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水の違い

ー/ー



 酒造会社の熟練職人たち数名が、会議室のような部屋に通された。



 磨き上げられたテーブルの上には、ナンバーリングされた四つのグラスが並べられている。



 1、2、3、4——それぞれのグラスには水が注がれていた。



 部屋の隅に立つスーツ姿の男が説明を始めた。



「皆様には、こちらの水がどこの水かを当てていただきます。」



 その言葉に職人たちは顔を見合わせ、不敵な笑みを浮かべた。



「なるほど、これは面白い。」
「この道何十年、あらゆる水を飲み尽くしてきた俺たちに挑戦とはな。」



 彼らの自信は絶大だった。酒造りにとって水は命。全国津々浦々の名水を味わい、その特性を知り尽くしていると自負している。



 職人たちは次々と感想を述べ始め、グラスに注がれた水を真剣に分析する。



 1番のグラスを手にした一人が言った。



「これは飲んだ瞬間、口の中をまろやかに包み込む風味だな。山の雪解け水の特徴だ。山の土壌に含まれるミネラルがほどよく溶け出している。この感じ……これは富士だ!」



 他の職人もうなずきながら、2番、3番、4番へと進む。



 2番を飲んだ職人は目を細めて語り始めた。



「驚くほどに無味無臭……いや、待て。ほんの微かに感じる爽やかな草原の香りが駆け巡る。この洗練された味わいは、余計な雑味が川の石や砂利で丹念に濾過されたものだ。まるでガラス細工のように繊細な味……これは穴吹だ!」



「これは火山帯の伏流水。硬度が絶妙で、ミネラルが豊富に含まれている……おそらく鹿児島だな。」



「いやいや、これこそ島根の出雲近辺で採れる水だ。この柔らかい口当たりは特有のものだ!」



 スーツの男は腕を組んで無表情に彼らの議論を聞いているが、どこか意味深な笑みを浮かべている。果たして彼らの推測は当たっているのか——?



 4番の水を口に含んだ職人たちは、途端に顔をしかめた。



「ペッ!」



 一人が思わず水を吐き出し、怒りに満ちた表情で叫ぶ。



「なんだこれ!カルキ臭え!」
「本当だ、飲めたもんじゃねえ!」



 別の職人も鼻をつまみながら同調する。



「これで酒を作るなんて考えただけでゾッとするな!冗談じゃねえ!」



 他の職人もグラスをテーブルに叩きつけるように置き、全員が激怒し始めた。



 職人たちは4番の水について断言した。



「4はただの水道水だ!」



 その言葉を聞いたスーツの男は、意味深な笑みを浮かべながら頷いた。



「では、正解を発表します。」



 職人たちが固唾を飲んで見守る中、スーツの男はゆっくりとカードを取り出し、大きな声で発表した。



 ——ジャジャーン!





「全部、水道水なんです!」





「ええええええええぇええぇ!!」



 職人たちの驚愕の声が部屋中に響く。
 スーツの男は続けて説明した。



「ただし、4番はそのままの水道水。1〜3番は弊社の浄水設備で濾過した水道水です!」



 彼は満面の笑みを浮かべ、胸を張った。



「これこそ、職人の皆さんが認めた綺麗な水!これが弊社の誇る浄水技術の力です!——浄水株式会社!」



 その瞬間、画面が切り替わり、「職人も認める美味しい水!」というキャッチコピーが大きく表示される。



 ——YouTubeの広告だった。



 エリシアは、こたつに入りながらスマホで広告を見ていたが、何とも言えない表情を浮かべて呟いた。



「えぇ……。何これ……。」



 次の瞬間、広告スキップボタンを迷わず押すのだった。



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 酒造会社の熟練職人たち数名が、会議室のような部屋に通された。
 磨き上げられたテーブルの上には、ナンバーリングされた四つのグラスが並べられている。
 1、2、3、4——それぞれのグラスには水が注がれていた。
 部屋の隅に立つスーツ姿の男が説明を始めた。
「皆様には、こちらの水がどこの水かを当てていただきます。」
 その言葉に職人たちは顔を見合わせ、不敵な笑みを浮かべた。
「なるほど、これは面白い。」
「この道何十年、あらゆる水を飲み尽くしてきた俺たちに挑戦とはな。」
 彼らの自信は絶大だった。酒造りにとって水は命。全国津々浦々の名水を味わい、その特性を知り尽くしていると自負している。
 職人たちは次々と感想を述べ始め、グラスに注がれた水を真剣に分析する。
 1番のグラスを手にした一人が言った。
「これは飲んだ瞬間、口の中をまろやかに包み込む風味だな。山の雪解け水の特徴だ。山の土壌に含まれるミネラルがほどよく溶け出している。この感じ……これは富士だ!」
 他の職人もうなずきながら、2番、3番、4番へと進む。
 2番を飲んだ職人は目を細めて語り始めた。
「驚くほどに無味無臭……いや、待て。ほんの微かに感じる爽やかな草原の香りが駆け巡る。この洗練された味わいは、余計な雑味が川の石や砂利で丹念に濾過されたものだ。まるでガラス細工のように繊細な味……これは穴吹だ!」
「これは火山帯の伏流水。硬度が絶妙で、ミネラルが豊富に含まれている……おそらく鹿児島だな。」
「いやいや、これこそ島根の出雲近辺で採れる水だ。この柔らかい口当たりは特有のものだ!」
 スーツの男は腕を組んで無表情に彼らの議論を聞いているが、どこか意味深な笑みを浮かべている。果たして彼らの推測は当たっているのか——?
 4番の水を口に含んだ職人たちは、途端に顔をしかめた。
「ペッ!」
 一人が思わず水を吐き出し、怒りに満ちた表情で叫ぶ。
「なんだこれ!カルキ臭え!」
「本当だ、飲めたもんじゃねえ!」
 別の職人も鼻をつまみながら同調する。
「これで酒を作るなんて考えただけでゾッとするな!冗談じゃねえ!」
 他の職人もグラスをテーブルに叩きつけるように置き、全員が激怒し始めた。
 職人たちは4番の水について断言した。
「4はただの水道水だ!」
 その言葉を聞いたスーツの男は、意味深な笑みを浮かべながら頷いた。
「では、正解を発表します。」
 職人たちが固唾を飲んで見守る中、スーツの男はゆっくりとカードを取り出し、大きな声で発表した。
 ——ジャジャーン!
「全部、水道水なんです!」
「ええええええええぇええぇ!!」
 職人たちの驚愕の声が部屋中に響く。
 スーツの男は続けて説明した。
「ただし、4番はそのままの水道水。1〜3番は弊社の浄水設備で濾過した水道水です!」
 彼は満面の笑みを浮かべ、胸を張った。
「これこそ、職人の皆さんが認めた綺麗な水!これが弊社の誇る浄水技術の力です!——浄水株式会社!」
 その瞬間、画面が切り替わり、「職人も認める美味しい水!」というキャッチコピーが大きく表示される。
 ——YouTubeの広告だった。
 エリシアは、こたつに入りながらスマホで広告を見ていたが、何とも言えない表情を浮かべて呟いた。
「えぇ……。何これ……。」
 次の瞬間、広告スキップボタンを迷わず押すのだった。