師の悪名だけでなく、政府からの圧力や地之神の権力抗争もあった。致し方なかったのだ」と桐子。「悠木、この宮の者たちは事情を知らなかったのだ。悪いのは、お前に罪を着せた私だ。どうかこの宮の者たちを許してくれ」

「わかったよ」と悠木。

「お前たち、顔を上げよ。そしてこの宮の巫女として黒魚(こくぎょ)之風大神に仕えよ」と桐子。

「大変寛大なご沙汰を賜り、ありがとうございます。畏れ多くも、黒魚之風大神様に誠心誠意お仕えさせていただきます」
 優香は喜びに涙した。



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「問題って、何があったのでしょうか?」と恵子。
「|国生《くにうみ》之大神様がオレの体を貸せっていうんだ」と悠木。
「体を貸すとは?」と恵子。
「オレの体に乗り移るということだ」と悠木。
「そんなことができるのですか?」と恵子。
「神だからな」と悠木。
「相性が良ければだ。誰でもというわけではない」と桐子。
「だそうだ」と悠木。
「相性が良かったのですか?」とサキ。
「ああ、とてもよかったな」と桐子。
「何がよかっただよ」と悠木。
「乗り移って何をしたのですか?」と恵子。
「神界を無茶苦茶に破壊していたよ」と悠木。「オレのため込んだ魔力を使ってな」
「反対派を制圧したのだ」と桐子。
「おかげでオレは魔力を失ってただの人間に戻っちまった」と悠木。「しかも神界毀損の汚名を着せられた。龍穴回廊の一件以降、地之神やその信者たちから黒い悪魔と呼ばれるようになったよ」
「ちゃんとおまえを保護するつもりだった」と桐子。「本当にすまなかった」
「わかったよ」と悠木。
「そのあと、艦長は神界でどうなったのですか?」と恵子。
「混乱した神界を抜け出して冥界に戻ったよ」と悠木。「ただの人間に戻ってしまったので、魔物の仲間にかくまわれて過ごした。それからゲート戦争終結後に地上に逃れた」
「無事でよかったですね」とサキ。
「どうだかな。龍穴回廊事件のうわさを聞いた政府がオレを危険人物として監視していた。涙の魔術師の名は、神界を穢した悪魔として知られた。そして神々とその信者どもから嫌われて、行くあてもなくさまよった」と悠木。「あの頃のことは思い出したくないよ」
「大変申し訳ありませんでした!」
 宮主の立花裕香が叫び声をあげて地面にひれ伏した。
「大神様のご指示に従って涙の魔術師様をこの奥之宮でおもてなしすべきところを、あろうことか追い返してしまいました! どのような罰でもお受けいたします!」
 ほかの四人の巫女も同様に地面に伏した。
「もうよい。当時は涙の魔術師の悪名だけでなく、政府からの圧力や地之神の権力抗争もあった。致し方なかったのだ」と桐子。「悠木、この宮の者たちは事情を知らなかったのだ。悪いのは、お前に罪を着せた私だ。どうかこの宮の者たちを許してくれ」
「わかったよ」と悠木。
「お前たち、顔を上げよ。そしてこの宮の巫女として|黒魚《こくぎょ》之風大神に仕えよ」と桐子。
「大変寛大なご沙汰を賜り、ありがとうございます。畏れ多くも、黒魚之風大神様に誠心誠意お仕えさせていただきます」
 優香は喜びに涙した。