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中華料理

ー/ー



 エリシアは新たな挑戦として、YouTube企画「ご飯を食べるだけ」の撮影に挑んでいた。


 
 その日のテーマは中華料理。



 撮影場所は中華料理店の個室。エリシアが席につき、さっそくタバコを取り出して一服する。



「この油の匂いと煙って、相性がいいんですの。」



 ——ジュボ



 火をつけた瞬間、カメラマンが少し引きつった笑みを浮かべながら声をかける。

「あ、エリシアさん、一応食事企画なんで……タバコは控えめで……。」



 エリシアはふんっと鼻で笑い、タバコを灰皿に置く。

「まあ、いいですわ。さ、始めましょう。」



 カメラが回る中、エリシアは堂々とレンゲを取り、スープを一口飲んで、満足げに呟いた。

「うん。いい塩梅ですわねぇ。」



 その後ろで店員が油鍋を運ぶ音と共に、次の品が運ばれてくるのだった。



 エリシアの目の前に運ばれてきたのは焼き餃子。



 熱々の湯気が立ち上るそれに続き、テーブルには酢と醤油が並べられる。



「あっ……自分で作るタイプのタレか……。」



 彼女はその状況に少しめんどくさそうな顔をしたが、仕方なく小皿に酢と醤油を注ぎ始める。



「まぁ……日本では焼き餃子が一般的ですけど……本場ではスープに入れたり、蒸したりするんですんの。」



 カメラに向かって知識を披露するものの、その声には少しの投げやり感が混じっている。



「でもねぇ、焼き餃子も悪くありませんのよ。この焦げ目がついた皮と、肉汁がじゅわっと溢れる瞬間……。」



 エリシアは箸で餃子を持ち上げ、タレにつけて口に運ぶ。



「……うん、まぁ、悪くありませんわね。」



 淡々としたコメントだったが、どこか満足そうな表情で餃子を追加で一つ頬張った。カメラマンは内心ほっとしながら撮影を続けるのだった。



 次に運ばれてきたのはエビマヨ。プリプリのエビにたっぷり絡んだマヨネーズソースが見るからに食欲をそそる。



 皿がテーブルに置かれるなり、エリシアが問いかけるように言った。

「エビマヨって、本場にありますの?」



 しかし、店員もカメラマンも誰も答えられず、気まずい沈黙が流れる。



エリシアは肩をすくめて、自ら結論を下す。

「ま、いいですわ。」



 そう言って、エリシアは一つエビマヨを口へ運ぶ。



 ——パク。



 口の中に広がる甘さとコクのある味わいに、彼女は満足げに頷いた。

「エビチリより好きですわね。あっちは中途半端な甘さが気になりますので。」



 その言葉にカメラマンが苦笑いしながら応じる。

「さすがエリシアさん、こだわりが深いですね。」



 エリシアは得意げに笑いながら、さらにもう一口エビマヨを堪能していた。



 次に運ばれてきたのは八宝菜。



 蒸気が立ち上り、豊かな香りが漂う。具材がぎっしり詰まったその皿を見て、エリシアは思わず叫んだ。



「おっ! 私が好きな具がありますわよ〜。」

「え、そうなんですか?」



 カメラマンが興味深そうに尋ねると、エリシアはニヤリと微笑みながら問いかける。



「さて、どれかわかります?」



 ——天邪鬼なエリシアだからなぁ……とカメラマンは内心で考える。



「わかった! うずらの卵でしょ!」



 その答えに、エリシアは大きなため息を吐き、肩を落とした。



「はぁああぁ〜……わかってないですわねぇ。」

「え、違うんですか?」



 エリシアは真剣な顔で箸を握り、皿の中から堂々と掲げた。



「ヤングコーンでしょ!? ヤングコーン!」



 その力強い言葉に、カメラマンは一瞬言葉を失うが、すぐに笑い出す。

「いや、確かに独特で美味しいですけど……。」



 エリシアは満足げにヤングコーンを口に運び、幸せそうに目を細めた。

「このシャキッとした食感、クセになりますわよ〜。」



 彼女の独特なセンスが光る撮影現場であった。



 エリシアは八宝菜をじっくりと味わいながら、次々と箸を進めていく。具材全体に絡む油とタレの混ざり具合が絶妙で、思わず小さく頷く。



「ま、私は肉派なんですが……こういうのなら、野菜もいけますわよ。」



 その言葉にカメラマンが感心したように返す。

「へぇ〜。」



 ——ムシャムシャ



 しばらくの間、エリシアは黙々と食べ進めていたが、ふと箸を置き、ポケットからタバコを取り出した。



 ——ジュポ……。



 火をつけ、一服すると、満足げに深く息を吐く。

「ふうううぅ……。」



 その仕草をカメラが捉えると、カメラマンが苦笑いしながら声をかける。

「エリシアさん、本当に自由ですね。」



 エリシアは煙を燻らせながら、悪びれた様子もなく笑う。

「食事っていうのはねぇ、楽しくなくちゃ意味がありませんのよ。」



 その堂々とした態度に、カメラマンも納得せざるを得なかった。



 撮影を再開し、エリシアは再び八宝菜に箸を伸ばした。具材を探るようにして箸を動かしていると、ふと顔を曇らせる。



「あれ……。」



 カメラマンが不思議そうに声をかける。



「ん? どうかしました?」



 エリシアはさらに皿を覗き込み、驚愕の声を上げた。



「ヤングコーンがない!? あのヤングコーンが!」



「はぁ?」



 カメラマンは戸惑いつつも状況を確認しようとするが、エリシアは勢いよく椅子を立ち、険しい目でカメラマンを睨む。



「さっきまであったヤングコーンが!? てめええ! 食ったでしょ!」



 ——キエエエエエェ〜!



