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ep72 魔剣使いvs魔銃使い③

ー/ー



「オイ、あれってまさか……」
「そ、そうだぜ。あれは……」
「す、スゲェ!」
「ああ! 初めて生で見たぜ!」

 後ろでトレブルとブーストが驚嘆している。

「トレブルさんとブーストさんは、今のが何かわかるんですか?」とシヒロ。

「ありゃあたぶん〔発閃〕だ」

「オイ嬢ちゃん、魔剣使いのダンナはマジで何モンなんだ?」

「ぼ、ぼくも知りたいぐらいです……」

 どうやら物知りのシヒロでも〔発閃〕は知らないようだ。トレブルとブーストが知っていたのは意外だが。

『実戦では初でしたが、うまくいったようですね』

『ああ。まだ〔溜め〕が必要ではあるが』

『現時点では充分です』

 謎の声はそう評価するが、まだまだ自由自在に使いこなすには至っていない。それだけ〔発閃〕とは高度な技術。

『その昔、ある武術家が編み出したとされる〔発閃〕。彼はその技で、遠距離攻撃にまさる魔術師相手にも己の拳のみで全く引けを取らない闘いを演じたと言われている。その戦いの構図は「剣対銃」ともぴったり当てはまります。とても良い判断ですよ、クロー様』

『そいつはどうも』

『〔発閃〕は魔力ではなく闘気(剣気)に由来しますが、魔導剣士の使うは魔法を斬り裂き肉薄する唯一無二の〔魔斬発閃〕。クロー様。魔銃如きに手をこまねいている場合ではありません。弾丸ごと斬り裂いてやるのです』

『簡単に言いやがって』

 俺が再び相手に剣尖を突き立てると、両腕を下ろしたシヴィスが低い声で口をひらく。

「魔剣使い。テメー、そんな技まで使いやがんのか」

 顔からは不敵な笑みが消えていた。
 
「これで中遠距離もお前が有利というわけではなくなった。覚悟しろ、シヴィス」

「魔剣使い。実力は認めてやる。オイ、トレブル、ブースト! 何やってやがる! テメーらもちったあ役に立ちやがれ!」

 もはや完全に観客となりきっている部下二人にシヴィスは怒鳴った。

「シ、シヴィスさん! で、でも!」
「おれたちじゃあその戦いにはついていけねえっすよ!」

「肉の壁くらいにはなれんだろうが!」

「そ、そんな!」
「か、勘弁してください!」

「ならそのガキをこっちへ連れて来い! 魔法使えんなら何かの役に立つ。ゲインも死んじまったしな」

 トレブルとブーストは互いに顔を見合わせてから、不安そうな表情を浮かべるシヒロに視線を運んだ。

「く、クローさん」

 シヒロは訴えかけるような視線を俺に送ってきた。
 俺はシヒロには目をくれず、トレブルとブースに向かって「どうするのが得なのか、冷静に考えろ」とだけ言い捨てた。
 なぜ奴ら自身に選択権を与えるのか?
 己自身に決断させた方がその後がうまくいくからだ。力で強制したところで、さらなる強制が他から働けば容易にそちらへ従ってしまうだろう。そして今は、選択を迫るには絶好のタイミングと言える。

