第79話

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ここはウエスの森の町の中にある鉱山。

ライジンとの激戦を終え、トドメを刺さずに先に進もうしたフィーネたち。

その情けを裏切るように、一刃の見えない刃がライジンの首を落とした。

「あーあ、せっかくのあたしのおもちゃが台無し。」
小さな黒い影が陽炎のように揺れている。
そのあどけない声は、狂気に満ちていた。

「誰?」
リリィが影に向かって話す。
「あはは。生きてたら、またあいましょう、リリィ、フィーネ。じゃあね。」
影は、そう言うとすーっと消えた。

「何だったのかしら?」
フィーネがつぶやく。

「あれは三司祭の一人、研究司祭メルティナ。わたくしの昔の友人だった女ですわ」
アイリスから衝撃の言葉が発せられた。
「研究司祭メルティナ...」
ホウオウの顔が蒼ざめる。

「また、面倒くさいことになりそうね。」
フィーネが言う。
「とにかく、王女を助けましょう。」
スザクが先に進む。他の皆んなもそれに従った。

細い通路を先に進むと、また少し広い空間があった。鉄格子があるが、中には誰もいない。
「エリーゼ王女はどこだ?」
オルガが辺りをキョロキョロと見回す。
「まさか、魔神教の奴等に連れて行かれたんじゃ?」
ゴブローがつぶやく。
「そんな...!」
ホウオウが落胆の声を上げる。

その時、

にゃー。

「猫の鳴き声がする。」
ハクが気付いた。鼻をヒクヒクさせて匂いを探る。
「あの箱の中だ。」
鉄格子の中に木箱があった。どうやらその中にいるらしい。

「よし、俺の大剣で...」
ゴブローが大剣を振りかぶり鉄格子に向かって振り下ろした。

ガキンッ!

扉がひしゃげて倒れた。

リリィが中に入って木箱を開けると、

中から美しい真っ白な猫が出てきた。

にゃーあ

その猫は木箱から飛び降りると、フィーネの足元まで行って身体を擦り寄せた。
「フィーネが好きみたいね、この子。」
リリィが言った。

「...この猫...妙な気配がするのう。」
イブが首を傾げる。
「同感ですわ。」
アイリスも同意する。

「仕方ないわね。この猫、連れて行きましょう。」
フィーネが諦めの表情で言う。

「王女救出は失敗か...」
オルガが言うと、みなため息をついた。
「とにかく、国王陛下にご報告しないと。気が重いわね。」
フィーネはそう言うと、元来た道を戻って行った。

馬車に戻ると、みんなうつむいている。猫はフィーネの膝の上で丸まって寝ている。
「さあ、城に戻って仕切り直しだ。前を向こう!」
オルガが手綱を握って言う。
「そうだね。きっとエリーゼ王女は見つかるよ。」
スザクが出来るだけ明るい声で話す。

しかし、城までの道のりは重苦しい雰囲気のままであった。唯一、白い猫だけが癒しだった。



馬車はウエス城に着いた。

王の間に向かう足取りは重い。

「フィーネ様ご一行が戻られました!」
従者の言葉も重くのし掛かる。

「よくぞ戻られた。フィーネ殿。」
ウエス国王が笑顔で迎える。
「ただいま戻りました。陛下。」
フィーネの口は重い。

「早速、旅の報告を聞こう。」
猫はフィーネの足元で毛繕いをしている。
国王が言うと、フィーネが口を開いた。
「国王陛下、申し訳ございません。エリーゼ王女の救出は失敗しました。」
フィーネはうつむいた。
「なんと!?そうであったか。」
「魔神教が連れ去った後でした。エリーゼ様は必ず探し出して、お連れします。」
フィーネは国王の方を向いた。
「フィーネ殿。家族の皆様。今はゆっくりと休まれると良い。」
国王は無念さを滲ませていたが、フィーネの足元にいる白い猫を見て表情が変わった。
「ところで、フィーネ殿。その美しい猫は?」
「はい。鉄格子の中に居りました。置いて行くのも可哀想なので、連れて参りました。」
フィーネが正直に答える。
「フィーネ殿、その猫をこちらへ。」
国王に言われるがまま、猫を抱きかかえて国王に手渡した。
「美しい毛並みじゃ。」
すると国王は、猫を持ち上げ、頬ずりをした。
フィーネたちは驚いて国王を見る。

