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おすすめの工具教えて

ー/ー



 青年は少し古びた街の一角にある「ツールショップ」の前に立っていた。



 外観は、錆びついた看板と色褪せたシャッターで飾られており、一見して通りがかりに目を引くような店ではなかった。しかし、どこかに「知る人ぞ知る」という雰囲気が漂っている。



「ここが先輩が言ってた店か……。」



 足場鳶の先輩が、作業で使う道具を揃えるならここが一番だと言っていた。工具や日用品が驚くほど安い上に、品質も確かなものばかり揃っているという。



「確かに、知らなきゃ絶対入らない外観だな。」



 青年は心の中で少し苦笑しながら、意を決して店の扉を押した。



 ——キィ……



 青年が店の扉を押して中に入ると、想像以上に静かな店内だった。



 人の気配はまるでない。聞いた話では年配の店主が一人でやっている店だと聞いていたが、奥で何か作業をしているのか、それとも誰もいないのか。



「ごめんくださーい……」



 青年はおそるおそる声をかけたが、返事はない。



「留守かな……?」



 仕方なく、店内を物色することにした。

 棚にはワイヤーブラシが綺麗に並べられ、その隣には一般的なステンレスの鍋が積まれている。さらに進むと、グラインダーの替え刃が所狭しと並び、工具好きなら目を輝かせるラインナップだ。



「ここ、思ったより品揃えすごいな……。」



 青年は夢中で店内を見て回りながら、ふと前方の注意を怠った——その瞬間。



 ——ドンッ!



 何かとぶつかった。



「すいませ——」



 慌てて謝ろうとした青年だったが、目の前に立つ「何か」を見た途端、言葉を失った。



全身がメタリックシルバーに輝く筋骨隆々の男が、サングラス越しにこちらを見下ろしている。



「ひ……」



 思わず声を漏らした青年に、男はニカッと不気味な笑みを浮かべた。



「……」



 え、まさかこの人が店主?いや、代替わりでもしたのか?それともただのバイトか?
 青年の頭の中は混乱に満ちていたが、男は黙ったまま一歩近づいてきた。



「……何か、探してるのか?」



 低く響く声に、青年の心臓はバクバクと音を立て始めるのだった——。

 ヴァイは狂気じみた笑みを浮かべたまま、青年を圧倒する勢いで声を上げた。



「い、いや……そ、その……適当に見てるだけで……」



 青年が戸惑いながら返事をすると、ヴァイはその言葉を待たずに叫んだ。



「そりゃいいや!せっかくだから見ていけヨォ!」

「え、あ、ちょ——」



 青年の言葉を遮るように、ヴァイは近くの棚からスコップを掴み取った。そして、その手に持ったスコップを誇らしげに掲げながら説明を始める。



「こいつは使いやすいゼェ〜?振り回してもイイし、突いてもイイィ!」



 ヴァイの動きは勢いがありすぎて、スコップの先が棚の端をカツンと鳴らした。青年は思わず身をすくめる。



「だが、気をつけろぉ……狭い場所じゃ振り回せねえ!」

「……」



 青年はただ呆然と立ち尽くしていた。工具の説明を聞いているはずなのに、何かがおかしい。普通の使い方の話ではないように感じるのだ。



「いや、なんの話だよ……。」



 青年が小声で呟くが、ヴァイはお構いなしにスコップを大げさに振り回し続ける。



 ヴァイは今度は棚からアイスピックを掴み取り、狂気じみた笑みをさらに深めた。



「こいつはまさしくプロって感じダァ!」



 青年は少し引き気味で「プロ……?」と聞き返したが、ヴァイは気にも留めず説明を続ける。



「派手さはねえが、これがまた渋いんだぜぇ。背後から忍び寄って……」



 彼はアイスピックを軽く握り、何かを突き刺すような仕草をしてみせた。



「スッ……と肺に一撃!ほら、これがプロの仕事ってもんだろぉ!?」

「……渋いって、何がですか?」



 青年は恐る恐る尋ねたが、ヴァイは答えずにアイスピックを回しながらニヤリと笑った。



「一見地味だが、こいつは確実に結果を出す。まさに玄人の選ぶツールって感じだろぉ!」



 ヴァイは次に棚に並べられている電動式グラインダーに目を留めた。手に取ると、まるで宝物でも見せるかのように青年に差し出す。



「これだァ……。」

「えっ、それ……ただの工具ですよね?」



 青年が一縷の望みをかけて尋ねるが、ヴァイの答えは違った。



「確かにこいつはやり合うには不向きだな。でもなぁ……本領を発揮するのは情報を聞き出す時だぜ。」



「じ、情報って何ですか!?何を言ってるんですか!?」



 青年が戸惑う中、ヴァイは構わず近くのコンセントにプラグを刺し、電源を入れた。



 ——ぎゅいいイイイイイィン!



