第26話 決意と告白
ー/ー その日私は激しく落ち込んでいた。
橘さんが、私の会社の担当から外れたからだ。
新しいプロジェクトのリーダーを任されたみたいで、後任に新しい人を連れてきた。
凄く仕事ができそうな女性社員で、橘さんも信頼を寄せている感じだった。
「今後は後任が担当させて頂きますので、宜しくお願いします」
後任の方は仕事ができそうな女性社員だった。
寂しい。
プライベートでも会えるけど、この繋がりがあったから今の私達がある訳で……。
でも担当が変わるなんてよくある話だ。
私は運が良かったんだ。
会議が終わって、私が自分のオフィスに戻ろうとすると、橘さんに呼び止められた。
「言ってなくてごめん。っていうか言い忘れていた……」
「そんな大事な事なんで忘れるんですか!」
「ここ最近仕事も忙しかったし、プライベートの方も色々あったし」
「確かにそうなんですけど!」
私がメソメソしだしたら、橘さんにエレベーターに乗せられ、またあのフロアのあの部屋に連れて行かれた。
人目を忍んで私達はキスをしていた。
まるで最後の別れのように。
別れではない。
だけど、二人の思い出がここにはある。
色々思い出して胸が熱くなる。
「橘さん寂しいです」
「そういう事言われると止まらなくなる」
エスカレートする私達。
素直になってしまったせいで、堰を切ったように溢れる想い。
「仕事中も私の事考えていてください」
「美鈴は仕事ちゃんと集中しろ」
その時、橘さんのスマホから音が鳴った。
急いで橘さんが電話に出て話している。
「もう直ぐそっちに向かうから。待たせてごめん。駅前で待ってて」
後任の女性の声──
嫉妬で心が渦巻く。
私は最低な意地悪をした。
まだ電話している橘さんのに触れた。
びっくりして私の方を睨む橘さん。
私以外の女と話すなんて嫌。
「ごめん後でかけ直す……」
橘さんはとうとう電話不可能に。
「何してるんだよ」
怒っている。
「嫉妬してしまったんです……」
橘さんは私の頭を撫でた。
「何も心配はいらない。ただ……」
「はい」
「最後まで責任とれ」
私は甘い快楽の中で、ちゃんと責任を果たした。
「凄く気持ちよかったです……」
「……流石に素直になりすぎだろ」
素直になって何となくわかった事。
私は、結構淫らだ……。
嫌がってたくせに、本当は悦んでいた。
だから抵抗できなかった。
むしろ待ち望んでいたのかもしれない。
繋がっている時は、このまま世界が滅びてもいいと思っている。
そういう、認めたくないもの、隠したいもの、隠れていたもの、それが橘さんの作った設定に無意識に反応して、頭の中から溢れ出たんだと思う。
もう変態と思われてもいい。
私は無理にプラトニックを書こうとすることをやめようと思った。
橘さんが設定した世界を、切なくて苦しくて官能的書いてる時が、一番心が動いた。
例えコンテストで選ばれなくても、私が書いてて心が動かなければ、私は書けない。
そして、その決意を胸に歩き出すことにした。
◇ ◇ ◇
私はその日カフェにいた。
運悪く段々と雨が降り、外は大雨。
暫くすると、三浦さんが来た。
「遅くなってごめん!」
雨で少し濡れていた。
「三浦さん、この小説見せてくれてありがとうございました。」
私は渡された小説を返した。
「データは持ってるから返さなくてよかったのに……」
「いえ……捨てる事も、家に置いて置くことも私にはできなくて。」
三浦さんはバッグにそれをしまった。
「サークル、やめちゃうの?」
「はい。もう決めたんです」
「俺のせいで本当にごめん」
三浦さんは俯いていた。
「三浦さん、私、翠川さん…橘さんと付き合う事にしたんです」
「もうそういう関係なんだと思ってたけど」
「いえ、あの時はまだ、そういう決心ができてなくて……。でも、もう素直になる事にしたんです」
「素直に?」
私は深呼吸をして勇気を出した。
「私は、官能も含めた小説を書いていきます。あれは、橘さんに勧められて書いてたんですけど、それを書いてる時が、一番物語を描けるんです」