「おー、愛しのエリー。会いたかったぞ。」
フィーネたちは何が起きているのか分からず困惑している。
「どう言うこと?」
リリィがつぶやく。

すると......
「お父様、痛いですわ!」
何と猫が喋った!?
猫は国王の手をするりと抜けて床に降りた。そして、白い煙に包まれたかと思ったつぎの瞬間、黄色のドレスを着て、真っ白い美しい巻き髪の色白で可愛らしい女の子が現れた。
「皆様、初めまして。私はウエス国の王女エリーゼですわ。」
フィーネたちは、開いた口が塞がらない。
「あなたがエリーゼ王女!?」
フィーネが叫んだ。

ウエス国王が話し出す。
「エリーゼは、人間と獣人の猫族との混血なのだ。」
「獣人族......」
リリィがつぶやく。
「恐らく魔神教は、エリーゼの特別な血を狙って誘拐したのだろう。」
国王が言う。
「あまりの恐ろしさに猫の姿に変身してしまったのです。助けてくださり、本当にありがとうございます。」
エリーゼ王女が頭を下げる。

「...とにかく。これで解決ですね。」
フィーネが気を取り直して言う。
「フィーネ殿。ありがとう。褒美の品は後日、丸太小屋に届けさせよう。」
国王の言葉に礼を言って帰ろうとした時だった。

「お父様、私、フィーネ様と皆様が気に入りました。一緒に丸太小屋に住んで良いかしら?」
エリーゼ王女が突拍子もないことを言い出す。
「...王女様、それは困ります!高貴な方が住まわれるような場所ではございません。」
フィーネが慌てて言う。
「私は平気ですわ。ねぇ?お父様、良いでしょう?」
エリーゼ王女は引かない。
「他ならぬエリーゼの頼みだ。フィーネ殿、エリーをよろしく頼んだぞ。」
......勝手に話が決まってしまった。
フィーネは観念した。
「...畏まりました。国王陛下。」
(あぁっ!面倒くさいっ!)