 耳をつんざく音が店内に響き渡り、グラインダーの回転刃が唸りを上げる。青年は反射的に一歩後ずさった。



「ま、プロ相手には効き目がねえんだがな……。」



 ヴァイは刃が回転するグラインダーをまじまじと見つめながら、狂気じみた笑みを浮かべた。



「だが、素人ならヨォ。簡単にしゃべってくれるぜ〜!」



「お、おいおいおい!そんなのどこで使うんですか!?てか止めてくださいよ!」



 青年は震えながら訴えたが、ヴァイはグラインダーを手に持ちながら堂々とポーズを決めている。

 青年は心の中で確信した。



「この店、やっぱり来るんじゃなかった……!」



 ヴァイは興奮した様子で店内を回り始め、棚に並んだ工具を次々と手に取って見せびらかし始めた。



 ドライバー、ペンチ、裁ち鋏、そして鎖——。



「どれもこれもアイデア次第だ!お前も覚えときなぁ!」



 青年は完全に引いていた。



「この店主、狂ってやがる……。」



 そう思った矢先、ヴァイは抱えきれないほどの工具を両腕に抱え、レジに向かって突進した。



「ジジイ!会計だ!どこ行った!?殺すぞ!」



 店内に響き渡る怒号に、青年は冷や汗をかく。だが、ヴァイは店主の姿が見えないことに特に気に留める様子もなく、言葉を続けた。



「……まあいいか。金置いとくぞおおおおお!」



 ——ガサガサッ



 彼はポケットから紙幣を無造作につかみ取り、それをレジにばら撒いた。紙幣の量は明らかに多すぎるが、ヴァイはそんなことはお構いなしだ。

 工具を抱えたまま、悠然と店を出ていくヴァイ。その背中を見送りながら、青年は呆然と呟いた。



「……客かよ……。」



 静まり返った店内には、ばら撒かれた紙幣と、工具のカタカタという微かな音だけが残されていた。



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 青年は少し古びた街の一角にある「ツールショップ」の前に立っていた。
 外観は、錆びついた看板と色褪せたシャッターで飾られており、一見して通りがかりに目を引くような店ではなかった。しかし、どこかに「知る人ぞ知る」という雰囲気が漂っている。
「ここが先輩が言ってた店か……。」
 足場鳶の先輩が、作業で使う道具を揃えるならここが一番だと言っていた。工具や日用品が驚くほど安い上に、品質も確かなものばかり揃っているという。
「確かに、知らなきゃ絶対入らない外観だな。」
 青年は心の中で少し苦笑しながら、意を決して店の扉を押した。
 ——キィ……
 青年が店の扉を押して中に入ると、想像以上に静かな店内だった。
 人の気配はまるでない。聞いた話では年配の店主が一人でやっている店だと聞いていたが、奥で何か作業をしているのか、それとも誰もいないのか。
「ごめんくださーい……」
 青年はおそるおそる声をかけたが、返事はない。
「留守かな……?」
 仕方なく、店内を物色することにした。
 棚にはワイヤーブラシが綺麗に並べられ、その隣には一般的なステンレスの鍋が積まれている。さらに進むと、グラインダーの替え刃が所狭しと並び、工具好きなら目を輝かせるラインナップだ。
「ここ、思ったより品揃えすごいな……。」
 青年は夢中で店内を見て回りながら、ふと前方の注意を怠った——その瞬間。
 ——ドンッ!
 何かとぶつかった。
「すいませ——」
 慌てて謝ろうとした青年だったが、目の前に立つ「何か」を見た途端、言葉を失った。
全身がメタリックシルバーに輝く筋骨隆々の男が、サングラス越しにこちらを見下ろしている。
「ひ……」
 思わず声を漏らした青年に、男はニカッと不気味な笑みを浮かべた。
「……」
 え、まさかこの人が店主?いや、代替わりでもしたのか?それともただのバイトか?
 青年の頭の中は混乱に満ちていたが、男は黙ったまま一歩近づいてきた。
「……何か、探してるのか?」
 低く響く声に、青年の心臓はバクバクと音を立て始めるのだった——。
