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再就職

ー/ー



 夕方の都内のファストフード店は、人々の活気と忙しさが交錯する場所だった。

 店内に入ると、目に飛び込んでくるのは、明るい照明と絢爛な色彩のポスターが貼られた壁面。注文を取る店員とのやり取りが絶え間なく続くカウンター。待ち席で新聞を読んだり、友人や家族と会話を楽しんだりする客達。


 店内は活気に満ち溢れている、その一方で厨房からはシュッと音が立ち上り、フライヤーで揚げられるポテトや唐揚げの香ばしい匂いが店内に漂い誰もが食欲をそそられるだろう。


 そんな店内の一角で、俺達は話していた。
 


「姐さんの所を辞めた?」
「ああ……今、マジで金が無い…………」






伊達雪之丞
↑↑CV森久保祥太郎氏(希望)
 問い掛けた男の名は「伊達雪之丞」

 背丈は小柄でおそらく160cmそこそこいった感じだが、着ている黒いスーツの下は筋肉質で無駄のない体格をしている。
 特徴的な前髪で、顔立ちそのものはイケメンと言っても良い程整っていたが、その眼つきの悪さがガラの悪い印象を周りに与えていた。






横島忠夫
↑↑CV堀川亮氏
 対して、そうに答えた俺の名は「横島忠夫」

 背は雪之丞より頭一つ分ほど高くて、170半ばくらい。青いGジャンとGパンで固めた体の方は虚弱と言う訳じゃないが、身長の割に痩せてる方だと思う。
 癖毛の短髪を赤いバンダナで強引に纏めてるのが特徴と言えば特徴だ。自分で言うのもなんだがな……
 そのついでに言うなら、その下にある顔はかなり沈んでると思う。

 少し前まで美神除霊事務所でアシスタントをしてたが、今はただの貧乏学生。それが、その理由だ………


「何か、あったのか?」

 
 そして、当然とも言える雪之丞の問い掛けに、俺は少し自嘲気味に答える。


「…………別に。いい加減薄給でこき使われるのに、耐えれなくなっただけだよ。」


 嘘だ……いつも薄給で喘いでいちゃいたが、それが直接的な理由じゃなかった。本当の理由は想いを寄せていた少女(氷室絹)と険悪になって、事務所に居られなくなったからだ。


 仕事を失ったのは仕方ないと思っている。そもそも自分の態度に原因があったんだからな。
 ただ、俺が落ち込んでいるのは、彼女との最後が最悪な形で終ってしまったこと。もう、ここから関係修復なんて不可能だろう…………

 だからと言って、それを眼の前の男に馬鹿正直に話す気にもなれなかったので、もっともらしい理由を着けてお茶を濁した。


「これから、どうする積りだよ?」
「何か探すしか無いだろ」

 
 再度、問い掛ける雪之丞に俺は投げやりに答える。


 事務所を辞めてから、大体10日ほどだろうか?それまで何もする気にもなれずアパートの中で腐っていたが、そんな精神状態でも腹は普通に減る。だが、金は無い……

 自分の精神的問題を棚上げしてでも、生活費は稼がなきゃ本当に餓死しちしまう。仕方なくやる気の無い自分に鞭を打って、求人雑誌を買いに街に出てた訳だが、そこにちょうど良く(?)知り合いであるこいつ(雪之丞)に会い現在に至るわけだ。


 ちなみにいつもは会えば俺がコイツに“たかられる”んだが、今回はたまたまコイツの懐が暖かかったらしく、逆に俺が奢って貰っている。

 そんな風に思ってると、何を思ったのか雪之丞が急に話の流れを変えるように呟いた。


「これから俺は、本格的に事務所を立ち上げようと思ってんだ」
「ん……?そ、そうか…遂にか……」


 突然の話の方向転換に、戸惑いつつも何とか俺はそう返す。


 そういや、雪之丞は以前香港でモグリのGSとして活動してたがメドゥーサとの一件(香港魔界化計画)での活動が認められて正式にGSとして認可されたんだったな。
 その後は日本に戻ってフリーで動いてた筈だが、遂に腰を落ち着ける気になったのか?