 突然の怒号に店内が揺れるほどの迫力が走る。カメラマンは慌てて手を振りながら否定する。



「いやいや! 食べてません! 本当ですって!」



 しかし、エリシアの怒りは収まらない。



「じゃあ誰ですの!? このヤングコーン泥棒はどこにいますの!?」



 その場にいたスタッフたちは一斉に沈黙し、視線をそらした。

 ヤングコーンが引き起こした緊迫した空気の中、撮影現場は一時騒然となったのだった。



 冷静さを取り戻したスタッフが、エリシアの指摘を検証するためにカメラの録画をその場で見返した。





 モニターに映し出されたのは、満面の笑みを浮かべながらヤングコーンを何個もまとめて口に運ぶエリシアの姿だった。





「このシャキシャキ感がたまんねぇ〜ですわねぇ。」



 録画の中で幸せそうに喋るエリシアを見て、現場は一瞬静まり返る。



「あっ……。」



 その場にいた全員の視線がエリシアに集中する中、彼女は気まずそうに目をそらし、さも何もなかったかのように再びタバコを取り出した。



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 エリシアは新たな挑戦として、YouTube企画「ご飯を食べるだけ」の撮影に挑んでいた。
 その日のテーマは中華料理。
 撮影場所は中華料理店の個室。エリシアが席につき、さっそくタバコを取り出して一服する。
「この油の匂いと煙って、相性がいいんですの。」
 ——ジュボ
 火をつけた瞬間、カメラマンが少し引きつった笑みを浮かべながら声をかける。
「あ、エリシアさん、一応食事企画なんで……タバコは控えめで……。」
 エリシアはふんっと鼻で笑い、タバコを灰皿に置く。
「まあ、いいですわ。さ、始めましょう。」
 カメラが回る中、エリシアは堂々とレンゲを取り、スープを一口飲んで、満足げに呟いた。
「うん。いい塩梅ですわねぇ。」
 その後ろで店員が油鍋を運ぶ音と共に、次の品が運ばれてくるのだった。
 エリシアの目の前に運ばれてきたのは焼き餃子。
 熱々の湯気が立ち上るそれに続き、テーブルには酢と醤油が並べられる。
「あっ……自分で作るタイプのタレか……。」
 彼女はその状況に少しめんどくさそうな顔をしたが、仕方なく小皿に酢と醤油を注ぎ始める。
「まぁ……日本では焼き餃子が一般的ですけど……本場ではスープに入れたり、蒸したりするんですんの。」
 カメラに向かって知識を披露するものの、その声には少しの投げやり感が混じっている。
「でもねぇ、焼き餃子も悪くありませんのよ。この焦げ目がついた皮と、肉汁がじゅわっと溢れる瞬間……。」
 エリシアは箸で餃子を持ち上げ、タレにつけて口に運ぶ。
「……うん、まぁ、悪くありませんわね。」
 淡々としたコメントだったが、どこか満足そうな表情で餃子を追加で一つ頬張った。カメラマンは内心ほっとしながら撮影を続けるのだった。
 次に運ばれてきたのはエビマヨ。プリプリのエビにたっぷり絡んだマヨネーズソースが見るからに食欲をそそる。
 皿がテーブルに置かれるなり、エリシアが問いかけるように言った。
「エビマヨって、本場にありますの?」
 しかし、店員もカメラマンも誰も答えられず、気まずい沈黙が流れる。
エリシアは肩をすくめて、自ら結論を下す。
「ま、いいですわ。」
 そう言って、エリシアは一つエビマヨを口へ運ぶ。
 ——パク。
 口の中に広がる甘さとコクのある味わいに、彼女は満足げに頷いた。
「エビチリより好きですわね。あっちは中途半端な甘さが気になりますので。」
 その言葉にカメラマンが苦笑いしながら応じる。
「さすがエリシアさん、こだわりが深いですね。」
