風の集まる場所、コーヒーの香りと共に
ー/ー 草原が吹き抜けた風が、森に流れ込んで木々を揺らしている。
まるで波音のように、微かに揺れ響いて伝わってくる。
強い風は、枝を高波の様にざわめかせ、
そよ風は静かに打ち付けるさざ波のように――
彼女が目を閉じてその音に聞き入っていると、
自分が風になったようにふわりと視界が浮かび上がった――
西に吹き抜ける風は深い森に入り込んで木々を揺らし、
東に向かえば、少し険しい山の粉雪を散らした。
南の街道を進めば、小さな村の人々の間を駆け抜けていく。
北に吹き付ければ、やがて、東と西の山と森がぶつかる境界線が見えた。
風は巡る――
その始まりの草原。
そこから伸びる小道。
その先に見える森の入り口に小さなログハウスが建っている。
そこだけ時間を切り取ったような、静かな凪に包まれて、
でも、ひっそりと佇んでいる。
彼女のお店――喫茶店『小道』
――客の姿は見えない。
帝都の喧騒からは遠く離れて、一番近い集落ですら徒歩で一日。
そんな辺鄙な所で、彼女はコーヒーを淹れる。
コーヒーを淹れるたび、店の木目に染みこんだ香りがふわりと立つ。
それは、いつかどこかで出会った香りのようで――
いつか誰かが、このコーヒーを好きだと言ってくれる。
そんな光景を想い浮かべながら、丁寧にドリップをする彼女には、自然と笑顔が零れて――
香ばしく湯気を昇らせるコーヒーを片手に、彼女――ユウは本を読んでいた。
その隣では、オーガ族の証である二本の小さな角を額に持つ少女――リンが、同じように本に目を落としていた。
二人は、ただ、静かに本を読んでいるだけ。
まるで波音のように、微かに揺れ響いて伝わってくる。
強い風は、枝を高波の様にざわめかせ、
そよ風は静かに打ち付けるさざ波のように――
彼女が目を閉じてその音に聞き入っていると、
自分が風になったようにふわりと視界が浮かび上がった――
西に吹き抜ける風は深い森に入り込んで木々を揺らし、
東に向かえば、少し険しい山の粉雪を散らした。
南の街道を進めば、小さな村の人々の間を駆け抜けていく。
北に吹き付ければ、やがて、東と西の山と森がぶつかる境界線が見えた。
風は巡る――
その始まりの草原。
そこから伸びる小道。
その先に見える森の入り口に小さなログハウスが建っている。
そこだけ時間を切り取ったような、静かな凪に包まれて、
でも、ひっそりと佇んでいる。
彼女のお店――喫茶店『小道』
――客の姿は見えない。
帝都の喧騒からは遠く離れて、一番近い集落ですら徒歩で一日。
そんな辺鄙な所で、彼女はコーヒーを淹れる。
コーヒーを淹れるたび、店の木目に染みこんだ香りがふわりと立つ。
それは、いつかどこかで出会った香りのようで――
いつか誰かが、このコーヒーを好きだと言ってくれる。
そんな光景を想い浮かべながら、丁寧にドリップをする彼女には、自然と笑顔が零れて――
香ばしく湯気を昇らせるコーヒーを片手に、彼女――ユウは本を読んでいた。
その隣では、オーガ族の証である二本の小さな角を額に持つ少女――リンが、同じように本に目を落としていた。
二人は、ただ、静かに本を読んでいるだけ。
それだけなのに、お店の中は、ふんわりとした暖かさに包まれていく。
寄り添う二人の影が、静かに伸びていく――
そのうち、ユウの首がかくん、とゆれ始めた。
それに気づいたリンが訝しげに覗き込む。
ユウはハッとして、ぶんぶんと首を振り、椅子から立ち上がった。
苦笑いを浮かべるユウに、リンは半目でため息を付くと、読書に戻る。
ユウは伸びを一つすると、そのまま窓側まで歩いて、空を見上げる。
日が少し傾き始めていた。
雲は形を変えながら流れて、その白に太陽が隠れたり、顔を出したり。
空を行く小鳥が店の上をくるくると旋回して、慌しく飛んで行く。
