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混迷(忘却編)

ー/ー



「あっ、横島さん」

「久しぶりね」

「2週間振りですのぉ~……また、修業ですカイ?」

「……ああ。そんな感じだ」


 ここは、学校の教室。

 久しぶりの登校で、皆(ピート、ステルス、愛子)にぎこちなく(・・・・・)挨拶を返した所だ。


 こいつらは友人だが、月での事は迂闊に喋れない。

 当たり前だ。事が、事だしな……勿論、何時までも黙ってる気はない。

 ただ、メドゥーサを倒したと言っても、神魔がまだ後処理でバタバタしてる状態で(言っても、信じないだろうが……)ペラペラ話しちまうのは流石に不味いだろう。と言うか、口止めされてる………


 ちなみに雪之丞は、今も事務所に籠もってる。依然として、記憶喪失のままだ。

 カオスの爺さんとマリアがいるから大丈夫だろうが、ずっとこんな生活を続けるのは流石に不味い…………記憶が戻る前に、ノイローゼにでもなったら洒落にならねぇからな。


 そう考えながら、席に着いたものの早速隣に居る愛子に怪しまれる。


「…………どうかしたの?」
「ん………何がだ……?」

「何か、浮かない(・・・・)感じに見えたから……」
「そう見えるか……少し寝不足なんだよ………」


 そう言って、それっぽく取り繕う。

 ………………仕方ないとは言え、親しい人間(こいつは付喪神だけど)に真相を黙ってるのはそれなりに堪えるな。

 正直な所、月の事を伏せたまま奴の記憶喪失の事は相談してみたい。ただ、それをすれば “何故、そうなった” と言う疑問が当然湧く訳で、そこを誤魔化し切る事には不安が残る……

 何が言いたいかと言うと、結局は黙ってるしかないって事だ。

 まぁ、これはあくまで現状の方針であって、事態が変わらない様なら相談した方が良いだろう。黙り続けるのは、何となく裏切ってる感じもするしな。


 何とかそう思い直すと、再び雪之丞の事へ思考をシフトする。

 実際、どうしたもんか……

 始めは、文珠で何とか出来ないかと考えた。ただ、文珠は途轍もない可能性を秘めてる反面、何が起こるか試してみないと解らない所が多過ぎる。

 安易に使って、取り返しの付かなくなる事を考えると安易には、使えなかった。ついでに言うと、霊気回路に負担を掛ける事に対する懸念もあった。


 次に思い付いたのは、奴の思い出深い場所や人物に会わせる事。だけど、これも直ぐに破綻した。

 俺は、奴の “過去” を知らないから…………

 雪之丞とは除霊や修行、 “これから” の事や他にも下らない話は腐る程したけど、出身や生い立ちに付いては殆ど話さなかった。

 俺自身、自分のことを話したくない事情があって、積極的に聞かなかったのも原因の一つではある。

 知ってることと言えば、母親と死に別れた事。その母親の為に、強くなろうと決意している事………後は、GS道場の『白竜会』に所属していた事くらいか。

 その『白竜会』の関係者なら奴のことを知ってるかもなんて考えたが、雪之丞達以外みんな死んだか、石になったらしいからこの線も早々に消えた……


 正に八方塞がり………ただ、文珠に関しては可能性そのものは残ってるから、どうにも成らなかった時の最終手段だな。





    ◇◇◇


「邪魔するぞ」
「おう!小僧か、やっぱり奴が気になるか?」

「まぁな……どんな具合だ?」
「昨日の今日じゃ、何も変わらんよ。ずっと中に居たわい」
「そうか……」


 学校が終わって事務所に様子を見に来たが、結果は芳しくないようだ。

 雪之丞はソファーに座ってテレビを視ながら、ボーっとしてる…………いや、視てるわけじゃないな。視線を固定してるだけで、心ここにあらずって感じだ。


「様子見に来たぞ」


 もう1個のソファーは爺さんが占領してるんで、俺はパイプ椅子を出して腰掛けながら声を掛ける…………何で、俺が遠慮しなきゃいけねぇんだ?