 俺の気分は変わらず沈んだままだが、知り合いの新しい門出は素直に嬉しい。
 ここでスッと気の利いた言葉でも掛けてられりゃ良いんだが、そもそもそういう事が得意じゃない。

 何と言ってやれば良いか逡巡してるうちに、再び雪之丞が口を開いた。



「お前も一緒にやらないか?」
「は?」

 
 おいおい………事務開くってだけで驚いてんのに、更に爆弾発言噛ましやがったぞ。
 

「お前程の腕を腐らせるなんて、勿体無いにも程があるだろ。姐さんとこに居ないなら、丁度いい。一緒にやろうぜ」

 
 マジかよ…………


 俺を真正面から見据えるヤツの目は真剣だった。決して冗談で言ってる訳じゃねぇだろう。


 そう言や、こいつは俺とGS試験で引き分けて以来、俺を『日本でトップクラスのGS』なんてアホな勘違いをしてんだったな……今の急な勧誘も、その延長線か?


「いや、事務所の立ち上げって結構金掛かるんだろ?お前、今までずっと金欠だったのに、人雇う金なんかあんのかよ??」
「事務所の家賃や光熱費だけだから、そんなに掛かんねぇよ。それに俺達のスタイルなら、道具なんて殆ど使わないだろ?」

 
 まぁ、確かにな……この業界は、除霊道具にとにかく金が掛かる。御札1枚だけでも物にも寄るが、高いのは何千万もする。それを使って除霊出来れば良いが、失敗すれば当然金は帰って来ない。もっと言えば、除霊出来たとしても必ずしも利益になるとは限らないんだ。

 その点、俺達はそう言った事情には強いとは思う。雪之丞は魔装術、俺は霊刃刀だ。二人共、霊気を具現化して戦うなら、高い道具を使わなくて済む。

 上手くすれば、依頼料丸々こちらに入ってくる可能性もあるか………そこに固定給も入るとなれば、今の自分の生活は間違いなく一変する。

 寧ろあの女(美神玲子)の所にいた頃より、余裕のある生活が…………

 
「まっ……それでも、金に余裕があるわけじゃないけどな。給与は、完全歩合制だ」
「……………………」
 

 ………………な〜んて、都合の良いこと考えていたら速攻で落としやがった……


「歩合制って、お前……」


 まぁ、こいつこう言う奴だったな……

 この金欠野郎相手に甘い事を考えた俺を少々呪いたい……これから始める除霊事務所に都合よく依頼が来ることなんてまずねぇだろ。
 しかも、こいつは元モグリだ。普通に考えれば、今以上に落ちる可能性すらある。

 
「ああ……だから、余り深く考えず拒否してくれてもいいし、やって無理だと思ったらすぐ辞めてくれても構わねぇよ。どうする?」

 
 窓の外を見ながら、バツの悪そうに答える雪之丞。

 それを見ると、来ては欲しくてもそこまで本気で誘ってる訳でもないといったところか……


 どうするか………
 

 ただ、考えようによっては気楽でもあるか。正直、他にしたい事があるわけでもない。それなら、まだ自分の特技を活かせる方がマシとも言えるかもしれない。なんにしろヤバそうなら、すぐ逃げれば良い。

