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ハンバーガー(200g)

ー/ー



 近所に新しくオープンしたハンバーガーショップ、その名も「エリシアバーガー」



 青年は興味をそそられ、ふらりと店に入ってみた。



 ドアを開けた瞬間、鼻をくすぐるのは肉が焼ける香ばしい匂い。
店内はモダンでおしゃれなデザイン、カウンターやテーブルもピカピカで清潔感がある。



「いらっしゃいませ!」



 店員の明るい声に迎えられ、メニューを手に取る青年。



 オーダーが通り、調理場ではジュウジュウと肉を焼く音が響き渡る。



「お待ちどうさまですわ!」



 バーガーが運ばれてきた青年は、ワクワクしながら包み紙を開けた。



「……?」



 しかし、何かがおかしい。
 形がいびつだ。



 しかも、よく見ると——誰かがかじった跡がある!?



 青年は困惑し、思わずカウンターのエリシアを呼びつけた。



「あの……すみません、これって食べかけじゃないですか?」



 エリシアはその言葉に眉をひそめ、すぐさま否定した。



「そんなわけありませんわ。当店のバーガーは、すべてグラム数を厳密に統一してお出ししておりますの。」



 そう言うと、エリシアはカウンターの下からピカピカの電子はかりを取り出し、目の前に置いた。



「ご覧なさい。こちらがあなたのバーガーの重量ですわ。」



 青年が半信半疑で見守る中、エリシアはバーガーをはかりの上に置いた。



 ——200g。



 青年はメニューに記載されているグラム数を確認し、仕方なく頷いた。



「ああ……確かに、200gです。」



 エリシアは満足げに笑みを浮かべた。



「そうでしょう?きちんと測っておりますから、食べかけなんてことはあり得ませんわ。」



 青年は再びバーガーを見つめたが、形のいびつさが気になりつつも、ひとまず納得してかぶりつくことにした。

 結局のところ、エリシアが説明するには——



「お客様が多いため、ハンバーガーの形成がどうしても完全にはならない場合がございますの。」



 彼女は軽く肩をすくめて続ける。



「でも、それが味に影響するわけではありませんわ。むしろ手作り感が出ている、と好評ですのよ。」



 青年はもう一度バーガーを見つめ直し、気を取り直してかぶりつく。



 ——ジュワッ。



 口の中に広がるジューシーな肉汁とバンズの香ばしさ。



「……確かに、うまいな。」



 彼は頷きながらもう一口食べる。味には文句のつけようがなかった。
 エリシアは誇らしげに笑みを浮かべる。



「でしょう?当店のバーガーは、見た目よりも味で勝負ですわ!」



 だが、後日もまた同じだった。



 注文したバーガーの包みを開けると、そこにはまたしても——
 噛み跡のようなデザイン。

 青年は思わず眉をひそめた。



「いや、これ、やっぱり誰かかじってますよね?」



 カウンターのエリシアはその声にピクリと反応し、即座に否定した。



「そ、そんなことするはずがありませんわ!当店は衛生管理も徹底しておりますからね!」



 だが、言いながらもどこか目が泳いでいる。



 青年はその様子を訝しんだが、バーガーをかじると口の中に広がる味わいに、つい言葉を呑み込む。
美味しい……。

 確かに形はいびつだが、味に文句をつける理由はどこにもない。



「まあ、美味しいからいいんだけど……」



 青年はため息をつきながらバーガーを平らげた。
 しかし、頭の片隅にはどうしても引っかかる。



 ——このバーガー……本当に誰もかじってないのか?



 ある日、青年がいつものように「エリシアバーガー」を訪れた。



「すいませーん!注文お願いしまーす!」



 カウンターに声をかけると——



 ——ドスドスドス……



 大きな足音を響かせながら、エリシアが現れた。
 しかし、なんだか様子がおかしい。



「……なんか、太っ……いえ、ふくよかになりました?」



 エリシアは一瞬、微妙な顔をしたが、すぐに優雅な笑みを浮かべて答える。



「な、なんのことかしら?私はただ、少し……栄養価の高い試作品を試しているだけですのよ!」



 青年はその返答に苦笑いしながらも、どうにも視線が気になって仕方がない。



「まあ、健康そうで何よりですけど……」



 厨房の奥から、怒りにも似たエリシアの声が漏れ聞こえてくる。



「あーもう!厨房が狭すぎてやりづらいですわね!」



 ——ジュウゥ……



 それから少しして、エリシアがカウンターに戻ってきた。
 笑顔でプレートを差し出しながら言う。



「お待たせしました。チーズバーガーですわ。」



 青年は受け取って包み紙を開けたが——



「え?」



 バーガーの一部が、明らかに無くなっている。4分の1くらい消失しているではないか!