 まぁ、いいか……すぐ帰るし。
 

「うん……」


 対するこいつは返事をするも、相変わらず視線はテレビの方向。しかも、視てない。
 

「「……………………」」


 それっきり、全く会話が続かない…………

 様子を見に来たはいいが、何と声を掛ければよいやら……爺さんの話じゃ、何も変わってねぇようだし余り急かしてもこいつが塞ぎ込むだけか?


 何とも居心地が悪いんで、今日は帰ろうかと立ち掛けた時だった……


「横島……くん」


 テレビの方を見たまま、雪之丞が話しかけて来た。

 仕方ねぇとはいえ、その呼び方はなんともむず痒い……何回も言うが、普通に気持ち悪い。

 流石に言わねぇけど…………


「ん……?」
「僕は…………戦うことが好きだったんだよね?」

「ああ、戦うこと……そして、強くなることに生きる意味を見出してた。その為の努力も、全く惜しまなかったよ」
「今は……どっちもしたくない………昨日、君達がやった除霊(?)を見て、正直恐いと思った……」

「それは、忘れてるからだ」
「でも、君はいずれ僕にもやって欲しい………そうに、思っているんだろ?」
「記憶が戻ればな、でも焦らなくていい」


 戦わないお前なんて、お前じゃないからな。

 そう、頭の中で付け加えてると、今度はこっちを向いて語りだした。


「戻らなかったら……?戻らなくても、戦わなきゃならないの?」
「極端過ぎる。まだ、決まったわけじゃないだろ?」
「でも、そうなる可能性だってあるじゃないか!」


 やれやれ……思った以上に参ってるぞ。

 でも、こいつの言うように可能性自体は否定しきれない。

 そうなった時か…………
 
 

「…………もし、そうなったら………………無理強いはしねぇよ。新しい道を探したっていい、お前が決めることだしな」

 

 嫌がる人間を強引に現場に放り込むなんて真似は、俺には出来そうもない…………恐いと言う気持ちは、こいつより俺の方がよく分かる。

 …………ただ、それでも言いたいことは言う。

 
「でも、それはあくまで “場合” であって、俺は元に戻って欲しいと思ってる」

「……それは、僕達が仲間だから?それとも友達だから?」

「どっちでもねぇよ………!」


 本当は、どっちでもある。

 でも、一番(・・)の理由じゃなかった。俺はこれを言うべきかどうか少し迷ったが、勢いで口を開く。


「お前と一緒に居れば……俺も強くなれる気がした………お前は、どんな時でも振り返らない。挫けない。前しか見なかった。人によっては、狂犬にも見えるだろうな。それでも……俺は、お前を凄いと思った」


 これは、紛れもない俺の本心…………いつも最悪のことばかり考えて、ビビり散らして醜態晒す……それが、俺だ。

 そんな糞みたい俺から見れば、どんな奴にも真っ向から立ち向かう、お前は正に “ヒーロー” なんだよ。

 恥ずかしくて、口が裂けても言えないけどな……!


「お前と一緒に居ればお前程強く成れなくても、お前と “同類” になれると思ったんだ。今のお前を否定するようで悪いがな………でも、お前が腑抜けたまんまじゃ、俺は目標を無くしちまうんだよ…………だから、早く元に戻れ戦闘狂!!」







混迷 雪之丞
「……………………」
「ほう♪ほう♪」
「横島さん・格好良い」


 呆然とする雪之丞と俺を見てニヤニヤ笑うジジィ…………やっぱ、言うんじゃなかった。

 笑ってんじゃねぇぞ、この野郎(マリアありがとう。でも、恥ずかしい)!!