 数秒程逡巡した後、俺はそう考え直した。



「ヤバそうなら、すぐ手を引くぞ!それでも、いいか?」
 


 正直余り前向きな考えとも言えなかったが、結局俺はこいつの話に乗る事にした訳だ。

 雪之丞は駄目元、俺は何となく………始まりは、本当にしょうもない(・・・・・・)形で……


 けれども、この時の決断が後々起こる事の引き金になるとは俺には……いや、俺達(・・)には全く想像が出来なかった。

 想像出来る訳が無かった………




次のエピソードへ進む 片想


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 夕方の都内のファストフード店は、人々の活気と忙しさが交錯する場所だった。
 店内に入ると、目に飛び込んでくるのは、明るい照明と絢爛な色彩のポスターが貼られた壁面。注文を取る店員とのやり取りが絶え間なく続くカウンター。待ち席で新聞を読んだり、友人や家族と会話を楽しんだりする客達。
 店内は活気に満ち溢れている、その一方で厨房からはシュッと音が立ち上り、フライヤーで揚げられるポテトや唐揚げの香ばしい匂いが店内に漂い誰もが食欲をそそられるだろう。
 そんな店内の一角で、俺達は話していた。
「姐さんの所を辞めた?」
「ああ……今、マジで金が無い…………」
↑↑CV森久保祥太郎氏(希望)
 問い掛けた男の名は「伊達雪之丞」
 背丈は小柄でおそらく160cmそこそこいった感じだが、着ている黒いスーツの下は筋肉質で無駄のない体格をしている。
 特徴的な前髪で、顔立ちそのものはイケメンと言っても良い程整っていたが、その眼つきの悪さがガラの悪い印象を周りに与えていた。
↑↑CV堀川亮氏
 対して、そうに答えた俺の名は「横島忠夫」
 背は雪之丞より頭一つ分ほど高くて、170半ばくらい。青いGジャンとGパンで固めた体の方は虚弱と言う訳じゃないが、身長の割に痩せてる方だと思う。
 癖毛の短髪を赤いバンダナで強引に纏めてるのが特徴と言えば特徴だ。自分で言うのもなんだがな……
 そのついでに言うなら、その下にある顔はかなり沈んでると思う。
 少し前まで美神除霊事務所でアシスタントをしてたが、今はただの貧乏学生。それが、その理由だ………
「何か、あったのか?」
 そして、当然とも言える雪之丞の問い掛けに、俺は少し自嘲気味に答える。
「…………別に。いい加減薄給でこき使われるのに、耐えれなくなっただけだよ。」
 嘘だ……いつも薄給で喘いでいちゃいたが、それが直接的な理由じゃなかった。本当の理由は想いを寄せていた少女(氷室絹)と険悪になって、事務所に居られなくなったからだ。
 仕事を失ったのは仕方ないと思っている。そもそも自分の態度に原因があったんだからな。
 ただ、俺が落ち込んでいるのは、彼女との最後が最悪な形で終ってしまったこと。もう、ここから関係修復なんて不可能だろう…………
 だからと言って、それを眼の前の男に馬鹿正直に話す気にもなれなかったので、もっともらしい理由を着けてお茶を濁した。
「これから、どうする積りだよ?」
「何か探すしか無いだろ」
 再度、問い掛ける雪之丞に俺は投げやりに答える。
 事務所を辞めてから、大体10日ほどだろうか?それまで何もする気にもなれずアパートの中で腐っていたが、そんな精神状態でも腹は普通に減る。だが、金は無い……
 自分の精神的問題を棚上げしてでも、生活費は稼がなきゃ本当に餓死しちしまう。仕方なくやる気の無い自分に鞭を打って、求人雑誌を買いに街に出てた訳だが、そこにちょうど良く(?)知り合いである|こいつ《雪之丞》に会い現在に至るわけだ。
 ちなみにいつもは会えば俺がコイツに“たかられる”んだが、今回はたまたまコイツの懐が暖かかったらしく、逆に俺が奢って貰っている。
 そんな風に思ってると、何を思ったのか雪之丞が急に話の流れを変えるように呟いた。