『まず武力で制してから傷を癒やし恩を着せ、稀有な〔発閃〕を披露してから選択を迫る。どうやら貴方は良い意味でワタクシの予想とは違う形で成長しているようですね』

『もしアイツらがシヒロに手を出そうしたらその時は頼むぞ』

『そしてワタクシで保険もかけると。ふむ。狡猾でよろしい』

『おほめにあずかりどうも』

 結局、トレブルとブーストは動いていない。動けないのだろう。それはシヴィスも同様だった。

「……」

 ヤツもよく理解している。もし今の状況でトレブルやブーストに手を出そうとすると俺に対して隙が生まれる。その瞬間、俺にやられてしまうかもしれないからだ。

「チッ。まあいい。今度こそテメーを撃ち殺す」

 シヴィスは裏切った部下たちを諦め、銃口を俺に向けた。
 
「今度こそ、斬る」

 俺も剣を構えた。いよいよ決着の時は近い。


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「オイ、あれってまさか……」
「そ、そうだぜ。あれは……」
「す、スゲェ!」
「ああ! 初めて生で見たぜ!」
 後ろでトレブルとブーストが驚嘆している。
「トレブルさんとブーストさんは、今のが何かわかるんですか?」とシヒロ。
「ありゃあたぶん〔発閃〕だ」
「オイ嬢ちゃん、魔剣使いのダンナはマジで何モンなんだ?」
「ぼ、ぼくも知りたいぐらいです……」
 どうやら物知りのシヒロでも〔発閃〕は知らないようだ。トレブルとブーストが知っていたのは意外だが。
『実戦では初でしたが、うまくいったようですね』
『ああ。まだ〔溜め〕が必要ではあるが』
『現時点では充分です』
 謎の声はそう評価するが、まだまだ自由自在に使いこなすには至っていない。それだけ〔発閃〕とは高度な技術。
『その昔、ある武術家が編み出したとされる〔発閃〕。彼はその技で、遠距離攻撃にまさる魔術師相手にも己の拳のみで全く引けを取らない闘いを演じたと言われている。その戦いの構図は「剣対銃」ともぴったり当てはまります。とても良い判断ですよ、クロー様』
『そいつはどうも』
『〔発閃〕は魔力ではなく闘気(剣気)に由来しますが、魔導剣士の使うは魔法を斬り裂き肉薄する唯一無二の〔魔斬発閃〕。クロー様。魔銃如きに手をこまねいている場合ではありません。弾丸ごと斬り裂いてやるのです』
『簡単に言いやがって』
 俺が再び相手に剣尖を突き立てると、両腕を下ろしたシヴィスが低い声で口をひらく。
「魔剣使い。テメー、そんな技まで使いやがんのか」
 顔からは不敵な笑みが消えていた。
「これで中遠距離もお前が有利というわけではなくなった。覚悟しろ、シヴィス」
「魔剣使い。実力は認めてやる。オイ、トレブル、ブースト! 何やってやがる! テメーらもちったあ役に立ちやがれ!」
 もはや完全に観客となりきっている部下二人にシヴィスは怒鳴った。
「シ、シヴィスさん! で、でも!」
「おれたちじゃあその戦いにはついていけねえっすよ!」
「肉の壁くらいにはなれんだろうが!」
「そ、そんな!」
「か、勘弁してください!」
「ならそのガキをこっちへ連れて来い! 魔法使えんなら何かの役に立つ。ゲインも死んじまったしな」
 トレブルとブーストは互いに顔を見合わせてから、不安そうな表情を浮かべるシヒロに視線を運んだ。
「く、クローさん」
 シヒロは訴えかけるような視線を俺に送ってきた。
 俺はシヒロには目をくれず、トレブルとブースに向かって「どうするのが得なのか、冷静に考えろ」とだけ言い捨てた。
 なぜ奴ら自身に選択権を与えるのか?
 己自身に決断させた方がその後がうまくいくからだ。力で強制したところで、さらなる強制が他から働けば容易にそちらへ従ってしまうだろう。そして今は、選択を迫るには絶好のタイミングと言える。
『まず武力で制してから傷を癒やし恩を着せ、稀有な〔発閃〕を披露してから選択を迫る。どうやら貴方は良い意味でワタクシの予想とは違う形で成長しているようですね』
『もしアイツらがシヒロに手を出そうしたらその時は頼むぞ』
『そしてワタクシで保険もかけると。ふむ。狡猾でよろしい』
『おほめにあずかりどうも』
 結局、トレブルとブーストは動いていない。動けないのだろう。それはシヴィスも同様だった。
「……」
 ヤツもよく理解している。もし今の状況でトレブルやブーストに手を出そうとすると俺に対して隙が生まれる。その瞬間、俺にやられてしまうかもしれないからだ。
「チッ。まあいい。今度こそテメーを撃ち殺す」
 シヴィスは裏切った部下たちを諦め、銃口を俺に向けた。
「今度こそ、斬る」
 俺も剣を構えた。いよいよ決着の時は近い。