 本人に言いたくないことを言い切って、完全に居心地の悪くなった俺はそのまま文珠に意識を飛ばす。



「…………消えた!?」
「文珠じゃな」

 
 


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「あっ、横島さん」
「久しぶりね」
「2週間振りですのぉ~……また、修業ですカイ?」
「……ああ。そんな感じだ」
 ここは、学校の教室。
 久しぶりの登校で、皆(ピート、ステルス、愛子)に|ぎこちなく《・・・・・》挨拶を返した所だ。
 こいつらは友人だが、月での事は迂闊に喋れない。
 当たり前だ。事が、事だしな……勿論、何時までも黙ってる気はない。
 ただ、メドゥーサを倒したと言っても、神魔がまだ後処理でバタバタしてる状態で(言っても、信じないだろうが……)ペラペラ話しちまうのは流石に不味いだろう。と言うか、口止めされてる………
 ちなみに雪之丞は、今も事務所に籠もってる。依然として、記憶喪失のままだ。
 カオスの爺さんとマリアがいるから大丈夫だろうが、ずっとこんな生活を続けるのは流石に不味い…………記憶が戻る前に、ノイローゼにでもなったら洒落にならねぇからな。
 そう考えながら、席に着いたものの早速隣に居る愛子に怪しまれる。
「…………どうかしたの?」
「ん………何がだ……?」
「何か、|浮かない《・・・・》感じに見えたから……」
「そう見えるか……少し寝不足なんだよ………」
 そう言って、それっぽく取り繕う。
 ………………仕方ないとは言え、親しい人間(こいつは付喪神だけど)に真相を黙ってるのはそれなりに堪えるな。
 正直な所、月の事を伏せたまま奴の記憶喪失の事は相談してみたい。ただ、それをすれば “何故、そうなった” と言う疑問が当然湧く訳で、そこを誤魔化し切る事には不安が残る……
 何が言いたいかと言うと、結局は黙ってるしかないって事だ。
 まぁ、これはあくまで現状の方針であって、事態が変わらない様なら相談した方が良いだろう。黙り続けるのは、何となく裏切ってる感じもするしな。
 何とかそう思い直すと、再び雪之丞の事へ思考をシフトする。
 実際、どうしたもんか……
 始めは、文珠で何とか出来ないかと考えた。ただ、文珠は途轍もない可能性を秘めてる反面、何が起こるか試してみないと解らない所が多過ぎる。
 安易に使って、取り返しの付かなくなる事を考えると安易には、使えなかった。ついでに言うと、霊気回路に負担を掛ける事に対する懸念もあった。
 次に思い付いたのは、奴の思い出深い場所や人物に会わせる事。だけど、これも直ぐに破綻した。
 俺は、奴の “過去” を知らないから…………
 雪之丞とは除霊や修行、 “これから” の事や他にも下らない話は腐る程したけど、出身や生い立ちに付いては殆ど話さなかった。
 俺自身、自分のことを話したくない事情があって、積極的に聞かなかったのも原因の一つではある。
 知ってることと言えば、母親と死に別れた事。その母親の為に、強くなろうと決意している事………後は、GS道場の『白竜会』に所属していた事くらいか。
 その『白竜会』の関係者なら奴のことを知ってるかもなんて考えたが、雪之丞達以外みんな死んだか、石になったらしいからこの線も早々に消えた……
 正に八方塞がり………ただ、文珠に関しては可能性そのものは残ってるから、どうにも成らなかった時の最終手段だな。
    ◇◇◇
「邪魔するぞ」
「おう!小僧か、やっぱり奴が気になるか?」
「まぁな……どんな具合だ?」
「昨日の今日じゃ、何も変わらんよ。ずっと中に居たわい」
「そうか……」
 学校が終わって事務所に様子を見に来たが、結果は芳しくないようだ。
 雪之丞はソファーに座ってテレビを視ながら、ボーっとしてる…………いや、視てるわけじゃないな。視線を固定してるだけで、心ここにあらずって感じだ。