 青年は慌ててエリシアを呼んだ。



「ちょ、ちょっと!これ絶対誰か食べてますよね!?」



 しかしエリシアは動じずにきっぱりと言い放つ。



「食べてませんわ!断じて!」



 そう言うとお決まりのように電子秤を取り出し、バーガーを乗せた。



「ご覧なさい。ちゃんと200gになっていますでしょう?」



 だが、青年は今度ばかりは譲らなかった。



「待てい!」



 そう叫ぶと、自分のカバンから小型の電子秤を取り出す。
 エリシアは目を丸くして彼を見た。



「その秤、ズルしてるだろ!」



 青年が自分の秤にバーガーを乗せた。



 ——200g。



「あれ?」



 彼は思わず目を丸くする。
 エリシアは勝ち誇ったように胸を張る。



「だから言ったでしょう?きちんと200gでお出ししていますわ!」



 青年はもう一度秤を見つめ、少し首を捻った。



「え……俺の勘違い、かな?」



 確かに見た目では4分の1くらい消えていたはずなのに、重量はピッタリ。
 エリシアは微笑みながらバーガーを手渡し、優雅に言い放つ。



「お客様もお疲れですのね。きちんとお召し上がりになって、栄養をつけてくださいな。」



 青年は納得がいかない様子でバーガーを手に戻るが、味は相変わらず美味しい。



「……まあ、いいか。」



 しかし、厨房の奥から微かに聞こえる声が耳に残った。



「ゲフゥ……」



 ——謎は深まるばかりだった。


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 近所に新しくオープンしたハンバーガーショップ、その名も「エリシアバーガー」
 青年は興味をそそられ、ふらりと店に入ってみた。
 ドアを開けた瞬間、鼻をくすぐるのは肉が焼ける香ばしい匂い。
店内はモダンでおしゃれなデザイン、カウンターやテーブルもピカピカで清潔感がある。
「いらっしゃいませ!」
 店員の明るい声に迎えられ、メニューを手に取る青年。
 オーダーが通り、調理場ではジュウジュウと肉を焼く音が響き渡る。
「お待ちどうさまですわ!」
 バーガーが運ばれてきた青年は、ワクワクしながら包み紙を開けた。
「……?」
 しかし、何かがおかしい。
 形がいびつだ。
 しかも、よく見ると——誰かがかじった跡がある!?
 青年は困惑し、思わずカウンターのエリシアを呼びつけた。
「あの……すみません、これって食べかけじゃないですか?」
 エリシアはその言葉に眉をひそめ、すぐさま否定した。
「そんなわけありませんわ。当店のバーガーは、すべてグラム数を厳密に統一してお出ししておりますの。」
 そう言うと、エリシアはカウンターの下からピカピカの電子はかりを取り出し、目の前に置いた。
「ご覧なさい。こちらがあなたのバーガーの重量ですわ。」
 青年が半信半疑で見守る中、エリシアはバーガーをはかりの上に置いた。
 ——200g。
 青年はメニューに記載されているグラム数を確認し、仕方なく頷いた。
「ああ……確かに、200gです。」
 エリシアは満足げに笑みを浮かべた。
「そうでしょう?きちんと測っておりますから、食べかけなんてことはあり得ませんわ。」
 青年は再びバーガーを見つめたが、形のいびつさが気になりつつも、ひとまず納得してかぶりつくことにした。
 結局のところ、エリシアが説明するには——
「お客様が多いため、ハンバーガーの形成がどうしても完全にはならない場合がございますの。」
 彼女は軽く肩をすくめて続ける。
「でも、それが味に影響するわけではありませんわ。むしろ手作り感が出ている、と好評ですのよ。」
 青年はもう一度バーガーを見つめ直し、気を取り直してかぶりつく。
