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〜1〜

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 これは、とあるおんぼろアパートに住む傘の妖精「アン」と、友達のレッサーパンダ「はじき」の物語。


「うーん、気持ちいい」
 はじきは窓を開けると外の空気を大きく吸い込みました。すんだ空気がとてもおいしく感じます。見上げると雲ひとつないきれいな青空。今日は朝からすがすがしいです。
「アン、今日はとても天気が良いよ。どこかに遊びに行こうか」
 目を閉じて暖かい陽の光を浴びながら、はじきはアンに言いました。
「うーん、うーん」
 ところが背中に聞こえるアンの声は、ただただうなっているだけ。はじきはふり返り鏡とにらめっこしているアンを見ました。アンはブラシで髪をとかしています。
 すーっすとん。すーっすとん。音を立ててブラシが通ると、髪の毛が真っ直ぐにととのいます。アンは鏡を見て「うん」とうなずきました。
 くるりん、くるりん。ところが少しもまたずに、毛先が外側にはねてしまうのでした。
「あー、もう」
 アンはブラシを置いて髪の毛を両手でくしゃくしゃにしてしまいました。
「そうか、今日はお仕事の日か。良い天気なのになぁ」
 はじきは良く晴れた青空を見上げながら残念そうにつぶやきました。

 アンの髪の毛は天気予報。うまくまとまらない日は必ず雨がふります。

「はじき、準備はできた?」
 お気に入りの黄色いレインコートを着て、アンが声をかけます。
「うーん、今日は気が乗らないなぁ」
 部屋で寝転がっているはじきは、そう言って動こうとしません。
「そう。じゃあ、はじきは今晩ごはんぬきね。働かざるもの食うべからずだよ」
 アンはまだ若い妖精ですが、むずかしい言葉をたまに使います。
「はたらかザル?なにそれ。僕はサルじゃないよ。レッサーパンダだよ」
 はじきはぶつぶつ文句をこぼしながら、したくを始めるのでした。

 ふたりのお仕事は突然の雨で困っている人に傘を売ること。

「はい、これはじきの分ね」
 アンは傘がたくさん入ったリュックをはじきに渡しました。
「なくさないように気をつけてね」
 はじきはたまに落し物をしてしまうので、ちょっと心配なアンでした。
「大丈夫だよ。それよりアンはちゃんと傘を売るんだよ」
 アンはよく傘を無料であげてしまうので、とても心配なはじきでした。
「大丈夫よ。はじきが頑張ってくれるから」
 笑顔で答えるアンに、はじきはため息をついてしまいます。

 ふたりが町まで出てくると空の雲行きがあやしくなってきました。今朝あんなに晴れていた天気がウソのようです。アンの天気予報は本当によく当たるようです。
「アン。みんな傘もってないね」
 町を歩いている人たちを眺めてみると、傘をもっている人はひとりも見当たりません。
「うん。今日はたくさん傘が売れそうだね。お仕事がんばろう」
 アンに言われて、はじきは大きくうなずきました。
「今晩はごちそうだなぁ」
 ハンバーグにエビフライ。オムライスにビーフシチュー。食後のデザートはショートケーキとアイスクリーム。はじきは想像しただけでよだれが出てきてしまいました。
 でもそんな素敵なごちそうは、今日の仕事の結果にかかっているのです。
「アン、何度も言ってしつこいけど、傘はちゃんとお金とこうかんだからね……あれ?」
 ごちそう実現のための大事な一言でしたが、隣にいるはずのアンがいなくなっていました。
 あたりを見回してみますが、アンの姿は見当たりません。
「もう、ひとりで大丈夫かな」
 アンをひとりにしてしまうなんて大失敗です。そんなはじきに空の天気はおかまいなし。とうとう雨がぽつぽつふり出してきました。
「しかたない。ぼくがふたり分がんばろう」
 今晩のごちそう実現のため、はじきはひとり目のお客さんに声をかけていきました。