三浦さんは私の突然の決意表明にびっくりしていたけど
「うん、俺も、神谷さんのそういう作品もっと見たい。」
「あ……三浦さんもそういうシーン書いてたじゃないですか!びっくりしました!でもすごい感動しました」
「俺、実は女の人と付き合った事とかなくて……言うの恥ずかしいんだけど、そういう事もした事ないんだ。だから、あくまで想像。」
「映画館で一緒だった子は?」
「あれは同じ学校で文学部の同級生」
「そうなんですね……でも、そのうち三浦さんまだ高校生ですし、これから恋愛して、色んな事を知る事ができますよ」
「そうかな……」
その後、私達はカフェを出た。
もうだいぶ外は暗くなっていた。
雨も落ち着いていた。
「あ、よければ近くの本屋に行かない?」
どうしようかな……もう三浦さんと会う事もないかもしれない。
「いいですよ」
そのまま本屋まで二人で歩いた。
その時、雨で濡れた階段で足を滑らせてしまった。
咄嗟に三浦さんが腕を掴んでくれて、事なきを得て振り返った時、唇が触れてしまった。
お互いびっくりして離れた。
三浦さんは真っ赤になっている。
「す、すみません、助けてくれてありがとうございます……」
どうしよう……!
事故だとはいえ、キスしてしまった……
本屋どころではない。
「すみません、私帰ります」
駅の方に向かおうとしたその時──
「あの小説に書いたストーリー。あれは俺の神谷さんへの気持ちが入ってるんだ。」
「え……?」
「神谷さんの事を想って書いた」
想いってのはつまり……。
「不謹慎だけど、初めてのキスが神谷さんでよかった……」
頭の中が混乱して言葉が出ない。
「次いつ会えるかわからないけど、俺は本気だよ。それまでに翠川先生くらい有名になれるように頑張る」
とんでもない事を私に打ち明けた三浦君は、そのまま駅に行ってしまった……。
放心状態の私は、橘さんからの電話に出られなかった。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
その日私は激しく落ち込んでいた。
橘さんが、私の会社の担当から外れたからだ。
新しいプロジェクトのリーダーを任されたみたいで、後任に新しい人を連れてきた。
凄く仕事ができそうな女性社員で、橘さんも信頼を寄せている感じだった。
「今後は後任が担当させて頂きますので、宜しくお願いします」
後任の方は仕事ができそうな女性社員だった。
寂しい。
プライベートでも会えるけど、この繋がりがあったから今の私達がある訳で……。
でも担当が変わるなんてよくある話だ。
私は運が良かったんだ。
会議が終わって、私が自分のオフィスに戻ろうとすると、橘さんに呼び止められた。
「言ってなくてごめん。っていうか言い忘れていた……」
「そんな大事な事なんで忘れるんですか!」
「ここ最近仕事も忙しかったし、プライベートの方も色々あったし」
「確かにそうなんですけど!」
私がメソメソしだしたら、橘さんにエレベーターに乗せられ、またあのフロアのあの部屋に連れて行かれた。
人目を忍んで私達はキスをしていた。
まるで最後の別れのように。
別れではない。
だけど、二人の思い出がここにはある。
色々思い出して胸が熱くなる。
「橘さん寂しいです」
「そういう事言われると止まらなくなる」
エスカレートする私達。
素直になってしまったせいで、堰を切ったように溢れる想い。
「仕事中も私の事考えていてください」
「美鈴は仕事ちゃんと集中しろ」
その時、橘さんのスマホから音が鳴った。
急いで橘さんが電話に出て話している。
「もう直ぐそっちに向かうから。待たせてごめん。駅前で待ってて」
後任の女性の声──
嫉妬で心が渦巻く。
私は最低な意地悪をした。
まだ電話している橘さんのに触れた。
びっくりして私の方を睨む橘さん。
私以外の女と話すなんて嫌。
「ごめん後でかけ直す……」
橘さんはとうとう電話不可能に。
「何してるんだよ」
怒っている。
