64. 爆弾投下

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 レオンが個室に戻ると、三人が顔を合わさないようにそっぽを向きながら、黙々と食事をしていた。

 空気が――重い。

 テーブルの上には湯気の立つシチュー、香ばしく焼かれた肉が並んでいるのに、誰も楽しそうではなかった。ナイフとフォークが皿に当たる音だけが、カチャカチャとやけに大きく響く。

 さっきまでの楽しい雰囲気は、完全に消え去っていた。

「あー、ちょっと聞いてほしいんだけど……」

 レオンが口を開くと、三人はジト目でレオンを見上げる。その視線はまるで尋問官のようで、レオンも気おされてしまう。

「み、みんなの好意はとてもうれしい。ほんとだよ?」

 三人は続く言葉に不穏な予感を感じながら、無表情にレオンをにらみ続けている。その瞳には、明確な警戒心が宿っていた。

「でも、僕はこないだ振られたばっかりなんだよ? すぐに他の娘とどうこうということは考えられないんだ」

 レオンの言葉には、本心からの戸惑いが滲んでいた。

 セリナに裏切られた傷は、まだ生々しく胸に残っている。

 その記憶が、まだ消えていないのだ。

 三人はプイッとそっぽを向く。その仕草が可愛らしくもあり、ままならなさも感じさせた。

「ボクが今、目指しているのは、みんながそれぞれ自分の才能を存分に花開かせて、アルカナが世界中に認められることなんだ」

 レオンの声は、真剣だった。その翠色の瞳には、揺るぎない決意が宿っている。

 エリナもドアのところで、静かに聞いている。その黒曜石のような瞳が、鋭くレオンを見つめていた。

「それまでは僕は誰とも付き合わない」

 レオンの宣言に、少女たちの表情が揺れる。

 落胆と、そして――かすかな希望。

「それまでは」という言葉に、彼女たちは敏感に反応していた。

「じゃぁ、世界に認められたら付き合うの?」

 ルナが鋭く突っ込んでくる。その緋色の瞳には希望の光がちらりと見えた。

「うん、アルカナの育成が一段落ついたら、その時は恋人……欲しいかな」

 レオンの言葉に、少女たちの表情が一斉に明るくなる。

「誰にするのよ?」

 ミーシャが肉食系の顔で突っ込んでくる。その空色の瞳には、明確な競争心が燃えていた。

「そ、それはまだ決めてないよ」

 その迫力に気おされるレオン。

「『決めてない』ってことは……三人のうち誰かって……こと?」

 シエルが恐る恐る聞いてくる。その碧眼が、期待に揺れる。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! なんで三人なのよ!?」

 エリナが慌てて口をはさむ。その顔は、真っ赤になっていた。

「あら? エリナも参戦するのかしら?」

 ミーシャが意味ありげな笑みを浮かべる。

「さ、参戦なんかしないわよ! で、でも……未来のことなんて分からないじゃない!」

 エリナは上目遣いでレオンの方をチラッと見る。

 普段の凛とした剣士の面影はどこへやら、その仕草は妙に色っぽかった。黒髪がさらりと揺れ、白い頬が紅潮している。

「ぶーーっ!」「調子よすぎないかしら?」

 ルナとシエルが同時に不満の声を上げる。

「まぁまぁ。でも、エリナがそうやって距離を保ってくれているというのは、僕にはありがたいんだけどね」

 レオンの言葉に、エリナがハッとする。

「へ? な、何がよ?」

 エリナが少しのけぞった。その黒髪が、ゆらりと揺れた。

「だって、全員が僕に惚れちゃってたら、もはやハーレムじゃないか。そんなの不健全だよ。誰かがビシッと言ってくれないと困っちゃうもん」

 レオンの言葉に、エリナの目が輝く。

 自分は、必要とされている。

 レオンにとって、特別な存在なのだ。

「そ、そうよ! 最年長の私が(ただ)れた関係に発展しないように目を光らせるんだわ! うん!」

 エリナは力強く宣言する。

 少女三人はお互い顔を見合わせながら、無言で肩をすくめた。

「ありがとう。さすがエリナ。本当に助かるよ」

 レオンはエリナに微笑みかける。

 その笑顔が、期せずしてエリナのハートを直撃した。

「えっ? いや、ちょっと、やだなぁ、もぅ……」

 エリナの頬がぱっと赤く染まった。自分でも何を言っているのか分からなくなっている。

「みんな! これからレオンを困らせちゃダメだゾ? ふふっ」

 エリナは息を荒くしながら言った。その声は、どこか上ずっている。

 少女三人は、面倒くさそうにため息をこぼした。

「みんなで楽しく、仲良くね?」

 レオンはくぎを刺す。

「分かったわよぉ……。で、付き合う相手はアルカナの誰かってことでいいのね?」

 ルナが期待に満ちた目で聞いてくる。その緋色の瞳が、希望の光で輝いていた。

「うん、まぁ、みんなそれぞれ魅力的だから、きっとアルカナのメンバーの誰かになると思うよ?」

 レオンの言葉に、少女たちの表情が明るくなった。

「あら、別に全員でもいいんですのよ? ふふっ」

 ミーシャが爆弾を投下する。



次のエピソードへ進む 65. お前もかぁぁぁぁ!