 エリシアは得意げに笑いながら、さらにもう一口エビマヨを堪能していた。
 次に運ばれてきたのは八宝菜。
 蒸気が立ち上り、豊かな香りが漂う。具材がぎっしり詰まったその皿を見て、エリシアは思わず叫んだ。
「おっ! 私が好きな具がありますわよ〜。」
「え、そうなんですか?」
 カメラマンが興味深そうに尋ねると、エリシアはニヤリと微笑みながら問いかける。
「さて、どれかわかります?」
 ——天邪鬼なエリシアだからなぁ……とカメラマンは内心で考える。
「わかった! うずらの卵でしょ!」
 その答えに、エリシアは大きなため息を吐き、肩を落とした。
「はぁああぁ〜……わかってないですわねぇ。」
「え、違うんですか?」
 エリシアは真剣な顔で箸を握り、皿の中から堂々と掲げた。
「ヤングコーンでしょ!? ヤングコーン!」
 その力強い言葉に、カメラマンは一瞬言葉を失うが、すぐに笑い出す。
「いや、確かに独特で美味しいですけど……。」
 エリシアは満足げにヤングコーンを口に運び、幸せそうに目を細めた。
「このシャキッとした食感、クセになりますわよ〜。」
 彼女の独特なセンスが光る撮影現場であった。
 エリシアは八宝菜をじっくりと味わいながら、次々と箸を進めていく。具材全体に絡む油とタレの混ざり具合が絶妙で、思わず小さく頷く。
「ま、私は肉派なんですが……こういうのなら、野菜もいけますわよ。」
 その言葉にカメラマンが感心したように返す。
「へぇ〜。」
 ——ムシャムシャ
 しばらくの間、エリシアは黙々と食べ進めていたが、ふと箸を置き、ポケットからタバコを取り出した。
 ——ジュポ……。
 火をつけ、一服すると、満足げに深く息を吐く。
「ふうううぅ……。」
 その仕草をカメラが捉えると、カメラマンが苦笑いしながら声をかける。
「エリシアさん、本当に自由ですね。」
 エリシアは煙を燻らせながら、悪びれた様子もなく笑う。
「食事っていうのはねぇ、楽しくなくちゃ意味がありませんのよ。」
 その堂々とした態度に、カメラマンも納得せざるを得なかった。
 撮影を再開し、エリシアは再び八宝菜に箸を伸ばした。具材を探るようにして箸を動かしていると、ふと顔を曇らせる。
「あれ……。」
 カメラマンが不思議そうに声をかける。
「ん? どうかしました?」
 エリシアはさらに皿を覗き込み、驚愕の声を上げた。
「ヤングコーンがない!? あのヤングコーンが!」
「はぁ?」
 カメラマンは戸惑いつつも状況を確認しようとするが、エリシアは勢いよく椅子を立ち、険しい目でカメラマンを睨む。
「さっきまであったヤングコーンが!? てめええ! 食ったでしょ!」
 ——キエエエエエェ〜!
 突然の怒号に店内が揺れるほどの迫力が走る。カメラマンは慌てて手を振りながら否定する。
「いやいや! 食べてません! 本当ですって!」
 しかし、エリシアの怒りは収まらない。
「じゃあ誰ですの!? このヤングコーン泥棒はどこにいますの!?」
 その場にいたスタッフたちは一斉に沈黙し、視線をそらした。
 ヤングコーンが引き起こした緊迫した空気の中、撮影現場は一時騒然となったのだった。
 冷静さを取り戻したスタッフが、エリシアの指摘を検証するためにカメラの録画をその場で見返した。
 モニターに映し出されたのは、満面の笑みを浮かべながらヤングコーンを何個もまとめて口に運ぶエリシアの姿だった。
「このシャキシャキ感がたまんねぇ〜ですわねぇ。」
 録画の中で幸せそうに喋るエリシアを見て、現場は一瞬静まり返る。
「あっ……。」
 その場にいた全員の視線がエリシアに集中する中、彼女は気まずそうに目をそらし、さも何もなかったかのように再びタバコを取り出した。