「嫉妬してしまったんです……」
橘さんは私の頭を撫でた。
「何も心配はいらない。ただ……」
「はい」
「最後まで責任とれ」
私は甘い快楽の中で、ちゃんと責任を果たした。
「凄く気持ちよかったです……」
「……流石に素直になりすぎだろ」
素直になって何となくわかった事。
私は、結構淫らだ……。
嫌がってたくせに、本当は悦んでいた。
だから抵抗できなかった。
むしろ待ち望んでいたのかもしれない。
繋がっている時は、このまま世界が滅びてもいいと思っている。
そういう、認めたくないもの、隠したいもの、隠れていたもの、それが橘さんの作った設定に無意識に反応して、頭の中から溢れ出たんだと思う。
もう変態と思われてもいい。
私は無理にプラトニックを書こうとすることをやめようと思った。
橘さんが設定した世界を、切なくて苦しくて官能的書いてる時が、一番心が動いた。
例えコンテストで選ばれなくても、私が書いてて心が動かなければ、私は書けない。
そして、その決意を胸に歩き出すことにした。
◇ ◇ ◇
私はその日カフェにいた。
運悪く段々と雨が降り、外は大雨。
暫くすると、三浦さんが来た。
「遅くなってごめん!」
雨で少し濡れていた。
「三浦さん、この小説見せてくれてありがとうございました。」
私は渡された小説を返した。
「データは持ってるから返さなくてよかったのに……」
「いえ……捨てる事も、家に置いて置くことも私にはできなくて。」
三浦さんはバッグにそれをしまった。
「サークル、やめちゃうの?」
「はい。もう決めたんです」
「俺のせいで本当にごめん」
三浦さんは俯いていた。
「三浦さん、私、翠川さん…橘さんと付き合う事にしたんです」
「もうそういう関係なんだと思ってたけど」
「いえ、あの時はまだ、そういう決心ができてなくて……。でも、もう素直になる事にしたんです」
「素直に?」
私は深呼吸をして勇気を出した。
「私は、官能も含めた小説を書いていきます。あれは、橘さんに勧められて書いてたんですけど、それを書いてる時が、一番物語を描けるんです」
三浦さんは私の突然の決意表明にびっくりしていたけど
「うん、俺も、神谷さんのそういう作品もっと見たい。」
「あ……三浦さんもそういうシーン書いてたじゃないですか!びっくりしました!でもすごい感動しました」
「俺、実は女の人と付き合った事とかなくて……言うの恥ずかしいんだけど、そういう事もした事ないんだ。だから、あくまで想像。」
「映画館で一緒だった子は?」
「あれは同じ学校で文学部の同級生」
「そうなんですね……でも、そのうち三浦さんまだ高校生ですし、これから恋愛して、色んな事を知る事ができますよ」
「そうかな……」
その後、私達はカフェを出た。
もうだいぶ外は暗くなっていた。
雨も落ち着いていた。
「あ、よければ近くの本屋に行かない?」
どうしようかな……もう三浦さんと会う事もないかもしれない。
「いいですよ」
そのまま本屋まで二人で歩いた。
その時、雨で濡れた階段で足を滑らせてしまった。
咄嗟に三浦さんが腕を掴んでくれて、事なきを得て振り返った時、唇が触れてしまった。
お互いびっくりして離れた。
三浦さんは真っ赤になっている。
「す、すみません、助けてくれてありがとうございます……」
どうしよう……!
事故だとはいえ、キスしてしまった……
本屋どころではない。
「すみません、私帰ります」
駅の方に向かおうとしたその時──
「あの小説に書いたストーリー。あれは俺の神谷さんへの気持ちが入ってるんだ。」
「え……?」
「神谷さんの事を想って書いた」
想いってのはつまり……。
「不謹慎だけど、初めてのキスが神谷さんでよかった……」
頭の中が混乱して言葉が出ない。
「次いつ会えるかわからないけど、俺は本気だよ。それまでに翠川先生くらい有名になれるように頑張る」
とんでもない事を私に打ち明けた三浦君は、そのまま駅に行ってしまった……。
放心状態の私は、橘さんからの電話に出られなかった。