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 これは、とあるおんぼろアパートに住む傘の妖精「アン」と、友達のレッサーパンダ「はじき」の物語。
「うーん、気持ちいい」 はじきは窓を開けると外の空気を大きく吸い込みました。すんだ空気がとてもおいしく感じます。見上げると雲ひとつないきれいな青空。今日は朝からすがすがしいです。
「アン、今日はとても天気が良いよ。どこかに遊びに行こうか」
 目を閉じて暖かい陽の光を浴びながら、はじきはアンに言いました。
「うーん、うーん」
 ところが背中に聞こえるアンの声は、ただただうなっているだけ。はじきはふり返り鏡とにらめっこしているアンを見ました。アンはブラシで髪をとかしています。
 すーっすとん。すーっすとん。音を立ててブラシが通ると、髪の毛が真っ直ぐにととのいます。アンは鏡を見て「うん」とうなずきました。
 くるりん、くるりん。ところが少しもまたずに、毛先が外側にはねてしまうのでした。
「あー、もう」
 アンはブラシを置いて髪の毛を両手でくしゃくしゃにしてしまいました。
「そうか、今日はお仕事の日か。良い天気なのになぁ」
 はじきは良く晴れた青空を見上げながら残念そうにつぶやきました。
 アンの髪の毛は天気予報。うまくまとまらない日は必ず雨がふります。
「はじき、準備はできた?」
 お気に入りの黄色いレインコートを着て、アンが声をかけます。
「うーん、今日は気が乗らないなぁ」
 部屋で寝転がっているはじきは、そう言って動こうとしません。
「そう。じゃあ、はじきは今晩ごはんぬきね。働かざるもの食うべからずだよ」
 アンはまだ若い妖精ですが、むずかしい言葉をたまに使います。
「はたらかザル?なにそれ。僕はサルじゃないよ。レッサーパンダだよ」
 はじきはぶつぶつ文句をこぼしながら、したくを始めるのでした。
 ふたりのお仕事は突然の雨で困っている人に傘を売ること。
「はい、これはじきの分ね」
 アンは傘がたくさん入ったリュックをはじきに渡しました。
「なくさないように気をつけてね」
 はじきはたまに落し物をしてしまうので、ちょっと心配なアンでした。
「大丈夫だよ。それよりアンはちゃんと傘を売るんだよ」
 アンはよく傘を無料であげてしまうので、とても心配なはじきでした。
「大丈夫よ。はじきが頑張ってくれるから」
 笑顔で答えるアンに、はじきはため息をついてしまいます。
 ふたりが町まで出てくると空の雲行きがあやしくなってきました。今朝あんなに晴れていた天気がウソのようです。アンの天気予報は本当によく当たるようです。
「アン。みんな傘もってないね」
 町を歩いている人たちを眺めてみると、傘をもっている人はひとりも見当たりません。
「うん。今日はたくさん傘が売れそうだね。お仕事がんばろう」
 アンに言われて、はじきは大きくうなずきました。
「今晩はごちそうだなぁ」
 ハンバーグにエビフライ。オムライスにビーフシチュー。食後のデザートはショートケーキとアイスクリーム。はじきは想像しただけでよだれが出てきてしまいました。
 でもそんな素敵なごちそうは、今日の仕事の結果にかかっているのです。
「アン、何度も言ってしつこいけど、傘はちゃんとお金とこうかんだからね……あれ?」
 ごちそう実現のための大事な一言でしたが、隣にいるはずのアンがいなくなっていました。
 あたりを見回してみますが、アンの姿は見当たりません。
「もう、ひとりで大丈夫かな」
 アンをひとりにしてしまうなんて大失敗です。そんなはじきに空の天気はおかまいなし。とうとう雨がぽつぽつふり出してきました。
「しかたない。ぼくがふたり分がんばろう」
 今晩のごちそう実現のため、はじきはひとり目のお客さんに声をかけていきました。