みんなのリアクション

 レオンが個室に戻ると、三人が顔を合わさないようにそっぽを向きながら、黙々と食事をしていた。
 空気が――重い。
 テーブルの上には湯気の立つシチュー、香ばしく焼かれた肉が並んでいるのに、誰も楽しそうではなかった。ナイフとフォークが皿に当たる音だけが、カチャカチャとやけに大きく響く。
 さっきまでの楽しい雰囲気は、完全に消え去っていた。
「あー、ちょっと聞いてほしいんだけど……」
 レオンが口を開くと、三人はジト目でレオンを見上げる。その視線はまるで尋問官のようで、レオンも気おされてしまう。
「み、みんなの好意はとてもうれしい。ほんとだよ?」
 三人は続く言葉に不穏な予感を感じながら、無表情にレオンをにらみ続けている。その瞳には、明確な警戒心が宿っていた。
「でも、僕はこないだ振られたばっかりなんだよ? すぐに他の娘とどうこうということは考えられないんだ」
 レオンの言葉には、本心からの戸惑いが滲んでいた。
 セリナに裏切られた傷は、まだ生々しく胸に残っている。
 その記憶が、まだ消えていないのだ。
 三人はプイッとそっぽを向く。その仕草が可愛らしくもあり、ままならなさも感じさせた。
「ボクが今、目指しているのは、みんながそれぞれ自分の才能を存分に花開かせて、アルカナが世界中に認められることなんだ」
 レオンの声は、真剣だった。その翠色の瞳には、揺るぎない決意が宿っている。
 エリナもドアのところで、静かに聞いている。その黒曜石のような瞳が、鋭くレオンを見つめていた。
「それまでは僕は誰とも付き合わない」
 レオンの宣言に、少女たちの表情が揺れる。
 落胆と、そして――かすかな希望。
「それまでは」という言葉に、彼女たちは敏感に反応していた。
「じゃぁ、世界に認められたら付き合うの?」
 ルナが鋭く突っ込んでくる。その緋色の瞳には希望の光がちらりと見えた。
「うん、アルカナの育成が一段落ついたら、その時は恋人……欲しいかな」
 レオンの言葉に、少女たちの表情が一斉に明るくなる。
「誰にするのよ?」
 ミーシャが肉食系の顔で突っ込んでくる。その空色の瞳には、明確な競争心が燃えていた。
「そ、それはまだ決めてないよ」
 その迫力に気おされるレオン。
「『決めてない』ってことは……三人のうち誰かって……こと?」
 シエルが恐る恐る聞いてくる。その碧眼が、期待に揺れる。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! なんで三人なのよ!?」
 エリナが慌てて口をはさむ。その顔は、真っ赤になっていた。
「あら? エリナも参戦するのかしら?」
 ミーシャが意味ありげな笑みを浮かべる。
「さ、参戦なんかしないわよ! で、でも……未来のことなんて分からないじゃない!」
 エリナは上目遣いでレオンの方をチラッと見る。
 普段の凛とした剣士の面影はどこへやら、その仕草は妙に色っぽかった。黒髪がさらりと揺れ、白い頬が紅潮している。
「ぶーーっ!」「調子よすぎないかしら?」
 ルナとシエルが同時に不満の声を上げる。
「まぁまぁ。でも、エリナがそうやって距離を保ってくれているというのは、僕にはありがたいんだけどね」
 レオンの言葉に、エリナがハッとする。
「へ? な、何がよ?」
 エリナが少しのけぞった。その黒髪が、ゆらりと揺れた。
「だって、全員が僕に惚れちゃってたら、もはやハーレムじゃないか。そんなの不健全だよ。誰かがビシッと言ってくれないと困っちゃうもん」
 レオンの言葉に、エリナの目が輝く。
 自分は、必要とされている。
 レオンにとって、特別な存在なのだ。
「そ、そうよ! 最年長の私が|爛《ただ》れた関係に発展しないように目を光らせるんだわ! うん!」
 エリナは力強く宣言する。
 少女三人はお互い顔を見合わせながら、無言で肩をすくめた。
「ありがとう。さすがエリナ。本当に助かるよ」
 レオンはエリナに微笑みかける。
 その笑顔が、期せずしてエリナのハートを直撃した。
「えっ? いや、ちょっと、やだなぁ、もぅ……」
 エリナの頬がぱっと赤く染まった。自分でも何を言っているのか分からなくなっている。
「みんな! これからレオンを困らせちゃダメだゾ? ふふっ」
 エリナは息を荒くしながら言った。その声は、どこか上ずっている。
 少女三人は、面倒くさそうにため息をこぼした。
「みんなで楽しく、仲良くね?」
 レオンはくぎを刺す。
「分かったわよぉ……。で、付き合う相手はアルカナの誰かってことでいいのね?」
 ルナが期待に満ちた目で聞いてくる。その緋色の瞳が、希望の光で輝いていた。
「うん、まぁ、みんなそれぞれ魅力的だから、きっとアルカナのメンバーの誰かになると思うよ?」
 レオンの言葉に、少女たちの表情が明るくなった。
「あら、別に全員でもいいんですのよ? ふふっ」
 ミーシャが爆弾を投下する。