「様子見に来たぞ」
 もう1個のソファーは爺さんが占領してるんで、俺はパイプ椅子を出して腰掛けながら声を掛ける…………何で、俺が遠慮しなきゃいけねぇんだ?
 まぁ、いいか……すぐ帰るし。
「うん……」
 対するこいつは返事をするも、相変わらず視線はテレビの方向。しかも、視てない。
「「……………………」」
 それっきり、全く会話が続かない…………
 様子を見に来たはいいが、何と声を掛ければよいやら……爺さんの話じゃ、何も変わってねぇようだし余り急かしてもこいつが塞ぎ込むだけか?
 何とも居心地が悪いんで、今日は帰ろうかと立ち掛けた時だった……
「横島……くん」
 テレビの方を見たまま、雪之丞が話しかけて来た。
 仕方ねぇとはいえ、その呼び方はなんともむず痒い……何回も言うが、普通に気持ち悪い。
 流石に言わねぇけど…………
「ん……?」
「僕は…………戦うことが好きだったんだよね?」
「ああ、戦うこと……そして、強くなることに生きる意味を見出してた。その為の努力も、全く惜しまなかったよ」
「今は……どっちもしたくない………昨日、君達がやった除霊(?)を見て、正直恐いと思った……」
「それは、忘れてるからだ」
「でも、君はいずれ僕にもやって欲しい………そうに、思っているんだろ?」
「記憶が戻ればな、でも焦らなくていい」
 戦わないお前なんて、お前じゃないからな。
 そう、頭の中で付け加えてると、今度はこっちを向いて語りだした。
「戻らなかったら……?戻らなくても、戦わなきゃならないの?」
「極端過ぎる。まだ、決まったわけじゃないだろ?」
「でも、そうなる可能性だってあるじゃないか!」
 やれやれ……思った以上に参ってるぞ。
 でも、こいつの言うように可能性自体は否定しきれない。
 そうなった時か…………
「…………もし、そうなったら………………無理強いはしねぇよ。新しい道を探したっていい、お前が決めることだしな」
 嫌がる人間を強引に現場に放り込むなんて真似は、俺には出来そうもない…………恐いと言う気持ちは、こいつより俺の方がよく分かる。
 …………ただ、それでも言いたいことは言う。
「でも、それはあくまで “場合” であって、俺は元に戻って欲しいと思ってる」
「……それは、僕達が仲間だから?それとも友達だから?」
「どっちでもねぇよ………!」
 本当は、どっちでもある。
 でも、|一番《・・》の理由じゃなかった。俺はこれを言うべきかどうか少し迷ったが、勢いで口を開く。
「お前と一緒に居れば……俺も強くなれる気がした………お前は、どんな時でも振り返らない。挫けない。前しか見なかった。人によっては、狂犬にも見えるだろうな。それでも……俺は、お前を凄いと思った」
 これは、紛れもない俺の本心…………いつも最悪のことばかり考えて、ビビり散らして醜態晒す……それが、俺だ。
 そんな糞みたい俺から見れば、どんな奴にも真っ向から立ち向かう、お前は正に “ヒーロー” なんだよ。
 恥ずかしくて、口が裂けても言えないけどな……!
「お前と一緒に居ればお前程強く成れなくても、お前と “同類” になれると思ったんだ。今のお前を否定するようで悪いがな………でも、お前が腑抜けたまんまじゃ、俺は目標を無くしちまうんだよ…………だから、早く元に戻れ戦闘狂!!」
「……………………」
「ほう♪ほう♪」
「横島さん・格好良い」
 呆然とする雪之丞と俺を見てニヤニヤ笑うジジィ…………やっぱ、言うんじゃなかった。
 笑ってんじゃねぇぞ、この野郎(マリアありがとう。でも、恥ずかしい)!!
 本人に言いたくないことを言い切って、完全に居心地の悪くなった俺はそのまま文珠に意識を飛ばす。
「…………消えた!?」
「文珠じゃな」