慌しいのは小鳥だけで、雲は溶けるように風に流されていくし、太陽は西へとゆっくりと歩んでいく。
そうして、やがて夜が訪れて、今度は月が、太陽の通った道を追いかけていくのだろう。
ゆっくりと時は過ぎ行くのに、それを味わっていると、あっという間に時は過ぎ去って――
ユウは、ふと、紅に染まり始めた空を見上げた。
寄り添う二人の影が、静かに伸びていく――
そのうち、ユウの首がかくん、とゆれ始めた。
それに気づいたリンが訝しげに覗き込む。
ユウはハッとして、ぶんぶんと首を振り、椅子から立ち上がった。
苦笑いを浮かべるユウに、リンは半目でため息を付くと、読書に戻る。
ユウは伸びを一つすると、そのまま窓側まで歩いて、空を見上げる。
日が少し傾き始めていた。
雲は形を変えながら流れて、その白に太陽が隠れたり、顔を出したり。
空を行く小鳥が店の上をくるくると旋回して、慌しく飛んで行く。
慌しいのは小鳥だけで、雲は溶けるように風に流されていくし、太陽は西へとゆっくりと歩んでいく。
そうして、やがて夜が訪れて、今度は月が、太陽の通った道を追いかけていくのだろう。
ゆっくりと時は過ぎ行くのに、それを味わっていると、あっという間に時は過ぎ去って――
ユウは、ふと、紅に染まり始めた空を見上げた。
自分がどう感じようとも時はただゆるりと過ぎていく。
止まることも休むこともなく、ただただ延々と流れてゆくだけ――
振り返って、本を読むリンを見つめる。
じっとしているかと思ったら、高い椅子から出した足を、時々ぶらぶらさせたりして。
そんな様がたまらなく可愛い。
視線を感じたのか、リンがちらとユウを見て、またすぐ本に目を落とす。
少し迷惑そうな表情をしているが、ユウは気にせず見つめていた。
しばらくして、ユウはリンの傍に戻ってまた本を読み始める。
夕日が差して、二人の肌を紅く染め上げる。
やがて、夜が来る。
――茜色が、ゆっくりと黒に融けてゆく。
空気が、段々とその濃さを増してゆき、
夜の気配が漂い始める。
微かな木の香りと、炎の匂いが、そっと鼻腔をくすぐった――
ランプの炎が微かな音を立てている。
その小窓から、ふっと息を吹き込めば、炎は静かに揺れて光を残す。
そうして、そこには暗闇と静寂が満ちていく。
誰もいなくなった店内に残るのは、
二人がそこにいたという微かな温もり、コーヒーの香り――
――ここは喫茶店『小道』
ゆっくりと時間が流れる場所
お勧めはコーヒー、優しい月の光をそえて――
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
草原が吹き抜けた風が、森に流れ込んで木々を揺らしている。
まるで波音のように、微かに揺れ響いて伝わってくる。
まるで波音のように、微かに揺れ響いて伝わってくる。
強い風は、枝を高波の様にざわめかせ、
そよ風は静かに打ち付けるさざ波のように――
そよ風は静かに打ち付けるさざ波のように――
彼女が目を閉じてその音に聞き入っていると、
自分が風になったようにふわりと視界が浮かび上がった――
自分が風になったようにふわりと視界が浮かび上がった――
西に吹き抜ける風は深い森に入り込んで木々を揺らし、
東に向かえば、少し険しい山の粉雪を散らした。
東に向かえば、少し険しい山の粉雪を散らした。
南の街道を進めば、小さな村の人々の間を駆け抜けていく。
北に吹き付ければ、やがて、東と西の山と森がぶつかる境界線が見えた。
北に吹き付ければ、やがて、東と西の山と森がぶつかる境界線が見えた。
風は巡る――
その始まりの草原。
そこから伸びる小道。
その先に見える森の入り口に小さなログハウスが建っている。
そこから伸びる小道。
その先に見える森の入り口に小さなログハウスが建っている。
そこだけ時間を切り取ったような、静かな凪に包まれて、