 ——ジュワッ。
 口の中に広がるジューシーな肉汁とバンズの香ばしさ。
「……確かに、うまいな。」
 彼は頷きながらもう一口食べる。味には文句のつけようがなかった。
 エリシアは誇らしげに笑みを浮かべる。
「でしょう?当店のバーガーは、見た目よりも味で勝負ですわ!」
 だが、後日もまた同じだった。
 注文したバーガーの包みを開けると、そこにはまたしても——
 噛み跡のようなデザイン。
 青年は思わず眉をひそめた。
「いや、これ、やっぱり誰かかじってますよね?」
 カウンターのエリシアはその声にピクリと反応し、即座に否定した。
「そ、そんなことするはずがありませんわ!当店は衛生管理も徹底しておりますからね!」
 だが、言いながらもどこか目が泳いでいる。
 青年はその様子を訝しんだが、バーガーをかじると口の中に広がる味わいに、つい言葉を呑み込む。
美味しい……。
 確かに形はいびつだが、味に文句をつける理由はどこにもない。
「まあ、美味しいからいいんだけど……」
 青年はため息をつきながらバーガーを平らげた。
 しかし、頭の片隅にはどうしても引っかかる。
 ——このバーガー……本当に誰もかじってないのか?
 ある日、青年がいつものように「エリシアバーガー」を訪れた。
「すいませーん!注文お願いしまーす!」
 カウンターに声をかけると——
 ——ドスドスドス……
 大きな足音を響かせながら、エリシアが現れた。
 しかし、なんだか様子がおかしい。
「……なんか、太っ……いえ、ふくよかになりました?」
 エリシアは一瞬、微妙な顔をしたが、すぐに優雅な笑みを浮かべて答える。
「な、なんのことかしら?私はただ、少し……栄養価の高い試作品を試しているだけですのよ!」
 青年はその返答に苦笑いしながらも、どうにも視線が気になって仕方がない。
「まあ、健康そうで何よりですけど……」
 厨房の奥から、怒りにも似たエリシアの声が漏れ聞こえてくる。
「あーもう!厨房が狭すぎてやりづらいですわね!」
 ——ジュウゥ……
 それから少しして、エリシアがカウンターに戻ってきた。
 笑顔でプレートを差し出しながら言う。
「お待たせしました。チーズバーガーですわ。」
 青年は受け取って包み紙を開けたが——
「え?」
 バーガーの一部が、明らかに無くなっている。4分の1くらい消失しているではないか!
 青年は慌ててエリシアを呼んだ。
「ちょ、ちょっと!これ絶対誰か食べてますよね!?」
 しかしエリシアは動じずにきっぱりと言い放つ。
「食べてませんわ!断じて!」
 そう言うとお決まりのように電子秤を取り出し、バーガーを乗せた。
「ご覧なさい。ちゃんと200gになっていますでしょう?」
 だが、青年は今度ばかりは譲らなかった。
「待てい!」
 そう叫ぶと、自分のカバンから小型の電子秤を取り出す。
 エリシアは目を丸くして彼を見た。
「その秤、ズルしてるだろ!」
 青年が自分の秤にバーガーを乗せた。
 ——200g。
「あれ?」
 彼は思わず目を丸くする。
 エリシアは勝ち誇ったように胸を張る。
「だから言ったでしょう?きちんと200gでお出ししていますわ!」
 青年はもう一度秤を見つめ、少し首を捻った。
「え……俺の勘違い、かな?」
 確かに見た目では4分の1くらい消えていたはずなのに、重量はピッタリ。
 エリシアは微笑みながらバーガーを手渡し、優雅に言い放つ。
「お客様もお疲れですのね。きちんとお召し上がりになって、栄養をつけてくださいな。」
 青年は納得がいかない様子でバーガーを手に戻るが、味は相変わらず美味しい。
「……まあ、いいか。」
 しかし、厨房の奥から微かに聞こえる声が耳に残った。
「ゲフゥ……」
 ——謎は深まるばかりだった。