「これから俺は、本格的に事務所を立ち上げようと思ってんだ」
「ん……?そ、そうか…遂にか……」
 突然の話の方向転換に、戸惑いつつも何とか俺はそう返す。
 そういや、雪之丞は以前香港でモグリのGSとして活動してたがメドゥーサとの一件(香港魔界化計画)での活動が認められて正式にGSとして認可されたんだったな。
 その後は日本に戻ってフリーで動いてた筈だが、遂に腰を落ち着ける気になったのか?
 俺の気分は変わらず沈んだままだが、知り合いの新しい門出は素直に嬉しい。
 ここでスッと気の利いた言葉でも掛けてられりゃ良いんだが、そもそもそういう事が得意じゃない。
 何と言ってやれば良いか逡巡してるうちに、再び雪之丞が口を開いた。
「お前も一緒にやらないか?」
「は?」
 おいおい………事務開くってだけで驚いてんのに、更に爆弾発言噛ましやがったぞ。
「お前程の腕を腐らせるなんて、勿体無いにも程があるだろ。姐さんとこに居ないなら、丁度いい。一緒にやろうぜ」
 マジかよ…………
 俺を真正面から見据えるヤツの目は真剣だった。決して冗談で言ってる訳じゃねぇだろう。
 そう言や、こいつは俺とGS試験で引き分けて以来、俺を『日本でトップクラスのGS』なんてアホな勘違いをしてんだったな……今の急な勧誘も、その延長線か?
「いや、事務所の立ち上げって結構金掛かるんだろ?お前、今までずっと金欠だったのに、人雇う金なんかあんのかよ??」
「事務所の家賃や光熱費だけだから、そんなに掛かんねぇよ。それに俺達のスタイルなら、道具なんて殆ど使わないだろ?」
 まぁ、確かにな……この業界は、除霊道具にとにかく金が掛かる。御札1枚だけでも物にも寄るが、高いのは何千万もする。それを使って除霊出来れば良いが、失敗すれば当然金は帰って来ない。もっと言えば、除霊出来たとしても必ずしも利益になるとは限らないんだ。
 その点、俺達はそう言った事情には強いとは思う。雪之丞は魔装術、俺は霊刃刀だ。二人共、霊気を具現化して戦うなら、高い道具を使わなくて済む。
 上手くすれば、依頼料丸々こちらに入ってくる可能性もあるか………そこに固定給も入るとなれば、今の自分の生活は間違いなく一変する。
 寧ろ|あの女《美神玲子》の所にいた頃より、余裕のある生活が…………
「まっ……それでも、金に余裕があるわけじゃないけどな。給与は、完全歩合制だ」
「……………………」
 ………………な〜んて、都合の良いこと考えていたら速攻で落としやがった……
「歩合制って、お前……」
 まぁ、こいつこう言う奴だったな……
 この金欠野郎相手に甘い事を考えた俺を少々呪いたい……これから始める除霊事務所に都合よく依頼が来ることなんてまずねぇだろ。
 しかも、こいつは元モグリだ。普通に考えれば、今以上に落ちる可能性すらある。
「ああ……だから、余り深く考えず拒否してくれてもいいし、やって無理だと思ったらすぐ辞めてくれても構わねぇよ。どうする?」
 窓の外を見ながら、バツの悪そうに答える雪之丞。
 それを見ると、来ては欲しくてもそこまで本気で誘ってる訳でもないといったところか……
 どうするか………
 ただ、考えようによっては気楽でもあるか。正直、他にしたい事があるわけでもない。それなら、まだ自分の特技を活かせる方がマシとも言えるかもしれない。なんにしろヤバそうなら、すぐ逃げれば良い。
 数秒程逡巡した後、俺はそう考え直した。
「ヤバそうなら、すぐ手を引くぞ!それでも、いいか?」
 正直余り前向きな考えとも言えなかったが、結局俺はこいつの話に乗る事にした訳だ。
 雪之丞は駄目元、俺は何となく………始まりは、本当に|しょうもない《・・・・・・》形で……
 けれども、この時の決断が後々起こる事の引き金になるとは俺には……いや、|俺達《・・》には全く想像が出来なかった。
 想像出来る訳が無かった………