でも、ひっそりと佇んでいる。
でも、ひっそりと佇んでいる。
彼女のお店――喫茶店『小道』
――客の姿は見えない。
帝都の喧騒からは遠く離れて、一番近い集落ですら徒歩で一日。
そんな辺鄙な所で、彼女はコーヒーを淹れる。
コーヒーを淹れるたび、店の木目に染みこんだ香りがふわりと立つ。
それは、いつかどこかで出会った香りのようで――
それは、いつかどこかで出会った香りのようで――
いつか誰かが、このコーヒーを好きだと言ってくれる。
そんな光景を想い浮かべながら、丁寧にドリップをする彼女には、自然と笑顔が零れて――
そんな光景を想い浮かべながら、丁寧にドリップをする彼女には、自然と笑顔が零れて――
香ばしく湯気を昇らせるコーヒーを片手に、彼女――ユウは本を読んでいた。
その隣では、オーガ族の証である二本の小さな角を額に持つ少女――リンが、同じように本に目を落としていた。
その隣では、オーガ族の証である二本の小さな角を額に持つ少女――リンが、同じように本に目を落としていた。
二人は、ただ、静かに本を読んでいるだけ。
それだけなのに、お店の中は、ふんわりとした暖かさに包まれていく。
寄り添う二人の影が、静かに伸びていく――
寄り添う二人の影が、静かに伸びていく――
そのうち、ユウの首がかくん、とゆれ始めた。
それに気づいたリンが訝しげに覗き込む。
それに気づいたリンが訝しげに覗き込む。
ユウはハッとして、ぶんぶんと首を振り、椅子から立ち上がった。
苦笑いを浮かべるユウに、リンは半目でため息を付くと、読書に戻る。
苦笑いを浮かべるユウに、リンは半目でため息を付くと、読書に戻る。
ユウは伸びを一つすると、そのまま窓側まで歩いて、空を見上げる。
日が少し傾き始めていた。
雲は形を変えながら流れて、その白に太陽が隠れたり、顔を出したり。
空を行く小鳥が店の上をくるくると旋回して、慌しく飛んで行く。
慌しいのは小鳥だけで、雲は溶けるように風に流されていくし、太陽は西へとゆっくりと歩んでいく。
そうして、やがて夜が訪れて、今度は月が、太陽の通った道を追いかけていくのだろう。
ゆっくりと時は過ぎ行くのに、それを味わっていると、あっという間に時は過ぎ去って――
ユウは、ふと、紅に染まり始めた空を見上げた。
自分がどう感じようとも時はただゆるりと過ぎていく。
止まることも休むこともなく、ただただ延々と流れてゆくだけ――
止まることも休むこともなく、ただただ延々と流れてゆくだけ――
振り返って、本を読むリンを見つめる。
じっとしているかと思ったら、高い椅子から出した足を、時々ぶらぶらさせたりして。
そんな様がたまらなく可愛い。
視線を感じたのか、リンがちらとユウを見て、またすぐ本に目を落とす。
少し迷惑そうな表情をしているが、ユウは気にせず見つめていた。
少し迷惑そうな表情をしているが、ユウは気にせず見つめていた。
しばらくして、ユウはリンの傍に戻ってまた本を読み始める。
夕日が差して、二人の肌を紅く染め上げる。
やがて、夜が来る。
――茜色が、ゆっくりと黒に融けてゆく。
空気が、段々とその濃さを増してゆき、
夜の気配が漂い始める。
夜の気配が漂い始める。
微かな木の香りと、炎の匂いが、そっと鼻腔をくすぐった――
ランプの炎が微かな音を立てている。
その小窓から、ふっと息を吹き込めば、炎は静かに揺れて光を残す。
その小窓から、ふっと息を吹き込めば、炎は静かに揺れて光を残す。
そうして、そこには暗闇と静寂が満ちていく。
誰もいなくなった店内に残るのは、
二人がそこにいたという微かな温もり、コーヒーの香り――
二人がそこにいたという微かな温もり、コーヒーの香り――
――ここは喫茶店『小道』
ゆっくりと時間が流れる場所
お勧めはコーヒー、優しい月の光をそえて――