「また、家族が増えるのね!嬉しい!」
リリィは嬉しそうだ。


こうして、また一人。丸太小屋の住人が増えることになったのであった。



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ここはウエスの森の町の中にある鉱山。
ライジンとの激戦を終え、トドメを刺さずに先に進もうしたフィーネたち。
その情けを裏切るように、一刃の見えない刃がライジンの首を落とした。
「あーあ、せっかくのあたしのおもちゃが台無し。」
小さな黒い影が陽炎のように揺れている。
そのあどけない声は、狂気に満ちていた。
「誰?」
リリィが影に向かって話す。
「あはは。生きてたら、またあいましょう、リリィ、フィーネ。じゃあね。」
影は、そう言うとすーっと消えた。
「何だったのかしら?」
フィーネがつぶやく。
「あれは三司祭の一人、研究司祭メルティナ。わたくしの昔の友人だった女ですわ」
アイリスから衝撃の言葉が発せられた。
「研究司祭メルティナ...」
ホウオウの顔が蒼ざめる。
「また、面倒くさいことになりそうね。」
フィーネが言う。
「とにかく、王女を助けましょう。」
スザクが先に進む。他の皆んなもそれに従った。
細い通路を先に進むと、また少し広い空間があった。鉄格子があるが、中には誰もいない。
「エリーゼ王女はどこだ?」
オルガが辺りをキョロキョロと見回す。
「まさか、魔神教の奴等に連れて行かれたんじゃ?」
ゴブローがつぶやく。
「そんな...!」
ホウオウが落胆の声を上げる。
その時、
にゃー。
「猫の鳴き声がする。」
ハクが気付いた。鼻をヒクヒクさせて匂いを探る。
「あの箱の中だ。」
鉄格子の中に木箱があった。どうやらその中にいるらしい。
「よし、俺の大剣で...」
ゴブローが大剣を振りかぶり鉄格子に向かって振り下ろした。
ガキンッ!
扉がひしゃげて倒れた。
リリィが中に入って木箱を開けると、
中から美しい真っ白な猫が出てきた。
にゃーあ
その猫は木箱から飛び降りると、フィーネの足元まで行って身体を擦り寄せた。
「フィーネが好きみたいね、この子。」
リリィが言った。
「...この猫...妙な気配がするのう。」
イブが首を傾げる。
「同感ですわ。」
アイリスも同意する。
「仕方ないわね。この猫、連れて行きましょう。」
フィーネが諦めの表情で言う。
「王女救出は失敗か...」
オルガが言うと、みなため息をついた。
「とにかく、国王陛下にご報告しないと。気が重いわね。」
フィーネはそう言うと、元来た道を戻って行った。
馬車に戻ると、みんなうつむいている。猫はフィーネの膝の上で丸まって寝ている。
「さあ、城に戻って仕切り直しだ。前を向こう!」
オルガが手綱を握って言う。
「そうだね。きっとエリーゼ王女は見つかるよ。」
スザクが出来るだけ明るい声で話す。
しかし、城までの道のりは重苦しい雰囲気のままであった。唯一、白い猫だけが癒しだった。
馬車はウエス城に着いた。
王の間に向かう足取りは重い。
「フィーネ様ご一行が戻られました!」
従者の言葉も重くのし掛かる。
「よくぞ戻られた。フィーネ殿。」
ウエス国王が笑顔で迎える。
「ただいま戻りました。陛下。」
フィーネの口は重い。
「早速、旅の報告を聞こう。」
猫はフィーネの足元で毛繕いをしている。
国王が言うと、フィーネが口を開いた。
「国王陛下、申し訳ございません。エリーゼ王女の救出は失敗しました。」
フィーネはうつむいた。
「なんと!?そうであったか。」
「魔神教が連れ去った後でした。エリーゼ様は必ず探し出して、お連れします。」
フィーネは国王の方を向いた。
「フィーネ殿。家族の皆様。今はゆっくりと休まれると良い。」
国王は無念さを滲ませていたが、フィーネの足元にいる白い猫を見て表情が変わった。
「ところで、フィーネ殿。その美しい猫は?」
「はい。鉄格子の中に居りました。置いて行くのも可哀想なので、連れて参りました。」
フィーネが正直に答える。
「フィーネ殿、その猫をこちらへ。」
国王に言われるがまま、猫を抱きかかえて国王に手渡した。
「美しい毛並みじゃ。」
すると国王は、猫を持ち上げ、頬ずりをした。
フィーネたちは驚いて国王を見る。
「おー、愛しのエリー。会いたかったぞ。」
フィーネたちは何が起きているのか分からず困惑している。
「どう言うこと?」
リリィがつぶやく。
すると......
「お父様、痛いですわ!」
何と猫が喋った!?
猫は国王の手をするりと抜けて床に降りた。そして、白い煙に包まれたかと思ったつぎの瞬間、黄色のドレスを着て、真っ白い美しい巻き髪の色白で可愛らしい女の子が現れた。
「皆様、初めまして。私はウエス国の王女エリーゼですわ。」
フィーネたちは、開いた口が塞がらない。
「あなたがエリーゼ王女!?」
フィーネが叫んだ。
ウエス国王が話し出す。
「エリーゼは、人間と獣人の猫族との混血なのだ。」
「獣人族......」
リリィがつぶやく。
「恐らく魔神教は、エリーゼの特別な血を狙って誘拐したのだろう。」
国王が言う。
「あまりの恐ろしさに猫の姿に変身してしまったのです。助けてくださり、本当にありがとうございます。」
エリーゼ王女が頭を下げる。
「...とにかく。これで解決ですね。」
フィーネが気を取り直して言う。
「フィーネ殿。ありがとう。褒美の品は後日、丸太小屋に届けさせよう。」
国王の言葉に礼を言って帰ろうとした時だった。
「お父様、私、フィーネ様と皆様が気に入りました。一緒に丸太小屋に住んで良いかしら?」
エリーゼ王女が突拍子もないことを言い出す。
「...王女様、それは困ります!高貴な方が住まわれるような場所ではございません。」
フィーネが慌てて言う。
「私は平気ですわ。ねぇ?お父様、良いでしょう?」
エリーゼ王女は引かない。
「他ならぬエリーゼの頼みだ。フィーネ殿、エリーをよろしく頼んだぞ。」
......勝手に話が決まってしまった。
フィーネは観念した。
「...畏まりました。国王陛下。」
(あぁっ!面倒くさいっ!)
「また、家族が増えるのね!嬉しい!」
リリィは嬉しそうだ。
こうして、また一人。丸太小屋の住人が増えることになったのであった。