 ヴァイは狂気じみた笑みを浮かべたまま、青年を圧倒する勢いで声を上げた。
「い、いや……そ、その……適当に見てるだけで……」
 青年が戸惑いながら返事をすると、ヴァイはその言葉を待たずに叫んだ。
「そりゃいいや!せっかくだから見ていけヨォ!」
「え、あ、ちょ——」
 青年の言葉を遮るように、ヴァイは近くの棚からスコップを掴み取った。そして、その手に持ったスコップを誇らしげに掲げながら説明を始める。
「こいつは使いやすいゼェ〜?振り回してもイイし、突いてもイイィ!」
 ヴァイの動きは勢いがありすぎて、スコップの先が棚の端をカツンと鳴らした。青年は思わず身をすくめる。
「だが、気をつけろぉ……狭い場所じゃ振り回せねえ!」
「……」
 青年はただ呆然と立ち尽くしていた。工具の説明を聞いているはずなのに、何かがおかしい。普通の使い方の話ではないように感じるのだ。
「いや、なんの話だよ……。」
 青年が小声で呟くが、ヴァイはお構いなしにスコップを大げさに振り回し続ける。
 ヴァイは今度は棚からアイスピックを掴み取り、狂気じみた笑みをさらに深めた。
「こいつはまさしくプロって感じダァ!」
 青年は少し引き気味で「プロ……?」と聞き返したが、ヴァイは気にも留めず説明を続ける。
「派手さはねえが、これがまた渋いんだぜぇ。背後から忍び寄って……」
 彼はアイスピックを軽く握り、何かを突き刺すような仕草をしてみせた。
「スッ……と肺に一撃!ほら、これがプロの仕事ってもんだろぉ!?」
「……渋いって、何がですか?」
 青年は恐る恐る尋ねたが、ヴァイは答えずにアイスピックを回しながらニヤリと笑った。
「一見地味だが、こいつは確実に結果を出す。まさに玄人の選ぶツールって感じだろぉ!」
 ヴァイは次に棚に並べられている電動式グラインダーに目を留めた。手に取ると、まるで宝物でも見せるかのように青年に差し出す。
「これだァ……。」
「えっ、それ……ただの工具ですよね?」
 青年が一縷の望みをかけて尋ねるが、ヴァイの答えは違った。
「確かにこいつはやり合うには不向きだな。でもなぁ……本領を発揮するのは情報を聞き出す時だぜ。」
「じ、情報って何ですか!?何を言ってるんですか!?」
 青年が戸惑う中、ヴァイは構わず近くのコンセントにプラグを刺し、電源を入れた。
 ——ぎゅいいイイイイイィン!
 耳をつんざく音が店内に響き渡り、グラインダーの回転刃が唸りを上げる。青年は反射的に一歩後ずさった。
「ま、プロ相手には効き目がねえんだがな……。」
 ヴァイは刃が回転するグラインダーをまじまじと見つめながら、狂気じみた笑みを浮かべた。
「だが、素人ならヨォ。簡単にしゃべってくれるぜ〜!」
「お、おいおいおい!そんなのどこで使うんですか!?てか止めてくださいよ!」
 青年は震えながら訴えたが、ヴァイはグラインダーを手に持ちながら堂々とポーズを決めている。
 青年は心の中で確信した。
「この店、やっぱり来るんじゃなかった……!」
 ヴァイは興奮した様子で店内を回り始め、棚に並んだ工具を次々と手に取って見せびらかし始めた。
 ドライバー、ペンチ、裁ち鋏、そして鎖——。
「どれもこれもアイデア次第だ!お前も覚えときなぁ!」
 青年は完全に引いていた。
「この店主、狂ってやがる……。」
 そう思った矢先、ヴァイは抱えきれないほどの工具を両腕に抱え、レジに向かって突進した。
「ジジイ!会計だ!どこ行った!?殺すぞ!」
 店内に響き渡る怒号に、青年は冷や汗をかく。だが、ヴァイは店主の姿が見えないことに特に気に留める様子もなく、言葉を続けた。
「……まあいいか。金置いとくぞおおおおお!」
 ——ガサガサッ
 彼はポケットから紙幣を無造作につかみ取り、それをレジにばら撒いた。紙幣の量は明らかに多すぎるが、ヴァイはそんなことはお構いなしだ。
 工具を抱えたまま、悠然と店を出ていくヴァイ。その背中を見送りながら、青年は呆然と呟いた。
「……客かよ……。」
 静まり返った店内には、ばら撒かれた紙幣と、工具のカタカタという微かな音だけが残されていた。